転移ですか!? どうせなら、便利に楽させて! ~役立ち少女の異世界ライフ~

ままるり

文字の大きさ
101 / 190

101 第2回領政会議

しおりを挟む
 冒険者ギルドでの交渉と、依頼の達成報告を終えた『ノブレス・エンジェルズ』の4人。

「良かったわね。アメイズ領支部の出張所扱いでも、メルダムの街にギルドが出来るのは一歩目としては上々よ」
「うん。あとは学校の件。これは王都を巻き込まないと進まないから、とりあえず手紙でも送っておきましょう」
「そうだね。じゃ、買い物行こうか!」
「「「おー!!!」」」

 時間はもう夕方。
 足早に市場に向かい、売れ残った食材を端から購入していく。

「いらっしゃい、お嬢様方……ってリフィーナ様かい?」
「はい。でも今は冒険者のルリとして来ていますので、買い物させていただけますか?」
「そりゃもちろん。誰だろうが、お客さんなら大歓迎さね」

 おばちゃんと世間話……値切り交渉などしながら、野菜やきのこ、木の実を入手。
 気候が似通っているせいか、この世界の食料は地球と見た目が似ているので選びやすい。

「ミリアーヌ様ぁ、リフィーナ様ぁ」
 名前を呼ぶ声に振り返ると、見覚えのある女性が手を振っていた。

「あぁ、バーモ村の方ですね。その後はいかがですか?」
「はい、ポテト芋の調理法、いろいろと試してるんですよ。お野菜が売れたお金で、調味料など仕入れてから帰る予定なんです」

 領都から1日の距離にある農村。ポテト芋の一大産地で、先日訪れた際に、美味しい調理法を教えていた。
 野菜を売りに来たついでに、必要な食材を仕入れて帰るらしい。

「そうなんですね。まだ野菜は残ってますか? 私たちに買わせてください」
「はい、今日は昼頃に着いたばかりですので、まだ馬車に大量に残ってます」
「ホントですか? 全部ください!」
「……はい?」

「ルリ、ダメよ。買い占めちゃったら、領都の皆さんが食べる分がなくなっちゃうでしょ」

 大量にあると聞いて思わず興奮するルリであるが、メアリーに叱られてしまった。
 ……当然である。


 バタバタと買い出しを済ませ、屋敷に戻る。
 肉は現地調達もできるので野菜中心の買い物。それでも、100人分を優に超えるような量を買い込んだので、当面は安心だ。
 市場の商人たちも、売れ残っていた商品が根こそぎ売り切れた事で、ほくほくしながら帰っていくのだった。




 翌日。
 アメイズ子爵家の屋敷には、領都の代表者になる9名が集まっていた。

「それでは、領政会議を始めます。まずは、各委員会の委員長を決めますね」

 街の環境を整える『環境委員会』、住民の管理を行う『お役所委員会』、街の治安を考える『防衛委員会』。それぞれの説明を行い、相応しい人材を選出した。

 まず、『環境委員会』には大工の棟梁。実際に、公園や街道の整備、公共事業における指揮を行ってもらうので、現場で働く職人の代表者が、そのまま領政に関わってくれれば意思の疎通が図りやすい。

 次に、『お役所委員会』の代表を選出する。選ばれたのは女性だ。彼女は孤児院……保育園のような施設の代表で、特に貧民層からの支持が強い。最初の仕事が地図の作成と居住者の見える化なので、不明な点が多い貧民層の協力を得られる事は大きかった。

 最後に、『防衛委員会』。いわゆる防衛は衛兵が行うが、その手前、治安の悪い場所を探し、整備する、いわゆる区画整理を策定する仕事だ。この任は、商人の代表者が担う事になった。もちろん、衛兵との連携も重要で、今後の街の発展の中枢を受け持つ業務となる。


 副代表を2名ずつつけて、代表者9名が所属する委員会が決定する。
 それぞれ忙しい立場のメンバーではあるが、マティアスが進捗の管理さえすれば、適度に機能する事であろう。

「皆さんに、お伝えしたい事があります。この一週間、私は領内を見て回ってきました。中でも、農村のバーモ村、北の領境のメルダムの街とは、領都も大きく関わりながら、共に発展する道を模索したいと思います」

 道中の事件、出来事を簡潔に説明する。
 そして、整えたい施策を、代表者たちに伝えた。

「なるほど、ポテト芋の輸送に、東を流れる川を利用しようというのですね。水量も豊かですし、流れも穏やかですので、実現可能かも知れません。ただ、造船の技術は私どもにはございませんので、少し苦労するかと……」
「その点なら大丈夫よ。マリーナル侯爵に、職人の手配をお願いするから」

「学園都市ですと!? 想像を超えた構想ではありますが……人が集まるのならば商売も拡大できます、ぜひ協力しましょう」
「孤児たちに学びの機会を提供し、生活する術を得る手段になるわね。もちろん、応援するわよ」

「皆さん、ありがとうございます。私の想定では、メルダムの街は、冒険者、しかも若者であふれる都市になる見込みです。
 また、あまりいい噂の無いリバトー領に対して、防衛上の牽制になるとも思っていますので、学園都市の計画は、ぜひ達成したいのです。よろしくお願いしますね」


「しかしリフィーナ様、冒険者が集まるとなると、治安の面で心配事も増えますなぁ。その点はいかがお考えでしょうか」

「その点は、憂慮しております。その為の法整備……ルール作りが必要です。冒険者には私闘の禁止など独自のルールがありますが、アメイズ領としても独自にルール……条例を制定しなければなりませんね」

 夢を語るのは楽しいが、現実的に考えると何かと問題も浮かんでくる。
 それらを一つ一つ潰していくのが、為政者の役割である。
 しばらく、アメイズ領都の、そしてアメイズ領全体の計画を話し合い、課題の洗い出しを行った。


「課題を解決していけば、きっとゴールに近づけます。人手が足りない場合は、各委員会の裁量でメンバーを募ってください。予算が足りない時は、マティアスの決裁を取ってくれれば、可能な限り援助します。
 クローム王国にアメイズ領ありと誰もが認めるような発展を目指して、共に頑張りましょう」

 全員のやる気にスイッチを入れ、話し合いをお開きにする。
 明日行われる予定の軍事演習についても、最後に説明を行った。


「なぁ、リフィーナ様って、ずっと屋敷に籠っていた姫様だろ? どうしてこんなに、世情に詳しいんだ?」
「王都の第2学園に通われてるんだろ? そこで習ったんじゃないか?」
「王女殿下もセイラ様も、そしてメアリーさんも知識が半端ないしな……」
「「「「学園、凄いなぁ……」」」」

 ルリ達の知識量に改めて驚き、屋敷から出る代表者たちの会話が弾んだ事は想像に難くない。
 その頃ルリは、軍事演習の最終打ち合わせの為に、ラミアとセイレンの元へ向かっていた。


「ラミア、明日の軍事演習、お願いね」
「分かっておる。蛇たちに街を襲わせればいいのじゃろ」
「うん、街の壁は、絶対に傷つけないでよ、直すの大変だから」

 軍事演習は、街の東に広がる森から魔物が溢れて来た、つまりスタンピードが発生したという設定で行う。
 実際に魔物をたきつける訳にはいかないので、ラミアに蛇を出してもらう事にした。

 演習開始時刻までに、ラミアとセイレンが森に移動して待機。
 一応、メイド三姉妹も同行する段取りだ。

 ルリ達は、衛兵が魔物の襲撃を伝える鐘を鳴らすのを合図に、領都の東門に移動して見学する予定となっている。
 指揮は衛兵に任せての高みの見物の、つもりである……。





 そして、翌日、つまり軍事演習の当日。

 カンカンカンカン

 予定通り、東門の見張り台で、鐘の音が響いた。
 子爵家の屋敷に、報告の兵士が駆け込んでくる。

「東門周辺でスタンピードが発生、蛇の魔物が多数、他にも数種類の魔物を確認!!」

「了解! ん? 他にも数種類……?」


 蛇の魔物が、門を目指して蠢きながら近づいてくる。
 その中には、なぜか蛇以外の魔物……ラミアの幻術以外の、本物の魔物? も含まれているのであった……。



------------

クローム王国の周辺地図です。
物語のご参考になさっていただければ幸いです。


しおりを挟む
感想 122

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

処理中です...