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他国からの嵐…
えっと…マグオート
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学園からフィンレイ侯爵家の屋敷に主人達と一緒に戻る。
相変わらずの魔改造された馬車であるため、主人達と侍女、そして兄とと俺以外の専属執事は馬車に乗り込みんだんだ。
主人にお茶を出したりする必要性があるからだ。
俺達は侯爵家からいただいた自分用の馬があるから、騎馬にて護衛も兼ねての並走だ。
屋敷の方からいただいた赤毛の軍馬。兄も同じく赤毛の軍馬であるが、兄の軍馬には額に三日月のような白い毛が生えているんだ。
だが、どちらも賢くて、しかも魔物にも怯むことのない優秀さで、瞳がくりっとしていて可愛らしい。
ついつい可愛過ぎて撫でてしまうんだ。
主人であるレイチェル様を乗せたこともある。
俺の主人にも、その優しい瞳で甘えたりもする良い子なんだ。
良い気分で走らせていたら、竜人騎士であり私の番でもある男は、いつの間にか側に並走して来たんだ。
騎乗する際に、ついつい「竜人も馬に乗るんだ…。」と思わず兄と一緒に呟いてしまった。
翼がある種族であるから、飛行してついて来るのかと、その時まで思っていたんだ。
だが、彼らは…イルが言うには、「竜人として飛行しても良いが、緊急性やかなりの道が悪いなど、何らかの理由がない場合は、そのような目立つ移動でなく、従来の騎士として騎乗の移動手段を取るんだ。」と言っていた。
口下手なのかそれとも寡黙なのか、ヴィルは頷いて答えていた。
多分、口下手なんだと思う。
今まで接しての感想だ…。
だが、なるほど…。
確かに、竜人が飛行したら目立つな…。
竜体なら更に目立つ…。
「主人の護衛もできるし、番の側にもいられるし…。本当なら私の愛馬に一緒に乗りたかったのですよ。今からでもどうですか?」と言われて、兄は全力で拒否したんだ。ヴィルも頷きながら俺に促してきたから、兄と同じように断った。
侯爵家の騎士達と一緒に主人の馬車に並走して馬を走らせるのに、相乗りなどとんでもない。
「恥ずかしすぎる!」と全力で拒否。
「仕方ないですね、では…。」
とイルが呟き、ヴィルがため息を吐いていた。
そんな会話の結果、道幅が広い場合は並走でも良いと言う事になったんだ。
ヴィルの馬はイルの馬と同様な黒毛で、軍馬ではあるけれど、普通の軍馬よりもガタイが大きい感じがした。
当然足も太い。
竜人である彼らが乗るのだから、当然なのかも知れないが…。
竜人騎士らしく、勇ましく…いや気のせいだ。
いつも以上に美丈夫に見える…。
確かに美丈夫ではあるけれど…。
よし、考えるのはやめよう。
この所ほだされているせいか、自分自身がおかしい…。
余り多くを語る方ではないが、時に爆弾投下の様に甘い言葉を吐くんだ。
その威力は凄まじく…。
いや、今は主人とのことを考えて…。
そう考えて、心を落ち着かせるが、何故か彼の視線が気になる。
時々嬉しそうに微笑まれるのは、心臓に悪い…。
そう思いながら走らせ続けたんだ。
すると、いきなりヴィルから念話で話しかけられたんだ。
今この時、普通に会話をしようとしたら、機嫌が損なわれてしまうのが何となく理解してかも知れない。
よく「仕事中で、他の者もいるのですよ!何言ってるんでっすか!」と…。怒ったこともあったからな…。
『マグオート、屋敷に着いた後、俺との時間をもらえないか?』
『レイチェル様のお世話があるので無理です。』
『レイチェル様のお世話は、他の者達も居るから大丈夫。既にレイチェル様から褒美でマグオートと俺の休暇を頂いた。ギルベルト様の許可もな…。』
「えっ!?」
勢いよくヴィル方に顔を向けて、驚きの声を出してしまった。
何言ってるんですか??
