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第二十話 終わりではなく、始まり
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第二十話 終わりではなく、始まり
戴冠から三日。
祝賀の音は落ち着き、王都は日常を取り戻し始めていた。
だが、それは以前と同じ日常ではない。
王宮の執務室に、私は座っている。
玉座ではない。
書類に囲まれた机。
王の仕事は、座ることではなく、決めることだ。
「奴隷解放令の施行に伴い、補償制度の整備が急務です」
財務官が報告する。
「急激な解放は混乱を招く」
「承知しています」
私は頷く。
理想だけでは国は回らない。
「段階的に進めます」
契約の無効化。
解放者への職業支援。
税制の再設計。
王は、現実を見る者でなければならない。
王太子――いや、今はただのアルトは、隣の席に立っている。
王配ではない。
肩書きはまだ決めていない。
だが彼は私の補佐をしている。
「評議会の構成案です」
彼が差し出す。
貴族、商人、軍、そして民の代表。
王権を分けるための仕組み。
「反発はあります」
「当然です」
私は書類に目を通す。
「だが進めます」
午後、私は拘束された王族と強行派の貴族たちに会う。
牢は暗いが、粗末ではない。
彼らは立ち上がらない。
睨む者もいる。
「あなた方に個人的な恨みはありません」
私は言う。
「しかし、この国の体制の責任者でした」
沈黙。
「退任と、公職追放」
「それだけか」
強行派の侯爵が低く言う。
「処刑を望むか」
私は静かに問い返す。
彼は黙る。
「血で始まる王政は、また血で終わります」
私は背を向ける。
「ここで終わりにしましょう」
夜。
王宮の屋上に立つ。
王都の灯が広がる。
アルトが隣に立つ。
「後悔はないか」
「ありません」
少しだけ間を置く。
「怖さはあります」
「それでいい」
彼は言う。
「恐れを忘れた王は危険だ」
私は笑う。
「あなたは、どう思っていますか」
「何を」
「この国の未来を」
彼は空を見上げる。
「まだ不安定だ」
「ええ」
「だが、希望がある」
その言葉に、胸が温かくなる。
遠くで鐘が鳴る。
平和の鐘。
戦争は起きなかった。
隣国は軍を引き始めている。
後ろ盾は、もう必要ない。
翌日、隣国王から書状が届く。
『あなたは、隣に立つ者となった』
短い文。
だが十分だ。
私は机に向かい、返書を書く。
『攻めるなと言った願いを、守ってくださり感謝します』
そして最後に一文。
『これからは、対等な隣国として』
王は所有しない。
民も所有されない。
それは理想だ。
だが理想は、形にしなければ意味がない。
私は窓を開ける。
風が入る。
かつては鳥籠だった城。
今は、責任の場。
私は深く息を吸う。
公爵令嬢だった私。
所有物だった私。
庇護下の存在だった私。
今は、選び、選ばれた女王。
物ではない。
人間だ。
そしてこの国もまた。
物ではなく、意思を持つ国へ。
物語は終わらない。
だがひとつの時代は、ここで確かに幕を閉じた。
戴冠から三日。
祝賀の音は落ち着き、王都は日常を取り戻し始めていた。
だが、それは以前と同じ日常ではない。
王宮の執務室に、私は座っている。
玉座ではない。
書類に囲まれた机。
王の仕事は、座ることではなく、決めることだ。
「奴隷解放令の施行に伴い、補償制度の整備が急務です」
財務官が報告する。
「急激な解放は混乱を招く」
「承知しています」
私は頷く。
理想だけでは国は回らない。
「段階的に進めます」
契約の無効化。
解放者への職業支援。
税制の再設計。
王は、現実を見る者でなければならない。
王太子――いや、今はただのアルトは、隣の席に立っている。
王配ではない。
肩書きはまだ決めていない。
だが彼は私の補佐をしている。
「評議会の構成案です」
彼が差し出す。
貴族、商人、軍、そして民の代表。
王権を分けるための仕組み。
「反発はあります」
「当然です」
私は書類に目を通す。
「だが進めます」
午後、私は拘束された王族と強行派の貴族たちに会う。
牢は暗いが、粗末ではない。
彼らは立ち上がらない。
睨む者もいる。
「あなた方に個人的な恨みはありません」
私は言う。
「しかし、この国の体制の責任者でした」
沈黙。
「退任と、公職追放」
「それだけか」
強行派の侯爵が低く言う。
「処刑を望むか」
私は静かに問い返す。
彼は黙る。
「血で始まる王政は、また血で終わります」
私は背を向ける。
「ここで終わりにしましょう」
夜。
王宮の屋上に立つ。
王都の灯が広がる。
アルトが隣に立つ。
「後悔はないか」
「ありません」
少しだけ間を置く。
「怖さはあります」
「それでいい」
彼は言う。
「恐れを忘れた王は危険だ」
私は笑う。
「あなたは、どう思っていますか」
「何を」
「この国の未来を」
彼は空を見上げる。
「まだ不安定だ」
「ええ」
「だが、希望がある」
その言葉に、胸が温かくなる。
遠くで鐘が鳴る。
平和の鐘。
戦争は起きなかった。
隣国は軍を引き始めている。
後ろ盾は、もう必要ない。
翌日、隣国王から書状が届く。
『あなたは、隣に立つ者となった』
短い文。
だが十分だ。
私は机に向かい、返書を書く。
『攻めるなと言った願いを、守ってくださり感謝します』
そして最後に一文。
『これからは、対等な隣国として』
王は所有しない。
民も所有されない。
それは理想だ。
だが理想は、形にしなければ意味がない。
私は窓を開ける。
風が入る。
かつては鳥籠だった城。
今は、責任の場。
私は深く息を吸う。
公爵令嬢だった私。
所有物だった私。
庇護下の存在だった私。
今は、選び、選ばれた女王。
物ではない。
人間だ。
そしてこの国もまた。
物ではなく、意思を持つ国へ。
物語は終わらない。
だがひとつの時代は、ここで確かに幕を閉じた。
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