122 / 250
悪役令嬢回避
第二皇子の苦悩
しおりを挟む
第二皇子として、私は皇太子である兄上を支えるべくして頑張ってきたんだ。
なのに、聖女がやってくる前も、やって来た後も、とにかく色々と問題が起こり過ぎていた。
一番下の弟は、私の側近候補で幼馴染の親友であるフィンレイ侯爵家の長男と次男の婚約者達に恋慕して、ついに拗らせ過ぎてやらかすし、すぐ下の妹は、弟可愛さにやらかした。
おかげで二人に愛想を尽かされて、側近候補を辞退されたんだ。
私にとって信用できる二人にだ。
一人は侯爵家の継承者であるから仕方ないとは思っていたけれど、まさか二人ともとはね…。
皇王である父上から小言を言われるし…。
兄上からは可哀想な弟って目で見られるしでさ…。
本当に参るよ…。
それが何とか修正できたと思えば、我が国から北のオーベルムハイム国が不穏な動きをしてきたんだ。
怪しい動きがあるとは報告をもらっていたんだけどね…。
我が国で『聖女召喚の儀式』を執り行うかどうかの議論は以前からあった。
この世界には普通に魔素が存在している。
魔素が淀み澱めば、大きな災いが起こるともされていたんだ。
澱む原因はやはり負の感情などと同時に、あらゆる汚れが溜まる事で起こるんだ…。
時に人々の心が歪んで大きな戦争が起こったり、魔獣や魔物が凶暴化。人類が滅亡するとも言われていた。
実際に古代文明はそれで滅び、生き残った子孫が今の自分達だとされていたんだ。
その後も、オーベルムハイム国より更に北にあった滅んだ国は、今では伝説のように語り継がれているんだが、あれも結局は魔素の澱みが原因だ…。
数百年かそれ以上かで何度も起こり、何処かの国に現れた聖なる存在で浄化されたりしてきたんだ。その存在は、『聖女』であったり、『神子』『巫女』と色々と呼ばれた存在だったりだ…。
この世界で生まれて来たり、何処からか現れたりしていた存在なんだが、なぜか危機的状態で現れなかった時もあったようだ。理由はわからない。神などの別次元の存在でないと理解できないんじゃないかって思ってる。
それを打開する方法として過去に色々と研究されて来たようだが、失敗も多く、禁忌とされる古代魔法具•魔道具もその一つだし、神殿側で秘匿とされる『聖女召喚の儀式』もその一つだった。
我が国では故アルガスト伯爵の治めていた領地がいつの間にかその被害にあっていたんだ。
報告がかなり遅れていて、それはある人物が故意に行ったと判明された。
魔獣や魔物が平然と彷徨き、凶暴化しているとフィンレイ侯爵家から報告が上がったんだ。
直ぐに封鎖し、時間をかけて討伐などをおこなってきたんだ。
フィンレイ侯爵家が主となって…。
それも、不思議と我が国は落ち着いて来たが、他国ではまだまだ不十分で、特に被害が出ているらしいオーベルムハイム国が我が国に圧力をかけて来たんだ。不穏な動きをして脅し的行為を行って…。
フィンレイ侯爵家からいろんな情報が国に提出されて、驚きを隠せなかった。
フィンレイ侯爵家は我が皇族家と同じぐらい古くからある貴族家だ。しかも、皇族との繋がりも強く信頼を置ける存在。これ以上不興をかうと、我が国から離脱して独立国家をたてられそうだ。
だから、ある程度の願いは受け入れるようにと父上から言い聞かされていたんだ。
国が更に安定して来たが、彼の国の暴走や周辺諸国の希望も強く、実際聖女の存在も確認できないため、『聖女召喚の儀式』の準備はされて行ったんだ。
特別な秘技であるため、多くの魔力も必要であるし、その力を別の世界に繋げるために星の配置なども関係していたんだ…。
「もう、中止してもいいんじゃないか?」って意見が出た時、勝手に暴走する者がやはり出てきて、魔法陣が起動してしまったんだ。
一度起動したら止める事はできない。
そうして慌ててその場に皆を集めれば、異世界から渡って来られたんだ。
成功したと言ってもいいんだろう。
気持ち的にはやるせないが…。
この世界の都合で他所の世界から強制的に連れてくるんだ。
いくらその人物の力が必要だからって、納得できるものではなかった。
だが、来ていただいたのだから、丁重にもてなして協力を願う必要性がある。
我が国では必要ではなくなってきたが、周辺諸国では必要なんだ。
よって、聖女と思われる女性を直ぐに別室に案内して説明したんだ。
後の報告で、もう一人いたらしいが、なぜかその人物が教皇のいなくなった大切な女性だと言うから、その女性の事は教皇にお任せしたんだ。
聖女は一人でいい。
二人もいたら、もっとややこしい事になると判断してね…。
その判断は半分正解で半分間違いであったんだ。
まさかこの聖女に、こんなに振り回されると誰が思うのだろうか?
