ポエヂア・ヂ・マランドロ 風の中の篝火

桜のはなびら

文字の大きさ
7 / 39
東風治樹

マランドロとは

しおりを挟む
 さて。
 マランドロのイズムを宿したふたり。いや、俺を含めた三人の男性ダンサーは、日常もマランドロを意識した生活を送ることになる。


 俺の目的はサンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』、通称『ソルエス』のパフォーマンスで、マランドロを中心としたマランドロショーを実施することだ。


 俺が先代から引き継ぎ代表を務める『ソルエス』は、商店街が発祥の趣味のサークルではあるが、創立時に日系ブラジル人の教えを受けた本格サンバを標榜する『エスコーラ』だ。
 エスコーラとは、要はサンバチームを表すポルトガル語だが、サンバの様式を満たしているチームが名乗る場合が多い。

『ソルエス』は、決して規模の大きいエスコーラではないが、本格サンバを名乗るにふさわしい実力を備えたダンサーや楽器奏者を有している。
 マランドロの拡充は、本格サンバたるパフォーマンスの、幅を押し広げることだろう。
 だが、それだけではない。


 東風治樹こちはるきとして、前院長から東風こちクリニックを受け継いだ二代目院長である俺。
 マランドロ・ハルとして、先代代表から『ソルエス』を引き継いだ二代目代表である俺。
 思うところがないわけではないが、それぞれ初代を意識しすぎることはなく、自然体でやっているつもりではある。

 それでも、どうしても何かの折に先代の影がチラつくことはある。先代だったならばと思うことはある。
 初代ではないことも、二代目であることも、変えることのできない事実だ。
 ならば俺は、受け継いだ偉大なものを、より雄大に、悠久に続いていくエスコーラにしていこう。


 マランドロの拡充は、単にパフォーマンスのバリエーションが増えるだけではない。
 マランドロの理念を携えた者がエスコーラに居ることでもたらされる精神性を、俺は大事にしたいと思っている。
 それは、エスコーラの軸に、パシスタを護り救け、弱者を擁護し、且つ生き様を魅せる在り様を通すことに繋がる。

 基礎は強く広大であるほどに、その上には大きな構造物が建てられるのだ。
『ソルエス』をより雄大に拡げようとするなら、必要なことだと思えた。

 それは、技術を習得する練習で身につけるものではない。
 日々の生活のなかで、そう在らんと意識をし続けることで自ずと成るものなのだ。

 さあ、心に灯そう。マランドロの火を。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

スルドの声(嚶鳴) terceira homenagem

桜のはなびら
現代文学
 大学生となった誉。  慣れないひとり暮らしは想像以上に大変で。  想像もできなかったこともあったりして。  周囲に助けられながら、どうにか新生活が軌道に乗り始めて。  誉は受験以降休んでいたスルドを再開したいと思った。  スルド。  それはサンバで使用する打楽器のひとつ。  嘗て。  何も。その手には何も無いと思い知った時。  何もかもを諦め。  無為な日々を送っていた誉は、ある日偶然サンバパレードを目にした。  唯一でも随一でなくても。  主役なんかでなくても。  多数の中の一人に過ぎなかったとしても。  それでも、パレードの演者ひとりひとりが欠かせない存在に見えた。  気づけば誉は、サンバ隊の一員としてスルドという大太鼓を演奏していた。    スルドを再開しようと決めた誉は、近隣でスルドを演奏できる場を探していた。そこで、ひとりのスルド奏者の存在を知る。  配信動画の中でスルドを演奏していた彼女は、打楽器隊の中にあっては多数のパーツの中のひとつであるスルド奏者でありながら、脇役や添え物などとは思えない輝きを放っていた。  過去、身を置いていた世界にて、将来を嘱望されるトップランナーでありながら、終ぞ栄光を掴むことのなかった誉。  自分には必要ないと思っていた。  それは。届かないという現実をもう見たくないがための言い訳だったのかもしれない。  誉という名を持ちながら、縁のなかった栄光や栄誉。  もう一度。  今度はこの世界でもう一度。  誉はもう一度、栄光を追求する道に足を踏み入れる決意をする。  果てなく終わりのないスルドの道は、誉に何をもたらすのだろうか。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

スルドの声(交響) primeira desejo

桜のはなびら
キャラ文芸
小柄な体型に地味な見た目。趣味もない。そんな目立たない少女は、心に少しだけ鬱屈した思いを抱えて生きてきた。 高校生になっても始めたのはバイトだけで、それ以外は変わり映えのない日々。 ある日の出会いが、彼女のそんな生活を一変させた。 出会ったのは、スルド。 サンバのパレードで打楽器隊が使用する打楽器の中でも特に大きな音を轟かせる大太鼓。 姉のこと。 両親のこと。 自分の名前。 生まれた時から自分と共にあったそれらへの想いを、少女はスルドの音に乗せて解き放つ。 ※表紙はaiで作成しました。イメージです。実際のスルドはもっと高さのある大太鼓です。

太陽と星のバンデイラ

桜のはなびら
キャラ文芸
〜メウコラソン〜 心のままに。  新駅の開業が計画されているベッドタウンでのできごと。  新駅の開業予定地周辺には開発の手が入り始め、にわかに騒がしくなる一方、旧駅周辺の商店街は取り残されたような状態で少しずつ衰退していた。  商店街のパン屋の娘である弧峰慈杏(こみねじあん)は、店を畳むという父に代わり、店を継ぐ決意をしていた。それは、やりがいを感じていた広告代理店の仕事を、尊敬していた上司を、かわいがっていたチームメンバーを捨てる選択でもある。  葛藤の中、相談に乗ってくれていた恋人との会話から、父がお店を継続する状況を作り出す案が生まれた。  かつて商店街が振興のために立ち上げたサンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』と商店街主催のお祭りを使って、父の翻意を促すことができないか。  慈杏と恋人、仕事のメンバーに父自身を加え、計画を進めていく。  慈杏たちの計画に立ちはだかるのは、都市開発に携わる二人の男だった。二人はこの街に憎しみにも似た感情を持っていた。  二人は新駅周辺の開発を進める傍ら、商店街エリアの衰退を促進させるべく、裏社会とも通じ治安を悪化させる施策を進めていた。 ※表紙はaiで作成しました。

スルドの声(反響) segunda rezar

桜のはなびら
キャラ文芸
恵まれた能力と資質をフル活用し、望まれた在り方を、望むように実現してきた彼女。 長子としての在り方を求められれば、理想の姉として振る舞った。 客観的な評価は充分。 しかし彼女自身がまだ満足していなかった。 周囲の望み以上に、妹を守りたいと望む彼女。彼女にとって、理想の姉とはそういう者であった。 理想の姉が守るべき妹が、ある日スルドと出会う。 姉として、見過ごすことなどできようもなかった。 ※当作品は単体でも成立するように書いていますが、スルドの声(交響) primeira desejo の裏としての性質を持っています。 各話のタイトルに(LINK:primeira desejo〇〇)とあるものは、スルドの声(交響) primeira desejoの○○話とリンクしています。 表紙はaiで作成しています

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

処理中です...