幻妖写鑑定局

かめりここ

文字の大きさ
20 / 28
悪霊屋敷の謎

20

しおりを挟む
 翌朝、窓から差し込む仄かな明かりで目が覚めた。スプリングの効いたベッドで寝がえりを打つと、程よい体の沈み込みが体を浮かせるように包み込んで、再び眠気が沸きだしてくる。
 ………はっ。いけないいけない……いくら朝ごはん作らなくて良いからって、いい加減に起きなくちゃ。
 眠気の残る体を何とか起こして、ふらふらとおぼつかない足取りで洗面台に向かった。冷たい水で顔を洗うと、段々と眠気も覚めてくる。
「ふぅ……さっぱり」
 ベッドまで戻って時計を確認すると、時刻は六時半。七時に朝ご飯だって言ってたし、とりあえず着替えておこうかな。
 ベッドのそばに置いてあったバッグを引き寄せて、中から適当な服を取り出して着替えた。今朝はちょっと寒いから、薄いアウターを一枚羽織る。
山の中って事もあるから、やっぱり少し冷えるんだな。スマホの電波は三本立ってるから問題なく使えるけれど、動作は少し遅い。特にラインの更新が無い事を確認して、すぐに閉じてしまう。
「……うーん、する事が無いなぁ。捺の部屋に行っても、どうせ寝起きで機嫌が悪いからまた八つ当たりされるだろうし」
 と言っても、勝手に動くなと言われているからうろちょろ出来ないし。
「……ていうか、昨日は結局捺のせいで中々寝付けなかったんだから」
 自分でも由香さんの見た顔という物を、頭で色々憶測を立ててみたけど分からないし。うぅ、思い出したらまた気になり始めた……。そのままベッドに寝転んで、窓から射す陽に目を閉じる。あぁ、また眠気が……
「その割には随分と気持ちよさそうに寝ていたがな」
「っ!」
 突然の自分以外の声に飛び起きて周囲を見る。
「捺! なんでいるの?」
捺はいつの間にかソファに座っている。扉は開いてないし、誰か入ってきた様子もなかったと思ったけど。
「七時間も寝て、まだ寝不足か? 一体何時間寝るつもりなんだ」
「べ、別に眠いわけじゃ……ていうか、何時からいるの!」
「昨日の夜から。燈は子供だから十二時前に寝ていたっけな」
「別に子供じゃないし……てか、自分の部屋で寝てよね」
 朝っぱらから連続で大声出したから、頭がくらくらして来た。てか本当になんで私の部屋にいるのよ、私には出ていけとか言ったくせにさ。
「……この家にいる間はここで寝る」
「だからどうして」
「昨晩、詩織さんが俺の部屋に来て中々帰らなかった。面倒だったし、帰れと言っても帰らないから燈と打ち合わせをすると言ってこの部屋で寝た。俺は年増の趣味は無いんだ」
 あーらら……由香さんだけじゃなく、詩織さんも行動してきたのね。まぁそれは確かに同情するけどさ。
「どうにか帰ってもらうとかしなよ。まだ夜は寒いし、そんな所で寝たら風邪ひくよ」
「それもそうだな。燈と違って俺は風邪を引く事もあるだろうし。何とかは風邪を引かないって言うしな」
 ……コイツ、朝っぱらから毒舌が絶好調だな。風邪ひけ。
「とにかく朝になったんだし、自分の部屋に戻って」
「分かってる。着替えたら朝食の時間だしな」
「そ、着替えたら……」
 ……待てよ、コイツ夜中から居たんだよね。そんで私が起きて顔を洗って着替えて……
「……見てたの?」
 睨みつける私を見て、それからぷいっとそっぽを向いて言った。
「安心しろ、燈を見てどうにか思う奴なんかいない」
「サイッテー! 出てって!」
「事実だろ? 鏡を見て来いよ」
「煩い!」
 置いてあったクッションで捺を殴ろうとするも、するりと交わされて扉を出て行く。そこにクッションを投げつけたけど、勢いよく閉まった扉に当たっただけだった。
 ……ったく、朝から本当についてない。なんでこんな嫌な思いをしなくちゃならないんだ。乙女の心を踏みにじりやがって……
 再びベッドに倒れ込み、布団に顔を埋めた。

