33 / 35
第三章 家族とは
11 家族になる
しおりを挟む
それから二年後。僕らは近親者だけで挙式をあげることにした。
本当は卒業後に挙式をと考えていたが、ハジメが生地の開発のために留学をすることが決まったのだ。僕はもちろんついて行くつもりだ。そのために単位は頑張って卒論以外はすべて取り終えた。そこにハジメ父から衣装が出来たという知らせが届いたのだ。
そこから高塚がすぐに挙式をあげようと声をかけてきた。よっぽど結婚衣装を心待ちにしていたらしい。教会もすぐに抑えてくれた。
向こうの拠点は高塚が使用している海外のマンションと近いらしいのでちょくちょく朝比奈もやってきてくれるという。一緒に外国語を習うつもりだ。
「あはは。ハジメ! 馬子にも衣装やな! めっちゃカッコいいやん」
ハジメは艶のある質感のグレーのタキシードに藍染のベストを身につけている。このタキシードの生地はハジメが開発した布で、発色もよく近未来的なイメージがあるんだそうだ。ハジメ自身は虫じゃなかったらなんでも良いとハジメ父に言って怒られたそうだけど。
「朝比奈もきょうはキメてるやんかって俺ら互いを褒めあうってどんだけ痛いやつらなんや?」
「あははは、違いないわ」
朝比奈は白いタキシードに薔薇の透かし彫りがはいった仕様だ。腰の辺りがきゅっと絞ってあってスタイルの良さが際立つ。中は白のレザーのコルセットで高塚がデザインを決める時にいろいろと注文を付けた品らしい。この透かし彫りの生地もハジメの手が入った生地だ。
「朝比奈さんありがとうございます。僕らの挙式も合同にしてくれて」
「あ~、いいよ。俺はそのほうが気が楽なんや。やっぱり挙式ってなんかまだ照れ臭くって」
「何言ってんねん。お前もうお嫁さんなんやろ?」
「わ~。それを言うな。嫁とか男に向かって言うの変やろ? 既婚者って言ってくれ」
何事もすぐに行動に起こす高塚は朝比奈に結婚の申し出をした次の日にこっそりと婚姻届けを出しに行ったらしい。後でわかってかなり朝比奈ともめたらしいが……。
「アルファってすぐに動くんやな。ちゃんと考えて行動してるんかな?」
朝比奈が愚痴る。
「頭の回転が速いのがアルファなんやよ。狙った獲物は逃しはしない」
高塚が隣で返事をした。今日の高塚は黒のタキシードだがもちろん普通の黒やなく、光の加減でホログラム状に蔦と鳳凰が浮かびあがる仕様だ。
「僕は最初はハジメ君がじゅん君に気があるのかと敵対してたんや」
高塚がハジメを横目で見る。
「そうやったんや! それで小さい頃から俺をずっと睨んでたんやな?」
「悪かった。君は純粋にじゅん君を友人として守ろうとしてくれていたんやな。ありがとう。今更ながら礼を言いたい」
ハジメが背を正した。まっすぐに高塚を見つめる。
「いえ。こちらこそ。朝比奈は俺の親友です。小さい頃から兄弟のように育ちました。朝比奈をあの家から離してくれて感謝してます。出会った頃からあいつは俺にじゅんって名前でなく朝比奈と呼べと。自分が高塚じゃないんだという気持ちでそう言うたんやと思います」
「だが、僕と結婚することで、今度こそ高塚の姓になってしまった」
「でも、今は高塚と名乗れて幸せやと思います。あいつの呪縛を放ってくれたんは高塚さんやから」
「すぐる。綺麗やな」
朝比奈がほほ笑む。いつもながら女神みたいだ。僕は袖が総レースで腰の辺りに切り替えがある真っ白なジャケットを着ている。この腰の切り替えがたっぷりと後ろに長くてウエディングドレスのような形状をしているのにとても軽い。この軽い生地もハジメが開発したものだ。中にはいているパンツはスリムでくるぶしにスリットがはいっている。ユニセックス的で男女どちらでも着れる式服なんだそうだ。
「……草壁さんが端っこで泣いてはったよ」
朝比奈の指さす方を見ると慌てて柱に隠れる草壁が見えた。隠れなくてもいいのにな。見に来てくれただけでもありがたいと思う。
「そっか。来てくれてたんだね。朝比奈さんも……えっと」
そうだ、もう高塚さんだった。でも今まで朝比奈さんって呼んでたしな。
「じゅんでええよ。これからはじゅんって呼んでや」
「うん。じゅんも今日はものすごく綺麗だよ!」
