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與田くんの恋
しおりを挟む男子と恋バナする機会なんて今まで意外となかった。
グループで遊んでいる時でも男子同士の軽口で、「おまえ誰々系みたいなの好きだよなー」とか、「今すれ違った子かわいくね?」なんてやり取りはしていたし、「うちらいんのにこっち興味なしかよ!」なんて、女子側も乗っかったりはしていたが、「誰々が好きで~~」みたいな現在進行形の恋の悩みや、過去の恋愛話、割と本気めの恋愛観なんて話題はほとんどしたことがない。
だから與田くんが初対面の頃抱いていた印象ほどにはチャラくないということも、少しずつはわかってきていたけれど、こうして直接考え方を言葉にされることで、改めて知れることがたくさんあった。
與田くんの中学時代の恋愛事情の話が続いている。
誰でも良いわけじゃなく誰もいなかったのなら、誰とも付き合わなかったことへの表現に、残念だったニュアンスを込める必要も、男子同士でつるんでいたことに後悔は無いと念を押す必要もないはずだ。
「好きな人はいたんだ?」
「んーーーーまあ、気になるのはいた……な。今になれば、それが好きだったかどうかもよくわかんないけどな」
中学生の恋心なんて、そんなものだろう。
誰よりも何よりも本気だなんて思っていたって秒で冷めることもあれば、まったく自覚もなかった気持ちが、後になって実はそれが恋だったと気づくなんてこともある。
「へえ。で、告白はしたの?」
「した」
え? 嘘? それはちょっと意外!
「そして振られたよ」
「あ、そーなんだ」
それはご愁傷さま、とまた茶化そうとしたが、驚きが続いてしまって瞬発力が鈍っている。語り口からして、過去のことと割り切っているように見える與田くんは、妙に深刻になるのは望んでいないと思えた。
「正確に言えば、告白すらさせてもらえなかったんだけどな」
呼び出したものの、呼び出し場所に来てもらえなかったのだとか。指定時間から一時間半待って、諦めたんだと笑いながら言っている。
モテ男が意外と切ない体験をしていたようだ。
今笑いながら当時を語れるなら、それもまた中学時代の苦くも青春の思い出のひとつとして刻まれた、過去の出来事となっているのだろうか。
「まあ、当時の自分の気持ちも実際のところよくわかんなかったしな。『あいつおまえに気があるらしいよ』なんて周りのやつらに言われてその気になって、なんて部分もあったと思う。なんか小学生みたいだよな。今にして思えば、そんな状態で付き合わなくて良かったのかもしれないと思っているよ」
幼い恋なんて、曖昧に始まってそこから育っていっても良いと思うけど。
興田くんは、ちゃんと気持ちが固まっていないままで誰かの心に踏み込むことは、良しと思っていないようだ。
「......その告白しようとした相手なんだけどさ............」
え、そんなことまで言ってくれるの?
「......あー......ごめん、言いかけておいてなんだよって感じだけど......」
「え、うん、良いよ? 言わなくて」
與田くんの告白(しようとした)相手。
その人のことをわたしが聞いても、わたしの側にはあまり意味がない。
言うことで與田くんにとって何かが軽くなるとか、効果があるなら聴きたい。
でも、無理をしなくてはならないのなら、それはしてほしくない。
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