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使命感に燃える紗杜
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紗杜の考え方は、大きな言い方をすれば、在るべきところ、結ばれるべきもの、そういうものを然るべき状態にするということだった。
そういう本能を持っているから、不動産屋として物件(場所)と人を結びつけるのが好きなのだ。
特に空き地や空き家や空き店舗と言った、その瞬間は誰も求めるもののない場所に、人という命を与える行為が好きだった。今、ここではないどこかを求めている人に、求める何かが得られるかもしれない場所を探し、時に提案するのが好きだった。
フォーカスされているようで語るべき内容の薄い街を。人口が増えて発展しているように見えて空き地をすべて居住地に変えているだけでいつか行き止まりが来そうなこの街を。自分が生まれ育った、この街を。絶対にあるはずの、まだ世界が見つけてくれていない価値を見つけ、または作って、人々が来たくなる街にしたいと活動するのが好きなのだ。
サンバを踊るのは単純に楽しいから。リズムとメロディに合わせて身体を動かすのは気持ちが良い。歌詞を理解して身体で表現するのは心地が良い。想いや思考が、音や言葉や身体を使った表現で形を成し、人に伝わり、人と繋がっていくのが、とても快い。
紗杜が好きでやって言うることは、紗杜という人間の根っこではすべて繋がっていることだった。
それに仕事だの趣味だの地域活動だの、名前を与えているだけで、やっていることややりたいことの根源は同一のもの。
そう考えた時、紗杜は、自分の人生のすべてを使って、自分の本能を全うする生き方をしているのだと思えた。
それは、とても幸せなことだとも。
仕事を失い、その過程で絶対に傷ついていたに違いない古い友人に、その人生を輝かせるような場所を用意したかった。
言葉にしてこなかった想いをたくさん抱えていそうな女の子に、伝えたい相手に想いを伝える機会を作りたかった。
静かな言葉が集まっている場所を、音で彩って多くの人に気付かせたかった。
その場所で、それぞれが抱えている記憶や想いを言葉にして、音に載せて誰かに伝えてほしかった。
すべて、自らに定義した本能の発露だ。精力的にならないわけがない。
だから。
職場の上司や仕事仲間や『ソルエス』のメンバーたちを、家族のように大切に思うのは代替行為なんかではないし。
『ソルエス』の子どもたちの面倒をみたくて可愛がりたくて何か与えたくて仕方が無くなってしまう気持ちは母性の暴走なんかではない。
と、紗杜は信じていた。
紗杜は結婚を諦めてなどいないし、彼氏だって常に募集中だ。
温まったスープと煮物をよそった器を持ってきて、午後十時のドラマを流し見しながら、マッチングアプリを起動し、職業を自衛隊と消防隊に絞った候補者を容赦なく左にスワイプしながら、「出会いないなぁ」などと呟き、残ったビールを煽るように飲み干していた。
~完~
そういう本能を持っているから、不動産屋として物件(場所)と人を結びつけるのが好きなのだ。
特に空き地や空き家や空き店舗と言った、その瞬間は誰も求めるもののない場所に、人という命を与える行為が好きだった。今、ここではないどこかを求めている人に、求める何かが得られるかもしれない場所を探し、時に提案するのが好きだった。
フォーカスされているようで語るべき内容の薄い街を。人口が増えて発展しているように見えて空き地をすべて居住地に変えているだけでいつか行き止まりが来そうなこの街を。自分が生まれ育った、この街を。絶対にあるはずの、まだ世界が見つけてくれていない価値を見つけ、または作って、人々が来たくなる街にしたいと活動するのが好きなのだ。
サンバを踊るのは単純に楽しいから。リズムとメロディに合わせて身体を動かすのは気持ちが良い。歌詞を理解して身体で表現するのは心地が良い。想いや思考が、音や言葉や身体を使った表現で形を成し、人に伝わり、人と繋がっていくのが、とても快い。
紗杜が好きでやって言うることは、紗杜という人間の根っこではすべて繋がっていることだった。
それに仕事だの趣味だの地域活動だの、名前を与えているだけで、やっていることややりたいことの根源は同一のもの。
そう考えた時、紗杜は、自分の人生のすべてを使って、自分の本能を全うする生き方をしているのだと思えた。
それは、とても幸せなことだとも。
仕事を失い、その過程で絶対に傷ついていたに違いない古い友人に、その人生を輝かせるような場所を用意したかった。
言葉にしてこなかった想いをたくさん抱えていそうな女の子に、伝えたい相手に想いを伝える機会を作りたかった。
静かな言葉が集まっている場所を、音で彩って多くの人に気付かせたかった。
その場所で、それぞれが抱えている記憶や想いを言葉にして、音に載せて誰かに伝えてほしかった。
すべて、自らに定義した本能の発露だ。精力的にならないわけがない。
だから。
職場の上司や仕事仲間や『ソルエス』のメンバーたちを、家族のように大切に思うのは代替行為なんかではないし。
『ソルエス』の子どもたちの面倒をみたくて可愛がりたくて何か与えたくて仕方が無くなってしまう気持ちは母性の暴走なんかではない。
と、紗杜は信じていた。
紗杜は結婚を諦めてなどいないし、彼氏だって常に募集中だ。
温まったスープと煮物をよそった器を持ってきて、午後十時のドラマを流し見しながら、マッチングアプリを起動し、職業を自衛隊と消防隊に絞った候補者を容赦なく左にスワイプしながら、「出会いないなぁ」などと呟き、残ったビールを煽るように飲み干していた。
~完~
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