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本章 計画と策動
慈杏の決意10
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「最近また遅くまで残っているとは思っていたけど」
新町は資料をめくりながら、「こんなのを作っていたんだ」と、ため息をついた。
ハイバックのアルミナムグループチェアに身体を預け、少し険しい顔つきで資料を見ている。
この社長室は普段は主にアイディア出しを目的にした小規模のミーティングで使われていた。
イームズの四脚のアルミチェアも、ル・コルビジェのガラス天板テーブルも、センスの粋に触れながらアイディア出しができるようにと、社員のために用意されたものだった。
新町の執務用のデスクも置かれているが滅多に使われない。新町も通常はフロアで業務を行なっていた。社員と個別の話をする時は社長室を使うが、今のように打ち合わせテーブルの方を使う場合が多かった。
「うん、良くできているよ。……細かいひとつひとつの業務の引継時期ややり方まで、具体的に計画に練りこんであって。見やすいしわかりやすいわ」
見る相手、聴く相手の立場に立った資料作成や説明のできる慈杏の能力を新町は高く買っていた。
新町は推進力と実行力はあるが計画の立案に肌理の細かさがやや欠けるところもあるため、そんな慈杏の能力は重宝していたのだった。
いつも助けられていた慈杏の能力を、このような形で見たくはなかった。
「今携わっている全ての案件は、完結するか、完全かつスムーズに引継を終えられるよう組んでいます。百合くんも渡会さんも充分育ってきました。百合くんはもちろんですが、まだ年次の浅い渡会さんもディレクターとしてやっていける実力はあると思っています」
「教育係が良かったのね」新町は少しニヤッとしていたが、嫌味などではなく素直に慈杏をリーダーとして認めていた。
「いえ、元々基本的な各能力がかなり高かったですから。その後の成長も、彼女自身の資質によるところが大きかったと思います」
弧峰チームは、慈杏をリーダーに、プロジェクトの総指揮やクライアントとのやり取り、プレゼンなどは慈杏が当たり、製作物そのものや制作時に於ける印刷会社や撮影スタジオ、カメラマンなどへのディレクションとコピーライトを広告媒体の製作会社から転職してきた社会人五年目の百合藍司、製作物に関するコンセプト設計やデザイン全般については渡会が担当し、デザイナーの立場でスポット的にプレゼンの場に立つこともあった。
中規模案件を中心にしつつ、小規模の案件を数多くこなし、社運を賭けた大規模な案件にもサポートの立ち位置で参画するなど、少人数ながら生産性と機動力の高いチームだった。数多くの案件を同時に対応する性質上、メンバーは自ずと経験値と負荷へのキャパシティが増えていた。
「資質という言葉を使うなら、あなたも負けてないよ」
慈杏は既に『リアライズ』にとって欠かせない存在であるが、潜在能力も相当で、これからの成長にも大いに期待していたのだと新町は残念そうに声を落とした。
少々自信家で堂々とした物言いをすることの多い新町としては珍しく、慈杏の心がチクリと傷んだ。
新町は資料をめくりながら、「こんなのを作っていたんだ」と、ため息をついた。
ハイバックのアルミナムグループチェアに身体を預け、少し険しい顔つきで資料を見ている。
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新町は推進力と実行力はあるが計画の立案に肌理の細かさがやや欠けるところもあるため、そんな慈杏の能力は重宝していたのだった。
いつも助けられていた慈杏の能力を、このような形で見たくはなかった。
「今携わっている全ての案件は、完結するか、完全かつスムーズに引継を終えられるよう組んでいます。百合くんも渡会さんも充分育ってきました。百合くんはもちろんですが、まだ年次の浅い渡会さんもディレクターとしてやっていける実力はあると思っています」
「教育係が良かったのね」新町は少しニヤッとしていたが、嫌味などではなく素直に慈杏をリーダーとして認めていた。
「いえ、元々基本的な各能力がかなり高かったですから。その後の成長も、彼女自身の資質によるところが大きかったと思います」
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