時々訳のわからない事を言い出して困惑させられるが、全てが間違いではないので見守る事にした。
害が有れば別だが、コレぐらいなら許容範囲だろうとね…。
実際に周辺諸国では多くの場所が浄化されていき、落ち着いていっていたんだ。
ただ、我が国においては別。
学園に行きたいと言い出し、そのぐらいはと思えば、私の三人の友人達を探し回る。一人には付き纏って、私はかなり抗議されたんだ。二人は上手くかわせていたから会う事がなく、苦言を言われることもないと安心していたら、ついにこの二人からも言われるようになったんだ。
しかも、その時には妄想癖が強くなり、確かに『聖女』ではあるが、「自分はヒロインで、全ての者に愛される存在だ」とか、「ハーレムルートを目指しているのに、どうして?」とか言い出した時には、空いた口が塞がらなかった。一緒に浄化の旅に出ていた三人の王子が聖女をチヤホヤしたのも不味い。
自国を早く清浄化させたい気持ちで意図的にそうされてきたんだろうがな…。
特に例の国、オーベルムハイム国の第二王子ジュディオン•オーベルムハイムの動きがおかしいと思ったんだ。
彼は第二王子であるが、側室の子。しかも母親が聖職者だ。
もしかしたら、例の青銅の鏡も彼の差金か?
そう思い調べ上げたんだ。
結果的にも、断言出来るところまでは行き着けなかったが、黒に近いグレーだ。
それに、この男には不思議なことも多かった。
聖女を密かに洗脳しているのでは?とも思える節もあったしね…。
で、それらも踏まえて、友人であるギルとアシュを生徒会室に呼んだんだ。
結果的に、最悪な悲劇を呼んでしまうことになったんだがなぁ…。
あろう事か、聖女がギルとアルの大切な存在に手を出したんだ。
風魔法を使って声を拾ったが、とんでもない暴言の数々だ。
コレを一体どう収束させていけば良い?
頭の中をフル回転させ、学園長に緊急報告。魔力封じの道具もありったけ持ってきてもらうように依頼。
神殿にも聖女が魔素の影響で混乱しているから、緊急確保して送る事を通知。
フィンレイ侯爵家にも緊急招集。詫びは後でと付け加え、騎士団達も呼び寄せたんだ。
聖女の馬鹿げた暴言がこれ以上拡散させないように多重結界を張り巡らせて、結構ヘトヘトになるが、まだやる事が多くある。
侍従クラスから獣人二人が、ものすごい勢いで駆けていくことを魔力感知で確認。
聖女の力とぶつかってか、ガラスが割れるような音がして、周りを囲っていた者達が脱力し出すのを感じた。
聖女から主人を守ろうと動いたんだろうが…。
次に留学生として学園に受け入れていた三人の王子が魔力攻撃。
嘘だろう?教室内であり得ない!!
そこはフィンレイ侯爵家の秘宝の二人が何とか阻止してくれているが、かなり危ない状態だ…。
不味いと、全速力でギルとアシュを追いかけてとにかく走ったんだ。
そして、目的の場所周辺には多くの人だかり。
直ぐに皇子としての権限で道を開けさせ掻き分けていくと…
ギルの婚約者である女生徒と、この二人の侍従であろう獣人二人を、アシュの婚約者が庇い突き飛ばし…
乱心した聖女が持つ双剣がその身体に吸い込まれるように刺さった…。
嘘だろう!?
血飛沫が上がり、当然周りから悲鳴が湧き起こる。
乱心した聖女の側には、留学生である三人の王子達が呆然としていた。
その三人が、どんな理由でか聖女を守り攻撃したのであろう…
その場所は、傷ついているこの二人が、無意識に力で守ったんだ。
ここに来るまでに聞こえてきたし、感じ取っていたんだ。
そして、証拠とも言える魔力の残滓が残されていたんだ。
ふざけるなよ!教室内で攻撃魔法などあり得ない!!
