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おまけ
ダークヒロインだった結果④ (完)
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翌日。
ゆっくりめな朝を迎えたドロテアはご満悦で珈琲を淹れていた。
「ふんふん、ふふふ~ん♪」
ドロテアが一晩中ブラッドリーを堪能してる間に、領地にいる侯爵夫妻から珈琲豆が届いていた。
なんてベストタイミング! とドロテアは久々にブラッドリーを朝の珈琲に誘った。
「まさか紅の輝きが飲めるとは、父上が取引を成立させたのだろうか?」
ブラッドリーはドロテアが作ったオムレツを食べながら、マイクから受け取った書類に目を通していた。
「……こちらの資源に目をつけるとはな。コードリック三世は何か心境の変化でもあったのだろうか?」
「クワイス家が持つヒノキは湯殿の材料として適材だと気付いたのかもしれませんな。今やコードリック三世の子煩悩は国中に広まり、色んな国から妃やその子供達への贈り物を取り寄せております」
「そうか。ヒノキは香りもいいからな。妃や子を減らしたかわりに、ひとりひとりに金をかけるようになったのかもしれないな」
そして書類を読み進めていくと、アヴィエント海域行きの船を持つイーサン・アトスから嘆願がきていた。
アヴィエント皇国へ輸出輸入の際は是非とも当家の船を利用して欲しいという、それも無償で。
王家を除くと紅の輝きが贈られたのはクワイス家だけだ。皇国行きの港の利権を独占してることから、その情報を知って慌てたのだろう。百年もの間、アヴィエントの珈琲を専売している矜持か、クワイス家は商売敵ではなく、アトス家もその豆の輸入に関わりがあると世間に認識させたいが故の嘆願だった。
イーサンからの嘆願をどうするかは侯爵はブラッドリーに委ねていた。別に袖にしてもこちらはなんの痛手もない嘆願だった。クワイス家と繋がりがある他家の港を使う事だって出来る。
イーサン・アトスも生き残りをかけて必死なのだろう。そう思ったブラッドリーはまずは飲んでから判断するかと書類をマイクに返した。
「あ、そうでした。旦那様、実は皇帝が若……いえ、新作のアレを御所望のようです。三ヶ月後に開かれる皇后の誕生祭で、日頃の感謝を込めた御礼状を送りたいそうで……」
「……うむ。ではあの可愛い白鴛鴦を贈ってやるといい」
ドロテアは剥製でも送るのかしら? なんて考えながら珈琲カップをブラッドリーの前に置いた。
「ありがとう。お……香りがいいな」
カップに口をよせ、紫色の目を細める。その時現れるブラッドリーの奥二重の線を見ながら、ドロテアはうっとりとした。
「美味い……こんなの初めてだ。今まで飲んだ珈琲はなんだったんだ……?」
「うふふ。それはようございました」
ドロテアも飲みながら、カリカリの薄いパンをちぎって口に入れた。パンと合う。この世界の珈琲とは食後の飲み物だったが、これは食事しながら飲める珈琲だとドロテアは思った。
これからは朝の食後だけじゃなく、食事中も楽しめるわねとドロテアは口角をあげた。
「そんな可愛い顔をして……もしかしてまだ寝足りない?」
珈琲と共に朝食を摂りながらブラッドリーがふにゃりと頬を緩ませた。
今ドロテアはテーブルに肘をつき、頬杖をついて憂いの顔でブラッドリーを見つめている。その瞳はどろっとした湿度を含み、愛しい男だけを一心に見つめている。
「やはりブラッドリー様が珈琲を飲む姿は格別だなって思って……かっこいいの。色気もあって、上質な大人の雄って雰囲気がぷんぷんで」
「……朝から情熱的だな。昨夜は抱き足りなかったか?」
弄られることに慣れはしないが、最近では反撃を覚えたブラッドリーが口角をあげた。
「足りてないわけではないですが、以前の私はまったりと朝食を摂っているように装いつつも、その服の下にある昨夜の屈強な躰を思い出しては、毎朝下肢を熱くさせていたのですよ。あ、今もです」
「…………」
「幻滅しました?」
「君は……本当に、いつもそうやって、」
ブラッドリーが腰を上げて前のめりにドロテアに顔を近付けた。
ちなみに数秒前に妖しい空気を察した使用人達は既に退室している。
「ん……これが今までで一番美味しいと思う珈琲の味わい方ですわ」