向こうでは、イルと兄が心話で俺達と同じ会話をしたんだろう…。
同じような驚きの声が訊こえてきた。
慌てて前を向いて知らん顔をするが、耳元が熱いから少し赤く染まり出しているのかも知れない…。
急に何言うんだ!!
相変わらず爆弾投下し過ぎる。
いつも多くは喋らないのに…。
『エドワルド様やレイチェル様達を救出した後に、礼を言っていただいたんだ。その時、今度フィンレイ侯爵家の屋敷に帰る時、数日だけ、俺達はそれぞれの番と一緒の休みをいただきたいと願い出た。それで許可されたんだ。だから、今日のレイチェル様達の夕食後から一緒に出かけるぞ。迎えに行く。』
『何勝手に決めてるんですか!』
『マグオートが何処にいるかは、俺には直ぐにわかるから、諦めろ。』
『ぐっ…』
そう、ヴィルから俺はしっかりと番である印を付けられていた。
いわゆるマーキングと言われるものだ。
「番であるから、何かあれば心配だ。付けさせてもらえないなら囲って閉じ込めてしまうかも知れない。」と、いつも以上に饒舌に喋ったんだ。
余り喋らず、どちらかと言えば態度で示す事が多い男が敢えてそう言ってきた。
閉じ込めらるなど、許せない行為だが、付けさせないと絶対にやると言うことか…。
主人の側にいたいのに、居られないのは死ねと言われるのと同義。
よって、仕方なく受け入れたんだ。
単なる刻印ならと…。
付けられた場所は気に入らないが、髪や服の襟などを工夫すれば隠せる場所であるから…。
今は髪を緩く括って誤魔化しているんだ。
それからは、一緒に食事をする給餌行動のたびに、そこに唇を寄せて来るから…。
何度思い出しただけでも恥ずかしい…。
クソッ!!
「ある程度は理性で押さえつけているが、執着心はしっかりと私にはある」と、その時は甘く呟くから、その声まで思い出してしまった…。
兄に相談したら、兄も同じ様な場所に付けられたと言っていた。
竜人族徳裕の執着に対して少し恐怖を感じたんだ。
屋敷を購入した事は訊いていた。
場所も大体だが…。
それよりも彼の屋敷に案内したいと言われて、少し嬉しくも思ったんだ。
フィンレイ侯爵家の方に部屋を賜るのかと思ったが、竜人族は番を見つけると、特に自分用の屋敷を持ちたがるものだと言っていた。俺が主人の側に直ぐに駆けつけれる場所でなければ嫌なことを理解しているから、良い場所の屋敷を見つけて改装したとも言っていたんだ。
どこまで信じたら良いかはわからないが…。
竜人の感覚と獣人の感覚は多分違うだろうから…。
それでも、考慮してくれたのは嬉しくて、少し楽しみにもしていたんだ。
俺達一族は、俺が幼少期に住む場所を追われて散りじりになったんだ。
自然豊かな場所であったが、一族特有の能力を欲しがる者達のせいで…。
その後、結界が壊されたせいで魔獣や魔物も襲ってきて、業火の海に染まった。
もう昔のことだ…。
ついつい昔のことを思い出してしまったんだ。
「大丈夫か?」と声をかけられ手を伸ばされ、頬にそっと触れられた。
「大丈夫だ!」と、ついついそに手を払ってしまう。
「すまない…。」そう呟いた声を拾ってくれて、「大丈夫だ。」と返事をされたんだ。
主人であるレイチェル様達にも、屋敷を購入した事は伝えられており、侯爵家の御当主や家令に伝わっていた。
場所も当然。
そして、侯爵に頼み込み、購入した屋敷と侯爵家に転移の魔法陣も設置した事も説明してくれたんだ。
移動できる者は登録者のみだと…。
「そうでなければ、不届者が勝手に利用する可能性があるからな…。」と、珍しく笑顔でそう言っていた。
その表情は、何とも言えないぐらいに眩しくも感じてしまったんだ。
不覚だ…。
屋敷で雇用している者達は竜人族が多く、その特殊性で大丈夫だと言っていた。
「侯爵家では、あえて泳がせている者達がいるから、大丈夫なのか?と」問いただせば、「それも対策しているから大丈夫だ」と返事が返ってきたんだ。
竜人でしかわからない特殊な印を付けておいたと…。
「不届な事をしそうになったら…密かに排除しておく」とも言っていた。
