7 / 34
第一章:塩対応の同室騎士は言葉が足らない
6無自覚
しおりを挟む
突然サミュエルが僕の傍に来なくなった。別教室の移動にも出迎えに来なくなる。部屋に戻れば同室だから彼の気配は感じ取れるのだが、無口なサムは僕から話しかけない限り口を開くことはない。それにここしばらく鍛錬だと言って朝早くに出かけ、夜は消灯ギリギリまで戻ってこない。わざと僕と顔を会わさないようにしてるのだ。それが数日続くともう僕は我慢が出来なくなった。
ちゃんと夕飯は食べてるんだろうか。汗をかいた後は着替えてるのか。水分は取ってるんだろうか。ケガなどしてないのだろうか。
サムってば極端すぎるんだ! 急に傍に来なくなるなんて。約束したって言ってたのはどの口だ! ひとこと言ってやらないと気が済まない。その日は腹が立ってなかなか眠れなくて結局サムが戻ってくるまで起きていた。
そっと扉が開く気配がしてサムが部屋に入ってきた。僕が起きていたことに一瞬、戸惑っていたが、そのまま背を向け着替えだした。ただいまぐらい言ってもいいじゃないか!
「サム! いい加減にしろ!」
僕はサムの胸倉をつかみあげた。
「……!」
サムは瞠目している。そりゃそうだろう。いきなりつかみかかって来られたのだから。
「最初に言っただろ! 気に入らないところがあるならちゃんと言って欲しいって! なんで無視するのさ! 僕のどこが嫌なのか言え!」
「……嫌ではない」
「じゃあなんで無視するのさ!」
「してない」
「してるじゃないか! このバカ!」
「お前、よくもこの俺に向かって……!」
サミュエルが苛ただしそうに答える。
「サムのバカやろぉ!」
せっかく仲良くなれたと思ってたのに。サミュエルの良いところは僕が知っている。冷たそうに見えるが実は親切な奴だっていう事も。責任感が強いって事も。引き締まった筋肉質な身体は日々鍛錬に時間を費やしてるからだ。きっと将来は有望な騎士になるだろう。その青い濁りのない瞳で剣をふるうさまは見るものを圧倒させて……僕はそんなサミュエルが好きなのに。好きな奴に冷たくされるのはツライじゃないか。
「……うっ。悪かった」
「なんだよ! 何が悪いんだ!」
「すまん。泣くな。お前に泣かれるとどうすればいいかわからなくなる」
「へ……泣いてなんか……」
気づいたら僕の目から涙がぼろぼろこぼれ落ちていた。
「さ……サムが僕を泣かせたんだ!」
「そうだな」
感情が高ぶりすぎたみたいだ。我ながら支離滅裂じゃないか。これじゃあサムを困らせるだけだ。わかってはいるが涙が止まらない。
「サム。僕が嫌いじゃないなら何故話してくれないんだ。うっうう。僕サムと話しがしたい。鍛錬だって一緒にしたいんだ。ひっく。うぅ。僕を無視するな」
ああもう、これじゃあ子供みたいだ。めんどくさい奴だと思われてたらどうしよう。
「困ったな」
「ごめん。僕って面倒だよね」
「いや。可愛すぎる」
「……へ?」
ぎゅっと抱きしめられてその胸にすっぽりと収まってしまった。やはり体格差がありすぎる。身近にいると筋肉量の違いがわかりすぎた。
「だが、俺が傍に居るとお前の評判がさがってしまうぞ」
「評判? つまらない噂のこと? 僕が気にすると思うのかい?」
「ふっ。そうだな。お前はそういうやつだった」
サムが優しく僕の背中をさする。まるであやされてるようだ。
「サムの腕の中は安心するんだ。発作が起きた時ずっとこうしてくれてただろ。とっても暖かくて居心地が良いいんだ」
「そうか」
「うん。だからもう無視しないでくれ」
「だが俺はお前が思う程信頼できる奴ではないぞ」
「サムはサムだよ。そのままでいてくれたらいいんだ」
「わかった。でも後悔するなよ」
「ふふ。しないよ。……約束……やぶらないで……よ」
久しぶりに泣いたせいなのか。ホッとしたせいか僕はそのまま睡魔に襲われてしまった。
「アル? 眠いのか? まいったな。俺がアルから離れたくなくなるから困ってるんだが……」
サミュエルが大きなため息をついた。
