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6 前編
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「やっと二人っきりになれたね」
誰もいない大学の部室。
西日が差す窓辺から見える空は、不気味な色でぞっとした。
西日だけでは室内の明るさが心もとなく、アヤトは蛍光灯のスイッチを押そうと歩を進めた時である。
「もう邪魔されないよね」
「な……」
アヤトを背中に抱きついて言う。
「本当は、あなたが欲しかったの」
その後、アヤトは捕まってしまった。
――――――――――――――――――
嫌われるというものは、結構味気ない。
何の前触れもなく、理由が分からず、態度に示されるのだ。
だから、意思表示されることは、まだ良心的だったのかもしれない。
「悪いけど、今お前といるとしんどい」
斉藤に告げられた。
一瞬何を言われたのか判らず、アヤトはきょとんとする。
「しばらくお前の顔、見たくない。話しかけないでくれ」
「………ぇ、なんで」
動揺したアヤトの声が少し震えている。
どうして、斉藤に嫌われているのか、嫌われる何かをしたのか説明がほしくて近くにいた野田へと視線を向ければ、露骨に逸らされてしまった。
「話しかけんなって…いきなり……意味、わかんねー」
「鹿ノ目のせいじゃない、ないだけどさ……」
じゃあ、何なんだよとアヤトは思った。
嫌う理由が自分のせいではないと言われ、理不尽に距離を置きたいと告げられているのだ。納得する理由を欲しかった。
斉藤は少し言い淀んだ後、応える。
「ずっとお前のことばっかレイ子に聞かれるんだよ。嫌なんだ。レイ子と別れたくないんだ」
嫉妬だった。
レイ子と会うたびにアヤトの名前を出され、聞いてくる。
恋人の前で他の男の名前を耳にするのは、あまり気持ちいいものではない。
また、斉藤は焦っていた。せっかく出来た恋人を盗られてしまうのでは、と。
「お前に会わせなきゃよかったよ……」
アヤトはこれ以上友人に言葉を求めるの止めた。
もやもやした気持ちが増すだけだと判断したアヤトは「そうかよ」と自分から切った。
勝手にしろと友人達から離れる。
その日から、友人達と距離を置かれたアヤトにすり寄る女子が増えた。
その中には、レイ子もいた。
「……」
じっとシュウマがアヤトの顔を見つめる。
大学から出てきてからアヤトの表情が暗く、ずっと無言だった。
シュウマは、アヤトの異変に気付かないわけがなく、様子を窺がっていた。
「ねぇ…何かあった?」
「……」
「アヤト…?」
シュウマは、悲しそうに眉尻を下げる。
今、悲しいのは自分の方だとアヤトはイラっとした気持ちで口を開く。
「どうせ、もうそろそろ出ていくんだろ」
アヤトは、拗ねていた。だから、愛想のない態度をとった。
俺から離れて帰って行くんだ。悩みを打ち明けてもしょうがないだろと。
「大学にシュウマは通ってないし、話したところで何も解決しないじゃん」
「そうかな?」
「そうだろ」
シュウマは、少し考える素振りをして言う。
「アヤトがいうなら、そうなのかもしれないね。でも、俺はアヤトの味方だよ」
小さな笑みを浮かべたシュウマは、優しい言葉をアヤトにかける。
――昔から、シュウマは俺の味方だったなぁ。……でも、悪いことしたら兄ちゃんにチクられたけど。
「今日は、アヤトの好きな物たくさん作ろうか」
「……んで、オレのこと甘やかすんだよ」
「う~ん。悲しい顔を見たくないからかなぁ。アヤトには笑っていてほしい」
優しい眼差しでアヤトを見つめた。
媚びや嫌悪、嫉妬ではない瞳を向けられるのは、田舎を出てから初めてだ。
思わず泣きそうになるのをグッと堪える。道端で泣く姿を幼馴染に見せたくなかった。
――こっちにずっと住むのは、俺なんだ。心配させてどうする。
