乙女ゲーム主人公の"姉"に転生しました!?

アオイカナト

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ティータイムの準備

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やばい。
直視できない。
不覚にもさっきからリリーには、ドキドキさせられっぱなしだ。
これではまずいと判断したわたしは目の前でにっこりと微笑むリリーから目を逸らしながら、そっと一歩後退する。
そして顔を上げて、

「えっと…クッキー以外もなにか持っていかない?」

そう提案した。
微笑んでいたリリーは、そんなわたしを見つめたまま理解不可能な生き物を見た顔をして固まった。
…。
うん。
やめて。
あの空気が耐えられなかったの!
仮にも自分が仕える家のお嬢様をそんな目で見ないで。
流石に強引過ぎる話題転換だったのはわかってたけど!
あのままだとリリアスリリーのイケメンオーラにわたしがやられてたのよ!
なんか、良くも悪くも乙女ゲームでのリリアスリリーと違うのよね…。
今の時間は、乙女ゲームが始まる前だからかしら…?

「なにか、他のお菓子ですか…。」

リリーが呟く。
見ると、先程までわたしを奇々怪々なものを見る目で固まっていたリリーが復活したようで、困ったような顔で顎に手を当てていた。
そしてチラリとわたしのほうを見る。
「お菓子はあるにはあるのですが…お夕食もちゃんと食べられますか?」

そういえばそうね。
今は午前4時。
おやつの時間には、ちょっと遅めなくらい。
確かにここで食べすぎてしまったら晩餐会に響く…。
晩餐会ってのは、このお屋敷に住んでる一族みんなでの食事…みたいなもの。
でも、すぐ撤回したら話を逸らすためにてきとーなこと言った感が倍増しそうよね…。
リリーは普通にわたしのこと心配してくれてたんだもんね、一応。
それなのに話逸らされたって思ったら流石に傷付くわよね…。
てか、わたしが酷すぎる。
ごめん、リリー。

「大丈夫よ!ユリウスお兄様もエミリーもいるし!ちょっと多かったら、リリーも一緒に食べれば良いわ!」

わたしはそう言った。
まあ、クッキー以外のお菓子も食べたいっていうのも多分にある。

リリーは少し顔をしかめて

「分かりました…。晩餐会で残さないっていうのは絶対ですからね!」

そう強く言い聞かせるように言うと、
「冷凍庫から、取ってきますので少し待っててください。」
そう言って厨房のドアから繋がる冷凍庫に入って行った。
ドアを閉める瞬間に、サーッと冷気がこちらに来るのを感じる。
このお屋敷では、冷蔵庫、冷凍庫は大きな部屋だ。
ふたつとも、めちゃくちゃ寒い食料品の倉庫って感じらしい。
わたしは入ったことないのよね。
今度入ってみようかな…。
この世界には、魔法があるから、中世風なのに冷蔵庫や冷凍庫、電子レンジのようなものまである。
魔道具ってやつらしい。
異世界、便利ね。
そんなことを考えていると、リリーが戻って来ていた。
冷凍庫、結構広いって聞いてたのに。
流石リリー、速い。
早いっていうか、速い。
「スコーンがあったので持ってきました。お二人の所へ行きましょうか。」
両手に籠を持ち上げてリリーが言う。
「そうね。ありがとう。」
わたしはそうお礼を言ってリリーと一緒に二人のところに向かう。
ベランダにつくと、ユリウスお兄様とエミリーがパラソルの下で紅茶を飲んでいた。
その隣には、執事のアベルが控えている。
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