「『竜人族の怒りを買った』としておけば良いだろう。」とも…。
「おい、少し悪い顔になってるぞ。」
「伴侶となる番の安全のためには当然だ。それに、主人達に群がるアリはに対して、時と場合においては駆除対象だと考えている。」
「そうか…。」
俺はそれだけしか返答が出来なかったんだ。
主人の許可をしっかりいただいて、ヴィルは俺を半ば強制的に空の散歩に連れ出した。
「今から行くのか?」と問えば、「そうだ。」と返ってきた。
「転移魔法陣で直ぐに移動出来るが、折角なので上空から色々な景色を見せてやりたかったんだ。」とも言ってくれた。
竜人が竜体になり背に乗せるのは伴侶と幼い自分達の子供ぐらい。
後は、選び認めた主人ぐらいだ。
それ以外を運ぶとしたら、大きな輸送用の籠に乗り込んでもらい運ぶらしい。
今回は番である俺であるから当然のように背に乗せられた。
抱き上げたまま竜体になり、魔力操作で背に乗せて、魔力操作で風圧などで落ちないようにもしてくれていたし、寒くならないようにも調節してくれていた。
グングンと上空に向かっていき、気流や魔力操作で飛ぶ。
当然翼も使うが、体力温存の飛行方法というものもあるらしい。
俺は初めて知った…。
「凄いですね。家や川などが小さく見える。山々も…。夕日が…」
そう言って喜んでしまったんだ。
『あの目の前方に見えて来たのが、俺達の屋敷だ。イルヴェールの購入した屋敷はもう少し向こうの方だ。エドワルド様やレイチェル様の生まれた領地の近くの方にしていた…。』
エドワルド様やレイチェル様の生まれた地は、侯爵家の者達や国から派遣された者達のおかげと、エドワルド様が植えられた樹によって多くの澱みが解消され、魔物や魔獣の被害が激減し、昔の美しい景色へと戻りつつある。
昔いた住民達も戻って来ているとも言っていた。
その侯爵が預かっている爵位なども踏まえて、いずれはエドワルド様が引き継ぐんだ。
現在の予定では卒業後。
レイチェル様はギルベルト様の伴侶であるから、ご両親が住まわれている屋敷に将来居を構える…。
そう言えば、実はエドワルド様が引き継がれる屋敷はまだ再建途中の所もあるらしい。
領民のための建物やその他もだ。
多くを荒らし破壊されているのだから当然だろう。
年月的なものもあるしな…。
エドワルド様達が卒業され、向こうの地に住むためにと、イルはエドワルド様が住まわれる予定の屋敷の近くにも土地を買い、屋敷という名の巣を建設しいるとも教えてくれた。
機嫌が良いのか、かなりの饒舌ぶりだった。
バサバサバサと翼を揺らして着陸用の場所に降りる。
広い中庭と屋敷のバルコニー側にも、竜人独特の場所は作りあげているらしいが、今回は中庭の方に俺は降り立つと言っていた。
屋敷の者達が出迎えてくれ、俺は驚いたんだ。
屋敷の者達が出迎えてくれ、思わず驚いてしまったんだ。
侯爵家程ではないにしろ、人数が思ったよりも多い…。
「旦那様、奥様お帰りなさいませ。」
一人の竜人が家令として挨拶してきたが…。
「ちょ…『奥様』ってどういう事ですか?」
「クククッ…俺とマグオートは運命の番。愛しい伴侶であると既に通知している。それに、何人か見知った者もいるだろう?」
確かに学園で紹介された者もいる。
家令の者や、執事、その他数名ほど…。
単なる知人とかではなかったんだ…。
ヴィルは、あわあわしている俺の腰を抱きしめ、そのまま屋敷の中に有無も言わせず誘導した。
普通は客室に案内するんじゃないのか?疲れているだろうとか、外から来たからと入浴を勧めたりと…。
あまり甘々過ぎれば、獣人族の猫科でもある自分は素早く逃げれるんじゃないかと、逃亡経路を確認したかったが…。
逃す気はないんだな…。
人族は番という概念がないため…というか、認識ができないため、少し厄介な事が起こったり起こされたりする。
学園でもそういうトラブルに巻き込まれそうになった事が俺達には何度かあった。
上手く回避してきたが、その事をどこかで情報を得たのか?
それとも…。
この国で断りきれない人物がこの国にやって来そうだという情報もある。
獣人達を好み大切にしていると言いながら、実際は…。
そんな者に俺達が目をつけられては…なんてことも考えていたのかも知れない。
侯爵家の家令から、「注意するように」と指示もあったんだ。
自分達が囚われれば、主人達にも影響が出るからと…。
主人達は優しいから…。
「フィンレイ侯爵家にも報告しているが、俺やイルヴェールは竜人だから、番のために屋敷という巣を作るんだ。今回は急ぎで購入して、少し増築などもしたけれど、気に入ってくれたらうれしい。」
そう言ったまま、ヒョイと抱き上げられてしまう。
俺はは「恥ずかしいからやめろ!」と、少し乱暴な言葉を吐いて拒否して来たが、そこは獣人と竜人の差があるから…。
「竜人独特の特徴だからな…」と言い含められて、屋敷内を案内され、ちょうど食事の準備ができたからと、食堂の方に向かい、しっかりと求愛の給餌行動をされてしまったんだ。
この行為は何度も行われて、拒否権はなかったから諦めている。
口にする食事はとても美味しかった…。
しかし、その後は納得できない。
「夜の泊まりは訊いていない」と文句を言ってみたがスルーされた。
そして、いつも以上の濃密なフェロモンにあてられたんだ…。
番独特のフェロモンで発情させられた…。
「本来の巣篭もり期間を設ける事はできないが…」
そう言って連れ込まれたのは広いベッドが置かれた寝室。
ふわふわな何とも言えない状態のまま、ベッドのシーツに沈み込む。
身体が熱く感じて、触れられる手が気持ちいい…。
言われるままに応じてしまう自分が信じられないが、抵抗できないのもまた事実。
抵抗したくないとも思ってしまっていたんだ…。
剥がされる衣服がどこにいったのかも気にならず、ただ気持ち良さだけ受け止めていった。
時よりお腹の奥が熱く感じたりもしたが…。
「マグオート。私の愛しい伴侶。私の番。絶対に離さない。逃しもしない。だが、君の望む事は極力叶えるから…。」
そう呟かれる言葉に溺れていく…。
部屋には、俺の声とは思えない声も聞こえて来るけれど…。
でも…
幸せを感じながら、溺れていったんだ。
その間、お互いの魔力が混じり合い、心地よい香りにも身を委ねていた。
そう、委ねてしまっていたんだ。
気がつけば数日が過ぎており、明日には主人と一緒に学園に戻らなければいけない事実。
しっかりと身綺麗にされて、ヴィルに連れられて屋敷に戻ってきたんだ。
身体中にいくつもの所有印のような痕が付けられていたが、俺には記憶がないからノーカウントだ。
衣服で見えない場所だし…。
ヴィルは嬉しそうにしているけれど…。
思わず緩んだ頬を思いっきりつねってやった。
「拗ねられてる姿も良いな。」などと言う口は捻ってやる。
そして、無視しまくって、専属執事兼護衛としての職務を全うするために頑張ったんだ。
「番であるマグオート…。もう事実上は妻であるけれど…。それを言うとまた拗ねるしなぁ…。はぁ…………、なんて可愛い生き物なんだ。」なんて事を時々呟いているのも無視だ。
ただ、無視し過ぎると本当に閉じ込められそうだから、仕事の補佐は頼んだりもした。
主人が婚姻して幸せになるまでは、俺はそんな事はしない。
あれはきっと幻。そう幻だと自分に言い聞かせて…。
ヴィルは嬉しそうにして見つめてきたり、手出しをして来るが…。
もう油断してついて行くものかと心に決めたんだ。
相変わらずの魔改造された馬車であるため、主人達と侍女、そして兄とと俺以外の専属執事は馬車に乗り込みんだんだ。
主人にお茶を出したりする必要性があるからだ。
俺達は侯爵家からいただいた自分用の馬があるから、騎馬にて護衛も兼ねての並走だ。
屋敷の方からいただいた赤毛の軍馬。兄も同じく赤毛の軍馬であるが、兄の軍馬には額に三日月のような白い毛が生えているんだ。
だが、どちらも賢くて、しかも魔物にも怯むことのない優秀さで、瞳がくりっとしていて可愛らしい。
ついつい可愛過ぎて撫でてしまうんだ。
主人であるレイチェル様を乗せたこともある。
俺の主人にも、その優しい瞳で甘えたりもする良い子なんだ。
良い気分で走らせていたら、竜人騎士であり私の番でもある男は、いつの間にか側に並走して来たんだ。
騎乗する際に、ついつい「竜人も馬に乗るんだ…。」と思わず兄と一緒に呟いてしまった。
翼がある種族であるから、飛行してついて来るのかと、その時まで思っていたんだ。
だが、彼らは…イルが言うには、「竜人として飛行しても良いが、緊急性やかなりの道が悪いなど、何らかの理由がない場合は、そのような目立つ移動でなく、従来の騎士として騎乗の移動手段を取るんだ。」と言っていた。
口下手なのかそれとも寡黙なのか、ヴィルは頷いて答えていた。
多分、口下手なんだと思う。
今まで接しての感想だ…。
だが、なるほど…。
確かに、竜人が飛行したら目立つな…。
竜体なら更に目立つ…。
「主人の護衛もできるし、番の側にもいられるし…。本当なら私の愛馬に一緒に乗りたかったのですよ。今からでもどうですか?」と言われて、兄は全力で拒否したんだ。ヴィルも頷きながら俺に促してきたから、兄と同じように断った。
侯爵家の騎士達と一緒に主人の馬車に並走して馬を走らせるのに、相乗りなどとんでもない。
「恥ずかしすぎる!」と全力で拒否。
「仕方ないですね、では…。」
とイルが呟き、ヴィルがため息を吐いていた。
そんな会話の結果、道幅が広い場合は並走でも良いと言う事になったんだ。
ヴィルの馬はイルの馬と同様な黒毛で、軍馬ではあるけれど、普通の軍馬よりもガタイが大きい感じがした。
当然足も太い。
竜人である彼らが乗るのだから、当然なのかも知れないが…。
竜人騎士らしく、勇ましく…いや気のせいだ。
いつも以上に美丈夫に見える…。
確かに美丈夫ではあるけれど…。
よし、考えるのはやめよう。
この所ほだされているせいか、自分自身がおかしい…。
余り多くを語る方ではないが、時に爆弾投下の様に甘い言葉を吐くんだ。
その威力は凄まじく…。
いや、今は主人とのことを考えて…。
そう考えて、心を落ち着かせるが、何故か彼の視線が気になる。
時々嬉しそうに微笑まれるのは、心臓に悪い…。
そう思いながら走らせ続けたんだ。
すると、いきなりヴィルから念話で話しかけられたんだ。
今この時、普通に会話をしようとしたら、機嫌が損なわれてしまうのが何となく理解してかも知れない。
よく「仕事中で、他の者もいるのですよ!何言ってるんでっすか!」と…。怒ったこともあったからな…。
『マグオート、屋敷に着いた後、俺との時間をもらえないか?』
『レイチェル様のお世話があるので無理です。』
『レイチェル様のお世話は、他の者達も居るから大丈夫。既にレイチェル様から褒美でマグオートと俺の休暇を頂いた。ギルベルト様の許可もな…。』
「えっ!?」
勢いよくヴィル方に顔を向けて、驚きの声を出してしまった。
何言ってるんですか??
向こうでは、イルと兄が心話で俺達と同じ会話をしたんだろう…。
同じような驚きの声が訊こえてきた。
慌てて前を向いて知らん顔をするが、耳元が熱いから少し赤く染まり出しているのかも知れない…。
急に何言うんだ!!