それに…周囲の女生徒達は意識なく倒れているし、男子生徒は何かの力で圧をかけられ、急に解除されたようで、身体が崩れるように床に座り込んでいた。
向こうにいるのはこの子達の友人だ。情報は入っているから知っている。
何とか手を伸ばして突き飛ばされた三人を受け止めようとしていたのが見てとれた…。
全てがスローモーションのようにゆっくりと見えるが、だからと言って…。
次の瞬間、エド君だったよね。彼は自分に刺さった剣を一本抜いて自分の目に切先を…
彼と契約している獣人が急いでそれを止めようとした。
あれは例の幻と言われている獣人の…
わずかにズレたようだが、先は彼の瞳をしっかりと傷つけたようで、そこからも血が…
侍従は刺さった剣を全て抜き、忌々しく遠くに捨てるようにして投げ、カランカランと音がしたんだ。
急いで止血しようとしてくれているが、血が止まる事は…
「エル!!」
「レイン!!」
そこで友人の二人が悲痛な叫びで呼びかけていた。
血に濡れた彼を抱きしめて…。
一人は意識がない彼女を…。
背後で笑い転げる聖女。彼女が無意識に魔力をまた発動させていた。
それは闇…。
不味いと、全力で聖女からの魔力攻撃を妨害する。
更に聖女の魔力を抑えこみ、ちょうど騎士団の者も駆けつけて、周りが一気に脱力し出した。
学園長が魔力封じの魔道具を聖女にいくつもつけ、他国の王子二人を連れて出て行った。
とりあえず、終息させないといけない。
何故か一人だけ残った王子が双剣を手にして自分の空間魔法であるアイテムボックスに投げ入れていたようだが…それどころではない…。
アシュは必死で彼の傷を塞ごうとするも、血も止まらない…。
刺したのは例の双剣の聖剣だ。
魔力を吸収して傷を塞ぎにくくするんだアレは…。
床には血溜まりが増えていく…。
涙が溢れて止まらない。
彼の悲痛な叫びが伝わってくるようだ。
何で俺は側にいなかった…
何でエルが…
何で何で何で…………………。
そう叫んでいるのがわかる…。
「兄様…ごめんなさい…。」
彼はアシュを心配をかけないように、笑顔を見せていた。
一瞬私もドキッとしたが…
そのままさらに顔色を無くし、力が抜けて…
救護班が彼を渡すように言っているが、拒否して抱きしめて、更に多くの魔力を彼に送り続けるようだ。
私にはどうしようもない…。
ただ彼の好きなようにさせてやる方が良いようにも思えてしまったんだ…。
「俺から奪わないでくれ~~~~!!!」
悲痛の叫びを聞き、そこでフィンレイ侯爵達が駆けつけてきた。
驚きと悲しみと怒りが湧き起こる…
すると、侯爵の背後に…静寂な怒りを抑え込んで現れた存在がいた。
アレは怒らせてはいけない存在だ…。
その存在が…
『この国の皇子よ。今回の事、そなたらが全て我が納得できるよう終息させよ。でなければ、この国がどうなろうと知らぬからな…』
頭の中にそう響き渡ったんだ。
そして、フィンレイ侯爵家の者達の姿が消えたんだ。
多分、あの存在がどこかに連れて行った…。
と言う事は、あの存在が、フィンレイ侯爵家を守護していると言う事だ…
何と言う存在がついているのか…
何と言う存在を怒らせたんだ!!
緊急で兄上に報告して転移しきていただく。
私一人では無理だ。
兄上には聖女に関して全て報告して相談してきたんだ。
兄上が、周辺の者達の記憶を一気に改竄させる魔法陣を構築させる。
私は時戻しで壊れた物を直して、清浄化を周辺にかけた。
教室内は元に戻り、駆けつけてきた騎士達以外は、何が起こったのかわからない状態に戻せた。
「あれ、皇太子殿下が来られている。どうされたんだろう?」
周りの生徒達が不思議そうにし、兄上は皇族スマイルで
「ちょっと母校を視察に来たんだ。驚かせてすまないな。」
そう言って、騎士達を連れて平然と出て行かれた。
私も急いで教室を出て、兄上と一緒に学園長室を目指したんだ。
既に聖女は神殿に送り届けられて、特別な部屋にご案内したとの事だった。
私は自分が見て聞いた事を、そしてさっきの存在の事も全て伝えた…。
学園長は頭を抱え込み…
もしかして、この存在では?と不思議な絵を持ってきた。
それは古くから残されている精霊王達の肖像画だとされていたものだった。
そこに、その中央部にその存在が…。
兄上と学園長は既に契約魔法を施しての会話であるから、他言される事もないし、多重結界も張り巡らせてあるから…
「第二皇子殿下。その尊き存在はこの中におられますか?」
そう問われて頷き、この方だと伝えた…。
学園長は一瞬意識を飛ばされたようだ。
それだけの人物なのか?存在なのか??
気を取り直した学園長は、真っ青な顔をされて言われたんだ。
「この方は精霊王フェリス。精霊王の中の王とされる存在です。古き精霊王とも言われる存在…。」
「あ…兄上…。」
「あぁ、まずは聖女をきちんと罰しないと精霊王の怒りは治らないだろう。そして、フィンレイ侯爵家の者の命が失われないことを祈ろう。周りの国の事も急ぎ対応して、やらねばならない事は多くある。私は急ぎ城に戻り対応する。シャルルはまず学園長と協力して、今回の事が漏れ出ないように。後、留学生の生徒の方に行ってくれるか?その後私の執務室に来てくれ。学園長も、教師やその他の事頼みます。」
そう言って兄上達は転移された。
残された私は…
やる事が多いにある。
そう思い、学園内を走り回ることになったんだ。
あのクソ聖女!余計な事してくれる!!
国が滅んだら、全てあの女のせいだ!!
なのに、聖女がやってくる前も、やって来た後も、とにかく色々と問題が起こり過ぎていた。
一番下の弟は、私の側近候補で幼馴染の親友であるフィンレイ侯爵家の長男と次男の婚約者達に恋慕して、ついに拗らせ過ぎてやらかすし、すぐ下の妹は、弟可愛さにやらかした。
おかげで二人に愛想を尽かされて、側近候補を辞退されたんだ。
私にとって信用できる二人にだ。
一人は侯爵家の継承者であるから仕方ないとは思っていたけれど、まさか二人ともとはね…。
皇王である父上から小言を言われるし…。
兄上からは可哀想な弟って目で見られるしでさ…。
本当に参るよ…。
それが何とか修正できたと思えば、我が国から北のオーベルムハイム国が不穏な動きをしてきたんだ。
怪しい動きがあるとは報告をもらっていたんだけどね…。
我が国で『聖女召喚の儀式』を執り行うかどうかの議論は以前からあった。
この世界には普通に魔素が存在している。
魔素が淀み澱めば、大きな災いが起こるともされていたんだ。
澱む原因はやはり負の感情などと同時に、あらゆる汚れが溜まる事で起こるんだ…。
時に人々の心が歪んで大きな戦争が起こったり、魔獣や魔物が凶暴化。人類が滅亡するとも言われていた。
実際に古代文明はそれで滅び、生き残った子孫が今の自分達だとされていたんだ。
その後も、オーベルムハイム国より更に北にあった滅んだ国は、今では伝説のように語り継がれているんだが、あれも結局は魔素の澱みが原因だ…。
数百年かそれ以上かで何度も起こり、何処かの国に現れた聖なる存在で浄化されたりしてきたんだ。その存在は、『聖女』であったり、『神子』『巫女』と色々と呼ばれた存在だったりだ…。
この世界で生まれて来たり、何処からか現れたりしていた存在なんだが、なぜか危機的状態で現れなかった時もあったようだ。理由はわからない。神などの別次元の存在でないと理解できないんじゃないかって思ってる。
それを打開する方法として過去に色々と研究されて来たようだが、失敗も多く、禁忌とされる古代魔法具•魔道具もその一つだし、神殿側で秘匿とされる『聖女召喚の儀式』もその一つだった。
我が国では故アルガスト伯爵の治めていた領地がいつの間にかその被害にあっていたんだ。
報告がかなり遅れていて、それはある人物が故意に行ったと判明された。
魔獣や魔物が平然と彷徨き、凶暴化しているとフィンレイ侯爵家から報告が上がったんだ。
直ぐに封鎖し、時間をかけて討伐などをおこなってきたんだ。
フィンレイ侯爵家が主となって…。
それも、不思議と我が国は落ち着いて来たが、他国ではまだまだ不十分で、特に被害が出ているらしいオーベルムハイム国が我が国に圧力をかけて来たんだ。不穏な動きをして脅し的行為を行って…。
