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第七部:「謀略と怨讐の宇宙(そら)」
第二十五話
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宇宙暦四五二四年九月十四日標準時間一二二五。
クリフォード率いる第二特務戦隊とゾンファの通商破壊艦部隊との戦闘から一時間ほど経っていた。
第二特務戦隊はソーン星系ジャンプポイントから三百三十光秒ほどの場所にあり、ベクトルをJPに向けるべく、減速が完了したところだ。
ゲオルギー・リヴォフ少将率いるスヴァローグ帝国戦隊八隻は、第二特務戦隊から九百光秒ほどの位置でゾンファのディン・クー大佐が指揮するツアイバオ級通商破壊艦スウイジンとリユソンスを追撃している。
両者の距離は二十七光秒ほどだが、ゾンファ側が星系内限界速度である〇・三光速まで加速したため、五分前に射程内に入ったものの、それ以上距離は縮まっていなかった。
リヴォフ戦隊の旗艦重巡航艦メルクーリヤは十八テラワット級陽電子加速砲で二隻の通商破壊艦を攻撃しているが、最大射程二十八光秒に限りなく近く、未だに命中はない。
また、他の艦は軽巡航艦と駆逐艦であり、主砲の射程外ということで攻撃に参加していなかった。
クリフォードはその状況を見ながら、違和感を覚えていた。
(リヴォフ少将はなぜステルスミサイルを使わないのだろうか? あの戦隊なら一度に四十二基のミサイルを発射できるはずだ……)
そこで帝国艦の情報が目に入る。
(〇・三Cか……これほどの高速ではミサイルのステルス性は著しく落ちるし、速度を大きく上げられない。そのことを気にしているのだろうか? しかし、四十二基ものミサイルを僅か二隻の武装商船がすべて撃ち落とせるとは思えないのだが……)
星系内限界速度で航行しているため、ミサイルを発射したとしても追いつくためにはそれ以上の速度を出す必要がある。ステルスミサイルの限界速度は〇・四Cであるため、ミサイルが到達するには五分以上掛かる。
また、ステルスミサイルの特性上、高速で飛翔すると、防御スクリーンと星間物質が反応し、ステルス性が著しく低下する。
但し、ミサイル迎撃システムである対宙レーザーの射程は一光秒以下であり、数秒間ですべてを撃ち落とさなければならないため、数が多ければ充分に有効な攻撃といえる。
(それとも主砲を使った迎撃を警戒しているのか? 第九艦隊が使ったミサイル迎撃法は帝国だけでなく、ゾンファにも知られている。だが、たった二隻では十基のミサイルを撃ち落とせるかどうかといったところだと思うのだが……)
その疑問を戦隊参謀のクリスティーナ・オハラ中佐と副官であるヴァレンタイン・ホルボーン少佐にぶつけた。
その疑問にオハラが分析を交えながら答えていく。
「准将の疑問は私も感じました。ただ、武装商船の防御スクリーンの能力がどの程度か分かりませんが、一般的に帝国艦の防御スクリーンの能力は我が国やゾンファに劣ります。このまま小惑星帯近くまで逃げられれば、帝国艦は速度を落とさざるを得ません。ですから、何らかの作戦を考えているではないでしょうか」
現状の速度は星間物質の濃度が低い空間での限界速度であるが、惑星軌道上や小惑星帯に近づけば、星間物質の濃度が上がるため、防御スクリーンに負荷が掛かる。
帝国艦はアルビオン王国やゾンファ共和国の戦闘艦に比べ、二割ほど防御スクリーンの能力が低く、速度を維持できなくなる可能性が高い。
「なるほど。逃げ切られる前に確実に敵を倒す。そのための布石を打っていると」
「はい。帝国軍はステルスミサイルの特性を最も理解している軍と言えます。具体的にどうするかまでは分かりませんが、二連射分のミサイルを有効に使うために何らかの考えがあるのではないでしょうか」
「確かにそうかもしれないな」
オハラの言葉に頷くが、まだ疑問があった。
それはなぜこのタイミングで現れたのかということだ。
帝国の戦隊がジャンプアウトした後、クリフォードはリヴォフにドゥシャー星系にやってきた理由を問い合わせていた。