相変わらず爆弾投下し過ぎる。
いつも多くは喋らないのに…。
『エドワルド様やレイチェル様達を救出した後に、礼を言っていただいたんだ。その時、今度フィンレイ侯爵家の屋敷に帰る時、数日だけ、俺達はそれぞれの番と一緒の休みをいただきたいと願い出た。それで許可されたんだ。だから、今日のレイチェル様達の夕食後から一緒に出かけるぞ。迎えに行く。』
『何勝手に決めてるんですか!』
『マグオートが何処にいるかは、俺には直ぐにわかるから、諦めろ。』
『ぐっ…』
そう、ヴィルから俺はしっかりと番である印を付けられていた。
いわゆるマーキングと言われるものだ。
「番であるから、何かあれば心配だ。付けさせてもらえないなら囲って閉じ込めてしまうかも知れない。」と、いつも以上に饒舌に喋ったんだ。
余り喋らず、どちらかと言えば態度で示す事が多い男が敢えてそう言ってきた。
閉じ込めらるなど、許せない行為だが、付けさせないと絶対にやると言うことか…。
主人の側にいたいのに、居られないのは死ねと言われるのと同義。
よって、仕方なく受け入れたんだ。
単なる刻印ならと…。
付けられた場所は気に入らないが、髪や服の襟などを工夫すれば隠せる場所であるから…。
今は髪を緩く括って誤魔化しているんだ。
それからは、一緒に食事をする給餌行動のたびに、そこに唇を寄せて来るから…。
何度思い出しただけでも恥ずかしい…。
クソッ!!
「ある程度は理性で押さえつけているが、執着心はしっかりと私にはある」と、その時は甘く呟くから、その声まで思い出してしまった…。
兄に相談したら、兄も同じ様な場所に付けられたと言っていた。
竜人族徳裕の執着に対して少し恐怖を感じたんだ。
屋敷を購入した事は訊いていた。
場所も大体だが…。
それよりも彼の屋敷に案内したいと言われて、少し嬉しくも思ったんだ。
フィンレイ侯爵家の方に部屋を賜るのかと思ったが、竜人族は番を見つけると、特に自分用の屋敷を持ちたがるものだと言っていた。俺が主人の側に直ぐに駆けつけれる場所でなければ嫌なことを理解しているから、良い場所の屋敷を見つけて改装したとも言っていたんだ。
どこまで信じたら良いかはわからないが…。
竜人の感覚と獣人の感覚は多分違うだろうから…。
それでも、考慮してくれたのは嬉しくて、少し楽しみにもしていたんだ。
俺達一族は、俺が幼少期に住む場所を追われて散りじりになったんだ。
自然豊かな場所であったが、一族特有の能力を欲しがる者達のせいで…。
その後、結界が壊されたせいで魔獣や魔物も襲ってきて、業火の海に染まった。
もう昔のことだ…。
ついつい昔のことを思い出してしまったんだ。
「大丈夫か?」と声をかけられ手を伸ばされ、頬にそっと触れられた。
「大丈夫だ!」と、ついついそに手を払ってしまう。
「すまない…。」そう呟いた声を拾ってくれて、「大丈夫だ。」と返事をされたんだ。
主人であるレイチェル様達にも、屋敷を購入した事は伝えられており、侯爵家の御当主や家令に伝わっていた。
場所も当然。
そして、侯爵に頼み込み、購入した屋敷と侯爵家に転移の魔法陣も設置した事も説明してくれたんだ。
移動できる者は登録者のみだと…。
「そうでなければ、不届者が勝手に利用する可能性があるからな…。」と、珍しく笑顔でそう言っていた。
その表情は、何とも言えないぐらいに眩しくも感じてしまったんだ。
不覚だ…。
屋敷で雇用している者達は竜人族が多く、その特殊性で大丈夫だと言っていた。
「侯爵家では、あえて泳がせている者達がいるから、大丈夫なのか?と」問いただせば、「それも対策しているから大丈夫だ」と返事が返ってきたんだ。
竜人でしかわからない特殊な印を付けておいたと…。
「不届な事をしそうになったら…密かに排除しておく」とも言っていた。
「『竜人族の怒りを買った』としておけば良いだろう。」とも…。
