スルドの声(共鳴2) terceira esperança

桜のはなびら

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 現在の具体的な状況を説明したところで、第三者からすれば、「急に説明してどうした?」程度の関心事でしかないはずだ。
 自然な流れで状況が自ずと把握されていくというのが望ましい。そういう点でも、多少見られた方が良いくらいだ。一斉にざわつかれたら収拾がつかないが、見た誰かが問うてくれれば、都度回答していくうちに正確に近い状況が伝わっていくだろう。
 
「『君に届け』読んだよ」
「え、もう⁉ すげーじゃん。ね、どうだった?」
「うん! 良かった! 貸してくれてありがとう」
「だろー? 絶対これ、みんな読むべきだよなぁ」
 
 カヨの言葉がよみがえる。
 それほど好きな物語なのに、なぜその中の人物のように振舞えないのか。
 
 ある意味素直で無邪気。
 でも、物語に出てくるような純真さは洗練された結晶やエッセンスのようなもの。それは当然のごとく穢れのない美しさで光り輝いていることだろう。見る者を魅了するのも当然だ。
 それが例え醜さや不完全さや矛盾を含ませていたとしても、神のごとき造形師たる作者の計算された設計でデザインされたキャラクターは、作者が意図した印象を読者に残す。

 現実を生き、誰かに見せるために生きているわけではないわたしたちは、正の感情も負の感情も、到底精錬なんてされていない、不純物だらけの原石や原液のようなもの。
 よほど意識しないと、在り方を近づけることすら難しいと思う。
 むしろ無邪気で素直な方が、自分の在り方を指向性を持って能動的に変えていくなんて難しいのだろう。
 
 
 それでも、間違いなく、心を打っているのだ。
 それは、表面に現れていなかったとしても、その人の価値観や考え方や人生や正確に、影響を与えている。
 
 素敵で優しくて切ない物語は、間違いなくカタちんに、瑞々しい影響を与えているはずだ。
 
 自分の手柄のように、わたしの感想を誇らしく受け止めている目の前の気の強そうな目をした女の子を見て、そう思った。
 
 そしてそれは、わたしもまた。
 
「興田くんが風早くんて、そーかなーって感じだったけど」
「あ? お? マウントか?」
「ちーがうって! 聴いてよ。わたしがああいう話の主人公みたいなんて、もっと無いなーって」
 以前ササにも言われた。恋愛漫画の主人公のようだと。
 でもそれは、立ち位置とシチュエーションが、たまたま被っただけだ。
 
 善性と善意に満ちた、愛されるべき主人公たちとは、わたしはまるで違う。
 
「まーなぁ。ヤナが主人公だったら、ヤナにイジワルしたあたしはくるみちゃんだもんなぁ」
 
 まあ、あの話の主要な登場人物の中で、誰かを無理にでも当てはめるとするなら、主人公は誰であっても、カタちんはくるみちゃんだとは思う。
 
 そして。
 
「……何気にさ、わたし、一番シンパシー感じたの、くるみちゃんかも」
 
 そのキャラクターが、わたしの考え方、または在り方に一番近い、ということでもあるのかもしれない。
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