転移ですか!? どうせなら、便利に楽させて! ~役立ち少女の異世界ライフ~

ままるり

文字の大きさ
69 / 190

69 入学式

しおりを挟む
 学園長に頼まれたからには、しっかりと職務を全うするのが『ノブレス・エンジェルズ』だ。
 学園の2年生として、上級生として、入学式を盛り上げようと企画を始めた。

 基本としては、4人揃って壇上に上がり、ミリアが挨拶する。
 その中で、『ノブレス・エンジェルズ』の紹介をすればいい。それだけなのであるが……。

 入学式でのミリアの挨拶の段取りを、セイラ主導で決めていく。
 こういった公の舞台を企画するには、王族であり裏方に慣れたセイラが適役だ。

「まず、話す内容は、ミリアと私で決めておきます。
 学生っぽく、堅苦しくない内容にしましょう!
 それで、ルリとメアリーは、演出を考えてください」

「「演出?」」

「そう。ただ後ろで突っ立ってても面白くないでしょ。
 私たちも、お客様も、一緒に楽しんでもらわなきゃ! ステージを盛り上げるのです!」

「「おお!」」

 入学式と言う形式的な場で、セイラから楽しもうという発想が生まれるとは思いもしなかったが、ルリもメアリーも、楽しい事は大好きだ。すぐに意図を組み、企画に加わる。


 まさか異世界で舞台演出をさせられるとは夢にも思っていなかったが、ネタはいくらでもある。
 照明、火や水によるパフォーマンス。魔法を使えば何でもできそうな気がする。

「私にお任せください! 学園の歴史に残る様なステージを演出してみせるわ!」

(音は控えめにしておかないと怒られそうね。光のショーがテーマかしら?
 空飛べたら面白いけど、魔法じゃ無理だし、ワイヤーアクションってのも現実的じゃないわよねぇ……)

 ノリ的には、ミリアのコンサートでも開きそうな勢いだ。
 ミリアが少し、心配そうな顔でルリを見ている。

「ミリア、歌って踊る事、できる?」
「できる訳ないでしょ!」
 激しく拒否するミリア。
 ルリは、優しく、そしてイタズラっぽい顔で、微笑み返すのだった……。




 入学式の当日、学園の前は、貴族の馬車が続々と到着し、大混乱が起こっていた。
 もともと第2学園は、多くの来賓を迎えるようには造られていない。

 侯爵家、伯爵家、子爵家……。豪華な衣装で着飾った父兄が集まる。
 講堂は貴族の社交場そのものだ。
 混乱を助長しないようにと、ルリ達は控室で待機だ。



 入学式が始まり、出番が近づく。
 ミリアはさすが王族だけあって人前には慣れている。
 キッと目を見開くと、王女の表情になって立ち上がった。

 メアリーだけは、一人緊張しているようだ。
 ソワソワした様子で落ち着かない。

「さぁ、楽しんできましょ! いくわよ」
 ミリアの声で、舞台袖まで移動。出番を待つ。


「それでは、上級生代表からの挨拶です。
 クローム王国第三王女、ミリアーヌ様、よろしくお願いします」

 拍手の中、ミリアが壇上に進む。
 続いて、セイラ、ルリ、メアリーも壇上に上がり、後方に控えた。


「新入生の皆様、ご入学おめでとうございます。
 2年生の、ミリアーヌ・フォン・クロームと申します。本日は……」

 最初は、定型句のような挨拶をするが、それでは面白くない。
 少し話したら、ミリアからサインが飛ぶ。
 事前に決めていた、イベントスタートの合図だ。

「さて皆さん、学生同士、かたい話はここまでです。
 学園生として、最高に楽しんで欲しいので、わたくし流の挨拶をさせていただきます!
 だから、壇上に、注目!!」

 ミリアの声と共に、点灯ライトの魔法でステージを照らす。
 薄暗い講堂の中で、ミリアの周囲だけにスポットライトが当たった。
 ルリ達も、すばやく事前に決めていた位置、ミリアの両脇まで移動する。


「まず伝えたい事。
 学園内では、身分や立場に囚われずに、信頼できる人間関係を作ってください!
 一人では難しくても、仲間がいれば何でもできます。
 わたくしは、この一年間の学園生活でそれを学びました。
 今日は、お友達を何人か紹介させていただきますわ!」

 ミリアが、声のテンションを上げる。
「最初に紹介するのは、セイラ・フォン・コンウェル!
 ご存知の方も多いと思いますが、コンウェル公爵家のご令嬢です!」

 ミリアがパチッと指を鳴らすと、スポットライトがミリアの右側のセイラを照らす。
 セイラも王族、公爵家の娘だ。集まった貴族たちもそこまで驚く訳ではないが、次の瞬間……。

 セイラにスポットライトが当たりミリアからの紹介が終わると、セイラは制服をパッとメイド服に衣装チェンジすると、にっこりとほほ笑んだ。
 生活魔法の収納しゅうのう装着そうちゃくを組み合わせた早着替え。セイラとルリだけが出来る技だ。

