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十五歳 浅草サンバカーニバル
見え方の違い
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放課後、早速アリスンと連れ立って帰路に着く。
有働くんと名波くんは今日は曲づくりで有働くんちのスタジオに寄って少し作業してから練習に向かうそうだ。
「あのふたりも仲良いよね」
わたしもそう思う。幼馴染というから、付き合いも長い。アキとウリを思い出した。彼らも、小学校の頃に抱えた鬱屈も共有して、共に目指した目的に向かって突き進んだ。
「今日もふたりでスタジオだって。でも、なんだかんだ甘えてるよね」
アリスンは有働くんのことを言っている。お父さんに反発しながらも、お父さんの設備を十全に使わせてもらっているのだから。
そこは本人も自覚はあるようで、先日お互いの親のことについて話した時の名波くんの突っ込みにも、結果で示すと言っていた。
そのためには使えるものはなんでも使うと言う、強い意志の表れだと思った。
例え一時的に砂を噛むような思いをしてでも。
己が才に不足があるとの自覚があるからこそ、その自覚を突きつけられることを覚悟の上で、心を削りながらでも与えられた環境を使い続ける選択をしているのだ。
しかし、アリスンにとっては、やっぱりそれは甘えに見えるのだ。
みんないろいろある。以前アリスンが言っていた通りだ。
いろいろと言うのはそれぞれに起こっている固有の出来事についてもあるが、それぞれの心の在り方についてでもある。そして、その在り方は見るものによって、さらにいろいろなひとつの真実、もしくは事実の一側面として、その人の人物像を映す。
有働くん父子の関係性は、わたしだったら耐えられない。親と子で好きなものが同じで、同じ道を進んでいるのに、お互いを否定するなんて、我が身のことに置き換えたら辛すぎる。
でも、名波くんに言わせれば、羨ましくもあるという。真剣に向き合ってくれたからこそ、一人前と認めてくれたからこその否定でもあるのではないかと言っていた。
有働くん自身、それで折れるのではなく、発奮し反抗し、父親とは異なるやり方で、同じ道を進もうとしている。
アリスンは、甘えと捉えている。言い方を変えれば、恵まれていると捉えている節がある。
一方、わたしは名波くん父子の関係性は、もったいないと思っている。
名波くんが拗ねたようなことさえ言わなければ、拗れることは無かったし、現状だって名波くんから折れればすぐ関係は修復できそうに思える。
名波くんは父親なんて関係ないと言っている。
でも奥底には認めさせたいという有働くんと同じ動機を持っているように思えた。
関係ないという思いが事実だとしても、認めさせたいという思いを抱えていたとしても、だから今折れたりしないというのはわからなくはない。
けれど、言わなければわからないし、言えばわかるのなら、言えば良いのにと思う。
以前アキに言われて気付けたことだ。
質問でも気持ちの吐露でも良い。
でも一方的な放言ではこちらの気持ちは伝わるかもしれないけど相手を理解することは難しい。相互理解は会話の積み重ねで生まれるのだから。
いくらすれ違いが多くても、同じ家に住んでいるのだ。
言える相手が近くに居るのなら、その分だけ理解し合えるチャンスがあるのに。
アリスンは言葉には出さなったが、家族の話になった時、わたしの境遇を知った後、アリスンにとって自慢であるはずのお父さんの話を、わたしとふたりでいるときはあまりしなくなったような気がする。
有働くんや名波くんたちの父子関係の話についても、思うところはあるようだけど、彼らに対してより、わたしへの気遣いの目線を感じた。
両親が離婚したての小学生の頃、同じクラスの子や商店街のひとたちから同情してもらうことがあった。
それを嬉しいとも嫌だとも思わなかったけど、その経験がわたしを過敏にしているだけかもしれない。
ママにとって良い選択をしてくれるのがわたしにとっても嬉しいのだから、両親の離婚にそんなに傷ついてはいないしママの再婚後の今の家族を大事に思っている。
そのようなことを言ってもあったから、アリスンもわたしに同情するそぶりは見せていない。
でも、るいぷるに言われたことを思い出す。
気付いていないだけで傷は負っているのだという話を。
アリスンが同じ考えに至っているのかはわからない。
わたしが有働くんや名波くんの話に対してしたように、それを自らのこととして捉えたらどう思うだろうかと考えたときに、わたしが「堪えられない」や「もったいない」と思ったのと同様に、アリスンにとっては両親が離婚するという経験がとても辛いものと思えたのかもしれない。
状況が人によって違うのと同じように、同じ状況でも感じ方が人によって異なってくるのだから、人を理解したり、人に理解してもらったりするのは、とても難しいのだと改めて感じた。
同時に、わかったようなつもりになってしまわないように、気を付けようと思った。
有働くんと名波くんは今日は曲づくりで有働くんちのスタジオに寄って少し作業してから練習に向かうそうだ。
「あのふたりも仲良いよね」
わたしもそう思う。幼馴染というから、付き合いも長い。アキとウリを思い出した。彼らも、小学校の頃に抱えた鬱屈も共有して、共に目指した目的に向かって突き進んだ。
「今日もふたりでスタジオだって。でも、なんだかんだ甘えてるよね」
アリスンは有働くんのことを言っている。お父さんに反発しながらも、お父さんの設備を十全に使わせてもらっているのだから。
そこは本人も自覚はあるようで、先日お互いの親のことについて話した時の名波くんの突っ込みにも、結果で示すと言っていた。
そのためには使えるものはなんでも使うと言う、強い意志の表れだと思った。
例え一時的に砂を噛むような思いをしてでも。
己が才に不足があるとの自覚があるからこそ、その自覚を突きつけられることを覚悟の上で、心を削りながらでも与えられた環境を使い続ける選択をしているのだ。
しかし、アリスンにとっては、やっぱりそれは甘えに見えるのだ。
みんないろいろある。以前アリスンが言っていた通りだ。
いろいろと言うのはそれぞれに起こっている固有の出来事についてもあるが、それぞれの心の在り方についてでもある。そして、その在り方は見るものによって、さらにいろいろなひとつの真実、もしくは事実の一側面として、その人の人物像を映す。
有働くん父子の関係性は、わたしだったら耐えられない。親と子で好きなものが同じで、同じ道を進んでいるのに、お互いを否定するなんて、我が身のことに置き換えたら辛すぎる。
でも、名波くんに言わせれば、羨ましくもあるという。真剣に向き合ってくれたからこそ、一人前と認めてくれたからこその否定でもあるのではないかと言っていた。
有働くん自身、それで折れるのではなく、発奮し反抗し、父親とは異なるやり方で、同じ道を進もうとしている。
アリスンは、甘えと捉えている。言い方を変えれば、恵まれていると捉えている節がある。
一方、わたしは名波くん父子の関係性は、もったいないと思っている。
名波くんが拗ねたようなことさえ言わなければ、拗れることは無かったし、現状だって名波くんから折れればすぐ関係は修復できそうに思える。
名波くんは父親なんて関係ないと言っている。
でも奥底には認めさせたいという有働くんと同じ動機を持っているように思えた。
関係ないという思いが事実だとしても、認めさせたいという思いを抱えていたとしても、だから今折れたりしないというのはわからなくはない。
けれど、言わなければわからないし、言えばわかるのなら、言えば良いのにと思う。
以前アキに言われて気付けたことだ。
質問でも気持ちの吐露でも良い。
でも一方的な放言ではこちらの気持ちは伝わるかもしれないけど相手を理解することは難しい。相互理解は会話の積み重ねで生まれるのだから。
いくらすれ違いが多くても、同じ家に住んでいるのだ。
言える相手が近くに居るのなら、その分だけ理解し合えるチャンスがあるのに。
アリスンは言葉には出さなったが、家族の話になった時、わたしの境遇を知った後、アリスンにとって自慢であるはずのお父さんの話を、わたしとふたりでいるときはあまりしなくなったような気がする。
有働くんや名波くんたちの父子関係の話についても、思うところはあるようだけど、彼らに対してより、わたしへの気遣いの目線を感じた。
両親が離婚したての小学生の頃、同じクラスの子や商店街のひとたちから同情してもらうことがあった。
それを嬉しいとも嫌だとも思わなかったけど、その経験がわたしを過敏にしているだけかもしれない。
ママにとって良い選択をしてくれるのがわたしにとっても嬉しいのだから、両親の離婚にそんなに傷ついてはいないしママの再婚後の今の家族を大事に思っている。
そのようなことを言ってもあったから、アリスンもわたしに同情するそぶりは見せていない。
でも、るいぷるに言われたことを思い出す。
気付いていないだけで傷は負っているのだという話を。
アリスンが同じ考えに至っているのかはわからない。
わたしが有働くんや名波くんの話に対してしたように、それを自らのこととして捉えたらどう思うだろうかと考えたときに、わたしが「堪えられない」や「もったいない」と思ったのと同様に、アリスンにとっては両親が離婚するという経験がとても辛いものと思えたのかもしれない。
状況が人によって違うのと同じように、同じ状況でも感じ方が人によって異なってくるのだから、人を理解したり、人に理解してもらったりするのは、とても難しいのだと改めて感じた。
同時に、わかったようなつもりになってしまわないように、気を付けようと思った。
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