「降りそうだ」
地面を俯くアヤトとは、対照的にシュウマは顔を上げ呟いた。
誰もいない大学の部室。
西日が差す窓辺から見える空は、不気味な色でぞっとした。
西日だけでは室内の明るさが心もとなく、アヤトは蛍光灯のスイッチを押そうと歩を進めた時である。
「もう邪魔されないよね」
「な……」
アヤトを背中に抱きついて言う。
「本当は、あなたが欲しかったの」
その後、アヤトは捕まってしまった。
――――――――――――――――――
嫌われるというものは、結構味気ない。
何の前触れもなく、理由が分からず、態度に示されるのだ。
だから、意思表示されることは、まだ良心的だったのかもしれない。
「悪いけど、今お前といるとしんどい」
斉藤に告げられた。
一瞬何を言われたのか判らず、アヤトはきょとんとする。
「しばらくお前の顔、見たくない。話しかけないでくれ」
「………ぇ、なんで」
動揺したアヤトの声が少し震えている。
どうして、斉藤に嫌われているのか、嫌われる何かをしたのか説明がほしくて近くにいた野田へと視線を向ければ、露骨に逸らされてしまった。
「話しかけんなって…いきなり……意味、わかんねー」
「鹿ノ目のせいじゃない、ないだけどさ……」
じゃあ、何なんだよとアヤトは思った。
嫌う理由が自分のせいではないと言われ、理不尽に距離を置きたいと告げられているのだ。納得する理由を欲しかった。
斉藤は少し言い淀んだ後、応える。
「ずっとお前のことばっかレイ子に聞かれるんだよ。嫌なんだ。レイ子と別れたくないんだ」
嫉妬だった。
レイ子と会うたびにアヤトの名前を出され、聞いてくる。
恋人の前で他の男の名前を耳にするのは、あまり気持ちいいものではない。
また、斉藤は焦っていた。せっかく出来た恋人を盗られてしまうのでは、と。
「お前に会わせなきゃよかったよ……」
アヤトはこれ以上友人に言葉を求めるの止めた。
もやもやした気持ちが増すだけだと判断したアヤトは「そうかよ」と自分から切った。
勝手にしろと友人達から離れる。
その日から、友人達と距離を置かれたアヤトにすり寄る女子が増えた。
その中には、レイ子もいた。
「……」
じっとシュウマがアヤトの顔を見つめる。
大学から出てきてからアヤトの表情が暗く、ずっと無言だった。
シュウマは、アヤトの異変に気付かないわけがなく、様子を窺がっていた。
「ねぇ…何かあった?」
「……」
「アヤト…?」
シュウマは、悲しそうに眉尻を下げる。
今、悲しいのは自分の方だとアヤトはイラっとした気持ちで口を開く。
「どうせ、もうそろそろ出ていくんだろ」
アヤトは、拗ねていた。だから、愛想のない態度をとった。
俺から離れて帰って行くんだ。悩みを打ち明けてもしょうがないだろと。
「大学にシュウマは通ってないし、話したところで何も解決しないじゃん」
「そうかな?」
「そうだろ」
シュウマは、少し考える素振りをして言う。
「アヤトがいうなら、そうなのかもしれないね。でも、俺はアヤトの味方だよ」
小さな笑みを浮かべたシュウマは、優しい言葉をアヤトにかける。
――昔から、シュウマは俺の味方だったなぁ。……でも、悪いことしたら兄ちゃんにチクられたけど。
「今日は、アヤトの好きな物たくさん作ろうか」
「……んで、オレのこと甘やかすんだよ」
「う~ん。悲しい顔を見たくないからかなぁ。アヤトには笑っていてほしい」
優しい眼差しでアヤトを見つめた。
媚びや嫌悪、嫉妬ではない瞳を向けられるのは、田舎を出てから初めてだ。
思わず泣きそうになるのをグッと堪える。道端で泣く姿を幼馴染に見せたくなかった。
――こっちにずっと住むのは、俺なんだ。心配させてどうする。
「降りそうだ」
地面を俯くアヤトとは、対照的にシュウマは顔を上げ呟いた。
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