幻妖写鑑定局

かめりここ

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不思議な写真

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「あのー……今のはなんだったの?」
 美枝グループが落ち着いた所で話を振った。友達じゃなかったら逃げ出すくらい怖かったんだからね、もう。でも美枝は、さも当然の様に言った。
「だって、あの柴田先輩の彼女ってなったらねぇ。あんなイケメンで秀才は中々居ないし、狙ってる子多いよー?」
「……でも性格は最悪で背も低いよ? 総合的に考えたら平均でしょ」
「燈は見慣れ過ぎなんだよ! あんなイケメン芸能人にだって居ないし、歴史的産物だよ? 性格だってそんな悪そうには思えないし」
 それは美化させ過ぎですって。毎回嫌味言われてみなさいな、一時間で嫌気がさすから。
「確かに、そういう意味では伝説上の生き物って言っても良いかもー。背も燈と同じくらいでしょー? 燈結構身長高いし、言うほど低くもないんじゃないかなー?」
「優里まで……でも、誰を好きになるのも自由だけど、そんなに皆好きとは思えないけど……」
 美枝達みたいに美化されて好きになってる人もいるだろうけど、大概の人は捺の最悪性格を一発で嫌うと思うと思っていた。……そんな私の思考は、次の優里の言葉ですぐに崩されてしまうのだけど。
「あれ? でも確か捺先輩押しの集まりがあったよね?」
「あーキャンパス外の人も一緒に集まってるやつだよね? 隠し撮り写真とかを共有しているとの噂の」
 マジですか。性格よりも顔とか……世も末ですね、ほほほ。
「皆捺の本当の姿見れば、すぐに目を覚ますと思うけどね……」
 私の呟きに美枝は、自分は絶対にないと反対した。その時はよく言うよと思っていたけど、それが本当の事で、しかも他の捺ファンも当て嵌まっていた事を、次の休日に思い知る事になるのだけど。

「わー! 凄いねー、みんな捺先輩目当てだよー」
「……優里は呑気で良いね……」
 土曜日の午後、外は太陽が高くから温かな陽を照らして、絶好のお出かけ日和となっている。春の空気は気持ちが良い、深呼吸をしただけで何だか得した気分になるもの。こんな日はサンドウィッチ持ってピクニックか、眺めの良いテラスでティーブレイクだよね。……ま、私は休みの日はお店のお手伝いをしているから、お出かけ出来ないんだけど。
 悟伯父さんが居ない分、捺や森さんは撮影や現像をしなければで、私がカウンターでお客さんの相手をしているのだ。捺って実はプロ並みの撮影技術と知識、それからフィルムの印刷技術もあるって森さんから聞いたの。無駄に威張ってると思ってたけど、その歳で出来るなら少しは威張りたくなるのも分かるなって思った。
 私が遊びに行けない事を知ると、優里は自分が来ると言ってくれて、今日はお店で手が空いてる時にお話をする予定だったのだ。
それで優里が訪ねて来てくれたのが午後一時。いつもは忙しくないはずなんだけど、今日は何人もの人が捺の元へ殺到していた。何処から聞きつけたのか、ここの写真屋が実家であると言う事と、写真鑑定をしてもらえると聞きつけた彼女達は、それぞれに写真を持ち寄ってそれを話のタネにしようと企んでいるらしい。きっとアルバムやスマホの中全部調べて、見間違いかと思えるようなものでも良いから何か無いかと探したんだろうな。聞かずともその光景が浮かぶくらい、皆話せる事に期待しながら捺に群がっているのだから。
ただ捺は露骨に迷惑そうにしている。来客用のソファに座り、渡される写真に一応は目を通すけどすぐに机の上に投げる。次の写真も何も言わずに机に投げ捨てる。その繰り返し。
「捺先輩、何してるんだろうね?」
「……面倒だから投げ捨ててる?」
「だけど、なんか分けてるっぽいよー?」
 優里に言われてよく見てみると、確かに写真を適当に投げてるのではなく、四つに分けているようだった。やがて最後らしき写真を見終わると、捺から見て一番右にまとまっている写真を指さした。そこから順々に左へと説明をしていく。
「まずこれ、写真全体に大きく赤や白等の太い線が表示されている物ですが、これはストラップ・ゴーストです。携帯やカメラのストラップがレンズの前にあり、ボケて写っている為認識不可能になっているだけです。次の壁や天井のシミはただの錯覚です。人間は点や線等が不規則なパターンである時、その中からまとまった何かを見出す傾向があるんです。プレグナンツの法則と言います。だから顔に見えるのはただの錯覚、人である限りそう見えてしまう物です。次の岩や海に顔が見えるとのことですが、これはただのシュミラクラ現象、三点認識です。先ほどのプレグナンツの法則と似ていますが、人は点が三つあれば、目と鼻と認識してしまうんです。これもただの錯覚。……最後に不可思議な煙ですが、これは人の息か煙草の煙です。肉眼で見るよりも、煙は写真に濃く映ります。そこにプレグナンツの法則や三点認識で顔があるように見えているだけです、何も問題ありません。……それでは」
 捺は写真を机の上に放置して、その場を去ろうとした。しかし……
「あ、では見て頂いたお礼をさせてください!」
「無用です。仕事として行っているわけではありませんので」
「それでは私達の気が収まりません。丁度お昼時ですし、ご一緒にいかがですか?」
「そうね、それが良いわ! そうしましょう!」
 一人の発言ならまだしも、総勢十数名の女子が力を合わせると流石の捺もされるがまま。逃がすまいと腕を掴んで、半ば強引に連れ出そうとしている。ただ捺も必死に抵抗しているのだけど、何十人と束になった女子達には敵わず、大人しく連れて行かれるしかなかったようだ。あっという間に外に連れ出され、何処かへ消えて行った。
「ふふっ、嫌がってたねー捺先輩」
「でもいい薬かも。偶には嫌な思いしてくれないと、私の腹の虫が収まらないもん」
「燈悪いんだー。……でも、折角監視も居なくなった事だし、ちょっと家に来る? 今なら出ててもバレないでしょー」
うーん……行きたいけど、森さん一人にするのは……
 私が悩んでいる内容を察したのか、優里は丁度現像室から出て来た森さんに呼びかけた。
「すみません、ちょっと燈を借りても良いですか?」
「え? あぁ……はい、大丈夫ですよ」
 森さんは一瞬驚いたけど、すぐに人の良い笑顔でそう言った。室内を見渡して捺が居ない事に気付いていたようだけど、「僕が一人でいます」なんて……優しすぎる!
「ありがとうございます、森さん!」
「ううん、ゆっくりしておいで」
 私の代わりにカウンターに腰掛け、私と優里を見送ってくれた。早めに帰って森さんにも休憩に入って貰わないと。
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