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本章 計画と策動
慈杏の計画4
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その部屋は、興奮に包まれていた。
「え⁉︎ ちょっと待って⁉︎ えっ⁉︎ じあさんってサンバやってるの⁉︎ ええー⁉︎」
オフィスのミーティングルームで本日の成果や進捗の共有の打ち合わせを簡単に終えた後、プライベートなことで申し訳ないけどと切り出し、慈杏はチームのふたりにミカや若人と話した内容をかいつまんで説明していた。
「あれ? 言ってなかったっけ?」
「聞いてない! ダンスやってるって聞いてたけど、サンバなんて知らなかった! 隠し事なんてひどい! 下種! 下種の勘繰り!」
「隠してたわけじゃないけど、わざわざ言うようなものではないし。あと下種はひどくない? あと勘繰ってはいなくない?」
慈杏は困ったような顔をしているが、あしらい方は手慣れていた。
「これを言わないでなにを言うの! いつから秘密主義者になったのっ! そんな珍しいことしてたなんて……珍妙なことしてたなんて! 損してた、機会損失してた。あー! じあさんのセクシーダンス見たい! 珍奇じあさん見たーい」
「誤解されてるけど、サンバって必ずしもセクシーさや過激さが本質じゃないのよ? それに珍妙でもないわ?」
慈杏が渡会に反論をしているところに、百合も加わる。
「確かに、少し驚きました。サンバって、やるものなんですね」
「やるものよ! フラメンコやベリーダンスだって、見る人もいれば、やる人もいるでしょ?」
「よくよく考えればそうなんですけどね。
なんとなくサンバてダンスの一ジャンルいうよりコンパニオンやレースクイーンみたいな、どこかの芸能事務所に所属している人が、依頼を受けて衣装を身につけるものだと思うてました」
「まあ、知名度の割に理解が浸透してないとは思うけど。
類が言ってたセクシーダンスって感覚も誤解だけどそのように広まっている感じあるしね」
とにかくみてもらうのが早いかな、と慈杏はインターネットでふたりに動画を見せた。
画面にはパレードのシーンが流れている。
「わたしのパートはちょっと違うんだけど、一般的なイメージのやつ」
羽飾りを身につけた女性ダンサーたちが高いハイヒールで、激しくも軽やかなステップを踏みながら、しかし上半身はブレず滑らかで優雅に動いていた。
運動量も含め、これを行うには高い技術が必要だと一目で見てとれた。
衣装はサンバと聞いてイメージする通りの露出部分の多い大胆なものではあるが、渡会や百合の目には、セクシーと言うよりも、格好の良いダンスとして映った。
「ちなみにわたしのパートはこれ」
動画の中ではパレードが進んでいき、画面にはふたりのダンサーが映されていた。
煌びやかなドレスを纏った男女。
女性は大きな旗を掲げ、くるくると回ってドレスの裾や旗をはためかせている。その周辺を男性が周回していたかと思えば、女性をエスコートして移動しては、観客に旗を披露していた。移動の動きも旗の披露も美しく、ダンスの一部になっていた。
「うわー! プリンセスだ! 世界の憧れプリンセス!」
渡会が感動の声を上げる。慈杏はにこにことその様子を見ていた。
「じあさんの動画とかは上がってないの?」
「わたしは最近しばらくイベント出てなくて。それに少し前に相手役の男性が転勤で退会しちゃって」
「えー⁉︎ じゃあサンバでお祭り盛り上げるの、じあさんはどうするの?」
「えっと、ミカが相手役やってくれるって言うか、やらせることにしたから、とにかく練習して形にはできると思う」
「愛か!」
「ま、まあ、そう、なのかな」
慈杏は渡会のストレートな物言いに少し照れつつ誤魔化しつつ、
「んで、『ソルエス』がイベントの目玉となりうるパフォーマンスを実現できる前提で、広報計画は進めちゃおうと思うの。ふたりが手伝うって言ってくれるなら、媒体のディレクションとクリエイティブはお願いしたいな、と」
「御意! ランちゃんももちろん御意とのことです」
「勝手に返事すなよ。でも、ええ、やらせてもらいます」
「やるので! じあさんのサンバ見せてください! 今! なーう!」
「今はあれだけど、お祭りまでイベントはないから、練習でよければ見学に来て」
猪のように猛る渡会を宥めながら慈杏は言った。
「よっしゃ! いつっすか?」
「ええと」慈杏は手帳を見て予定を確認している。
「ほらほら⁉︎ ランちゃんもスケジュール確認せんと!」
慈杏と渡会の様子を蚊帳の外気分で眺めていた百合がいつものように渡会に巻き込まれた。
「ええ? ボクも行くんか?」
「ぼんくらめがっ! 行かないでどうする! じあパイセンのサンバ見るんでしょうが!」
「まあええけど……」
「はっ! なーにをそんな気のない素振りをしますかねぇ、白々しい。見たくてしゃーないくせにーこのどすけべやろう」
「黙れや」
「さっきも言ったけど、サンバは必ずしもセクシーさや」
「じあさんのセクシー写真百枚撮ーろおっ」
「聴いてる? そもそもわたしドレスだし、あと練習は練習着よ? そしてサンバはセクシーさや……」
その部屋を包んでいた興奮は、今しばらくは冷めることはなさそうだった。
「え⁉︎ ちょっと待って⁉︎ えっ⁉︎ じあさんってサンバやってるの⁉︎ ええー⁉︎」
オフィスのミーティングルームで本日の成果や進捗の共有の打ち合わせを簡単に終えた後、プライベートなことで申し訳ないけどと切り出し、慈杏はチームのふたりにミカや若人と話した内容をかいつまんで説明していた。
「あれ? 言ってなかったっけ?」
「聞いてない! ダンスやってるって聞いてたけど、サンバなんて知らなかった! 隠し事なんてひどい! 下種! 下種の勘繰り!」
「隠してたわけじゃないけど、わざわざ言うようなものではないし。あと下種はひどくない? あと勘繰ってはいなくない?」
慈杏は困ったような顔をしているが、あしらい方は手慣れていた。
「これを言わないでなにを言うの! いつから秘密主義者になったのっ! そんな珍しいことしてたなんて……珍妙なことしてたなんて! 損してた、機会損失してた。あー! じあさんのセクシーダンス見たい! 珍奇じあさん見たーい」
「誤解されてるけど、サンバって必ずしもセクシーさや過激さが本質じゃないのよ? それに珍妙でもないわ?」
慈杏が渡会に反論をしているところに、百合も加わる。
「確かに、少し驚きました。サンバって、やるものなんですね」
「やるものよ! フラメンコやベリーダンスだって、見る人もいれば、やる人もいるでしょ?」
「よくよく考えればそうなんですけどね。
なんとなくサンバてダンスの一ジャンルいうよりコンパニオンやレースクイーンみたいな、どこかの芸能事務所に所属している人が、依頼を受けて衣装を身につけるものだと思うてました」
「まあ、知名度の割に理解が浸透してないとは思うけど。
類が言ってたセクシーダンスって感覚も誤解だけどそのように広まっている感じあるしね」
とにかくみてもらうのが早いかな、と慈杏はインターネットでふたりに動画を見せた。
画面にはパレードのシーンが流れている。
「わたしのパートはちょっと違うんだけど、一般的なイメージのやつ」
羽飾りを身につけた女性ダンサーたちが高いハイヒールで、激しくも軽やかなステップを踏みながら、しかし上半身はブレず滑らかで優雅に動いていた。
運動量も含め、これを行うには高い技術が必要だと一目で見てとれた。
衣装はサンバと聞いてイメージする通りの露出部分の多い大胆なものではあるが、渡会や百合の目には、セクシーと言うよりも、格好の良いダンスとして映った。
「ちなみにわたしのパートはこれ」
動画の中ではパレードが進んでいき、画面にはふたりのダンサーが映されていた。
煌びやかなドレスを纏った男女。
女性は大きな旗を掲げ、くるくると回ってドレスの裾や旗をはためかせている。その周辺を男性が周回していたかと思えば、女性をエスコートして移動しては、観客に旗を披露していた。移動の動きも旗の披露も美しく、ダンスの一部になっていた。
「うわー! プリンセスだ! 世界の憧れプリンセス!」
渡会が感動の声を上げる。慈杏はにこにことその様子を見ていた。
「じあさんの動画とかは上がってないの?」
「わたしは最近しばらくイベント出てなくて。それに少し前に相手役の男性が転勤で退会しちゃって」
「えー⁉︎ じゃあサンバでお祭り盛り上げるの、じあさんはどうするの?」
「えっと、ミカが相手役やってくれるって言うか、やらせることにしたから、とにかく練習して形にはできると思う」
「愛か!」
「ま、まあ、そう、なのかな」
慈杏は渡会のストレートな物言いに少し照れつつ誤魔化しつつ、
「んで、『ソルエス』がイベントの目玉となりうるパフォーマンスを実現できる前提で、広報計画は進めちゃおうと思うの。ふたりが手伝うって言ってくれるなら、媒体のディレクションとクリエイティブはお願いしたいな、と」
「御意! ランちゃんももちろん御意とのことです」
「勝手に返事すなよ。でも、ええ、やらせてもらいます」
「やるので! じあさんのサンバ見せてください! 今! なーう!」
「今はあれだけど、お祭りまでイベントはないから、練習でよければ見学に来て」
猪のように猛る渡会を宥めながら慈杏は言った。
「よっしゃ! いつっすか?」
「ええと」慈杏は手帳を見て予定を確認している。
「ほらほら⁉︎ ランちゃんもスケジュール確認せんと!」
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