「はは。ありがとう。今日はいい日になりそうや」
パイプオルガンの音と共に神父が現れ誓いの言葉を互いに交わした。
指輪を互いの指に嵌めあうと誓いの口づけを交わす。
「ふぅ……んんん!」
ちょ、ちょっと。誓いのキスって軽く口づけるだけじゃないの? こんなに濃厚なのって。参列者が居るのにハジメったら……。
バシンッ! 隣から大きな音が聞こえハジメの力が緩むと僕はその腕から逃げ出した。
「はぁはぁ……あほ! しつこいっ。息ができないやろ! そういうのは夜にしてや!」
じゅんの方も高塚に攻められてたのだろうな。
「わかった。今夜は寝かせへんからな」
頬に手形をつけた高塚が嬉しそうにほほ笑んでいる。
「ホンマにうちのアルファどもは……。すぐる、嫌になったら二人で家出しよな?」
「うん。ふふふ」
「あかん。あかんで。ごめんやり過ぎた」
「あかん。ちょっと調子にのりすぎただけや」
ハジメと高塚が慌てる様子が面白い。それにオメガの味方が傍にいてくれるのがとっても心強い。
簡単な挙式だったが記念写真もとり、僕とじゅんは感動して涙でぼろぼろになった。
この後は予約してるホテルでディナーをたべてそこに泊まる予定だ。
「高塚さん。今日はありがとうございました。こうして挙式が出来ただけで幸せです」
「いや、いいよ。すぐる君はじゅんと共同で今バーチャルの店舗を数店押し進めてくれてると聞いてるよ。出来ればこれからも力になって欲しい」
「本当ですか?」
「ああ、じゅんも気心の知れた子が近くにいると相談しやすいと思うしな」
「ありがとうございます!僕頑張ります!」
「亜紀良さんありがとう」
「いやこれは僕のためや。じゅんの喜ぶ顔が僕の活力になるねん」
それにすぐるくんなら僕も安心するからねと小声で高塚がつぶやいたのが聞こえた。
「じゃあ今後の皆の未来のために乾杯!」
「「「乾杯!」」」
僕らは祝杯をあげた。先の事などわからないが立ち止まってばかりじゃ何もつかめない。可能性を求めて明日へと歩き出そう。
~~~~~~~~~~~
これにて3章完結です。番外編が少し続きます。
本当は卒業後に挙式をと考えていたが、ハジメが生地の開発のために留学をすることが決まったのだ。僕はもちろんついて行くつもりだ。そのために単位は頑張って卒論以外はすべて取り終えた。そこにハジメ父から衣装が出来たという知らせが届いたのだ。
そこから高塚がすぐに挙式をあげようと声をかけてきた。よっぽど結婚衣装を心待ちにしていたらしい。教会もすぐに抑えてくれた。
向こうの拠点は高塚が使用している海外のマンションと近いらしいのでちょくちょく朝比奈もやってきてくれるという。一緒に外国語を習うつもりだ。
「あはは。ハジメ! 馬子にも衣装やな! めっちゃカッコいいやん」
ハジメは艶のある質感のグレーのタキシードに藍染のベストを身につけている。このタキシードの生地はハジメが開発した布で、発色もよく近未来的なイメージがあるんだそうだ。ハジメ自身は虫じゃなかったらなんでも良いとハジメ父に言って怒られたそうだけど。
「朝比奈もきょうはキメてるやんかって俺ら互いを褒めあうってどんだけ痛いやつらなんや?」
「あははは、違いないわ」
朝比奈は白いタキシードに薔薇の透かし彫りがはいった仕様だ。腰の辺りがきゅっと絞ってあってスタイルの良さが際立つ。中は白のレザーのコルセットで高塚がデザインを決める時にいろいろと注文を付けた品らしい。この透かし彫りの生地もハジメの手が入った生地だ。
「朝比奈さんありがとうございます。僕らの挙式も合同にしてくれて」
「あ~、いいよ。俺はそのほうが気が楽なんや。やっぱり挙式ってなんかまだ照れ臭くって」
「何言ってんねん。お前もうお嫁さんなんやろ?」
「わ~。それを言うな。嫁とか男に向かって言うの変やろ? 既婚者って言ってくれ」
何事もすぐに行動に起こす高塚は朝比奈に結婚の申し出をした次の日にこっそりと婚姻届けを出しに行ったらしい。後でわかってかなり朝比奈ともめたらしいが……。
「アルファってすぐに動くんやな。ちゃんと考えて行動してるんかな?」
朝比奈が愚痴る。
「頭の回転が速いのがアルファなんやよ。狙った獲物は逃しはしない」
