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秋の月30日(日の曜日) 祖母ちゃんが残した書物
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秋の月も最終日になり、明日から冬が始まる。
ギルドには7日間の天気予報が張り出されており、それを見て村人たちはやるべきことを確認する。
この天気予報、ギルドの職員に7日間の未来を見る事が出来るスキルを持つ人がいて、毎日、新しい天気予報を張り出してくれる。
天気が外れたことは一度もなく、村中から絶大な信頼を得ているとか。
一度だけ、その未来を見る事が出来る職員と話したことがあるけど、過去に外れたことはあるんですか?って聞いてみた。すると、
「外れたことはありません。それに、未来を見る事が出来る職員はわたし以外にもいますので、お互いに見た未来を話し合って、お天気だけ確定しているんですよ」
という返事が来た。
天気だけ…っていう言葉にちょっと違和感を感じたけど、未来を見る事が出来る職員が複数いることに驚いている。そのスキルって、珍しい物じゃないんだ。王都では聞いた事ないスキルだよ。
秋の月の最終日、ギルドの天気予報通りの大雨が降った。
前日までに収穫できるサツマイモはすべて収穫し、苗もリーフに頼んで撤去してもらった。冬は【ダイコン】と【ハクサイ】を育てることができるので、その苗植えは雨が上がったら行うことにした。
最終日は日の曜日になったので、ギルドもお休みだし、広場の店もほとんどが休みだ。
畑仕事もやることはないので、今日は一日休息を取ることにした。
ノームやリーフは自分たちの小屋でくつろいでいる。ラッツィオさんに頼んで、母屋とノームたちの小屋を繋げてもらった。こうすれば自由に行き来が出来るようになるので、雨が降っていても見に行くことができる。逆に数匹のリーフたちは母屋の中で走り回ることになってしまったが…。
初めての冒険に連れて行ったリーフ(俺はこの子に『No12』という番号を付けた。整列すると必ず左から12番目に並ぶから)は、俺の頭の上が気に入ったのか、気づけば頭の上にいる。スライムは特に重さを感じないので俺は別に構わないのだが、最近のこの子は頭の上で平気で寝ている。よく落ちないよなって感心するほどだ。スライムに吸盤でも付いているのか?
今日は祖父ちゃんが残した書物を解読することにした。
祖父ちゃんは異国の文字を器用に使っていた。どれも祖父ちゃんの故郷で使われていた文字らしい。(ってことは、祖父ちゃんは外国から来たのか?)
誰も解読できない文字の為、未だに何が書かれてあるのかはわからない。
祖父ちゃんが残した書物は全部で6冊。そのうち青い表紙と水色の表紙は一ページに絵と文字が書かれており、その絵を見る限り料理に関することが書かれているのではないかと思われる。つまりレシピってことかな?
赤い表紙の書物には、作物の絵が描かれ、そこに色々な文字を組み合わせた文らしきものが書かれているから、きっと作物を育てる為に必要な事が書いてあるのかもしれない。
紫の表紙の書物には動物や魔物の姿絵が描かれていた。これは家畜に関係のある書物かな? でも、後半は魔物らしき絵姿が描いてあるから、自分たちが倒した魔物の情報? それとも契約を結んだ魔物の飼育日記?
茶色い表紙の書物には、武器や防具の絵が描かれてある。ってことは、これは装備品を作るために必要なレシピってことになる。けど、絵は装備品だってことが分かるけど、材料と思われる文字は読めない。
黒い表紙の書物は、よくわからない機械の図面と鉱石らしき絵が描かれてあった。後半にはどこかの洞窟と思われる地図が描かれてあるけど、これがどこの洞窟かは解読できない。更に最後の方には文字がぎっしり書かれてあって、まったく解読できない。
絵を見ればなんとなく予想は出来るけど、文字が全く分からないため、祖父ちゃんが残した書物が何を描いているのかまったく理解できない。
なんで祖父ちゃんはこの国の言葉で残さなかったんだろう。故郷の文字の方が書き慣れていた…とか?
