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第17話 罪の転嫁
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第17話 罪の転嫁
裁判長の視線が、フォールス・アキュゼーションから離れない。
「では続けて、あなたが追放に至った経緯を述べてください」
「承知しました」
フォールスは、呼吸を一つ整えた。
「当該決算書の提出後、数日して監査が入りました。その際、欠損金の発生と帳簿の不整合が指摘されました」
法廷の空気が、さらに重くなる。
「私は、その不整合が決裁欄の改変と関係している可能性を示しました」
「受け入れられましたか」
「いいえ」
フォールスは、淡々と首を振る。
「不整合の原因は、私の確認不足とされました」
ざわめきが起こる。
監査の失敗を、一介の実務者に押し付ける。
あまりにも分かりやすい構図だった。
「その後、王太子フレイム・ファブリケイト・ロイヤル・ロードより、直接呼び出しを受けました」
フォールスの声は、変わらない。
「その場で、“君の責任だ”と告げられました」
「その際、反論は」
「しました」
即答だった。
「決裁過程に不備があること、指示に従った結果であることを説明しました」
「返答は」
「“言い訳は不要だ”と」
法廷の一角で、誰かが小さく息を呑む音がした。
「さらに、こう言われました」
フォールスは、言葉を正確に再現する。
「“これ以上問題を広げるなら、家ごと処分する”と」
裁判長の眉が、わずかに動いた。
「脅迫と受け取れますね」
「そう受け取りました」
フォールスは、淡々と答えた。
「私は、家の名を守るため、追放を受け入れました」
その言葉は、静かだった。
だが、法廷の空気は、確実に変わっていた。
「追放後、あなたはどうなりましたか」
「移送中に、暗殺未遂に遭いました」
その一言で、ざわめきが爆発的に広がる。
裁判長が木槌を打つ。
「静粛に」
フォールスは、続けた。
「私は、生存しています。しかし、王都には死亡したとの報告が上がっています」
「誰からの報告ですか」
フォールスは、視線をまっすぐ前に向けた。
「実行犯からです」
その言葉に、空気が凍る。
「つまり」
裁判長が慎重に言葉を選ぶ。
「あなたは、殺されたことにされていた」
「はい」
「なぜ、そのような必要があったと考えますか」
フォールスは、一瞬だけ考えた。
そして、はっきりと答える。
「私が生きていれば、証言できるからです」
それ以上でも、それ以下でもない。
「生存が知られれば、証拠が揃う前に口封じされる可能性が高いと判断しました」
法廷の一角で、貴族の一人が立ち上がりかけ、周囲に制止される。
裁判長は、フォールスを見据えた。
「あなたは、自らの死を利用した、と?」
「結果として、そうなりました」
フォールスは、淡々と答えた。
「ですが、望んだわけではありません」
しばしの沈黙。
裁判長は、記録官に目配せし、続ける。
「あなたは、自分の失策だとされている件について、どのように考えていますか」
フォールスは、即答した。
「私の失策ではありません」
強い否定だった。
「私は、規定通りに確認し、問題を指摘しました。その結果、責任を押し付けられ、排除されました」
それは、個人の怨嗟ではない。
構造の説明だ。
「つまり」
裁判長がまとめる。
「あなたの追放は、帳簿偽造の隠蔽と、その責任転嫁のためだった、という主張ですね」
「はい」
フォールスは、はっきりと頷いた。
法廷は、完全な沈黙に包まれていた。
ここまでの証言で、構図は完成している。
王太子の失策。
偽造。
口封じ。
罪の転嫁。
フォールス・アキュゼーションは、証人席に立ったまま、視線を落とさなかった。
自分は、責任を逃れようとしているのではない。
逃げた責任が、誰にあるのかを、
ただ、元の位置に戻しているだけだ。
裁判長は、深く息を吸い、宣告するように言った。
「本日の証言は、ここまでとします。次は――」
その言葉の先を、誰もが理解していた。
次に呼ばれるのは、
罪を“実行した者”だ。
フォールスは、静かに証人席を後にした。
因果は、もう切り離せないところまで繋がっている。