「……あまり弄らないでくれ。これから朝が大変になる」
そこでバタン!とドアが開いた。
「かーさま! 朝いちばんのちゅーはぼくじゃないの!」
ブラッドリーそっくりなジルベルトが顔を見せ、ぷりぷりしながらドロテアのドレスを撒くって中に隠れた。
「ジル……お前は覗き見まで私に似たのか?」
「しーらないっ」
「それはともかく、何故私の妻のドレスの中に入る?」
「とーさまが知らないだけでぼくはいつもここですが?」
「……ドロテア」
ブラッドリーからじとりとした目を向けられたドロテアは困ったように笑った。
「ブラッドリー様が数日屋敷を空けて、その帰宅後は必ずする行動を見て覚えたようで」
「……因果応報か。隠し事はするべきじゃないな」
ブラッドリーがドロテアの腰を掴んで持ち上げた。そしてお姫様抱っこした。ドレスから取り残されたジルベルトは「あーん!」と鳴いた。
「領地に行くまでに重さ二キロの木刀を振り回せるようになりなさい。それまでこのような行為は禁止する」
「まだこどもだからできるのにぃ! ごさいになったらさすがに人の目がはずかしいよ!」
「……チッ。賢いな」
ブラッドリーはどんどん自分に似てくるジルベルトに注意喚起した。
人生で初めての性欲か支配欲を女性に感じたら、まずは落ち着け。あと結婚相手には隠し事をするな。後で後悔することになるぞ、そう言われたジルベルトはちんぷんかんぷんな顔をした。
「あの子に性欲などと、まだその意味すら解らない年齢ですわ」
ドロテアはブラッドリーにお姫様抱っこされながらころころと笑った。
「ドロテア、私は君に隠している事がある」
「はい。解っております」
ブラッドリーはいつもより早足で、寝室に向かっているのが解った。
「……書斎に隠した君の絵姿の事ではない」
「はい。解っております。ブラッドリー様は絵心がありますからね。最近ではジルベルトやエイデルやルーベンの絵姿も何枚か描いているようで」
ブラッドリーはぴたっと歩みを止めた。たまたまか、そこはちょうど執務室のドアの前だった。ブラッドリーの書斎もある。
「……み、見たのか?」
「はい。もう涙がとまらなくて……」
ドロテアは手でトンっと執務室のドアを開け、誰もいない座席を指さした。いつもブラッドリーが座っている場所だ。
そこには昨日は気付かなかった、あるものが置かれていた。ドロテアをお姫様抱っこしたまま近付くと、解った。
「これは……」
絵を描く時に立てかけて使うイーゼル。
そのミニチュアバージョンがあった。
そしてブラッドリーが描いた子供達の絵姿、その上には透明の硝子板が重ねられていた。
「絵姿立てですの」
「絵姿立て?」
写真がないこの世界に写真立ては存在しない。
そして絵姿も絵画も、額縁に入れて壁に飾りこそすれ、こんな風に机に置くのは聞いたことがないブラッドリーは透明の硝子板をまじまじと見た。
「イーゼルを小さくするとは考えたな。それにこれなら誤ってインクが飛んでも絵姿が汚れることはない」
「はい。ブラッドリー様が出掛けたあと、ジルベルトのお茶会の件で書斎の資料をお借りしましたの。そのとき子供達の絵姿を発見して、感動のあまり仕舞っておくより飾っておきたいと思ったのです。ブラッドリー様の秘密を暴くのは……とても心が痛んだのですが」
「……いや、……うむ。喜んでもらえたならよかった」
それは素人が描いたものだから、そこに多少の恥じらいがあっただけで秘密でもなんでもなかったのだが、ブラッドリーは便乗した。
それに冷静になって考えてみたところ、帰宅のたび妻の不貞を疑う夫なんてろくなもんじゃない。危うく自分は嫉妬に囚われた愚かな男だと、自ら口を滑らせるところだった。
「……許してくだるのですか?」
「ああ。それに許しを乞うようなことじゃない」
「ちなみにもう秘密はありませんか?」
「……あ、ああ」
「本当に?」
「……アトス家から収益が見込めそうな嘆願がきていたが、君が嫌がる気がして、相談はせずに断ろうかと考えていたところだ」
「あらっ、こちらが得をするのなら受け入れてもよいのではないですか?」
「うむ。わかった」
「もう秘密はありませんか?」
「ああ」
「それならよかったっ」
ドロテアは悪戯っ子のような顔をしてころころと笑った。
人は既に形成された性格を変えるのはなかなか難しいだろう。恐らくまたやってしまう。しかしこの可愛い笑顔だけは曇らせることがないよう、ブラッドリーはこの事は一生黙っていようと心に決めた。