どうやって解読しよう…そう悩んでいると、
「ハヤト、いますか~?」
と、エリオの声が聞こえた。
「入ってきていいよ~!」
「はぁ~い!」
元気な声が聞こえた後、エリオが大きな籠を抱えて入ってきた。
「こんにちは、ハヤト。アンナとケイトからのお届け物ですよ」
「お届け物?」
「料理を作りすぎてしまったので、ぜひ食べてくださいって渡されまた。お昼にしませんか?」
「昼? もうそんな時間だったんだ」
「何か調べ物ですか?」
「祖父ちゃんと祖母ちゃんが残したかもしれない書物を読んでいたんだ。って言っても、文字が読めないから絵を眺めていただけなんだけどね」
「文字?」
「祖父ちゃんと祖母ちゃん、自分の故郷の文字を使ってこれらを書き残していたんだって。何が書いてあるのかはさっぱりだけど、絵を上手に書いていたから、これじゃないかな?って想像しながら眺めていたんだ」
俺は机の上に散らばっていた書物を片付けようとした。
が、エリオがたまたま開いていた紫色の書物をジッと眺め始めた。
「それはたぶん家畜の事が書いてあるんじゃないのかなって思うんだけど…」
「……そうですね。これには家畜の育て方、子供から大人になるまでの日数、どのぐらい放牧をすれば副産物の品質が上がるのか、丁寧に書かれているようですね」
「え? エリオ、読めるの?」
「いえ、文字は読めないのですが、ここに書かれていある数字は僕たちも使う文字なので、そこから予測が出来ます。ハヤト、一旦家に戻ってもいいでしょうか? 家から持ってきたい物があるんです」
「それは構わないけど…」
「すぐに戻ります!」
そういうと、エリオは部屋を飛び出して行った。
エリオはすぐに戻ってきた。戻ってきたエリオの手には一冊の書物が握られており、かなり使い古された感じの古ぼけた表紙だった。
「これ、ユーキ様から頂いた家畜の育て方が書かれている本です。もしかしたらここに書かれてある事と同じことが書いてあるかもしれません」
そう言って差し出された本は、祖父ちゃんが残した書物と同じ厚さだった。
表紙には俺も読むことができるこの国の文字で『家畜の飼い方』と書かれてある。
照らし合わせてみると、絵が描かれている位置、そこに書き加えられている文字の位置、数字の位置が同じ場所に書かれてあった。
ただ、紫色の表紙の書物は、可愛らしい丸っこい文字に対し、エリオが持ってきた本は角ばった文字で書かれてあった。
つまり、この二冊は書いてある事は同じだけど、書いている人が違うようだ。
とりあえず、先にご飯を食べようと、アンナとケイトさんから預かってきたという料理をテーブルに広げた。
「今日はオムライスと、ジャガイモを使ったサラダと、トウモロコシを使ったスープ、デザートはケイトさんお手製のプリンです」
全体的に黄色い料理が並んだが、匂いはとてもいい匂いだ。
どの料理も俺は見たことがない物だ。トウモロコシを使ったスープという物は、一度アンナの店で口にした事はある。他は王都でも見たことがない食べ物だ。
オムライスという食べ物は、アルベールの説明だと、トマトから作ったケチャップという調味料で鶏肉とタマネギ、ご飯というお米を炊き上げた物を一緒に炒めて、卵で包んだ食べ物。
サラダは茹でたジャガイモを潰して、ニンジンやキュウリと一緒に、卵から作ったマヨネーズという調味料で和えた物。
トウモロコシのスープには、ミルクを入れているらしく、とても口当たりがいい。
デザートのプリンという食べ物は、卵とミルク、砂糖だけで作っているとか。こんなに材料が少ないのに味は濃厚だし、砂糖を焦がして作ったカラメルソースがいいアクセントになっている。
どれも手軽に作れるものばかりだ。これが王都でも流行っていたら、きっと食文化も大きく変わっていただろうな~。なんでマスターは材料の多い、お金のかかる料理しか作らなかったんだろう。
そういえば、青い表紙の書物にこのオムライスが載っていた気がする。
「どうかしました?」
急に食べることに手を止めた俺に気付いたエリオが声を掛けてきた。
「このオムライスって、もしかして祖父ちゃんが皆に教えた?」
「いえ、この料理はアスカ様がアンナのお父さんに教えていました。ユーキ様は中のご飯は作る事は出来ても、こうやって器用に卵で包むことはできなかったって嘆いていたのを覚えています」
「祖母ちゃんって、他にどんな料理を教えてた?」
「そうですね……手の込んだ料理を教えていました。ユーキ様はどちらかというと、作物を焼くだけとか、煮るだけ、蒸すだけっていう感じの簡単な料理を教えていたと思います」
エリオの言葉が真実なら、あの青い表紙と水色の表紙の書物は、祖父ちゃんではなく祖母ちゃんが書き残した物。