しかし、返ってきた答えは、“機密事項であり、自分には回答する権限がない”という言葉だけだった。また、ヤシマの商船を騙る武装商船についても問い合わせたが、“正体不明の武装勢力”としか回答はなかった。
「いまいち帝国軍の行動の意味が読めないな」
ホルボーンはクリフォードの独り言に近い疑問に対し、自分の考えを口にした。
「我々がジャンプインした後に新たな情報を得たのではありませんか? 例えば、ヤシマ商船がゾンファの工作船であったというような」
「それにしては早すぎる。ソーン星系でのリヴォフ戦隊との距離を考えれば、我々がジャンプインした二分後にはジャンプポイントに向かって加速していることになる。これを偶然と考えるのは無理があるのではないか」
「確かにそうですね……だとすると、最初からこのタイミングを狙っていたということですか……」
ホルボーンはそう言って考え込む。
彼に代わり、オハラが疑問を整理するように考えを述べていく。
「最初から狙っていたとして目的は何なのでしょうか? 我々が待ち伏せを警戒していることはリヴォフ少将もご存じです。当然、戦闘になっていることは想定されていたでしょう。政治的な意味が何か隠されているような気がするのですが……」
オハラも最後まで考えがまとまらず、語尾が小さくなる。
(政治的な意味か……我々が襲撃を受けている状況で戦闘に介入し、我々を助ける。パレンバーグ伯爵が特使なら無理だろうが、グリースバック伯爵なら帝国に感謝する可能性は高い。しかし、他にも外交官はいるし、我々宙軍士官もいる。そのような見え透いた手を帝国が使ってくるとは思えないのだが……)
クリフォードは帝国政府が関与している可能性は低いと考えていた。
(帝国政府以外だと考えると、我々を狙う可能性があるのはゾンファか、王国内の反軍縮派だが、反軍縮派がここまで用意周到に準備できるとは思えない。いや、ゾンファであっても帝国の将官を動かすことは難しいだろう。だとすると、政治的な思惑というのは考え難いということか……)
そこで軽く頭を振る。
(情報が少なすぎて安易に判断することは危険だ。今は帝国の思惑を考えるより、今後の行動方針を決めるべきだ……)
クリフォードは頭を切り替えて指揮官用のコンソールに視線を向ける。
先ほどの戦闘でZ級駆逐艦ゾディアック43が主砲を破壊されてミサイル以外の戦闘力を失い、軽巡航艦グラスゴー451が通常空間航行機関に大きな損傷を受けている。
旗艦の盾になったリーフ級スループのオークリーフ221が中破相当のダメージを受け、他の艦も小破相当と満身創痍の状態だった。幸いなことに乗組員がいた区画に直撃はなく、軽傷者が数名出ただけで、人的被害は軽微だった。
「帝国軍に関する違和感はこの際置いておこう。もちろん警戒は続けるが、今は各艦の状況を確認し、今後の方針を決めておきたい」
戦闘終了から一時間が経ち、旗艦キャヴァンディッシュ132の応急補修はほぼ終わったかに見えたが、問題が生じていた。
艦長であるバートラムが報告を上げてきた。
「ダメージコントロール班から連絡がありました。修理はほぼ終わりましたが、超光速航行機関に軽微な損傷が見つかったとのことです。冷却系の一部に損傷がある程度で深刻なものではないんですが、機関長の見立てではパーツの交換と調整に五時間ほど掛かるらしいです」
「了解。可能な限り早急に修理してくれ」
バートラムにそう言うと、ホルボーンに指示を出す。
「ヴァル、済まないが各艦にFTLDの状況を確認させてほしい」
「了解しました、准将」
ホルボーンは即座に了解すると、各艦に連絡を入れる。
その横で聞いていたオハラは僅かに首を傾げた。
「急いでソーン星系に戻ることを想定されているのでしょうか?」
目的地であるストリボーグに向かうためにはミーロスチ星系JPを使う必要がある。その場合は、星系内の移動だけで二十五時間程度掛かるが、ソーン星系JPであれば二十分程度で移動できる。
損傷を受けた艦がいるため、ソーン星系に戻ること自体に違和感はなかったが、五時間以内に移動することを考えていることをオハラは気にしたのだ。
「分からないが、あらゆる選択肢が採れる状況にしておきたい。万が一、帝国軍が暴発した場合にすぐに離脱できるように……」