翌朝息苦しさに目覚めるとサミュエルに抱き込まれていた。
「ほぇ? なんだ一体? 何がどうなって」
寝ぼけた頭で状況判断ができずあわあわしているとサミュエルの瞳が開いた。澄んだ青い瞳に見つめられて時が止まる。
「綺麗な瞳……。青空みたいだ」
「親父譲りだ」
「そうなんだ」
「肌は母親譲りだそうだ」
「情熱的でエキゾチックだね。僕は白いからひ弱に見えるんだ。サムのように勇敢な人に良く似合う肌だ」
「俺を買いかぶり過ぎだ」
「僕はサムがいいんだよ」
サミュエルが片手で顔を覆った。
「お前は俺の心臓をつぶす気か?」
何を言ってるのだ? 抱き込まれて苦しいのは僕なんだが? サミュエルの目が獰猛になった気がする。
「ったく。この体勢で可愛い事ばっかり言いやがって」
ぎゅっと抱き寄せられて息がかかるほどの距離になる。これはちょっと近すぎるのでは? このままだと……。
「逃げないのか?」
なんで逃げるんだ? やっと捕まえたのに。
「逃げたりはしない」
「そうか」
サミュエルはそのまま僕の唇を奪った。
え? これって。キスしちゃったってこと?
「……ふぁ、ファーストキスだったんだ」
「それは好都合」
「なっ! ばっ! 離せ!」
僕はジタバタ暴れてベットから抜け出した。何を飄々と言ってるんだ。バカサミュエル! こんなっ恥ずかしい! 顔が熱くなってくるのがわかる。きっと僕の顔は真っ赤になってるのだろう。
「嫌だったか?」
「い、嫌じゃない! 馬鹿っ。聞くな!」
ちゃんと夕飯は食べてるんだろうか。汗をかいた後は着替えてるのか。水分は取ってるんだろうか。ケガなどしてないのだろうか。
サムってば極端すぎるんだ! 急に傍に来なくなるなんて。約束したって言ってたのはどの口だ! ひとこと言ってやらないと気が済まない。その日は腹が立ってなかなか眠れなくて結局サムが戻ってくるまで起きていた。
そっと扉が開く気配がしてサムが部屋に入ってきた。僕が起きていたことに一瞬、戸惑っていたが、そのまま背を向け着替えだした。ただいまぐらい言ってもいいじゃないか!
「サム! いい加減にしろ!」
僕はサムの胸倉をつかみあげた。
「……!」
サムは瞠目している。そりゃそうだろう。いきなりつかみかかって来られたのだから。
「最初に言っただろ! 気に入らないところがあるならちゃんと言って欲しいって! なんで無視するのさ! 僕のどこが嫌なのか言え!」
「……嫌ではない」
「じゃあなんで無視するのさ!」
「してない」
「してるじゃないか! このバカ!」
「お前、よくもこの俺に向かって……!」
サミュエルが苛ただしそうに答える。
「サムのバカやろぉ!」
せっかく仲良くなれたと思ってたのに。サミュエルの良いところは僕が知っている。冷たそうに見えるが実は親切な奴だっていう事も。責任感が強いって事も。引き締まった筋肉質な身体は日々鍛錬に時間を費やしてるからだ。きっと将来は有望な騎士になるだろう。その青い濁りのない瞳で剣をふるうさまは見るものを圧倒させて……僕はそんなサミュエルが好きなのに。好きな奴に冷たくされるのはツライじゃないか。
「……うっ。悪かった」
「なんだよ! 何が悪いんだ!」
「すまん。泣くな。お前に泣かれるとどうすればいいかわからなくなる」
「へ……泣いてなんか……」
気づいたら僕の目から涙がぼろぼろこぼれ落ちていた。
「さ……サムが僕を泣かせたんだ!」
「そうだな」
感情が高ぶりすぎたみたいだ。我ながら支離滅裂じゃないか。これじゃあサムを困らせるだけだ。わかってはいるが涙が止まらない。
「サム。僕が嫌いじゃないなら何故話してくれないんだ。うっうう。僕サムと話しがしたい。鍛錬だって一緒にしたいんだ。ひっく。うぅ。僕を無視するな」
ああもう、これじゃあ子供みたいだ。めんどくさい奴だと思われてたらどうしよう。
「困ったな」
「ごめん。僕って面倒だよね」
「いや。可愛すぎる」
「……へ?」