でも、どの書物も文字の筆記が同じなんだよね。ってことは、全部祖母ちゃんが書いた? 祖父ちゃんが残したものだと思っていたけど、祖母ちゃんの遺品だったのか。
「エリオは祖父ちゃんから家畜の飼い方が書かれた本を貰ったんだよね? それは祖父ちゃんが書いた物?」
「だと思います。ユーキ様はすぐにこの国で使われている文字を書くとが出来たのですが、アスカ様は話す事と聞く事、読む事は出来ても、文字は長い間書くことが出来なかったと聞いています」
「祖母ちゃんは物覚えが悪かったのかな?」
「う~ん…そうは見えませんでした。アスカ様は一度見た物を忘れないスキルを持っていましたので、剣術の稽古でも見本を見せてもらえればすぐに真似できたそうです。ユーキ様からお聞きした事なので、本当かどうかはわかりませんが…」
「そんなスキルあるの?」
「はい。でも、文字を書く事だけは時間が掛かったそうです。一度だけ、アスカ様に文字を書くのに時間が掛かった理由をお聞きしたことがあるんですが、返ってきた言葉が『故郷の文字を忘れたくないから』って仰っていました。今の文字を書き続けていると、どうしても故郷の文字を忘れていきそうで、それが怖かったって」
「じゃあ、祖母ちゃんがこの書物を残した本当の理由は…」
「故郷の文字を忘れたくなかったのではないでしょうか?」
そんな理由だけで、祖母ちゃんの故郷の文字だけを使ったレシピ本とかを残すかな? もっと大きな理由がありそう。
「ご飯を食べ終えたら、ユーキ様が下さった本と照らし合わせて、解読してみますか?」
「そうだな。一冊解読できれば、他の書物も解読できそうだ」
「お手伝いします」
「ありがとう」
俺たちは再び料理を食べ始めた。
やっぱり気になるんだよな。
なんで祖母ちゃんは故郷の文字を使って、何冊も書物を書き上げたのか。
この国で使われている文字を使って翻訳された物は、一冊はエリオが持っているけど、他に翻訳された物を持っているのか、それとも作られていないのか。
書物の絵からして、作物の育て方だったり、武器の作り方だとは思うんだけど、それだったら翻訳して残した方がこの国の為にもなると思うんだよね。なにせ虹色カード保持者なんだから。出版したら大ヒットすると思う。
祖父ちゃんが言っていた『行くことは不可能』っていう故郷も気になる。
残されたこの書物を全部解読出来たら、なんで祖母ちゃんは故郷の文字で書き残したのか、祖父ちゃんがいう『行くことは不可能』な故郷の場所、祖父ちゃんと祖母ちゃんがどんな人生を歩んだのかが分かるかもしれない。
<つづく>
ギルドには7日間の天気予報が張り出されており、それを見て村人たちはやるべきことを確認する。
この天気予報、ギルドの職員に7日間の未来を見る事が出来るスキルを持つ人がいて、毎日、新しい天気予報を張り出してくれる。
天気が外れたことは一度もなく、村中から絶大な信頼を得ているとか。
一度だけ、その未来を見る事が出来る職員と話したことがあるけど、過去に外れたことはあるんですか?って聞いてみた。すると、
「外れたことはありません。それに、未来を見る事が出来る職員はわたし以外にもいますので、お互いに見た未来を話し合って、お天気だけ確定しているんですよ」
という返事が来た。
天気だけ…っていう言葉にちょっと違和感を感じたけど、未来を見る事が出来る職員が複数いることに驚いている。そのスキルって、珍しい物じゃないんだ。王都では聞いた事ないスキルだよ。
秋の月の最終日、ギルドの天気予報通りの大雨が降った。
前日までに収穫できるサツマイモはすべて収穫し、苗もリーフに頼んで撤去してもらった。冬は【ダイコン】と【ハクサイ】を育てることができるので、その苗植えは雨が上がったら行うことにした。
最終日は日の曜日になったので、ギルドもお休みだし、広場の店もほとんどが休みだ。
畑仕事もやることはないので、今日は一日休息を取ることにした。
ノームやリーフは自分たちの小屋でくつろいでいる。ラッツィオさんに頼んで、母屋とノームたちの小屋を繋げてもらった。こうすれば自由に行き来が出来るようになるので、雨が降っていても見に行くことができる。逆に数匹のリーフたちは母屋の中で走り回ることになってしまったが…。
初めての冒険に連れて行ったリーフ(俺はこの子に『No12』という番号を付けた。整列すると必ず左から12番目に並ぶから)は、俺の頭の上が気に入ったのか、気づけば頭の上にいる。スライムは特に重さを感じないので俺は別に構わないのだが、最近のこの子は頭の上で平気で寝ている。よく落ちないよなって感心するほどだ。スライムに吸盤でも付いているのか?
今日は祖父ちゃんが残した書物を解読することにした。
祖父ちゃんは異国の文字を器用に使っていた。どれも祖父ちゃんの故郷で使われていた文字らしい。(ってことは、祖父ちゃんは外国から来たのか?)