高塚が隣で返事をした。今日の高塚は黒のタキシードだがもちろん普通の黒やなく、光の加減でホログラム状に蔦と鳳凰が浮かびあがる仕様だ。
「僕は最初はハジメ君がじゅん君に気があるのかと敵対してたんや」
高塚がハジメを横目で見る。
「そうやったんや! それで小さい頃から俺をずっと睨んでたんやな?」
「悪かった。君は純粋にじゅん君を友人として守ろうとしてくれていたんやな。ありがとう。今更ながら礼を言いたい」
ハジメが背を正した。まっすぐに高塚を見つめる。
「いえ。こちらこそ。朝比奈は俺の親友です。小さい頃から兄弟のように育ちました。朝比奈をあの家から離してくれて感謝してます。出会った頃からあいつは俺にじゅんって名前でなく朝比奈と呼べと。自分が高塚じゃないんだという気持ちでそう言うたんやと思います」
「だが、僕と結婚することで、今度こそ高塚の姓になってしまった」
「でも、今は高塚と名乗れて幸せやと思います。あいつの呪縛を放ってくれたんは高塚さんやから」
「すぐる。綺麗やな」
朝比奈がほほ笑む。いつもながら女神みたいだ。僕は袖が総レースで腰の辺りに切り替えがある真っ白なジャケットを着ている。この腰の切り替えがたっぷりと後ろに長くてウエディングドレスのような形状をしているのにとても軽い。この軽い生地もハジメが開発したものだ。中にはいているパンツはスリムでくるぶしにスリットがはいっている。ユニセックス的で男女どちらでも着れる式服なんだそうだ。
「……草壁さんが端っこで泣いてはったよ」
朝比奈の指さす方を見ると慌てて柱に隠れる草壁が見えた。隠れなくてもいいのにな。見に来てくれただけでもありがたいと思う。
「そっか。来てくれてたんだね。朝比奈さんも……えっと」
そうだ、もう高塚さんだった。でも今まで朝比奈さんって呼んでたしな。
「じゅんでええよ。これからはじゅんって呼んでや」
「うん。じゅんも今日はものすごく綺麗だよ!」
「はは。ありがとう。今日はいい日になりそうや」
パイプオルガンの音と共に神父が現れ誓いの言葉を互いに交わした。
指輪を互いの指に嵌めあうと誓いの口づけを交わす。
「ふぅ……んんん!」
ちょ、ちょっと。誓いのキスって軽く口づけるだけじゃないの? こんなに濃厚なのって。参列者が居るのにハジメったら……。
バシンッ! 隣から大きな音が聞こえハジメの力が緩むと僕はその腕から逃げ出した。
「はぁはぁ……あほ! しつこいっ。息ができないやろ! そういうのは夜にしてや!」
じゅんの方も高塚に攻められてたのだろうな。
「わかった。今夜は寝かせへんからな」
頬に手形をつけた高塚が嬉しそうにほほ笑んでいる。
「ホンマにうちのアルファどもは……。すぐる、嫌になったら二人で家出しよな?」
「うん。ふふふ」
「あかん。あかんで。ごめんやり過ぎた」
「あかん。ちょっと調子にのりすぎただけや」
ハジメと高塚が慌てる様子が面白い。それにオメガの味方が傍にいてくれるのがとっても心強い。
簡単な挙式だったが記念写真もとり、僕とじゅんは感動して涙でぼろぼろになった。
この後は予約してるホテルでディナーをたべてそこに泊まる予定だ。
「高塚さん。今日はありがとうございました。こうして挙式が出来ただけで幸せです」
「いや、いいよ。すぐる君はじゅんと共同で今バーチャルの店舗を数店押し進めてくれてると聞いてるよ。出来ればこれからも力になって欲しい」
「本当ですか?」
「ああ、じゅんも気心の知れた子が近くにいると相談しやすいと思うしな」
「ありがとうございます!僕頑張ります!」
「亜紀良さんありがとう」
「いやこれは僕のためや。じゅんの喜ぶ顔が僕の活力になるねん」
それにすぐるくんなら僕も安心するからねと小声で高塚がつぶやいたのが聞こえた。
「じゃあ今後の皆の未来のために乾杯!」
「「「乾杯!」」」
僕らは祝杯をあげた。先の事などわからないが立ち止まってばかりじゃ何もつかめない。可能性を求めて明日へと歩き出そう。
~~~~~~~~~~~
これにて3章完結です。番外編が少し続きます。
14
あなたにおすすめの小説
僕がそばにいる理由
腐男子ミルク
BL
佐藤裕貴はΩとして生まれた21歳の男性。αの夫と結婚し、表向きは穏やかな夫婦生活を送っているが、その実態は不完全なものだった。夫は裕貴を愛していると口にしながらも、家事や家庭の負担はすべて裕貴に押し付け、自分は何もしない。それでいて、裕貴が他の誰かと関わることには異常なほど敏感で束縛が激しい。性的な関係もないまま、裕貴は愛情とは何か、本当に満たされるとはどういうことかを見失いつつあった。
そんな中、裕貴の職場に新人看護師・宮野歩夢が配属される。歩夢は裕貴がΩであることを本能的に察しながらも、その事実を意に介さず、ただ一人の人間として接してくれるαだった。歩夢の純粋な優しさと、裕貴をありのまま受け入れる態度に触れた裕貴は、心の奥底にしまい込んでいた孤独と向き合わざるを得なくなる。歩夢と過ごす時間を重ねるうちに、彼の存在が裕貴にとって特別なものとなっていくのを感じていた。
しかし、裕貴は既婚者であり、夫との関係や社会的な立場に縛られている。愛情、義務、そしてΩとしての本能――複雑に絡み合う感情の中で、裕貴は自分にとって「真実の幸せ」とは何なのか、そしてその幸せを追い求める覚悟があるのかを問い始める。
束縛の中で見失っていた自分を取り戻し、裕貴が選び取る未来とは――。
愛と本能、自由と束縛が交錯するオメガバースの物語。
優等生αは不良Ωに恋をする
雪兎
BL
学年トップの優等生α・如月理央は、真面目で冷静、誰からも一目置かれる完璧な存在。
そんな彼が、ある日ふとしたきっかけで出会ったのは、喧嘩っ早くて素行不良、クラスでも浮いた存在のΩ・真柴隼人だった。
「うっせーよ。俺に構うな」
冷たくあしらわれても、理央の心はなぜか揺れ続ける。
自分とは正反対の不良Ω——その目の奥に潜む孤独と痛みに、気づいてしまったから。
番なんて信じない。誰かに縛られるつもりもない。
それでも、君が苦しんでいるなら、助けたいと思った。
王道オメガバース×すれ違い×甘酸っぱさ全開!
優等生αと不良Ωが織りなす、じれじれピュアな恋物語。
流れる星、どうかお願い
ハル
BL
羽水 結弦(うすい ゆずる)
オメガで高校中退の彼は国内の財閥の一つ、羽水本家の次男、羽水要と番になって約8年
高層マンションに住み、気兼ねなくスーパーで買い物をして好きな料理を食べられる。同じ性の人からすれば恵まれた生活をしている彼
そんな彼が夜、空を眺めて流れ星に祈る願いはただ一つ
”要が幸せになりますように”
オメガバースの世界を舞台にしたアルファ×オメガ
王道な関係の二人が織りなすラブストーリーをお楽しみに!
一応、更新していきますが、修正が入ることは多いので
ちょっと読みづらくなったら申し訳ないですが
お付き合いください!
君に会いに行こう
大波小波
BL
第二性がアルファの九丈 玄馬(くじょう げんま)は、若くして組の頭となった極道だ。
さびれた商店街を再開発するため、玄馬はあるカフェに立ち退きを迫り始める。
ところが、そこで出会ったオメガの桂 幸樹(かつら こうき)に、惹かれてしまう。
立ち退きを拒むマスターの弱みを握ろうと、幸樹に近づいた玄馬だったが、次第に本気になってゆく……。
八月は僕のつがい
やなぎ怜
BL
冬生まれの雪宗(ゆきむね)は、だからかは定かではないが、夏に弱い。そして夏の月を冠する八月(はつき)にも、弱かった。αである八月の相手は愛らしい彼の従弟たるΩだろうと思いながら、平凡なβの雪宗は八月との関係を続けていた。八月が切り出すまでは、このぬるま湯につかったような関係を終わらせてやらない。そう思っていた雪宗だったが……。
※オメガバース。性描写は薄く、主人公は面倒くさい性格です。
たしかなこと
大波小波
BL
白洲 沙穂(しらす さほ)は、カフェでアルバイトをする平凡なオメガだ。
ある日カフェに現れたアルファ男性・源 真輝(みなもと まさき)が体調不良を訴えた。
彼を介抱し見送った沙穂だったが、再び現れた真輝が大富豪だと知る。
そんな彼が言うことには。
「すでに私たちは、恋人同士なのだから」
僕なんかすぐに飽きるよね、と考えていた沙穂だったが、やがて二人は深い愛情で結ばれてゆく……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる