とある化け物と魔法使いのお話

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とある化け物と魔法使いのお話

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  とある化け物は、魔法使いに言いました。

「ボクヲニンゲンニシテクダサイ」
 魔法使いは応えます。
「人間になるには真実の愛が必要だよ」と――。

 その日から化け物は、真実の愛を得るために様々な貢ぎ物を魔法使いにしました。
ある時は、99本の棘のついた赤い花を。またある時は、青色や緑色、桃色、透明な色の輝く石を――。
貢ぎ物を捧げても真実の愛を化け物は手に入れられず、人間になられませんでした。

 そんな日々を過ぎて近くの村で流行り病がありました。
魔法使いはたくさんの薬をつくり村に与えましたが、弱い灯火のすべてを救うことができず、白い小舟に旅立っていきました。
そんな村で誰かが囁きます。
魔法使いのつくった薬のせいで家族が儚くなってしまったのだ、と。
憎しみの炎は魔法使いに牙を剥き、村の男らと遠くの街からやってきた神父が結託し、異端裁判するために動きました。
魔法使いが棲む森は焼かれ、追い詰められてしまいます。

「よくも息子を……!」

 魔法使い目掛け斧を振りかぶる村の男を見て化け物は気付けば駆け出していました。
背中が熱くて痛くて涙を流しながら化け物は村の男たちに訴えます。

「ヤメテ! カレハ、ワルイコトシテナイ!!」

 しかしながら、村の男たちは誰も化け物の話に耳を傾けませんでした。
それどころか酷い言葉を投げかけられます。
「騙されてやがる」、「誰にも相手されねーからって魔女の手下にしっぽ振りやがって」、「バカな奴」…と口々に村の男たちがいう中で神父は憐れんだ目で言いました。

「彼は、魔女の手下に洗脳されているのでしょう。残念ながらもう手遅れです」

 化け物は魔法使いを庇うように抱きしめ、村の男たちから身を挺して守りました。

(アア…カミサマハザンコクダ……)

 薄れゆく意識の中。魔法使いと引き離され、再び斧が細い首に落とされそうになった時でした。
頭の奥でプツンと音が鳴り、化け物は本物の化け物になりました。
命乞いをする村の男らと神父はもう化け物の耳に届かず、化け物の姿ですらなれず動かなくなりました。

「……アゲル」

 呆然となった魔法使いに化け物はぽつりと言い残し、地面に倒れます。
化け物は、人間に成り果ていました。

「醜い人間よりも優しい貴方が好きだった」

 魔法使いは、静かに涙を流し元化け物だった男の紅く濡れた髪を撫でるのでした。
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