195 / 250
青銅の鏡
闇
しおりを挟む
ガシャーンと大きな音が室内に鳴り響く。
音を発したのはこの部屋の主だった。
「一体どういう事だ!」
「申し訳ありません。」
「申し訳ないで済ませるな!きちんと説明しろ!!」
ドカッとなんとも言えない音が響きく。
今目の前に跪く男を蹴り上げながら、綺麗に整った顔を歪ませながらもイライラしながら罵声を浴びせ続けていた。
「もう少しで手に入れれると思っていたのに、捕らえて閉じ込める予定の箱庭は破壊され、しかも駒も奪われた。私のモノになるはずが未だに手に入らない…。」
いらただしげにしている男の名はリオルべ伯爵領主ジルベルト•リオルべ。ガルディエーヌ皇国に住んでいた時はジルベルト•アシュバールと名乗っていた。
アシュバール伯爵家の嫡男として姓を受け十六歳まで神童のようにチヤホヤされ続けていた。
自身も自分にできない事も叶わない事もないと信じきっていた。
当時、父親に連れられてアルガスト領に視察も兼ねて赴き、そこで運命的な出逢いをしたんだ。
それまでなんでも思うように行きすぎて、特に何も興味も示さず、執着というものもなかった。
幼少であっても父親の伯爵領の経営にも携わっていたんだ。
ただ、父親が、親族の悪事とも言える密かに行なっていた事には気づかず、家族一同がその後の運命を変えられてしまったとも言えるが…。
当時訪れたアルガスト領は自然豊かな美しい土地だった。
父親は、自領に有用なものを取り入れようと、訪れた先々で収穫を得ていたんだ。
それに、ちょうど新たな領主の家族が増えたと聞き及び、祝いの品物持って行っていた。
そう、領主夫妻に双子の子供が生まれたとか。
しかも男女で愛らしいと噂があった。
噂があっても、ただそれだけだと思い、世間一般の貴族としての付き合いと付いて行ったのだが…。
そこには愛らしく可愛らしい男女の赤子がお昼寝用に準備されたベビーベッド代わりのカゴですやすやと眠っていたんだ。
そっと覗き込むと、パチリと目が開き、ふわりと微笑んでくれたように…。
そこで一気に胸を打たれ、その子達の周辺から色づき始めたんだ。
今まで白黒の世界だったのが、こんなに色鮮やかだとは…。
抱かせてもらうと、柔らかく温かい。
しかも、当たり前であるが軽いんだ。
嫌がってむずかる事もない二人に心を奪われてしまう。
『欲しい』という気持ちから、『自分のものだ』と思い込んだ。
この世界では同性でも異性でも婚姻は可能であるし、子も望める。
双子の場合は一人の夫が二人とも一緒に娶る事も可能なんだ。
この可愛らしい子供を自分のモノにする為に、婚約の打診をその場で行った。
父上は少し驚いたが、自分が他にあまり興味を示さなかった為、すぐの受け入れられて協力してくれた。
婚約してそのまま連れ帰り、自分の側で成長を見守りながら、煩わしいモノは全て排除したかった。
が、しかし、それは叶わなかったんだ。
生まれたばかりの子供を手放す親などまずよほどでなければあり得ない。
これは自分の我儘だと理解して諦めた。
本当は諦めたくなかったが…。
しかし、婚約に関してはスパッと拒否されたんだ。
この愛しい者の親に…。
「ジルベルト君の申し入れは有難いが、この子達の伴侶はこの子達の自信で選ばせてあげたいんだ。それに君とは年齢があきすぎている。君には既に婚約の打診も多くあると聞き及んでいる。済まないね。」
そう言われてしまったんだ。
しかし、それでも諦めきれず、領内に戻っても何度も打診した。
勿論、あの子達を守り養えれる実力を見せる為にも頑張った。
学園に通わないといけないから、再々会いに行く事もできず、密かに影の者にを雇い入れて探らせもしていた。
影から報告書と一緒に絵姿を遅らせもした。
まだまだ普及してまもないとされるカメラも手に入れて…。
日々の成長記録を寮内で楽しんでいたんだ。
だがしかし、影からの報告で、あの二人に婚約者として望んでいるものがいる事を知ってしまった。
