太陽と星のバンデイラ

桜のはなびら

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本章 計画と策動

慈杏の決意20

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 その日、慈杏とミカが得た結論としては、商店街の活性化は、ひとつの要素になるという点だ。

 自分の店が地域外の顧客への集客装置になれた時、売り上げのことではあまり一喜一憂しない父が殊の外上機嫌で珍しく酒に酔っていたのを慈杏は良く覚えていた。
 開業の時に快く迎え入れてくれて、あれこれと世話を焼いてくれた上の世代の経営者たちに少しでも恩返しができただろうか。次は自分達の世代がこの商店街を盛り上げていこうと、語り合った同世代の経営者や、数は少ないが先代から受け継いだ若い経営者や、自分と同じように外部から来て開業した若い経営者たちの助けになれただろうか。そんな思いを慈杏は父から聞かされていたのだった。

 そう、普段は冷静な父にも、若い頃は燃える情熱と、思いを一にする仲間がいた。
 この商店街を盛り上げることに賭けた青春があった。それを慈杏は知っていた。
 
 
 駅から北に伸びる『スターロード商店街』と、南に伸びる『サンロード商店街』は、かつて農地と植林、空地しかなかったこの地に、駅ができたことで自然発生的に生まれた商店街だった。
 同時に宅地も整っていくことになるこの地の発展を担ってきた両商店街は、それぞれが街の中心であるという自負を持っていた。

 街が発展するにつれ、次第に顧客を奪い合い、不毛な安売り合戦の様相を見せ始め、双方とも疲弊と徒労を伴う泥沼の消耗戦が延々と続きそうに思えた頃、その関係性に終止符を打ったのもこの世代の取り組みによってだった。南北の商店街は繋げば一大商圏となる。
 まとまることで市場を拡大したり、スケールメリットを創出して広報や仕入れ、配送費、人件費などのコストを圧縮したり、規模の大きいキャンペーンやイベントで値下げに依らない付加価値づくりや集客企画などが実現できた。
 中でも初秋の土日に日夜通しで行われる『サンスターまつり』は地域を大いに盛り上げた。『サンロード商店街』が仕切る昼の部『おひさまカーニバル』と『スターロード商店街』が仕切る夜の部『お星さまフェスティバル』には、地域のサークルや団体、学校や企業のクラブがパフォーマンスを披露していた。昨今では外部からも出演希望が届いている。

 商店街からは、南北それぞれの中心メンバーが発起人となって立ち上げたサンバチーム『ソール・エ・エストレーラ』が、昼はパレードで来場者を巻き込んで大盛り上がりし、夜はステージで魅惑のショーを披露していた。
 南北の商店街をつなぐ象徴であり、慈杏の父も母もこの日ばかりは演者として大いに張り切ったものだった。
 慈杏も幼い頃から大人たちに混ざって踊っていて、地域のちょっとしたアイドルだった。商店街の催しは、商店街が活気付くほど盛り上がっていった。
 催しは今でも大勢の見物客が訪れるが、商店街側に衰えが見えはじめていたため、ピーク時に比べれば翳りがあり、遠くない将来の衰退も予感させた。
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