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狙うひより
しおりを挟むある昼休み、掲示板の前に人だかりができていた。
「人気ファッション誌『Lumière』編集部 インターン募集」の文字が、ひよりの目に飛び込んできた。
心臓が跳ねた。憧れの雑誌。いつも読んでいた、あのページの向こう側に行けるかもしれない。
応募条件は「ファッションに対する独自の視点を持つこと」。課題はエッセイの提出だった。
ひよりは迷った。周りには、もっとセンスのある級友がたくさんいる。
だけど、その中でも最もセンスがあると思っていた的場玲奈が言ってくれた言葉があった。
衣装は意図を持ってつくられる。
その意図通りに着用されたとき、衣装と人とは、最高の関係を築けているのだ。それは衣装にとって幸福なことだ。
デザインは、センスという固定の概念を当てはめにくい言葉によって評価される。
見る者の価値観や経験によって解釈されてしまう。
そこに是非を問うのは無粋なれど、意図とは異なる解釈に基づいて評価された衣装は、不幸なのだろう。
是非ではなく、道筋を照らす灯りをともすならば?
不幸な衣装を減らしたいひよりは、言葉によって方向性を示した。
作品に添えられた諸表のようなひよりの言葉は、作品と組み合わせて作品の魅力を引き立てた。
頼まれた自分のもの以外の作品や、SNSで購入したり見かけたりした気に入った服に綴った言葉や文章が、見た者にひよりが言葉で表した服のイメージを脳内にて構築させる効果を与えていた。
「ひよりの文章、すごく好き。読んでると、服が見える気がする」
的場玲奈が、ひよりが作品に添えた文章を読んでそう話しかけた。
同級生や先生から一目置かれている玲奈。ひよりの目から見ても、玲奈のセンスも知識も技術も、クラス内では抜きん出ていた。
先端で斬新。そんな印象の玲奈が掛けてくれた言葉は素直に嬉しかった。
その言葉が、入学当初は自分の場違いさだけが浮き彫りになっていたひよりの背中を押した。
もっと、もっと。
言葉で服の良さや個性を、わかりやすく、知ってもらいたい人に知られるように、伝えていきたい。
その夜、ひよりは机に向かい、何度も書き直しながらエッセイを完成させた。
服には要素がある。形、色、素材。
そのどれもに、それが使われるに至った意図がある。
時期、使用状況や環境、快適性、機能性、ターゲット層の趣向、トレンド。
そのどれもが、語ればどこまでも掘り下げられるほどの深淵さを持つ。
その中でも今回は、感情に結びつきやすい色について、春を表す種類に限定してまとめることにした。
比較的感情に左右されやすいひよりは、だからこそ感情に作用する要素に対しては興味を持ち、注意をしていた。
タイトルは「色で語る感情のファッション」。春の色が人の心に与える影響を、自分の体験と重ねて綴った。
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