自分があの二人に会う前に出会ったらしい。
そう、あのアルガスト伯爵の実家とも言えるフィンレイ侯爵家の長男と次男だ。
アルガスト伯爵はフィンレイ侯爵家で養子として迎えられ育ったらしい。養子先ではあるが、家族、兄弟として受け入れられていた。婿養子としてアルガスト伯爵家の御息女と婚姻し現アルガスト伯爵として領地経営を行っているんだ。
夫婦仲が良いのはあの時訪れた時に知っているし、領主としても領民に慕われ、屋敷の者達とも…。
自分達があの地に訪れる前に出産祝いとしてフィンレイ侯爵家の者達は家族で訪れていた。
その時に長男と次男が…。
フィンレイ侯爵家もアルガスト伯爵家も正式な婚約はさせていないらしいが、アルガスト伯爵は二人の我が子がフィンレイ侯爵家と婚約及び婚姻をするであろう…もしくはさせたいと考えているようだと報告書が届いたんだ。
あり得ない。
自分の時には、『まだ早い』と言い、『二人の子供達に選ばせる』と言っていたんだ。
報告書では、フィンレイ侯爵家もまんざらではない様子とまで書かれていた。
許せない…。
そこから一気に憎悪となり、どうにかしてあの二人を奪い取ろうと画策した。
そう、画策していた時、父親の代行として訪れたパーティーであの男に出会ったんだ。
アルガスト伯爵家の遠縁の男。
伯爵の妻に恋慕して、婚約の打診をしていたが、ことごとく断られた男だ。
あの子達を手に入れる為に、別の調査機関で調べ上げていた。
そうだ…。ちょうど良いものが手に入っている…。
当時、とある商人から手に入れた特殊な違法薬物。
相手を意のままにできる可能性があるとされたものだ。
取り扱いさえ気をつければ、特にバレる事もないだろう…。
そう思って近づき、「これを使って上手く行ってください。応援しますね。」とそそのかして渡したんだ。
男はそれを伯爵家の屋敷の者に使って、伯爵を馬車で外に連れ出したんだ。
ただなぜか伯爵夫人も馬車に同乗しており、事故と見せかけた暗殺場所に遭遇してしまった。
そして、愚かな男は激情したのか欲しかった夫人まで殺害した。
動揺して落ち込み酒に溺れた所を、自分の駒として再生させる為にもう一度近づき、今度はあの屋敷を乗っ取らせたんだ。そう、アルガスト伯爵家をだ。闇ギルドを通して刻印魔法を得意とする男を雇い、二人の子供をその屋敷の離れとも言える場所に閉じ込める事にした。
そこから出れないように…。
今はまだ自分が動けば怪しまれる。そこからでらなくして男に監視させ、フィンレイ侯爵家の者にバレないように画策する知恵も授けておいたんだ。
後に自分が二人を迎えに行き、囲い込めば…
そい、外堀から埋めてやろうと思ったんだ。
だが、そこでも歯車が狂ってしまっていた。
アルガスト伯爵領で淀みから澱みが発生して、凶暴な魔物や魔獣が闊歩し出したんだ。
領民もだが、あろう事かあの男は率先して逃げ出していた。
あの男も姿が消えてしまっているから、生きているか死んでいるかはわからない…。
急ぎあの子達を救出しようと思った矢先に、父親側の親族が悪事とも言える行いをしており、摘発され出したんだ。それに伴い、アルガスト伯爵夫妻暗殺も…。
父親の判断で、母親側の祖国に移住する事になってしまい、直ぐには救出に向かえなかった。
が、あそこは特殊な結界を張ってあるから、魔獣や魔物に襲われることはないとも思っていたんだ。
それに、報告では、一人だけ…そう、闇属性の魔力を持つ侍女が世話をしている事も知っていたから、自分が向かうまではなんとか持つだろうとも思っていた。
父親の親族は、北の国と関わりを持っていたのもあるが、とある女性を奪おうと画策していたとか…。
当時はまだ神官職ではなく、貴族の一員であったカルロス・ジスパダールの妻を奪おうとしたらしい。
実際に奪えたかどうかまではわからないが、その当時から妻の消息は消え、屋敷で子供を育てながらも神官職として頭角を表し、教皇まで上り詰めたんだ。
その男にも狙われてしまえばと、伯爵位を譲って逃げ出すように…。