【終】
ゆっくりめな朝を迎えたドロテアはご満悦で珈琲を淹れていた。
「ふんふん、ふふふ~ん♪」
ドロテアが一晩中ブラッドリーを堪能してる間に、領地にいる侯爵夫妻から珈琲豆が届いていた。
なんてベストタイミング! とドロテアは久々にブラッドリーを朝の珈琲に誘った。
「まさか紅の輝きが飲めるとは、父上が取引を成立させたのだろうか?」
ブラッドリーはドロテアが作ったオムレツを食べながら、マイクから受け取った書類に目を通していた。
「……こちらの資源に目をつけるとはな。コードリック三世は何か心境の変化でもあったのだろうか?」
「クワイス家が持つヒノキは湯殿の材料として適材だと気付いたのかもしれませんな。今やコードリック三世の子煩悩は国中に広まり、色んな国から妃やその子供達への贈り物を取り寄せております」
「そうか。ヒノキは香りもいいからな。妃や子を減らしたかわりに、ひとりひとりに金をかけるようになったのかもしれないな」
そして書類を読み進めていくと、アヴィエント海域行きの船を持つイーサン・アトスから嘆願がきていた。
アヴィエント皇国へ輸出輸入の際は是非とも当家の船を利用して欲しいという、それも無償で。
王家を除くと紅の輝きが贈られたのはクワイス家だけだ。皇国行きの港の利権を独占してることから、その情報を知って慌てたのだろう。百年もの間、アヴィエントの珈琲を専売している矜持か、クワイス家は商売敵ではなく、アトス家もその豆の輸入に関わりがあると世間に認識させたいが故の嘆願だった。
イーサンからの嘆願をどうするかは侯爵はブラッドリーに委ねていた。別に袖にしてもこちらはなんの痛手もない嘆願だった。クワイス家と繋がりがある他家の港を使う事だって出来る。
イーサン・アトスも生き残りをかけて必死なのだろう。そう思ったブラッドリーはまずは飲んでから判断するかと書類をマイクに返した。
「あ、そうでした。旦那様、実は皇帝が若……いえ、新作のアレを御所望のようです。三ヶ月後に開かれる皇后の誕生祭で、日頃の感謝を込めた御礼状を送りたいそうで……」
「……うむ。ではあの可愛い白鴛鴦を贈ってやるといい」
ドロテアは剥製でも送るのかしら? なんて考えながら珈琲カップをブラッドリーの前に置いた。
「ありがとう。お……香りがいいな」
カップに口をよせ、紫色の目を細める。その時現れるブラッドリーの奥二重の線を見ながら、ドロテアはうっとりとした。
「美味い……こんなの初めてだ。今まで飲んだ珈琲はなんだったんだ……?」
「うふふ。それはようございました」
ドロテアも飲みながら、カリカリの薄いパンをちぎって口に入れた。パンと合う。この世界の珈琲とは食後の飲み物だったが、これは食事しながら飲める珈琲だとドロテアは思った。
これからは朝の食後だけじゃなく、食事中も楽しめるわねとドロテアは口角をあげた。
「そんな可愛い顔をして……もしかしてまだ寝足りない?」
珈琲と共に朝食を摂りながらブラッドリーがふにゃりと頬を緩ませた。
今ドロテアはテーブルに肘をつき、頬杖をついて憂いの顔でブラッドリーを見つめている。その瞳はどろっとした湿度を含み、愛しい男だけを一心に見つめている。
「やはりブラッドリー様が珈琲を飲む姿は格別だなって思って……かっこいいの。色気もあって、上質な大人の雄って雰囲気がぷんぷんで」
「……朝から情熱的だな。昨夜は抱き足りなかったか?」
弄られることに慣れはしないが、最近では反撃を覚えたブラッドリーが口角をあげた。
「足りてないわけではないですが、以前の私はまったりと朝食を摂っているように装いつつも、その服の下にある昨夜の屈強な躰を思い出しては、毎朝下肢を熱くさせていたのですよ。あ、今もです」
「…………」
「幻滅しました?」
「君は……本当に、いつもそうやって、」
ブラッドリーが腰を上げて前のめりにドロテアに顔を近付けた。
ちなみに数秒前に妖しい空気を察した使用人達は既に退室している。
「ん……これが今までで一番美味しいと思う珈琲の味わい方ですわ」
「……あまり弄らないでくれ。これから朝が大変になる」
そこでバタン!とドアが開いた。
「かーさま! 朝いちばんのちゅーはぼくじゃないの!」
ブラッドリーそっくりなジルベルトが顔を見せ、ぷりぷりしながらドロテアのドレスを撒くって中に隠れた。
