真実の愛のお相手は弟の妻でした ―年上悪役令嬢は二十九歳―』

鷹 綾

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第二十六話 断罪準備

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第二十六話 断罪準備

王宮、謁見の間。

高い天井に重厚な柱。

その中央に、王の玉座があった。

まだ国王は姿を見せていない。

だがその前にはすでに重臣たちが集まっていた。

宰相。
法務卿。
宮廷司祭。
王宮記録官。

そして――

フロレンティア・アルヴェイン。

彼女は落ち着いた様子で静かに立っていた。

その表情はいつも通り穏やかだ。

だが、この場にいる全員が理解していた。

今日の話し合いは、ただの噂話ではない。

王族の問題。

それも。

不貞。

宰相が静かに口を開く。

「記録官」

男が一歩前に出た。

「はい」

宰相は言う。

「本日までに確認された事実を整理してください」

記録官は書類を開いた。

「承知しました」

彼は読み上げる。

「第一」

「ヴィオレッタ・オデット」

「アルヴェイン公爵家ダリオン様の妻」

フロレンティアは静かに頷いた。

記録官は続ける。

「婚姻は三年前」

「王都中央教会にて正式に成立」

法務卿が言う。

「合法な婚姻ですね」

記録官は頷く。

「第二」

彼は次の書類をめくる。

「ヴィオレッタ嬢の年齢」

「戸籍によれば現在二十九歳」

宰相が静かに言う。

「社交界では二十歳」

記録官は答える。

「はい」

「年齢詐称の可能性」

宮廷司祭が眉をひそめる。

「教会に対する虚偽申告ですか」

記録官は答える。

「結婚時の年齢が十九歳と申告されています」

法務卿が言う。

「実際は二十八歳」

記録官は頷いた。

「その通りです」

室内の空気が重くなる。

宰相は続ける。

「第三」

「王太子カルディオン殿下」

記録官が書類を読む。

「殿下はヴィオレッタ嬢が既婚者であることを認識した上で」

「関係を持たれた」

法務卿が目を閉じる。

「……王族の不貞」

宮廷司祭が言う。

「しかも人妻」

重臣たちは沈黙した。

宰相はゆっくり言う。

「つまり」

彼は言葉を選びながら続けた。

「現在確認されている事実は」

指を一本立てる。

「人妻」

もう一本。

「年齢詐称」

そして最後に言う。

「王族の不貞」

その言葉が重く落ちる。

誰も軽々しく言葉を出せない。

しばらくして。

宰相がフロレンティアを見た。

「アルヴェイン公爵令嬢」

フロレンティアは静かに頭を下げた。

「はい」

宰相は言う。

「あなたは被害者として出席しています」

フロレンティアは穏やかに答える。

「その通りです」

宰相は続ける。

「この件について」

「訴えはありますか」

フロレンティアは少しだけ考えた。

そして。

微笑んだ。

「もちろん」

その声はとても落ち着いていた。

「あります」

宰相は頷く。

「聞きましょう」

フロレンティアはゆっくり言った。

「王太子殿下は」

「私との婚約を破棄しました」

宰相が頷く。

「記録されています」

フロレンティアは続ける。

「そして」

「人妻と関係を持ち」

「婚約を宣言しました」

室内は静まり返る。

フロレンティアの声は変わらない。

「したがって」

彼女は静かに言った。

「正式な場で」

「事実関係を明らかにしていただきたい」

宰相は頷いた。

「承知しました」

そしてゆっくり言う。

「では」

「国王陛下の前で」

その言葉に、重臣たちの背筋が伸びる。

宰相ははっきり告げた。

「正式な審問を行います」

その瞬間。

この問題は――

王宮の裁きへと進んだ。
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