 やがて時間になって朝食を食べに向かう。案内された席は捺の隣だけど、勿論ガン無視。向うも元々話しかけてくる気はないようだし、それはそれでなんだかイラっとくるのだけど。謝るとか出来ないのかね、この子は……。
 朝食の席では、由香さんが昨日の夜中も変な物を見たとの事だった。部屋の角の天井から誰かの視線がしてきたとか、影に追いかけられる夢を見たとか。この時の話し方は昨日よりも明るいと言うか、どちらかというと聞いて聞いてと言った野次馬的感じで話していた。
 捺は全て「そうですか」の一言で済ませてしまい、気を引かせたい様子だった由香さんはぷっと膨れている。
 そのままさっさと食事を終えた捺は、私に終わったら部屋に来るように言って出て行ってしまった。相変わらずサラダは残して。
 お仕事だから仕方がないけど……でも捺に会うのはまだちょっとムッとする。そりゃ部屋で寝られないのは仕方ないかもだけど、一言くらい謝ってくれたって良いのに。
部屋に向かうまでに結局その気持ちは晴れずに、機嫌の悪いまま部屋へと入った。
 捺は既に照明の機材を準備していて、あとは運んで組み立てるだけとなっていた。そこから足部分とケーブルを渡してくる。
「これを運んで。照明は俺が運ぶから」
「ん……」
 今朝の怒りと、仕事だからとの思いがぶつかって変な返事をしてしまった。そこを突っ込まれても嫌だし、急いで部屋を出てリビングに向かって、部屋に足をセットして捺が来るのを待っていた。
 程なくして照明を持ってきた捺にケーブルを渡し、接続された照明は強い明かりで室内を照らしていた。撮影用だから眩しいくらいに強い。
「よし、これで良いな。変な所が無いか、妖しい物が無いか探せ」
「……」
 無言で返事をして、室内を調べ始めた。中は高価そうな壺とかお皿が積み重なっていて、迂闊に手を触れられない。割れちゃっても困るし……。捺は平然と触ってどかしてるけど、しかもちょっと乱暴気味に。割れたらどうする気なんだか。
 此処はお掃除の対象外になっているようで、蜘蛛の巣も埃も好き放題に掛かっている。……ちょっと触るのは嫌だな……。なんとか覗いたりして、変な物が無いか確かめていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

烏の王と宵の花嫁

水川サキ
キャラ文芸
吸血鬼の末裔として生まれた華族の娘、月夜は家族から虐げられ孤独に生きていた。 唯一の慰めは、年に一度届く〈からす〉からの手紙。 その送り主は太陽の化身と称される上級華族、縁樹だった。 ある日、姉の縁談相手を誤って傷つけた月夜は、父に遊郭へ売られそうになり屋敷を脱出するが、陽の下で倒れてしまう。 死を覚悟した瞬間〈からす〉の正体である縁樹が現れ、互いの思惑から契約結婚を結ぶことになる。 ※初出2024年7月

椿の国の後宮のはなし

犬噛 クロ
キャラ文芸
架空の国の後宮物語。 若き皇帝と、彼に囚われた娘の話です。 有力政治家の娘・羽村 雪樹(はねむら せつじゅ)は「男子」だと性別を間違われたまま、自国の皇帝・蓮と固い絆で結ばれていた。 しかしとうとう少女であることを気づかれてしまった雪樹は、蓮に乱暴された挙句、後宮に幽閉されてしまう。 幼なじみとして慕っていた青年からの裏切りに、雪樹は混乱し、蓮に憎しみを抱き、そして……? あまり暗くなり過ぎない後宮物語。 雪樹と蓮、ふたりの関係がどう変化していくのか見守っていただければ嬉しいです。 ※2017年完結作品をタイトルとカテゴリを変更+全面改稿しております。

怪異の忘れ物

木全伸治
ホラー
千近くあったショートショートを下記の理由により、ツギクル、ノベルアップ+、カクヨムなどに分散させました。 さて、Webコンテンツより出版申請いただいた 「怪異の忘れ物」につきまして、 審議にお時間をいただいてしまい、申し訳ありませんでした。 ご返信が遅くなりましたことをお詫びいたします。 さて、御著につきまして編集部にて出版化を検討してまいりましたが、 出版化は難しいという結論に至りました。 私どもはこのような結論となりましたが、 当然、出版社により見解は異なります。 是非、他の出版社などに挑戦され、 「怪異の忘れ物」の出版化を 実現されることをお祈りしております。 以上ご連絡申し上げます。 アルファポリス編集部 というお返事をいただいたので、本作品は、一気に全削除はしませんが、ある程度別の投稿サイトに移行しました。 www.youtube.com/@sinzikimata 私、俺、どこかの誰かが体験する怪奇なお話。バットエンド多め。少し不思議な物語もあり。ショートショート集。 いつか、茶風林さんが、主催されていた「大人が楽しむ朗読会」の怪し会みたいに、自分の作品を声優さんに朗読してもらうのが夢。

【完結】ホラー短編集「隣の怪異」

シマセイ
ホラー
それは、あなたの『隣』にも潜んでいるのかもしれない。 日常風景が歪む瞬間、すぐそばに現れる異様な気配。 襖の隙間、スマートフォンの画面、アパートの天井裏、曰く付きの達磨…。 身近な場所を舞台にした怪異譚が、これから続々と語られていきます。 じわりと心を侵食する恐怖の記録、短編集『隣の怪異』。 今宵もまた、新たな怪異の扉が開かれる──。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

処理中です...