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とある化け物と魔法使いのお話 つづき 3
しおりを挟む――魔女は、生まれながらにして罪人だ。
罪人の子供に慈悲を与える人は居らず、村の人々は魔法使いにも容赦はなかった。
それでも、魔法使いは生きるため母から教えてもらった知識で薬を作り売って暮らしていた。
「さっさとどっか行っておくれ」
咳止めの薬を買った村のおばさんに言われ、その場から魔法使いは立ち去る。
村は、貧しいため医者はいない。
母が亡くなってからというもの輪をかけて村人達は、魔法使いを邪険に扱った。
されど、村から追い出さないのはひとえに生活に困るからだ。
医者がおらず、薬を作る知識もない。そんな村人達は魔法使いを利用した。
(私も村人らを利用しているから同じか)
自嘲気味な台詞を心の中でいう。
魔法使いは一方的に搾取される気がなかった。
お金がないのなら薬と対等な物をもらっていく。渋るなら呪うと脅していた。
(化け物のように良いように使われたりしない)
辛い仕事ばかりをやらされ、ボロボロに汚れた化け物の姿を目撃した魔法使いは思う。
手紙を隠したことを許されていないと思っているのだろう。
あの日から化け物は会いに来なくなり、数ヶ月が経った。
(確かにしばらくは一人にしてとは言いましたが……)
呼んでいないのに魔法使いのところに顔を出していた者がぱったりと姿を見せなくなり、複雑な気分にさせた。
手紙を隠したことはもう怒っていない。怒っている暇がない。
どんなに悲しくても怒っていても空腹感はやってくるということを魔法使いは学んだのだ。
「それはお前の対価であろう?」
玄関先に物を置く化け物の背に向けて声を掛ける。
「逃げるな」と命令すれば、化け物は止まった。
「ッ……!?」
「まずは中に入ってからお話をしましょう」
躊躇する化け物に優しい口調で言う。
とっさに命令した罪悪感からか。なおさら優しく聞こえるように話した。
「ア……デモ…………」
「もう怒ってないから、おいで」
「……ワ…カッタ」
玄関の扉を開け、招く。
化け物は意を決して中へと入ると促されるままイスに座った。
「少し待っていてくださいね」
戸棚から布袋を取り出すと化け物が座るテーブルの上に置く。
じゃらりと音が鳴る。布袋の中で小銭が崩れた音だ。
「これは貴方の物ですよね?」
化け物は嘘をつけず、顔を下に向けた。
先ほど玄関前で物を置いたところを見られているのだ。誤魔化せない。
「食べ物と草花は保存できなかったので返せませんが、これはお返しします」
「ア、アゲマス」
「いいえ。結構です」
「コレハ、キミノモノデス」
「貴方に商品を売っていないのにもらったら泥棒になってしまいます」
化け物は、頑なにお金が入った布袋を受け取ろうしない。
(苦労して稼いだお金だろうに……)
魔法使いはため息をつく。
あの村で化け物と呼ばれている者がまともな仕事をさせてもらえるはずがない。
「受け取らないのなら、何か依頼をしてください。私は魔法使いなんです。これを対価するので貴方の願いを教えなさい」
魔法使いは、強引に化け物の願いを聞き出す。
そして、化け物は難題の願いをいう。
「ボクヲニンゲン二シテクダサイ」
お金では足りない願いをいわれてしまう。
化け物の願いを叶えるためには、愛が必要であった。
魔法使いは、それを伝えたらなぜか贈り物が増え、困惑するのだった。
おわり
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