そこまで口にしたところであることに気づく。
(確かに帝国政府に我々を排除する蓋然性はない。あまりに非論理的だからだ。しかし、人間は必ずしも論理的に行動するわけではない。強い感情が論理を押し流すことはいくらでもある。サフォークのキンケイド少佐は失恋の絶望でゾンファの謀略に手を貸した。第三艦隊のリンドグレーン提督は恐怖に負けて敵前逃亡を図った。いずれも感情が理屈に優ったことによって起きている……)
重巡航艦サフォーク5の情報士、スーザン・キンケイド少佐は艦長であったサロメ・モーガン大佐との痴情のもつれでモーガンを殺し、自らも命を絶った。それだけではなく、ゾンファの情報部の謀略に手を貸し、哨戒艦隊を危機に追いやった。(第二部参照)
ハワード・リンドグレーン大将は第二次ジュンツェン会戦において敵の猛攻を受け、総司令官の命令を無視して戦線を離脱し、敵前逃亡を図っている。(第三部参照)
クリフォードはオハラに指示を出した。
「今回の任務で外交使節団が収集した帝国軍の将官に関する情報を確認してほしい。グリースバック伯には私から一言入れておく」
外交使節団の団長代理であるグラエム・グリースバック伯爵に個人用情報端末を使って連絡を入れた。グリースバックはオブザーバー席にいたが、戦闘が終了した後、放心した状態で自室に戻っていたのだ。
「我々の安全に関わる重要な情報が潜んでいる可能性があります。外交使節団が収集した情報へのアクセス権をいただきたい」
「好きにしたまえ」
以前は外務省が独自に入手した情報であると言って拒否したグリースバックだが、心ここにあらずという感じで、投げ槍に了承する。
オハラはすぐに外交使節団のデータベースにアクセスし、リヴォフの情報を見つけたが、少将クラスの情報は官報などで公表されたものしかなかった。
これはグリースバックが情報収集の重要性を理解せず、片手間に行った結果だった。
クリフォードは情報の少なさに落胆する。
(情報が少ないな。ただ、ヤシマ侵攻作戦には参加しているし、ダジボーグ星系会戦後に昇進もしている。我々と戦ったことだけは間違いないようだ。だからと言ってこれで何かが分かるわけでもないが……)
クリフォードはその情報を見つめた後、戦隊全艦に警戒を緩めることがないよう指示を出した。
クリフォード率いる第二特務戦隊とゾンファの通商破壊艦部隊との戦闘から一時間ほど経っていた。
第二特務戦隊はソーン星系ジャンプポイントから三百三十光秒ほどの場所にあり、ベクトルをJPに向けるべく、減速が完了したところだ。
ゲオルギー・リヴォフ少将率いるスヴァローグ帝国戦隊八隻は、第二特務戦隊から九百光秒ほどの位置でゾンファのディン・クー大佐が指揮するツアイバオ級通商破壊艦スウイジンとリユソンスを追撃している。
両者の距離は二十七光秒ほどだが、ゾンファ側が星系内限界速度である〇・三光速まで加速したため、五分前に射程内に入ったものの、それ以上距離は縮まっていなかった。
リヴォフ戦隊の旗艦重巡航艦メルクーリヤは十八テラワット級陽電子加速砲で二隻の通商破壊艦を攻撃しているが、最大射程二十八光秒に限りなく近く、未だに命中はない。
また、他の艦は軽巡航艦と駆逐艦であり、主砲の射程外ということで攻撃に参加していなかった。
クリフォードはその状況を見ながら、違和感を覚えていた。
(リヴォフ少将はなぜステルスミサイルを使わないのだろうか? あの戦隊なら一度に四十二基のミサイルを発射できるはずだ……)
そこで帝国艦の情報が目に入る。
(〇・三Cか……これほどの高速ではミサイルのステルス性は著しく落ちるし、速度を大きく上げられない。そのことを気にしているのだろうか? しかし、四十二基ものミサイルを僅か二隻の武装商船がすべて撃ち落とせるとは思えないのだが……)
星系内限界速度で航行しているため、ミサイルを発射したとしても追いつくためにはそれ以上の速度を出す必要がある。ステルスミサイルの限界速度は〇・四Cであるため、ミサイルが到達するには五分以上掛かる。
また、ステルスミサイルの特性上、高速で飛翔すると、防御スクリーンと星間物質が反応し、ステルス性が著しく低下する。
