ポエヂア・ヂ・マランドロ 風の中の篝火

桜のはなびら

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高天暁

辞めた理由

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 八木さんが懸念しているようなものが、俺の退社理由ではない。それを八木さんにははっきり伝えた。
 しかし八木さんの表情はまだ明るいものにはなっていなかった。何かを考え込むように目を伏せている。

「そうですよね。主事の立場の方が私よりもご存じの事も多いですよね。その辺が理由じゃないとしたら、用地や第三の連中がうるさいから?」

 八木さんは俺が辞めた理由、原因にこだわっている。


 八木さんが言った用地は用地開発部、第三は第三事業部だ。
 今回の案件は商業施設を司る俺の所属する第一事業部が中心だが、都市開発にはマンションなどの住宅事業を司る第三事業部やそもそもの用地を獲得する用地開発部との連携は不可欠だ。

 当初は商店街に取って代わる計画で進めていたところ、土壇場で商店街との連携路線に切り替えた。
 既に動いていた用地や第三からは、当然の如く反発があった。

 市政からも方向転換に関する打診(羽龍が市側に働きかけたのだが)があり、市へは反発よりも後押しを受けた方が良いと言う判断と、コストをかけて競合と争うよりも、協働によるシナジーの方が総合的なメリットが大きいと言う二点を武器に、会社の最大利益を獲りに行くと言う論法で社長決裁を得て、強引に推し進めた。
 当然、既に進めていた計画のいくつかは、中止か変更を余儀なくされる。
 第一の案件は自らの選択によるものだから織り込み済みだが、用地と第三は不本意な思いを抱えたまま、どれだけ頭を下げただろうか。
 しかし、多少労力を割いてでも、違約金を払ってでも、路線変更の方が会社にとってメリットが大きくなるのは間違いがない。
 企業の論理としては、絶対的とは言わないが、正しい選択のひとつである。
 企業に所属する者の立場で、正しい経営判断に感情で異を唱えるならば、糾弾されるべきはそちらの方だ。
 だから俺は、何を言われても気にするつもりなど端からなかった。


「やりたいことが終わってしまったからな。今度は別のやりたいことを探そうと思って」

 佐田の内部に原因がないことを八木さんに伝えた。

「意外です。ドライなリアリストかと思ってました。でも、確かに今回の案件て主事の故郷ですもんね」

 意外と熱かったんだと言う八木さんの言葉に、曖昧に相槌を打つ。
 そうなんだ、俺は意外に熱くて湿っぽかったんだ。
 でも、その動機はおそらく八木さんが思っているものとは逆だったのだが。

「でも、次にやりたいことは決まってないんですよね?
まだ無職だし。それなら見つかるまでは続けても良かったんじゃありません?」

 要は、戻って来れないかと言う話だった。
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