「ジル……お前は覗き見まで私に似たのか?」
「しーらないっ」
「それはともかく、何故私の妻のドレスの中に入る?」
「とーさまが知らないだけでぼくはいつもここですが?」
「……ドロテア」
ブラッドリーからじとりとした目を向けられたドロテアは困ったように笑った。
「ブラッドリー様が数日屋敷を空けて、その帰宅後は必ずする行動を見て覚えたようで」
「……因果応報か。隠し事はするべきじゃないな」
ブラッドリーがドロテアの腰を掴んで持ち上げた。そしてお姫様抱っこした。ドレスから取り残されたジルベルトは「あーん!」と鳴いた。
「領地に行くまでに重さ二キロの木刀を振り回せるようになりなさい。それまでこのような行為は禁止する」
「まだこどもだからできるのにぃ! ごさいになったらさすがに人の目がはずかしいよ!」
「……チッ。賢いな」
ブラッドリーはどんどん自分に似てくるジルベルトに注意喚起した。
人生で初めての性欲か支配欲を女性に感じたら、まずは落ち着け。あと結婚相手には隠し事をするな。後で後悔することになるぞ、そう言われたジルベルトはちんぷんかんぷんな顔をした。
「あの子に性欲などと、まだその意味すら解らない年齢ですわ」
ドロテアはブラッドリーにお姫様抱っこされながらころころと笑った。
「ドロテア、私は君に隠している事がある」
「はい。解っております」
ブラッドリーはいつもより早足で、寝室に向かっているのが解った。
「……書斎に隠した君の絵姿の事ではない」
「はい。解っております。ブラッドリー様は絵心がありますからね。最近ではジルベルトやエイデルやルーベンの絵姿も何枚か描いているようで」
ブラッドリーはぴたっと歩みを止めた。たまたまか、そこはちょうど執務室のドアの前だった。ブラッドリーの書斎もある。
「……み、見たのか?」
「はい。もう涙がとまらなくて……」
ドロテアは手でトンっと執務室のドアを開け、誰もいない座席を指さした。いつもブラッドリーが座っている場所だ。
そこには昨日は気付かなかった、あるものが置かれていた。ドロテアをお姫様抱っこしたまま近付くと、解った。
「これは……」
絵を描く時に立てかけて使うイーゼル。
そのミニチュアバージョンがあった。
そしてブラッドリーが描いた子供達の絵姿、その上には透明の硝子板が重ねられていた。
「絵姿立てですの」
「絵姿立て?」
写真がないこの世界に写真立ては存在しない。
そして絵姿も絵画も、額縁に入れて壁に飾りこそすれ、こんな風に机に置くのは聞いたことがないブラッドリーは透明の硝子板をまじまじと見た。
「イーゼルを小さくするとは考えたな。それにこれなら誤ってインクが飛んでも絵姿が汚れることはない」
「はい。ブラッドリー様が出掛けたあと、ジルベルトのお茶会の件で書斎の資料をお借りしましたの。そのとき子供達の絵姿を発見して、感動のあまり仕舞っておくより飾っておきたいと思ったのです。ブラッドリー様の秘密を暴くのは……とても心が痛んだのですが」
「……いや、……うむ。喜んでもらえたならよかった」
それは素人が描いたものだから、そこに多少の恥じらいがあっただけで秘密でもなんでもなかったのだが、ブラッドリーは便乗した。
それに冷静になって考えてみたところ、帰宅のたび妻の不貞を疑う夫なんてろくなもんじゃない。危うく自分は嫉妬に囚われた愚かな男だと、自ら口を滑らせるところだった。
「……許してくだるのですか?」
「ああ。それに許しを乞うようなことじゃない」
「ちなみにもう秘密はありませんか?」
「……あ、ああ」
「本当に?」
「……アトス家から収益が見込めそうな嘆願がきていたが、君が嫌がる気がして、相談はせずに断ろうかと考えていたところだ」
「あらっ、こちらが得をするのなら受け入れてもよいのではないですか?」
「うむ。わかった」
「もう秘密はありませんか?」
「ああ」
「それならよかったっ」
ドロテアは悪戯っ子のような顔をしてころころと笑った。
人は既に形成された性格を変えるのはなかなか難しいだろう。恐らくまたやってしまう。しかしこの可愛い笑顔だけは曇らせることがないよう、ブラッドリーはこの事は一生黙っていようと心に決めた。
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