誰も解読できない文字の為、未だに何が書かれてあるのかはわからない。
祖父ちゃんが残した書物は全部で6冊。そのうち青い表紙と水色の表紙は一ページに絵と文字が書かれており、その絵を見る限り料理に関することが書かれているのではないかと思われる。つまりレシピってことかな?
赤い表紙の書物には、作物の絵が描かれ、そこに色々な文字を組み合わせた文らしきものが書かれているから、きっと作物を育てる為に必要な事が書いてあるのかもしれない。
紫の表紙の書物には動物や魔物の姿絵が描かれていた。これは家畜に関係のある書物かな? でも、後半は魔物らしき絵姿が描いてあるから、自分たちが倒した魔物の情報? それとも契約を結んだ魔物の飼育日記?
茶色い表紙の書物には、武器や防具の絵が描かれてある。ってことは、これは装備品を作るために必要なレシピってことになる。けど、絵は装備品だってことが分かるけど、材料と思われる文字は読めない。
黒い表紙の書物は、よくわからない機械の図面と鉱石らしき絵が描かれてあった。後半にはどこかの洞窟と思われる地図が描かれてあるけど、これがどこの洞窟かは解読できない。更に最後の方には文字がぎっしり書かれてあって、まったく解読できない。
絵を見ればなんとなく予想は出来るけど、文字が全く分からないため、祖父ちゃんが残した書物が何を描いているのかまったく理解できない。
なんで祖父ちゃんはこの国の言葉で残さなかったんだろう。故郷の文字の方が書き慣れていた…とか?
どうやって解読しよう…そう悩んでいると、
「ハヤト、いますか~?」
と、エリオの声が聞こえた。
「入ってきていいよ~!」
「はぁ~い!」
元気な声が聞こえた後、エリオが大きな籠を抱えて入ってきた。
「こんにちは、ハヤト。アンナとケイトからのお届け物ですよ」
「お届け物?」
「料理を作りすぎてしまったので、ぜひ食べてくださいって渡されまた。お昼にしませんか?」
「昼? もうそんな時間だったんだ」
「何か調べ物ですか?」
「祖父ちゃんと祖母ちゃんが残したかもしれない書物を読んでいたんだ。って言っても、文字が読めないから絵を眺めていただけなんだけどね」
「文字?」
「祖父ちゃんと祖母ちゃん、自分の故郷の文字を使ってこれらを書き残していたんだって。何が書いてあるのかはさっぱりだけど、絵を上手に書いていたから、これじゃないかな?って想像しながら眺めていたんだ」
俺は机の上に散らばっていた書物を片付けようとした。
が、エリオがたまたま開いていた紫色の書物をジッと眺め始めた。
「それはたぶん家畜の事が書いてあるんじゃないのかなって思うんだけど…」
「……そうですね。これには家畜の育て方、子供から大人になるまでの日数、どのぐらい放牧をすれば副産物の品質が上がるのか、丁寧に書かれているようですね」
「え? エリオ、読めるの?」
「いえ、文字は読めないのですが、ここに書かれていある数字は僕たちも使う文字なので、そこから予測が出来ます。ハヤト、一旦家に戻ってもいいでしょうか? 家から持ってきたい物があるんです」
「それは構わないけど…」
「すぐに戻ります!」
そういうと、エリオは部屋を飛び出して行った。
エリオはすぐに戻ってきた。戻ってきたエリオの手には一冊の書物が握られており、かなり使い古された感じの古ぼけた表紙だった。
「これ、ユーキ様から頂いた家畜の育て方が書かれている本です。もしかしたらここに書かれてある事と同じことが書いてあるかもしれません」
そう言って差し出された本は、祖父ちゃんが残した書物と同じ厚さだった。
表紙には俺も読むことができるこの国の文字で『家畜の飼い方』と書かれてある。
照らし合わせてみると、絵が描かれている位置、そこに書き加えられている文字の位置、数字の位置が同じ場所に書かれてあった。
ただ、紫色の表紙の書物は、可愛らしい丸っこい文字に対し、エリオが持ってきた本は角ばった文字で書かれてあった。
つまり、この二冊は書いてある事は同じだけど、書いている人が違うようだ。
とりあえず、先にご飯を食べようと、アンナとケイトさんから預かってきたという料理をテーブルに広げた。
「今日はオムライスと、ジャガイモを使ったサラダと、トウモロコシを使ったスープ、デザートはケイトさんお手製のプリンです」
全体的に黄色い料理が並んだが、匂いはとてもいい匂いだ。
どの料理も俺は見たことがない物だ。トウモロコシを使ったスープという物は、一度アンナの店で口にした事はある。他は王都でも見たことがない食べ物だ。