母親の両親も幾つか爵位を持っていたから、その中の一つを叙爵して…。
その辺りのゴタゴタで迎えに行くのが遅れたんだ。
やっとと訪れれば、あの地は魔獣被害で閉鎖されていた。
そこは予想通りだ。
だが…。
目的地に行けば、既に子供達はいない。
密かに調べ上げれば、フィンレイ侯爵家に引き取られてしまっていたんだ。
自分の妻となるはずの二人を奪われた…。
だが、まだあの子達は幼いから、時間はある。
そう思い、フィンレイ侯爵家に影を送ったが、なぜか消息は途絶える者が多かった。
それならばと、侯爵家の長男に好意を持つ女生徒に『願いが叶う。意中の者を手に入れれるにおい袋』として購入させる事に成功した。
これで一人は排除できる。もう一人の方はと、密かにあの国に潜り込ませていた者から良い人材が居ると聞いた。
自分のモノに対して危害を与えそうであったが、その前に確保すれば良いと考えて、協力するように指示を出したのだが…。
女子生徒は失敗して捕らえられ、もう一人、学園内の男性だったらしいが、その男は焼死体となった。
そうこうすれば、自分の妻になるはずの二人はフィンレイ侯爵家の長男と次男の婚約者となったとの知らせ…。
誘拐もうまくいかず、邪魔もできず…。
モヤモヤしながらいると、好機が訪れた。
あの国の第二皇子、シャルル•カル•ガルディエーヌ殿下の側近候補が自分の妻と求めている者の一人を北の国に売りつけるという情報だ。
あの国の魔塔主となる男に情報を流し、資金を渡せばうまく行けばこちら側に連れてくるだろう。
そこを確保すれば良い。
急ぎ箱庭を建設して…。
一人が北の国に到着したと連絡で、手ぐすね引けば…。
内乱で正当な者に王位継承されたとか…。
それはどうでも良いが、うまく行くように呪詛的魔道具の多くを準備して納めてやったのに、それらは破壊され尽くして、しかもまた手に入れる事は出来なかったんだ。
逃げ延びた魔塔主だった男は不思議な力で魔力をを奪われたのか押さえ込まれたかで役に立ちそうがない。
自分との繋がりがバレれば面倒であるから消した。
闇ギルドから魔物の虫使いである ドロクスという男を紹介されて、箱庭に一人迎え入れれとホクホクした。
かなり有名な男であるし、それなりにお金も動かしたんだ。
なのにまた…。
しかも、箱庭を破壊され、中に納めていたとっておきの宝も焼失…。
これが怒らずにおれようか!!
商業ルートも一部壊滅的な被害…。
これでは自分の足元だけでは済まない。
唯一は、あの国とこの国は他国同士という事だ。
屋敷が破壊されてもまだ残された物もある。
国から売られる事もないはずだ。
それなりの金は納めているし貢献もしておいたから…。
だが…。
侍女や侍従達は怒りで破壊したものをささっと片付けているのを横目で見ながらも…
「そうお怒りにならず…」
そう言いながら影からスーッと姿を現す者をチラッとみる。
老婆のようであり、妖艶の美女。老人のなるかと思えば青年の姿で姿を現せるもの…。
「望みはあの二人だ。それだけだ…」
「理解していますよ。我が君。」
そう言ってニヤリと見せる口元…。
「なら、次こそ手に入れてこい。」
それだけ言うと、スーッと姿を消した。
相変わらず君が悪いが、もう彼奴だけが…
新たに準備されらグラスに酒を注ぐ…。
あの光のような二人を…
今は預けているが、アレは私のものだ。必ず返してもらうぞ…。
心の中に再度誓い、もう一度酒を仰ぐように飲む。
そうして、大きく飾られた愛しい光の姿絵を眺めながら、もう一度側に控えている男達に指示を出す事にしたんだ…。
音を発したのはこの部屋の主だった。
「一体どういう事だ!」
「申し訳ありません。」
「申し訳ないで済ませるな!きちんと説明しろ!!」
ドカッとなんとも言えない音が響きく。
今目の前に跪く男を蹴り上げながら、綺麗に整った顔を歪ませながらもイライラしながら罵声を浴びせ続けていた。