「おい、少し悪い顔になってるぞ。」
「伴侶となる番の安全のためには当然だ。それに、主人達に群がるアリはに対して、時と場合においては駆除対象だと考えている。」
「そうか…。」
俺はそれだけしか返答が出来なかったんだ。
主人の許可をしっかりいただいて、ヴィルは俺を半ば強制的に空の散歩に連れ出した。
「今から行くのか?」と問えば、「そうだ。」と返ってきた。
「転移魔法陣で直ぐに移動出来るが、折角なので上空から色々な景色を見せてやりたかったんだ。」とも言ってくれた。
竜人が竜体になり背に乗せるのは伴侶と幼い自分達の子供ぐらい。
後は、選び認めた主人ぐらいだ。
それ以外を運ぶとしたら、大きな輸送用の籠に乗り込んでもらい運ぶらしい。
今回は番である俺であるから当然のように背に乗せられた。
抱き上げたまま竜体になり、魔力操作で背に乗せて、魔力操作で風圧などで落ちないようにもしてくれていたし、寒くならないようにも調節してくれていた。
グングンと上空に向かっていき、気流や魔力操作で飛ぶ。
当然翼も使うが、体力温存の飛行方法というものもあるらしい。
俺は初めて知った…。
「凄いですね。家や川などが小さく見える。山々も…。夕日が…」
そう言って喜んでしまったんだ。
『あの目の前方に見えて来たのが、俺達の屋敷だ。イルヴェールの購入した屋敷はもう少し向こうの方だ。エドワルド様やレイチェル様の生まれた領地の近くの方にしていた…。』
エドワルド様やレイチェル様の生まれた地は、侯爵家の者達や国から派遣された者達のおかげと、エドワルド様が植えられた樹によって多くの澱みが解消され、魔物や魔獣の被害が激減し、昔の美しい景色へと戻りつつある。
昔いた住民達も戻って来ているとも言っていた。
その侯爵が預かっている爵位なども踏まえて、いずれはエドワルド様が引き継ぐんだ。
現在の予定では卒業後。
レイチェル様はギルベルト様の伴侶であるから、ご両親が住まわれている屋敷に将来居を構える…。
そう言えば、実はエドワルド様が引き継がれる屋敷はまだ再建途中の所もあるらしい。
領民のための建物やその他もだ。
多くを荒らし破壊されているのだから当然だろう。
年月的なものもあるしな…。
エドワルド様達が卒業され、向こうの地に住むためにと、イルはエドワルド様が住まわれる予定の屋敷の近くにも土地を買い、屋敷という名の巣を建設しいるとも教えてくれた。
機嫌が良いのか、かなりの饒舌ぶりだった。
バサバサバサと翼を揺らして着陸用の場所に降りる。
広い中庭と屋敷のバルコニー側にも、竜人独特の場所は作りあげているらしいが、今回は中庭の方に俺は降り立つと言っていた。
屋敷の者達が出迎えてくれ、俺は驚いたんだ。
屋敷の者達が出迎えてくれ、思わず驚いてしまったんだ。
侯爵家程ではないにしろ、人数が思ったよりも多い…。
「旦那様、奥様お帰りなさいませ。」
一人の竜人が家令として挨拶してきたが…。
「ちょ…『奥様』ってどういう事ですか?」
「クククッ…俺とマグオートは運命の番。愛しい伴侶であると既に通知している。それに、何人か見知った者もいるだろう?」
確かに学園で紹介された者もいる。
家令の者や、執事、その他数名ほど…。
単なる知人とかではなかったんだ…。
ヴィルは、あわあわしている俺の腰を抱きしめ、そのまま屋敷の中に有無も言わせず誘導した。
普通は客室に案内するんじゃないのか?疲れているだろうとか、外から来たからと入浴を勧めたりと…。
あまり甘々過ぎれば、獣人族の猫科でもある自分は素早く逃げれるんじゃないかと、逃亡経路を確認したかったが…。
逃す気はないんだな…。
人族は番という概念がないため…というか、認識ができないため、少し厄介な事が起こったり起こされたりする。
学園でもそういうトラブルに巻き込まれそうになった事が俺達には何度かあった。
上手く回避してきたが、その事をどこかで情報を得たのか?