あとは、
その因を、当事者自身に語らせるだけだった。
裁判長の視線が、フォールス・アキュゼーションから離れない。
「では続けて、あなたが追放に至った経緯を述べてください」
「承知しました」
フォールスは、呼吸を一つ整えた。
「当該決算書の提出後、数日して監査が入りました。その際、欠損金の発生と帳簿の不整合が指摘されました」
法廷の空気が、さらに重くなる。
「私は、その不整合が決裁欄の改変と関係している可能性を示しました」
「受け入れられましたか」
「いいえ」
フォールスは、淡々と首を振る。
「不整合の原因は、私の確認不足とされました」
ざわめきが起こる。
監査の失敗を、一介の実務者に押し付ける。
あまりにも分かりやすい構図だった。
「その後、王太子フレイム・ファブリケイト・ロイヤル・ロードより、直接呼び出しを受けました」
フォールスの声は、変わらない。
「その場で、“君の責任だ”と告げられました」
「その際、反論は」
「しました」
即答だった。
「決裁過程に不備があること、指示に従った結果であることを説明しました」
「返答は」
「“言い訳は不要だ”と」
法廷の一角で、誰かが小さく息を呑む音がした。
「さらに、こう言われました」
フォールスは、言葉を正確に再現する。
「“これ以上問題を広げるなら、家ごと処分する”と」
裁判長の眉が、わずかに動いた。
「脅迫と受け取れますね」
「そう受け取りました」
フォールスは、淡々と答えた。
「私は、家の名を守るため、追放を受け入れました」
その言葉は、静かだった。
だが、法廷の空気は、確実に変わっていた。
「追放後、あなたはどうなりましたか」
「移送中に、暗殺未遂に遭いました」
その一言で、ざわめきが爆発的に広がる。
裁判長が木槌を打つ。
「静粛に」
フォールスは、続けた。
「私は、生存しています。しかし、王都には死亡したとの報告が上がっています」
「誰からの報告ですか」
フォールスは、視線をまっすぐ前に向けた。
「実行犯からです」
その言葉に、空気が凍る。
「つまり」
裁判長が慎重に言葉を選ぶ。
「あなたは、殺されたことにされていた」
「はい」
「なぜ、そのような必要があったと考えますか」
フォールスは、一瞬だけ考えた。
そして、はっきりと答える。
「私が生きていれば、証言できるからです」
それ以上でも、それ以下でもない。
「生存が知られれば、証拠が揃う前に口封じされる可能性が高いと判断しました」
法廷の一角で、貴族の一人が立ち上がりかけ、周囲に制止される。
裁判長は、フォールスを見据えた。
「あなたは、自らの死を利用した、と?」
「結果として、そうなりました」
フォールスは、淡々と答えた。
「ですが、望んだわけではありません」
しばしの沈黙。
裁判長は、記録官に目配せし、続ける。
「あなたは、自分の失策だとされている件について、どのように考えていますか」
フォールスは、即答した。
「私の失策ではありません」
強い否定だった。
「私は、規定通りに確認し、問題を指摘しました。その結果、責任を押し付けられ、排除されました」
それは、個人の怨嗟ではない。
構造の説明だ。
「つまり」
裁判長がまとめる。
「あなたの追放は、帳簿偽造の隠蔽と、その責任転嫁のためだった、という主張ですね」
「はい」
フォールスは、はっきりと頷いた。
法廷は、完全な沈黙に包まれていた。
ここまでの証言で、構図は完成している。
王太子の失策。
偽造。
口封じ。
罪の転嫁。
フォールス・アキュゼーションは、証人席に立ったまま、視線を落とさなかった。
自分は、責任を逃れようとしているのではない。
逃げた責任が、誰にあるのかを、
ただ、元の位置に戻しているだけだ。
裁判長は、深く息を吸い、宣告するように言った。
「本日の証言は、ここまでとします。次は――」
その言葉の先を、誰もが理解していた。
次に呼ばれるのは、
罪を“実行した者”だ。
フォールスは、静かに証人席を後にした。
因果は、もう切り離せないところまで繋がっている。
あとは、
その因を、当事者自身に語らせるだけだった。
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