但し、ミサイル迎撃システムである対宙レーザーの射程は一光秒以下であり、数秒間ですべてを撃ち落とさなければならないため、数が多ければ充分に有効な攻撃といえる。
(それとも主砲を使った迎撃を警戒しているのか? 第九艦隊が使ったミサイル迎撃法は帝国だけでなく、ゾンファにも知られている。だが、たった二隻では十基のミサイルを撃ち落とせるかどうかといったところだと思うのだが……)
その疑問を戦隊参謀のクリスティーナ・オハラ中佐と副官であるヴァレンタイン・ホルボーン少佐にぶつけた。
その疑問にオハラが分析を交えながら答えていく。
「准将の疑問は私も感じました。ただ、武装商船の防御スクリーンの能力がどの程度か分かりませんが、一般的に帝国艦の防御スクリーンの能力は我が国やゾンファに劣ります。このまま小惑星帯近くまで逃げられれば、帝国艦は速度を落とさざるを得ません。ですから、何らかの作戦を考えているではないでしょうか」
現状の速度は星間物質の濃度が低い空間での限界速度であるが、惑星軌道上や小惑星帯に近づけば、星間物質の濃度が上がるため、防御スクリーンに負荷が掛かる。
帝国艦はアルビオン王国やゾンファ共和国の戦闘艦に比べ、二割ほど防御スクリーンの能力が低く、速度を維持できなくなる可能性が高い。
「なるほど。逃げ切られる前に確実に敵を倒す。そのための布石を打っていると」
「はい。帝国軍はステルスミサイルの特性を最も理解している軍と言えます。具体的にどうするかまでは分かりませんが、二連射分のミサイルを有効に使うために何らかの考えがあるのではないでしょうか」
「確かにそうかもしれないな」
オハラの言葉に頷くが、まだ疑問があった。
それはなぜこのタイミングで現れたのかということだ。
帝国の戦隊がジャンプアウトした後、クリフォードはリヴォフにドゥシャー星系にやってきた理由を問い合わせていた。
しかし、返ってきた答えは、“機密事項であり、自分には回答する権限がない”という言葉だけだった。また、ヤシマの商船を騙る武装商船についても問い合わせたが、“正体不明の武装勢力”としか回答はなかった。
「いまいち帝国軍の行動の意味が読めないな」
ホルボーンはクリフォードの独り言に近い疑問に対し、自分の考えを口にした。
「我々がジャンプインした後に新たな情報を得たのではありませんか? 例えば、ヤシマ商船がゾンファの工作船であったというような」
「それにしては早すぎる。ソーン星系でのリヴォフ戦隊との距離を考えれば、我々がジャンプインした二分後にはジャンプポイントに向かって加速していることになる。これを偶然と考えるのは無理があるのではないか」
「確かにそうですね……だとすると、最初からこのタイミングを狙っていたということですか……」
ホルボーンはそう言って考え込む。
彼に代わり、オハラが疑問を整理するように考えを述べていく。
「最初から狙っていたとして目的は何なのでしょうか? 我々が待ち伏せを警戒していることはリヴォフ少将もご存じです。当然、戦闘になっていることは想定されていたでしょう。政治的な意味が何か隠されているような気がするのですが……」
オハラも最後まで考えがまとまらず、語尾が小さくなる。
(政治的な意味か……我々が襲撃を受けている状況で戦闘に介入し、我々を助ける。パレンバーグ伯爵が特使なら無理だろうが、グリースバック伯爵なら帝国に感謝する可能性は高い。しかし、他にも外交官はいるし、我々宙軍士官もいる。そのような見え透いた手を帝国が使ってくるとは思えないのだが……)
クリフォードは帝国政府が関与している可能性は低いと考えていた。
(帝国政府以外だと考えると、我々を狙う可能性があるのはゾンファか、王国内の反軍縮派だが、反軍縮派がここまで用意周到に準備できるとは思えない。いや、ゾンファであっても帝国の将官を動かすことは難しいだろう。だとすると、政治的な思惑というのは考え難いということか……)
そこで軽く頭を振る。
(情報が少なすぎて安易に判断することは危険だ。今は帝国の思惑を考えるより、今後の行動方針を決めるべきだ……)
クリフォードは頭を切り替えて指揮官用のコンソールに視線を向ける。
先ほどの戦闘でZ級駆逐艦ゾディアック43が主砲を破壊されてミサイル以外の戦闘力を失い、軽巡航艦グラスゴー451が通常空間航行機関に大きな損傷を受けている。