オムライスという食べ物は、アルベールの説明だと、トマトから作ったケチャップという調味料で鶏肉とタマネギ、ご飯というお米を炊き上げた物を一緒に炒めて、卵で包んだ食べ物。
サラダは茹でたジャガイモを潰して、ニンジンやキュウリと一緒に、卵から作ったマヨネーズという調味料で和えた物。
トウモロコシのスープには、ミルクを入れているらしく、とても口当たりがいい。
デザートのプリンという食べ物は、卵とミルク、砂糖だけで作っているとか。こんなに材料が少ないのに味は濃厚だし、砂糖を焦がして作ったカラメルソースがいいアクセントになっている。
どれも手軽に作れるものばかりだ。これが王都でも流行っていたら、きっと食文化も大きく変わっていただろうな~。なんでマスターは材料の多い、お金のかかる料理しか作らなかったんだろう。
そういえば、青い表紙の書物にこのオムライスが載っていた気がする。
「どうかしました?」
急に食べることに手を止めた俺に気付いたエリオが声を掛けてきた。
「このオムライスって、もしかして祖父ちゃんが皆に教えた?」
「いえ、この料理はアスカ様がアンナのお父さんに教えていました。ユーキ様は中のご飯は作る事は出来ても、こうやって器用に卵で包むことはできなかったって嘆いていたのを覚えています」
「祖母ちゃんって、他にどんな料理を教えてた?」
「そうですね……手の込んだ料理を教えていました。ユーキ様はどちらかというと、作物を焼くだけとか、煮るだけ、蒸すだけっていう感じの簡単な料理を教えていたと思います」
エリオの言葉が真実なら、あの青い表紙と水色の表紙の書物は、祖父ちゃんではなく祖母ちゃんが書き残した物。
でも、どの書物も文字の筆記が同じなんだよね。ってことは、全部祖母ちゃんが書いた? 祖父ちゃんが残したものだと思っていたけど、祖母ちゃんの遺品だったのか。
「エリオは祖父ちゃんから家畜の飼い方が書かれた本を貰ったんだよね? それは祖父ちゃんが書いた物?」
「だと思います。ユーキ様はすぐにこの国で使われている文字を書くとが出来たのですが、アスカ様は話す事と聞く事、読む事は出来ても、文字は長い間書くことが出来なかったと聞いています」
「祖母ちゃんは物覚えが悪かったのかな?」
「う~ん…そうは見えませんでした。アスカ様は一度見た物を忘れないスキルを持っていましたので、剣術の稽古でも見本を見せてもらえればすぐに真似できたそうです。ユーキ様からお聞きした事なので、本当かどうかはわかりませんが…」
「そんなスキルあるの?」
「はい。でも、文字を書く事だけは時間が掛かったそうです。一度だけ、アスカ様に文字を書くのに時間が掛かった理由をお聞きしたことがあるんですが、返ってきた言葉が『故郷の文字を忘れたくないから』って仰っていました。今の文字を書き続けていると、どうしても故郷の文字を忘れていきそうで、それが怖かったって」
「じゃあ、祖母ちゃんがこの書物を残した本当の理由は…」
「故郷の文字を忘れたくなかったのではないでしょうか?」
そんな理由だけで、祖母ちゃんの故郷の文字だけを使ったレシピ本とかを残すかな? もっと大きな理由がありそう。
「ご飯を食べ終えたら、ユーキ様が下さった本と照らし合わせて、解読してみますか?」
「そうだな。一冊解読できれば、他の書物も解読できそうだ」
「お手伝いします」
「ありがとう」
俺たちは再び料理を食べ始めた。
やっぱり気になるんだよな。
なんで祖母ちゃんは故郷の文字を使って、何冊も書物を書き上げたのか。
この国で使われている文字を使って翻訳された物は、一冊はエリオが持っているけど、他に翻訳された物を持っているのか、それとも作られていないのか。
書物の絵からして、作物の育て方だったり、武器の作り方だとは思うんだけど、それだったら翻訳して残した方がこの国の為にもなると思うんだよね。なにせ虹色カード保持者なんだから。出版したら大ヒットすると思う。
祖父ちゃんが言っていた『行くことは不可能』っていう故郷も気になる。
残されたこの書物を全部解読出来たら、なんで祖母ちゃんは故郷の文字で書き残したのか、祖父ちゃんがいう『行くことは不可能』な故郷の場所、祖父ちゃんと祖母ちゃんがどんな人生を歩んだのかが分かるかもしれない。
<つづく>
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