フィンレイ侯爵家からいろんな情報が国に提出されて、驚きを隠せなかった。
フィンレイ侯爵家は我が皇族家と同じぐらい古くからある貴族家だ。しかも、皇族との繋がりも強く信頼を置ける存在。これ以上不興をかうと、我が国から離脱して独立国家をたてられそうだ。
だから、ある程度の願いは受け入れるようにと父上から言い聞かされていたんだ。
国が更に安定して来たが、彼の国の暴走や周辺諸国の希望も強く、実際聖女の存在も確認できないため、『聖女召喚の儀式』の準備はされて行ったんだ。
特別な秘技であるため、多くの魔力も必要であるし、その力を別の世界に繋げるために星の配置なども関係していたんだ…。
「もう、中止してもいいんじゃないか?」って意見が出た時、勝手に暴走する者がやはり出てきて、魔法陣が起動してしまったんだ。
一度起動したら止める事はできない。
そうして慌ててその場に皆を集めれば、異世界から渡って来られたんだ。
成功したと言ってもいいんだろう。
気持ち的にはやるせないが…。
この世界の都合で他所の世界から強制的に連れてくるんだ。
いくらその人物の力が必要だからって、納得できるものではなかった。
だが、来ていただいたのだから、丁重にもてなして協力を願う必要性がある。
我が国では必要ではなくなってきたが、周辺諸国では必要なんだ。
よって、聖女と思われる女性を直ぐに別室に案内して説明したんだ。
後の報告で、もう一人いたらしいが、なぜかその人物が教皇のいなくなった大切な女性だと言うから、その女性の事は教皇にお任せしたんだ。
聖女は一人でいい。
二人もいたら、もっとややこしい事になると判断してね…。
その判断は半分正解で半分間違いであったんだ。
まさかこの聖女に、こんなに振り回されると誰が思うのだろうか?
時々訳のわからない事を言い出して困惑させられるが、全てが間違いではないので見守る事にした。
害が有れば別だが、コレぐらいなら許容範囲だろうとね…。
実際に周辺諸国では多くの場所が浄化されていき、落ち着いていっていたんだ。
ただ、我が国においては別。
学園に行きたいと言い出し、そのぐらいはと思えば、私の三人の友人達を探し回る。一人には付き纏って、私はかなり抗議されたんだ。二人は上手くかわせていたから会う事がなく、苦言を言われることもないと安心していたら、ついにこの二人からも言われるようになったんだ。
しかも、その時には妄想癖が強くなり、確かに『聖女』ではあるが、「自分はヒロインで、全ての者に愛される存在だ」とか、「ハーレムルートを目指しているのに、どうして?」とか言い出した時には、空いた口が塞がらなかった。一緒に浄化の旅に出ていた三人の王子が聖女をチヤホヤしたのも不味い。
自国を早く清浄化させたい気持ちで意図的にそうされてきたんだろうがな…。
特に例の国、オーベルムハイム国の第二王子ジュディオン•オーベルムハイムの動きがおかしいと思ったんだ。
彼は第二王子であるが、側室の子。しかも母親が聖職者だ。
もしかしたら、例の青銅の鏡も彼の差金か?
そう思い調べ上げたんだ。
結果的にも、断言出来るところまでは行き着けなかったが、黒に近いグレーだ。
それに、この男には不思議なことも多かった。
聖女を密かに洗脳しているのでは?とも思える節もあったしね…。
で、それらも踏まえて、友人であるギルとアシュを生徒会室に呼んだんだ。
結果的に、最悪な悲劇を呼んでしまうことになったんだがなぁ…。
あろう事か、聖女がギルとアルの大切な存在に手を出したんだ。
風魔法を使って声を拾ったが、とんでもない暴言の数々だ。
コレを一体どう収束させていけば良い?
頭の中をフル回転させ、学園長に緊急報告。魔力封じの道具もありったけ持ってきてもらうように依頼。
神殿にも聖女が魔素の影響で混乱しているから、緊急確保して送る事を通知。
フィンレイ侯爵家にも緊急招集。詫びは後でと付け加え、騎士団達も呼び寄せたんだ。
聖女の馬鹿げた暴言がこれ以上拡散させないように多重結界を張り巡らせて、結構ヘトヘトになるが、まだやる事が多くある。
侍従クラスから獣人二人が、ものすごい勢いで駆けていくことを魔力感知で確認。
聖女の力とぶつかってか、ガラスが割れるような音がして、周りを囲っていた者達が脱力し出すのを感じた。
聖女から主人を守ろうと動いたんだろうが…。
次に留学生として学園に受け入れていた三人の王子が魔力攻撃。
嘘だろう?教室内であり得ない!!
そこはフィンレイ侯爵家の秘宝の二人が何とか阻止してくれているが、かなり危ない状態だ…。
不味いと、全速力でギルとアシュを追いかけてとにかく走ったんだ。
そして、目的の場所周辺には多くの人だかり。
直ぐに皇子としての権限で道を開けさせ掻き分けていくと…
ギルの婚約者である女生徒と、この二人の侍従であろう獣人二人を、アシュの婚約者が庇い突き飛ばし…
乱心した聖女が持つ双剣がその身体に吸い込まれるように刺さった…。
嘘だろう!?
血飛沫が上がり、当然周りから悲鳴が湧き起こる。
乱心した聖女の側には、留学生である三人の王子達が呆然としていた。
その三人が、どんな理由でか聖女を守り攻撃したのであろう…
その場所は、傷ついているこの二人が、無意識に力で守ったんだ。
ここに来るまでに聞こえてきたし、感じ取っていたんだ。
そして、証拠とも言える魔力の残滓が残されていたんだ。
ふざけるなよ!教室内で攻撃魔法などあり得ない!!
それに…周囲の女生徒達は意識なく倒れているし、男子生徒は何かの力で圧をかけられ、急に解除されたようで、身体が崩れるように床に座り込んでいた。
向こうにいるのはこの子達の友人だ。情報は入っているから知っている。
何とか手を伸ばして突き飛ばされた三人を受け止めようとしていたのが見てとれた…。
全てがスローモーションのようにゆっくりと見えるが、だからと言って…。
次の瞬間、エド君だったよね。彼は自分に刺さった剣を一本抜いて自分の目に切先を…
彼と契約している獣人が急いでそれを止めようとした。
あれは例の幻と言われている獣人の…
わずかにズレたようだが、先は彼の瞳をしっかりと傷つけたようで、そこからも血が…
侍従は刺さった剣を全て抜き、忌々しく遠くに捨てるようにして投げ、カランカランと音がしたんだ。
急いで止血しようとしてくれているが、血が止まる事は…
「エル!!」
「レイン!!」
そこで友人の二人が悲痛な叫びで呼びかけていた。
血に濡れた彼を抱きしめて…。
一人は意識がない彼女を…。
背後で笑い転げる聖女。彼女が無意識に魔力をまた発動させていた。
それは闇…。
不味いと、全力で聖女からの魔力攻撃を妨害する。
更に聖女の魔力を抑えこみ、ちょうど騎士団の者も駆けつけて、周りが一気に脱力し出した。
学園長が魔力封じの魔道具を聖女にいくつもつけ、他国の王子二人を連れて出て行った。
とりあえず、終息させないといけない。
何故か一人だけ残った王子が双剣を手にして自分の空間魔法であるアイテムボックスに投げ入れていたようだが…それどころではない…。
アシュは必死で彼の傷を塞ごうとするも、血も止まらない…。
刺したのは例の双剣の聖剣だ。
魔力を吸収して傷を塞ぎにくくするんだアレは…。
床には血溜まりが増えていく…。
涙が溢れて止まらない。
彼の悲痛な叫びが伝わってくるようだ。
何で俺は側にいなかった…
何でエルが…
何で何で何で…………………。
そう叫んでいるのがわかる…。
「兄様…ごめんなさい…。」
彼はアシュを心配をかけないように、笑顔を見せていた。
一瞬私もドキッとしたが…
そのままさらに顔色を無くし、力が抜けて…
救護班が彼を渡すように言っているが、拒否して抱きしめて、更に多くの魔力を彼に送り続けるようだ。
私にはどうしようもない…。
ただ彼の好きなようにさせてやる方が良いようにも思えてしまったんだ…。
「俺から奪わないでくれ~~~~!!!」
悲痛の叫びを聞き、そこでフィンレイ侯爵達が駆けつけてきた。
驚きと悲しみと怒りが湧き起こる…
すると、侯爵の背後に…静寂な怒りを抑え込んで現れた存在がいた。
アレは怒らせてはいけない存在だ…。
その存在が…
『この国の皇子よ。今回の事、そなたらが全て我が納得できるよう終息させよ。でなければ、この国がどうなろうと知らぬからな…』
頭の中にそう響き渡ったんだ。
そして、フィンレイ侯爵家の者達の姿が消えたんだ。
多分、あの存在がどこかに連れて行った…。
と言う事は、あの存在が、フィンレイ侯爵家を守護していると言う事だ…
何と言う存在がついているのか…
何と言う存在を怒らせたんだ!!
緊急で兄上に報告して転移しきていただく。
私一人では無理だ。
兄上には聖女に関して全て報告して相談してきたんだ。
兄上が、周辺の者達の記憶を一気に改竄させる魔法陣を構築させる。
私は時戻しで壊れた物を直して、清浄化を周辺にかけた。
教室内は元に戻り、駆けつけてきた騎士達以外は、何が起こったのかわからない状態に戻せた。
「あれ、皇太子殿下が来られている。どうされたんだろう?」
周りの生徒達が不思議そうにし、兄上は皇族スマイルで
「ちょっと母校を視察に来たんだ。驚かせてすまないな。」
そう言って、騎士達を連れて平然と出て行かれた。
私も急いで教室を出て、兄上と一緒に学園長室を目指したんだ。
既に聖女は神殿に送り届けられて、特別な部屋にご案内したとの事だった。
私は自分が見て聞いた事を、そしてさっきの存在の事も全て伝えた…。
学園長は頭を抱え込み…
もしかして、この存在では?と不思議な絵を持ってきた。
それは古くから残されている精霊王達の肖像画だとされていたものだった。
そこに、その中央部にその存在が…。
兄上と学園長は既に契約魔法を施しての会話であるから、他言される事もないし、多重結界も張り巡らせてあるから…
「第二皇子殿下。その尊き存在はこの中におられますか?」
そう問われて頷き、この方だと伝えた…。
学園長は一瞬意識を飛ばされたようだ。
それだけの人物なのか?存在なのか??
気を取り直した学園長は、真っ青な顔をされて言われたんだ。
「この方は精霊王フェリス。精霊王の中の王とされる存在です。古き精霊王とも言われる存在…。」
「あ…兄上…。」
「あぁ、まずは聖女をきちんと罰しないと精霊王の怒りは治らないだろう。そして、フィンレイ侯爵家の者の命が失われないことを祈ろう。周りの国の事も急ぎ対応して、やらねばならない事は多くある。私は急ぎ城に戻り対応する。シャルルはまず学園長と協力して、今回の事が漏れ出ないように。後、留学生の生徒の方に行ってくれるか?その後私の執務室に来てくれ。学園長も、教師やその他の事頼みます。」
そう言って兄上達は転移された。
残された私は…
やる事が多いにある。
そう思い、学園内を走り回ることになったんだ。
あのクソ聖女!余計な事してくれる!!
国が滅んだら、全てあの女のせいだ!!
89
あなたにおすすめの小説
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました
春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。
名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。
誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。
ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、
あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。
「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」
「……もう限界だ」
私は知らなかった。
宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて――
ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
完結(R18 詰んだ。2番目の夫を迎えたら、資金0で放り出されました。
にじくす まさしよ
恋愛
R18。合わないと思われた方はバックお願いします
結婚して3年。「子供はまだいいよね」と、夫と仲睦まじく暮らしていた。
ふたり以上の夫を持つこの国で、「愛する夫だけがいい」と、ふたり目以降の夫を持たなかった主人公。そんなある日、夫から外聞が悪いから新たな夫を迎えるよう説得され、父たちの命もあり、渋々二度目の結婚をすることに。
その3ヶ月後、一番目の夫からいきなり離婚を突きつけられ、着の身着のまま家を出された。
これは、愛する夫から裏切られ、幾ばくかの慰謝料もなく持参金も返してもらえなかった無一文ポジティブ主人公の、自由で気ままな物語。
俯瞰視点あり。
仕返しあり。シリアスはありますがヒロインが切り替えが早く前向きなので、あまり落ち込まないかと。ハッピーエンド。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる