隠れエルフの俺に狼獣人がバディになれと迫ってきます

ゆうきぼし/優輝星

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一章バディになるまで

6疑心暗鬼

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 ウォルフが敵のスパイだと? 身分を偽っているのか? だがあいつは魔法省が選び抜いた相手ではないのか? もちろん今のところ、ベスト診断されたことは秘密だ。本人の意思が優先される為、公には魔法省絡みの事は伏せてある。俺とのことはあくまでもウォルフが候補に名乗り出たという程度で隊には広まっていた。
 この世界の住人は魔法を持つ者、持たざる者がおり、魔法を悪用されないためにも魔法省は独立した機関となっている。どこからの命令も受けず常に公平である立場のはずだ。
 だとすると、すでに俺とバディを組むという前提でスパイとして入り込んできたという事なのだろうか?
(ウォルフが俺に嘘をついているとは考えたくないものだな)

「どうしたエア? 体調でも悪いのか?」
 ウォルフに声をかけられ我に返る。
「いや。どこも悪くなどない」
「顔色が悪い。何かあったんじゃないのか?」
 くそ。こいつは鼻だけじゃなく勘もいいのを忘れていた。
「お前の気の回しすぎだ。お前こそ何かあったんじゃないのか?」
 敵から新たな指示が出されているなら何か動きがあるはずだ。
「うん。まあ、午後の偵察の途中にちょっと一緒に行って欲しいところがあるんだ」
「……わかった。同行しよう」
「ありがとよ!」
 ウォルフは犬歯を見せて笑った。

 2日後に迫ったフェスティバルは関連場所のチェックが重点的になっていた。
「ホークス、悪いが午後からのパトロールは俺とウォルフの二人で行こうと思う」
「わかりました。自分も囚人の事情徴収をしないといけないので今日はここに残ります」
「その、今朝ホークスから聞いた話なんだが」
「今朝ですか? 自分が隊長に? ……あ、ああ。そうでした。アイツの話ですね?」
「そうだ。今のところ何も変わったことはないが、パトロールの後に俺をどこかに連れて行きたいらしい」
「隊長を連れて行く? どこにですか?」
「場所は詳しくは聞いていない」
「何かありそうでしたら、すぐに転移して戻ってきてくださいね」
「もちろんそうするさ」
「はい。お気をつけて」
 万が一の場合も考慮してホークスに声をかけていくことにした。
(ウォルフの事は信じたい。だけど俺の仕事はまずは疑ってかかる事でもある。真実を見極めるにはまだ情報が足りない)

 会場周辺はぱらぱらと露店が立ち始めていた。
「おおっ。昨日よりも店が増えてるなあ」
 ウォルフが機嫌よく声をあげる。
「ああ。フェスティバルになるとこの辺りはもっと活気がでるんだ」
「オレがいた南部は常夏で冬眠とは無縁の場所だったから興味深いぜ」
「そうなのか。もちろん冬眠目的じゃない者達も買い物に大勢やってくるんだ。冬を過ごすための暖かな衣類や常備できる食糧なども豊富に売り出されるからな」
「エアも冬眠するのか?」
「いや、俺はする必要がない。それに寒くなっても犯罪は絶えないからな。誰かが皆を守らなきゃならない。そのために俺はここにいる」
「そうだな。くくく。オレ、やっぱりエアが好きだわ」
「な、なんだいきなり?」
「だって、普通になんでもない事のように『皆を守らなきゃならない』なんて言えねえよ。カッコいいぜ」
「当たり前じゃないか」
「その当たり前がなかなか難しいんだぜ」
 それはお前もなのか? どうなんだ? その一言が聞きたくて聞けない。もどかしい気持ちを抱えながら歩いてるとウォルフが足を止めた。
「これで一周したし、オレの行きたいところに寄ってくれる?」
「わかった」
 俺が緊張気味に返事をすると満面の笑みが返ってきた。
「って言ってもさ。すぐそこなんだよ」
 ウォルフが指さしたのは露店の一角だった。

 店の先には指輪やネックレス、腕輪などが並んでいるがどれも魔力が感じられる。
「なんだ? 装飾系の魔道具か?」
「おう。通信系の魔道具をお揃いで一緒につけようって思ってさ」
「はあ? なんで俺が魔道具なぞ」
「心配だから。エアはお転婆そうだから何かあった時の為につけておいて欲しいんだ。朝のランニング時にこの店を見つけたんだ」
 どういうことだ? もしかして操作系の魔具で俺に何かを仕込む気じゃないだろうな?
「すみませ~ん。朝、頼みにきたもんですが~」
 ウォルフが店の奥に向かって叫ぶと中から声がした。
「ああ。出来てますよ」
「ちょっ! ちょっと待て! 俺はまだつけるとは言ってないぞ」
 奥から出てきたのは虎獣人で片足が義足だ。
「っ! エアレンディルか?」
「隊長? フィンデル隊長!」
 そこにいたのは3年前に俺がバディを組んでいた相手だった。
「久しぶりだなあ! 元気そうじゃねえか!」
「はい。隊長こそお元気で」
「ははは。おいおい、もう俺は隊長じゃねえよ。ただのフィンデルさ」
「……はい。そうでしたね」
「まだそんな顔してるのかい? それにそのサングラスも。お前さ、気にしすぎ。警備隊の仕事がどんなものかって俺は理解してやってきたんだぜ。この足は俺にとっては勲章なんだ」
「勲章?」
「そうさ。自分の意思どうりに人助けをして任務を全う出来た。俺にとっては最高の仕上がりさ。実家の親からも魔道具作りを手伝えって打診が来てたし、そろそろ引き際を考えないといけなかったのさ」
「ご実家は魔道具を作られていたのですか?」
「俺は跡取りだったのさ。最初は各地の魔道具の探索に回っていたんだが、ひょんなことから団長と知り合っちまって。そこから隊長にさせられてたの。だからいづれは此処を離れるって契約だったのさ」
「そうだったんですね」
「ああ。お前、俺がケガのせいで引退したと思い込んでたんじゃないか? 残る気があれば俺は指導者としてでも残ったと思うよ。でもさ。俺の本職は魔道具師なんだよ。だからお前がいつまでも、ウジウジしなくてもいいんだ。前を向いて。俺を乗り越えて行ってくれ」
「……たいちょ……フィンデルさんっ」
 そこにいたのは優しく勇敢な俺の隊長だった。こみあげる涙をぐっと我慢した。

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