ぎゅっと抱きしめられてその胸にすっぽりと収まってしまった。やはり体格差がありすぎる。身近にいると筋肉量の違いがわかりすぎた。
「だが、俺が傍に居るとお前の評判がさがってしまうぞ」
「評判? つまらない噂のこと? 僕が気にすると思うのかい?」
「ふっ。そうだな。お前はそういうやつだった」
サムが優しく僕の背中をさする。まるであやされてるようだ。
「サムの腕の中は安心するんだ。発作が起きた時ずっとこうしてくれてただろ。とっても暖かくて居心地が良いいんだ」
「そうか」
「うん。だからもう無視しないでくれ」
「だが俺はお前が思う程信頼できる奴ではないぞ」
「サムはサムだよ。そのままでいてくれたらいいんだ」
「わかった。でも後悔するなよ」
「ふふ。しないよ。……約束……やぶらないで……よ」
久しぶりに泣いたせいなのか。ホッとしたせいか僕はそのまま睡魔に襲われてしまった。
「アル? 眠いのか? まいったな。俺がアルから離れたくなくなるから困ってるんだが……」
サミュエルが大きなため息をついた。
翌朝息苦しさに目覚めるとサミュエルに抱き込まれていた。
「ほぇ? なんだ一体? 何がどうなって」
寝ぼけた頭で状況判断ができずあわあわしているとサミュエルの瞳が開いた。澄んだ青い瞳に見つめられて時が止まる。
「綺麗な瞳……。青空みたいだ」
「親父譲りだ」
「そうなんだ」
「肌は母親譲りだそうだ」
「情熱的でエキゾチックだね。僕は白いからひ弱に見えるんだ。サムのように勇敢な人に良く似合う肌だ」
「俺を買いかぶり過ぎだ」
「僕はサムがいいんだよ」
サミュエルが片手で顔を覆った。
「お前は俺の心臓をつぶす気か?」
何を言ってるのだ? 抱き込まれて苦しいのは僕なんだが? サミュエルの目が獰猛になった気がする。
「ったく。この体勢で可愛い事ばっかり言いやがって」
ぎゅっと抱き寄せられて息がかかるほどの距離になる。これはちょっと近すぎるのでは? このままだと……。
「逃げないのか?」
なんで逃げるんだ? やっと捕まえたのに。
「逃げたりはしない」
「そうか」
サミュエルはそのまま僕の唇を奪った。
え? これって。キスしちゃったってこと?
「……ふぁ、ファーストキスだったんだ」
「それは好都合」
「なっ! ばっ! 離せ!」
僕はジタバタ暴れてベットから抜け出した。何を飄々と言ってるんだ。バカサミュエル! こんなっ恥ずかしい! 顔が熱くなってくるのがわかる。きっと僕の顔は真っ赤になってるのだろう。
「嫌だったか?」
「い、嫌じゃない! 馬鹿っ。聞くな!」
124
あなたにおすすめの小説
恵方巻を食べてオメガになるはずが、氷の騎士団長様に胃袋を掴まれ溺愛されています
水凪しおん
BL
「俺はベータだ。けれど、クラウス様の隣に立ちたい」
王城の厨房で働く地味な料理人ルエンは、近衛騎士団長のクラウスに叶わぬ恋をしていた。身分も属性も違う自分には、彼との未来などない。そう諦めかけていたある日、ルエンは「伝説の恵方巻を食べればオメガになれる」という噂を耳にする。
一縷の望みをかけ、ルエンは危険な食材探しの旅へ! しかし、なぜかその旅先にはいつもクラウスの姿があって……?
勘違いから始まる、ベータ料理人×氷の騎士団長の胃袋攻略ラブファンタジー!
ブレスレットが運んできたもの
mahiro
BL
第一王子が15歳を迎える日、お祝いとは別に未来の妃を探すことを目的としたパーティーが開催することが発表された。
そのパーティーには身分関係なく未婚である女性や歳の近い女性全員に招待状が配られたのだという。
血の繋がりはないが訳あって一緒に住むことになった妹ーーーミシェルも例外ではなく招待されていた。
これまた俺ーーーアレットとは血の繋がりのない兄ーーーベルナールは妹大好きなだけあって大いに喜んでいたのだと思う。
俺はといえば会場のウェイターが足りないため人材募集が貼り出されていたので応募してみたらたまたま通った。
そして迎えた当日、グラスを片付けるため会場から出た所、廊下のすみに光輝く何かを発見し………?
憎くて恋しい君にだけは、絶対会いたくなかったのに。
Q矢(Q.➽)
BL
愛する人達を守る為に、俺は戦いに出たのに。
満身創痍ながらも生き残り、帰還してみれば、とっくの昔に彼は俺を諦めていたらしい。
よし、じゃあ、もう死のうかな…から始まる転生物語。
愛しすぎて愛が枯渇してしまった俺は、もう誰も愛する気力は無い。
だから生まれ変わっても君には会いたく無いって願ったんだ。
それなのに転生先にはまんまと彼が。
でも、どっち?
判別のつかないままの二人の彼の愛と執着に溺死寸前の主人公君。
今世は幸せになりに来ました。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!
タッター
BL
ボスは悲しく一人閉じ込められていた俺を助け、たくさんの仲間達に出会わせてくれた俺の大切な人だ。
自分だけでなく、他者にまでその不幸を撒き散らすような体質を持つ厄病神な俺を、みんな側に置いてくれて仲間だと笑顔を向けてくれる。とても毎日が楽しい。ずっとずっとみんなと一緒にいたい。
――だから俺はそれ以上を求めない。不幸は幸せが好きだから。この幸せが崩れてしまわないためにも。
そうやって俺は今日も仲間達――家族達の、そして大好きなボスの役に立てるように――
「頑張るっす!! ……から置いてかないで下さいっす!! 寂しいっすよ!!」
「無理。邪魔」
「ガーン!」
とした日常の中で俺達は美少年君を助けた。
「……その子、生きてるっすか?」
「……ああ」
◆◆◆
溺愛攻め
×
明るいが不幸体質を持つが故に想いを受け入れることが怖く、役に立てなければ捨てられるかもと内心怯えている受け
冷徹勇猛な竜将アルファは純粋無垢な王子オメガに甘えたいのだ! ~だけど殿下は僕に、癒ししか求めてくれないのかな……~
大波小波
BL
フェリックス・エディン・ラヴィゲールは、ネイトステフ王国の第三王子だ。
端正だが、どこか猛禽類の鋭さを思わせる面立ち。
鋭い長剣を振るう、引き締まった体。
第二性がアルファだからというだけではない、自らを鍛え抜いた武人だった。
彼は『竜将』と呼ばれる称号と共に、内戦に苦しむ隣国へと派遣されていた。
軍閥のクーデターにより内戦の起きた、テミスアーリン王国。
そこでは、国王の第二夫人が亡命の準備を急いでいた。
王は戦闘で命を落とし、彼の正妻である王妃は早々と我が子を連れて逃げている。
仮王として指揮をとる第二夫人の長男は、近隣諸国へ支援を求めて欲しいと、彼女に亡命を勧めた。
仮王の弟である、アルネ・エドゥアルド・クラルは、兄の力になれない歯がゆさを感じていた。
瑞々しい、均整の取れた体。
絹のような栗色の髪に、白い肌。
美しい面立ちだが、茶目っ気も覗くつぶらな瞳。
第二性はオメガだが、彼は利発で優しい少年だった。
そんなアルネは兄から聞いた、隣国の支援部隊を指揮する『竜将』の名を呟く。
「フェリックス・エディン・ラヴィゲール殿下……」
不思議と、勇気が湧いてくる。
「長い、お名前。まるで、呪文みたい」
その名が、恋の呪文となる日が近いことを、アルネはまだ知らなかった。
侯爵様の愛人ですが、その息子にも愛されてます
muku
BL
魔術師フィアリスは、地底の迷宮から湧き続ける魔物を倒す使命を担っているリトスロード侯爵家に雇われている。
仕事は魔物の駆除と、侯爵家三男エヴァンの家庭教師。
成人したエヴァンから突然恋心を告げられたフィアリスは、大いに戸惑うことになる。
何故ならフィアリスは、エヴァンの父とただならぬ関係にあったのだった。
汚れた自分には愛される価値がないと思いこむ美しい魔術師の青年と、そんな師を一心に愛し続ける弟子の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる