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「半年という期間の理由をきいても?」
「理由は三つあります。まず、民への配慮です。先王の崩御に、国民は悲しみに沈んでいます。その最中で、シャルロッテ様とクリストフェル王の婚約破棄の報が流れれば、嘆きは一層深まるでしょう」
先王ランヴァルドは、賢王と呼ばれ国民に慕われていた。愛する国父を喪った直後に、人気の高い二人の婚約破棄の知らせを受ければ、その悲しみは倍になるだろう。ただでさえも火が消えたように活気が失われた国内が、さらに重苦しい空気に包まれるのは想像に難くない。
「次に、シャルロッテ様の後任を育てるためです。現在リーデルシュタイン王国はシャルロッテ様のお力により安定していますが、いつ何が起きてもおかしくない状況です。今後の安定と繁栄のために、お知恵をお貸しいただきたい」
南方国マールグリッドとの同盟があるため、北方国スーシェンテの脅威は落ちているが、その同盟がいつまで有効かは分からない。穏健派のカシミロが権力の座から引きずり降ろされれば、同盟など紙切れになる。強硬派が権力を握れば、軍国の力を遺憾なく発揮し、リーデルシュタインに刃を向けるだろう。穏健派がリーデルシュタインと繋がっているように、強硬派はスーシェンテと繋がりがあるのだ。
「最後に、半年もすればメルヴィンが帰国する予定だからです。現在兄は国外での任務に就いていますが、ある程度のめどが立ったとの報告を受けています。そう遠くない日に現地での活動を終え、リーデルシュタインに戻って来るでしょう」
国外の情勢に詳しく諜報活動が得意なメルヴィンが帰国すれば、リーデルシュタインの強みになる。スーシェンテとの駆け引きも、優位に立てる可能性が高い。
(それにしても、メルヴィンはどこで何をしていたのかしら?)
通常の活動であればシャルロッテの耳に入っているはずだが、国外で任務中と言うことしか知らない。ランヴァルドの王命により動いていたと考えるのが正解だろうが、王の崩御よりも優先される任務と言うのが何なのか分からない。
考え込むシャルロッテの様子を躊躇いだと勘違いしたのか、パーシヴァルが意地の悪い笑みを浮かべる。
「もっとも、シャルロッテ様がリーデルシュタインの衰退をお望みでしたら、お受けいただかなくて結構ですが」
「そんなこと……! ……分かりました。理由はどれも正当ですし、半年後に婚約破棄ということで問題ありません」
シャルロッテはパーシヴァルを一瞥した後、黙って成り行きを見ていたクリストフェルの前に歩み出た。スカートの端をつまみ、軽く膝を曲げる。伯爵令嬢としてではなく婚約者としてのカーテシーに、クリストフェルの口元がほんのわずかに緩む。
「半年の間ですが、よろしくお願いいたします。クリストフェル様」
「シャルロッテ……」
伸ばしかけたクリストフェルの右手が空を切る。拒絶された痛みを思い出したのか、ギュっと手を握ると目を伏せた。
「迷惑をかけてすまない」
長い金のまつ毛に縁取られた翡翠色の瞳が、悲しそうに揺れる。
再びシャルロッテの頭が、針で刺されたように痛んだ。
「理由は三つあります。まず、民への配慮です。先王の崩御に、国民は悲しみに沈んでいます。その最中で、シャルロッテ様とクリストフェル王の婚約破棄の報が流れれば、嘆きは一層深まるでしょう」
先王ランヴァルドは、賢王と呼ばれ国民に慕われていた。愛する国父を喪った直後に、人気の高い二人の婚約破棄の知らせを受ければ、その悲しみは倍になるだろう。ただでさえも火が消えたように活気が失われた国内が、さらに重苦しい空気に包まれるのは想像に難くない。
「次に、シャルロッテ様の後任を育てるためです。現在リーデルシュタイン王国はシャルロッテ様のお力により安定していますが、いつ何が起きてもおかしくない状況です。今後の安定と繁栄のために、お知恵をお貸しいただきたい」
南方国マールグリッドとの同盟があるため、北方国スーシェンテの脅威は落ちているが、その同盟がいつまで有効かは分からない。穏健派のカシミロが権力の座から引きずり降ろされれば、同盟など紙切れになる。強硬派が権力を握れば、軍国の力を遺憾なく発揮し、リーデルシュタインに刃を向けるだろう。穏健派がリーデルシュタインと繋がっているように、強硬派はスーシェンテと繋がりがあるのだ。
「最後に、半年もすればメルヴィンが帰国する予定だからです。現在兄は国外での任務に就いていますが、ある程度のめどが立ったとの報告を受けています。そう遠くない日に現地での活動を終え、リーデルシュタインに戻って来るでしょう」
国外の情勢に詳しく諜報活動が得意なメルヴィンが帰国すれば、リーデルシュタインの強みになる。スーシェンテとの駆け引きも、優位に立てる可能性が高い。
(それにしても、メルヴィンはどこで何をしていたのかしら?)
通常の活動であればシャルロッテの耳に入っているはずだが、国外で任務中と言うことしか知らない。ランヴァルドの王命により動いていたと考えるのが正解だろうが、王の崩御よりも優先される任務と言うのが何なのか分からない。
考え込むシャルロッテの様子を躊躇いだと勘違いしたのか、パーシヴァルが意地の悪い笑みを浮かべる。
「もっとも、シャルロッテ様がリーデルシュタインの衰退をお望みでしたら、お受けいただかなくて結構ですが」
「そんなこと……! ……分かりました。理由はどれも正当ですし、半年後に婚約破棄ということで問題ありません」
シャルロッテはパーシヴァルを一瞥した後、黙って成り行きを見ていたクリストフェルの前に歩み出た。スカートの端をつまみ、軽く膝を曲げる。伯爵令嬢としてではなく婚約者としてのカーテシーに、クリストフェルの口元がほんのわずかに緩む。
「半年の間ですが、よろしくお願いいたします。クリストフェル様」
「シャルロッテ……」
伸ばしかけたクリストフェルの右手が空を切る。拒絶された痛みを思い出したのか、ギュっと手を握ると目を伏せた。
「迷惑をかけてすまない」
長い金のまつ毛に縁取られた翡翠色の瞳が、悲しそうに揺れる。
再びシャルロッテの頭が、針で刺されたように痛んだ。
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