とある化け物と魔法使いのお話

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とある化け物と魔法使いのお話 つづき 1

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 昔の話である。
大火傷を負った子供がいた。
母がつくった薬で一命をとりとめたが、その子供の親と美貌を失ってしまった。
声すら醜く枯れてしまい、およそ人間には見えなかっただろう。
その子供の親戚は、食べ物エサを与えるだけでその子供を放置した。


「バケモノめッ!」

 石を投げて逃げていく村の子供たち。
そんな村の子供たちを追わず、化け物は立ち尽くす。
追ったところで人の輪の中に入れないからだ。
しょんぼりする化け物にお遣いで村へと訪れていた魔法使いは声を掛けた。

「寂しいなら森へおいで」

 驚いた化け物は、建物の物陰に隠れた。
魔法使いは、やれやれと呆れる。村の人間と同じ反応をしたからだ。

「バケモノと呼ばれてるのに弱虫さんだね」

 これ以上は話し掛けず、魔法使いは森へと帰った。
まさかその後をついてきていたとは知らずに――。

「あら、お客さん」

 魔法使いは、母親の言葉で本から顔をあげる。
窓の外にはチラチラと家の中を覗く化け物がいた。
どうやら、昨日家まで後をつけていたらしい。

「何かご用?」
「ア……ソ、ノ…………」
「どうぞ、そこの玄関から中にお入り」

 窓を開け、魔法使いの母親は言った。
もじもじする化け物を家の中に招き入れようとするが、激しく首を横に振られ断られる。

「遠慮しなくていいのよ」
「ダメ。オコラレル……ボク……ヨゴレテル、カラ…………」
「そうなの? 大変ねぇ」

 魔法使いの母は「じゃあ」と魔法使いの方を向いて微笑む。

「お外で勉強してらっしゃいな」

 半ば追い出される形で魔法使いは、家の外に出た。
化け物と目が合い、少し気まずくなる。
昨日は、気まぐれに声を掛けただけで仲良くはないのだ。
「行こうか」と言うと大人しく化け物はついてきた。
家が見えなくなった辺りまで歩くと振り返る。

「一人で来たの?」

 うん、と頷く化け物。
それもそうかと村人達の様子を知っていた魔法使いは仕方ないと思った。
自分が森に来るよう誘ったのだから相手になろう。

「ここに来たのは初めて?」
「ウン……オクマデキタノ、ハジメテ」
「じゃあ、案内してあげるよ」

 化け物の手をとれば「エ……エ……」と戸惑いを見せた。

「迷子になったら大変だからね」

 魔法使いは、母から教わった通りに行動した。
それだけであったが、化け物にとっては家族以外からぬくもりだった。

まず魔女使いは、森で自生している植物を教えた。
あまりにも化け物が痩せ細っていたので、太らせようと考えたからだ。

(せっかくお母さんが救ったんだから、なるべく永く生きてもらわないと)

 あと川にも行った。

(汚れているのなら、洗えばいい)

 化け物は、自分自身を汚れていると言ったので連れていき、ここで洗ってから家に来ればいいと伝えた。すると。

「……イイノ!?」

 とても驚く化け物に魔法使いは少しだけ退けつつ、肯定すると嬉しそうにした。
魔法使いは何がそんなに嬉しいのか分からず、首を傾げる。
村人達は来たがらないが、薬屋を営んでいるため人が訪れのを拒んでいなかった。

(嬉しそうだから……いっか)

 魔法使いは、あえて何も言わなかった。

 森に居場所を見出したのか。
その日から、化け物は訪ねてくるようになった。
『魔女の息子』だの『魔法使い』だのと呼ばれ、忌み嫌わられている者のところに通うので変わり者だと思った。

 奇妙な友好関係は数年間ほど続いた。
魔法使いの声変わりが始まった頃、珍しく母宛てに村から手紙が届いた。
その手紙を届けに来たのは化け物で村人達からちょいちょい雑用を言い付けられているらしい。

「なんて書いてるの?」

 手紙を読む母は、少し難しい顔をした。
おかしいことが書いてあったのかと不安になり、魔法使いは聞いた。

「ん~。街に来てほしいんだそうよ。偉い人からお呼ばれってところかしら」
「行くの……?」
「そうねぇ。お留守番できる? すぐ帰ってくるわ」

 魔法使いは駄々を捏ねず、しぶしぶ頷いた。
「いい子ね」と母は子の頭を優しく撫でた。
すぐに帰って来ないことは知っていた。村から街まで馬車で約四日間掛かる。
寂しいから行ってほしくないが、ここで暮らすためには『偉い人』の命令は絶対だ。

グッと気持ちを押し込んで魔法使いは、母を見送った。

もう二度と帰ってこないとは思わずに――。
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