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やってみようか
しおりを挟む「んー、まあ、ちょっとおもしろそーとは思ったけどぉ」
「私は……玲奈がやるなら、やろうかな……」
美羽は玲奈の顔を見た。
玲奈が美羽の芯を垣間見て感服したように、美羽も玲奈の幅広く底の深い総合力の高さに憧れと敬意を持っていた。
玲奈の挑戦に食らいついていけば、自身の底上げになるのではという思惑があった。
「ひよりは?」
まっすぐな玲奈の瞳は、何一つ疑っていない。
「んー、そーね、やってみるかぁ」
ひよりが肯定することなど最初からわかっていたように、玲奈は満面の笑みで頷く。
「だよね。むしろひより向けの案件だと思う」
「えー、なんで? デザインとか縫製とか、全般的に私玲奈や美羽はもちろん、クラスの他の子と比べても入学前の経験値低すぎだよ? コスプレ好きな子とか結構いるし、彼女らの方が向いてるんじゃないかなぁ」
「表面的なスキルはね! ひよりの武器は誰かと感覚を共有する、共通する言語を用いた表現力じゃない? 共有だけじゃない。服は、服を表現するひよりの言葉をまとって、時に印象を、言葉を聴く者や読む者全員に強制させることもある。物語を思わせることだってある」
それができるなら、言葉で解釈したテーマや物語を、服に落とし込むという逆算だってできるよというのが、玲奈の説だった。
「少なくても、言葉の感度が高いひよりならではの、言葉から得た着想をデザインに落とし込むというアプローチがある」
それに、まったく別の論理、考え方を有しているであろうサンバチームの人たちとの、想いや意図やアイデアなどを、一度言葉に具現化して共有する段階で、祖語なく合意形成を図る上でも、言葉の読み取り能力に長けたひよりは、この案件に向いていると、玲奈は思うのだ。
「言葉……言葉ね」
ひよりは以前、玲奈から「いつからそんなに文章がうまくなったの」と尋ねられたことがあった。
前に出ようと考えられるようになったのは、玲奈がくれた言葉のおかげだ。だから、ひよりの文章を「読んでると服が見えると言ってくれたあの言葉に、支えられていたから、言葉を自信を持って扱えるようになったのだと言ったことを答えた。
でも、いつからという問いには、厳密には答えていない。美羽が言葉が受け手に与える影響を意識するようになってから、美羽は言葉の力というものが存在しているとの考え方を持って生きてきた。
時系列を問うなら、おそらくその頃からだ。
高校生の頃、国語の教師から授業で勧められた本。
課題ではないから読む義務はなくて、興味もなかったが、その教師に心酔していたように見えた同級生がさっそくその本を読んでいたのを見て、あの先生の授業の、あの先生のお勧めの、そもそも本そのものの、何がそんなに良いのかという皮肉めいた気持ちもありながら、放課後に級友と遊びに行く約束をしていて、時間調整のために訪れた図書館で見かけたその本を借りてみたのだった。
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