旗艦の盾になったリーフ級スループのオークリーフ221が中破相当のダメージを受け、他の艦も小破相当と満身創痍の状態だった。幸いなことに乗組員がいた区画に直撃はなく、軽傷者が数名出ただけで、人的被害は軽微だった。
「帝国軍に関する違和感はこの際置いておこう。もちろん警戒は続けるが、今は各艦の状況を確認し、今後の方針を決めておきたい」
戦闘終了から一時間が経ち、旗艦キャヴァンディッシュ132の応急補修はほぼ終わったかに見えたが、問題が生じていた。
艦長であるバートラムが報告を上げてきた。
「ダメージコントロール班から連絡がありました。修理はほぼ終わりましたが、超光速航行機関に軽微な損傷が見つかったとのことです。冷却系の一部に損傷がある程度で深刻なものではないんですが、機関長の見立てではパーツの交換と調整に五時間ほど掛かるらしいです」
「了解。可能な限り早急に修理してくれ」
バートラムにそう言うと、ホルボーンに指示を出す。
「ヴァル、済まないが各艦にFTLDの状況を確認させてほしい」
「了解しました、准将」
ホルボーンは即座に了解すると、各艦に連絡を入れる。
その横で聞いていたオハラは僅かに首を傾げた。
「急いでソーン星系に戻ることを想定されているのでしょうか?」
目的地であるストリボーグに向かうためにはミーロスチ星系JPを使う必要がある。その場合は、星系内の移動だけで二十五時間程度掛かるが、ソーン星系JPであれば二十分程度で移動できる。
損傷を受けた艦がいるため、ソーン星系に戻ること自体に違和感はなかったが、五時間以内に移動することを考えていることをオハラは気にしたのだ。
「分からないが、あらゆる選択肢が採れる状況にしておきたい。万が一、帝国軍が暴発した場合にすぐに離脱できるように……」
そこまで口にしたところであることに気づく。
(確かに帝国政府に我々を排除する蓋然性はない。あまりに非論理的だからだ。しかし、人間は必ずしも論理的に行動するわけではない。強い感情が論理を押し流すことはいくらでもある。サフォークのキンケイド少佐は失恋の絶望でゾンファの謀略に手を貸した。第三艦隊のリンドグレーン提督は恐怖に負けて敵前逃亡を図った。いずれも感情が理屈に優ったことによって起きている……)
重巡航艦サフォーク5の情報士、スーザン・キンケイド少佐は艦長であったサロメ・モーガン大佐との痴情のもつれでモーガンを殺し、自らも命を絶った。それだけではなく、ゾンファの情報部の謀略に手を貸し、哨戒艦隊を危機に追いやった。(第二部参照)
ハワード・リンドグレーン大将は第二次ジュンツェン会戦において敵の猛攻を受け、総司令官の命令を無視して戦線を離脱し、敵前逃亡を図っている。(第三部参照)
クリフォードはオハラに指示を出した。
「今回の任務で外交使節団が収集した帝国軍の将官に関する情報を確認してほしい。グリースバック伯には私から一言入れておく」
外交使節団の団長代理であるグラエム・グリースバック伯爵に個人用情報端末を使って連絡を入れた。グリースバックはオブザーバー席にいたが、戦闘が終了した後、放心した状態で自室に戻っていたのだ。
「我々の安全に関わる重要な情報が潜んでいる可能性があります。外交使節団が収集した情報へのアクセス権をいただきたい」
「好きにしたまえ」
以前は外務省が独自に入手した情報であると言って拒否したグリースバックだが、心ここにあらずという感じで、投げ槍に了承する。
オハラはすぐに外交使節団のデータベースにアクセスし、リヴォフの情報を見つけたが、少将クラスの情報は官報などで公表されたものしかなかった。
これはグリースバックが情報収集の重要性を理解せず、片手間に行った結果だった。
クリフォードは情報の少なさに落胆する。
(情報が少ないな。ただ、ヤシマ侵攻作戦には参加しているし、ダジボーグ星系会戦後に昇進もしている。我々と戦ったことだけは間違いないようだ。だからと言ってこれで何かが分かるわけでもないが……)
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