 メイド姿に変わり、優雅な気品あるカーテシーで挨拶するセイラ。
 演出としての派手さはないが、誰もが目を奪われる光景となった。


「次に、リフィーナ・フォン・アメイズ!」

 スポットライトが当たり、ミリアが指を鳴らすのを確認すると、ルリは講堂の天井に無数の光る水球ウォーターを出現させる。

「「「ぉぉぉぉ」」」

 会場がどよめく。
 幻想的に浮かんだ水球水の玉を、まるで海の中にいるかのように揺らしながら、空中に浮かばせた。
 イリュージョンの舞台かのように、手を上下左右に動かして水球を操作するようなポーズで盛り上げる。


「もう一人、メアリーです!」

 スポットライトが当たると、メアリーが弓を弾く。
 もちろん、現れたのは火の鳥フェニックス
 3体の火の鳥フェニックスが行動の中をゆっくりと旋回する。


「わたくし達4人は、『ノブレス・エンジェルズ』という冒険者パーティとして活動しています。入学前までは魔法をまともに使う事すらできなかったのに、1年間の学びを通じて大きく成長することが出来ました。
 素敵な仲間を得て、皆さんもしっかりと学んでください。そして……」

 学園生活の楽しさなどを紹介するミリア。
 魔法の話と、学食の話が大部分を占めたのは、ご愛敬だ。


「……それでは、これにて挨拶を終わります。
 一緒に、楽しみましょう! それ!!」

 そう言うと、ミリアが大量の火球ファイヤーボールを放った。
 目標は、ルリが空中に浮かべている水球ウォーター

 ポン、ポンポンポン

 水球ウォーターを弾けさせると同時に、水を蒸発させる。
 事前に練習しておいた、ちょっとした花火のような演出だ。
 その周りを火の鳥が飛びまわり、幻想的なステージは、クライマックスを迎えた。

「「「おおお!!!」」」
「「「ミリアーヌ様ぁ」」」
 大歓声に包まれ、ミリアの挨拶は終了となった。



 ステージが終わると、控室に戻るルリ達。
 光のショーをこなし、笑顔で抱き合った。

「いいステージだったね、みんな驚いてたよ!」
「うん、ぶっつけ本番だったけど、思ってたより上手に出来た!」

 特に、水球ウォーターが弾けた時に水で会場がびしょ濡れにならないかと心配していたミリアとルリだったが、空中で消せた事を喜んでいる。
 4人が去った後、熱と大量の水蒸気で講堂内が蒸し風呂のようになったことは、もちろん気付いていない……。



 本当ならばこのまま寮に戻りたいのだが、入学式後の社交の場に、顔を出さない訳にはいかなかった。

 生徒、特に上級生の出席は強制ではないのだが、貴族家の出席は、事実上必須だ。
 中庭に簡単な食事が準備され、貴族や、貴族とつながりを持ちたい商人たちが集まっている。

『ノブレス・エンジェルズ』にグレイシー、ベラが加わった6人で、ルリ達はテーブルを囲んでいた。
 これだけ集まれば、絡みにくい雰囲気を醸し出せる。

 案の定、寄って来るのは社交会でもよく出会う知り合いの貴族が中心。
 欲に走った目をギラギラとしている人々は、近寄りがたい状態になっていた。

 遠巻きにこっちを見ながら、「あの6人とは必ず仲良くするのだよ」などと言われている生徒の姿が見える。



 ……周囲に注目すると、面白い光景が広がっていた。

「王家の方々とお近づきになれるなんて、金輪際ないと思えよ!」
 少し上流の貴族だろうか。息子に気合を入れている姿が見える。

 それを目的に、第1学園ではなく第2学園に入学させたのだから、どの貴族家も本気度が高い。


「リフィーナ様は一人娘で跡取りだからな。三男のお前なら、何のしがらみもない。ライバルも多いが頑張れよ!」

 もちろん、領地持ちが確定というルリの婿養子になれれば、普通の貴族にとっては大出世である。
 上位の貴族家からしても、子爵家を傘下に加えられる可能性もあるので、最優先で狙う事になる。


「いいか、うちはメアリー様狙いだぞ。最近力をつけているメルヴィン商会のお嬢様だが、御前試合では騎士団を一人で手玉に取った軍略家という話だ。それにさっきの魔法……」

 聞こえてくる貴族家のひそひそ話に、慣れていないメアリーはただただ小さくなっている。
 現実的に、平民が貴族家の正妻になるケースは少ないのだが、王族貴族と並んでも違和感のないメアリーの姿は、多くの貴族の目を引き付けるのであった。


「うふふ、メアリーの一番人気は本当っぽいわね!」
「やめてぇ~」
 意図せず貴族の社交の渦に巻き込まれてしまったメアリー。
 ルリと出会って、一番人生が変わってしまったのは……、彼女かも知れない。



『ノブレス・エンジェルズ』の、研修という名目の旅立ちの日は近い。
 そんな事つゆ知らず、王女をはじめとした令嬢たちとの出会いに沸き立つ貴族家の子息たち。
 運命は、彼らに、彼女たちにどういったイタズラをして来るのだろうか……。
しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  お気に入り・感想、宜しくお願いします。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
【毎週火木土更新】 自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

処理中です...