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第三十二話 最後の一言
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第三十二話 最後の一言
裁きの日から数日後。
王都はその話で持ちきりだった。
王太子廃嫡。
伯爵家没落。
そして。
前代未聞の王宮裁判。
だが、誰もが口にしていた。
「自業自得だ」
カルディオンはもはや王太子ではない。
王籍を剥奪され、王宮から追い出された。
そして。
巨額の慰謝料。
王族の地位を失った今、彼に支払う力などない。
結果は一つ。
借金。
かつて王太子だった男は、ただの落ちぶれた男になった。
一方。
オデット伯爵家。
爵位剥奪。
財産没収。
屋敷は王家に接収された。
社交界の人々は言う。
「完全な没落だ」
ヴィオレッタの行方は、誰も知らない。
修道院にも入れなかったという噂だけが残った。
――
アルヴェイン公爵邸。
庭には春の風が吹いていた。
フロレンティアはテラスで紅茶を飲んでいる。
いつもと変わらない午後。
執事が静かに報告する。
「慰謝料の件ですが」
フロレンティアは微笑む。
「ええ」
執事は言う。
「王家から正式な支払いが決定しました」
フロレンティアはカップを置いた。
「そう」
その声は穏やかだった。
執事は続ける。
「ダリオン様の方も」
「オデット伯爵家に対する慰謝料請求が認められました」
フロレンティアは小さく頷く。
「当然ですわね」
執事は言う。
「伯爵家にはもう支払う資産がありません」
フロレンティアは笑った。
「なら」
「働いて返していただきましょう」
執事も微笑む。
しばらく沈黙。
庭の薔薇が風に揺れる。
その時。
執事が言った。
「お嬢様」
フロレンティアは視線を向ける。
「何かしら」
執事は少し笑った。
「殿下が最後に言っていた言葉ですが」
フロレンティアは首を傾げた。
「何でしたの?」
執事は言う。
「『騙された』と」
フロレンティアは一瞬考えた。
そして。
くすっと笑った。
「そう」
紅茶を一口飲む。
そして。
静かに言った。
「申し上げましたわ」
執事が聞く。
「何をでしょう」
フロレンティアは穏やかな声で言った。
「殿下」
そして。
ゆっくり続ける。
「その女性は」
風が庭を通り抜ける。
フロレンティアは微笑んだ。
「私の弟の妻です」
沈黙。
執事は軽く頭を下げた。
「ええ」
フロレンティアは紅茶をもう一口飲む。
そして言った。
「聞く耳を持たなかったのは」
穏やかな声。
「殿下の方ですわ」
春の光が庭に広がる。
すべては終わった。
そして。
フロレンティアの日常は。
何事もなかったように。
静かに続いていくのだった。
裁きの日から数日後。
王都はその話で持ちきりだった。
王太子廃嫡。
伯爵家没落。
そして。
前代未聞の王宮裁判。
だが、誰もが口にしていた。
「自業自得だ」
カルディオンはもはや王太子ではない。
王籍を剥奪され、王宮から追い出された。
そして。
巨額の慰謝料。
王族の地位を失った今、彼に支払う力などない。
結果は一つ。
借金。
かつて王太子だった男は、ただの落ちぶれた男になった。
一方。
オデット伯爵家。
爵位剥奪。
財産没収。
屋敷は王家に接収された。
社交界の人々は言う。
「完全な没落だ」
ヴィオレッタの行方は、誰も知らない。
修道院にも入れなかったという噂だけが残った。
――
アルヴェイン公爵邸。
庭には春の風が吹いていた。
フロレンティアはテラスで紅茶を飲んでいる。
いつもと変わらない午後。
執事が静かに報告する。
「慰謝料の件ですが」
フロレンティアは微笑む。
「ええ」
執事は言う。
「王家から正式な支払いが決定しました」
フロレンティアはカップを置いた。
「そう」
その声は穏やかだった。
執事は続ける。
「ダリオン様の方も」
「オデット伯爵家に対する慰謝料請求が認められました」
フロレンティアは小さく頷く。
「当然ですわね」
執事は言う。
「伯爵家にはもう支払う資産がありません」
フロレンティアは笑った。
「なら」
「働いて返していただきましょう」
執事も微笑む。
しばらく沈黙。
庭の薔薇が風に揺れる。
その時。
執事が言った。
「お嬢様」
フロレンティアは視線を向ける。
「何かしら」
執事は少し笑った。
「殿下が最後に言っていた言葉ですが」
フロレンティアは首を傾げた。
「何でしたの?」
執事は言う。
「『騙された』と」
フロレンティアは一瞬考えた。
そして。
くすっと笑った。
「そう」
紅茶を一口飲む。
そして。
静かに言った。
「申し上げましたわ」
執事が聞く。
「何をでしょう」
フロレンティアは穏やかな声で言った。
「殿下」
そして。
ゆっくり続ける。
「その女性は」
風が庭を通り抜ける。
フロレンティアは微笑んだ。
「私の弟の妻です」
沈黙。
執事は軽く頭を下げた。
「ええ」
フロレンティアは紅茶をもう一口飲む。
そして言った。
「聞く耳を持たなかったのは」
穏やかな声。
「殿下の方ですわ」
春の光が庭に広がる。
すべては終わった。
そして。
フロレンティアの日常は。
何事もなかったように。
静かに続いていくのだった。
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