それとも…。
この国で断りきれない人物がこの国にやって来そうだという情報もある。
獣人達を好み大切にしていると言いながら、実際は…。
そんな者に俺達が目をつけられては…なんてことも考えていたのかも知れない。
侯爵家の家令から、「注意するように」と指示もあったんだ。
自分達が囚われれば、主人達にも影響が出るからと…。
主人達は優しいから…。
「フィンレイ侯爵家にも報告しているが、俺やイルヴェールは竜人だから、番のために屋敷という巣を作るんだ。今回は急ぎで購入して、少し増築などもしたけれど、気に入ってくれたらうれしい。」
そう言ったまま、ヒョイと抱き上げられてしまう。
俺はは「恥ずかしいからやめろ!」と、少し乱暴な言葉を吐いて拒否して来たが、そこは獣人と竜人の差があるから…。
「竜人独特の特徴だからな…」と言い含められて、屋敷内を案内され、ちょうど食事の準備ができたからと、食堂の方に向かい、しっかりと求愛の給餌行動をされてしまったんだ。
この行為は何度も行われて、拒否権はなかったから諦めている。
口にする食事はとても美味しかった…。
しかし、その後は納得できない。
「夜の泊まりは訊いていない」と文句を言ってみたがスルーされた。
そして、いつも以上の濃密なフェロモンにあてられたんだ…。
番独特のフェロモンで発情させられた…。
「本来の巣篭もり期間を設ける事はできないが…」
そう言って連れ込まれたのは広いベッドが置かれた寝室。
ふわふわな何とも言えない状態のまま、ベッドのシーツに沈み込む。
身体が熱く感じて、触れられる手が気持ちいい…。
言われるままに応じてしまう自分が信じられないが、抵抗できないのもまた事実。
抵抗したくないとも思ってしまっていたんだ…。
剥がされる衣服がどこにいったのかも気にならず、ただ気持ち良さだけ受け止めていった。
時よりお腹の奥が熱く感じたりもしたが…。
「マグオート。私の愛しい伴侶。私の番。絶対に離さない。逃しもしない。だが、君の望む事は極力叶えるから…。」
そう呟かれる言葉に溺れていく…。
部屋には、俺の声とは思えない声も聞こえて来るけれど…。
でも…
幸せを感じながら、溺れていったんだ。
その間、お互いの魔力が混じり合い、心地よい香りにも身を委ねていた。
そう、委ねてしまっていたんだ。
気がつけば数日が過ぎており、明日には主人と一緒に学園に戻らなければいけない事実。
しっかりと身綺麗にされて、ヴィルに連れられて屋敷に戻ってきたんだ。
身体中にいくつもの所有印のような痕が付けられていたが、俺には記憶がないからノーカウントだ。
衣服で見えない場所だし…。
ヴィルは嬉しそうにしているけれど…。
思わず緩んだ頬を思いっきりつねってやった。
「拗ねられてる姿も良いな。」などと言う口は捻ってやる。
そして、無視しまくって、専属執事兼護衛としての職務を全うするために頑張ったんだ。
「番であるマグオート…。もう事実上は妻であるけれど…。それを言うとまた拗ねるしなぁ…。はぁ…………、なんて可愛い生き物なんだ。」なんて事を時々呟いているのも無視だ。
ただ、無視し過ぎると本当に閉じ込められそうだから、仕事の補佐は頼んだりもした。
主人が婚姻して幸せになるまでは、俺はそんな事はしない。
あれはきっと幻。そう幻だと自分に言い聞かせて…。
ヴィルは嬉しそうにして見つめてきたり、手出しをして来るが…。
もう油断してついて行くものかと心に決めたんだ。
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