「もう少しで手に入れれると思っていたのに、捕らえて閉じ込める予定の箱庭は破壊され、しかも駒も奪われた。私のモノになるはずが未だに手に入らない…。」
いらただしげにしている男の名はリオルべ伯爵領主ジルベルト•リオルべ。ガルディエーヌ皇国に住んでいた時はジルベルト•アシュバールと名乗っていた。
アシュバール伯爵家の嫡男として姓を受け十六歳まで神童のようにチヤホヤされ続けていた。
自身も自分にできない事も叶わない事もないと信じきっていた。
当時、父親に連れられてアルガスト領に視察も兼ねて赴き、そこで運命的な出逢いをしたんだ。
それまでなんでも思うように行きすぎて、特に何も興味も示さず、執着というものもなかった。
幼少であっても父親の伯爵領の経営にも携わっていたんだ。
ただ、父親が、親族の悪事とも言える密かに行なっていた事には気づかず、家族一同がその後の運命を変えられてしまったとも言えるが…。
当時訪れたアルガスト領は自然豊かな美しい土地だった。
父親は、自領に有用なものを取り入れようと、訪れた先々で収穫を得ていたんだ。
それに、ちょうど新たな領主の家族が増えたと聞き及び、祝いの品物持って行っていた。
そう、領主夫妻に双子の子供が生まれたとか。
しかも男女で愛らしいと噂があった。
噂があっても、ただそれだけだと思い、世間一般の貴族としての付き合いと付いて行ったのだが…。
そこには愛らしく可愛らしい男女の赤子がお昼寝用に準備されたベビーベッド代わりのカゴですやすやと眠っていたんだ。
そっと覗き込むと、パチリと目が開き、ふわりと微笑んでくれたように…。
そこで一気に胸を打たれ、その子達の周辺から色づき始めたんだ。
今まで白黒の世界だったのが、こんなに色鮮やかだとは…。
抱かせてもらうと、柔らかく温かい。
しかも、当たり前であるが軽いんだ。
嫌がってむずかる事もない二人に心を奪われてしまう。
『欲しい』という気持ちから、『自分のものだ』と思い込んだ。
この世界では同性でも異性でも婚姻は可能であるし、子も望める。
双子の場合は一人の夫が二人とも一緒に娶る事も可能なんだ。
この可愛らしい子供を自分のモノにする為に、婚約の打診をその場で行った。
父上は少し驚いたが、自分が他にあまり興味を示さなかった為、すぐの受け入れられて協力してくれた。
婚約してそのまま連れ帰り、自分の側で成長を見守りながら、煩わしいモノは全て排除したかった。
が、しかし、それは叶わなかったんだ。
生まれたばかりの子供を手放す親などまずよほどでなければあり得ない。
これは自分の我儘だと理解して諦めた。
本当は諦めたくなかったが…。
しかし、婚約に関してはスパッと拒否されたんだ。
この愛しい者の親に…。
「ジルベルト君の申し入れは有難いが、この子達の伴侶はこの子達の自信で選ばせてあげたいんだ。それに君とは年齢があきすぎている。君には既に婚約の打診も多くあると聞き及んでいる。済まないね。」
そう言われてしまったんだ。
しかし、それでも諦めきれず、領内に戻っても何度も打診した。
勿論、あの子達を守り養えれる実力を見せる為にも頑張った。
学園に通わないといけないから、再々会いに行く事もできず、密かに影の者にを雇い入れて探らせもしていた。
影から報告書と一緒に絵姿を遅らせもした。
まだまだ普及してまもないとされるカメラも手に入れて…。
日々の成長記録を寮内で楽しんでいたんだ。
だがしかし、影からの報告で、あの二人に婚約者として望んでいるものがいる事を知ってしまった。
自分があの二人に会う前に出会ったらしい。
そう、あのアルガスト伯爵の実家とも言えるフィンレイ侯爵家の長男と次男だ。
アルガスト伯爵はフィンレイ侯爵家で養子として迎えられ育ったらしい。養子先ではあるが、家族、兄弟として受け入れられていた。婿養子としてアルガスト伯爵家の御息女と婚姻し現アルガスト伯爵として領地経営を行っているんだ。
夫婦仲が良いのはあの時訪れた時に知っているし、領主としても領民に慕われ、屋敷の者達とも…。
自分達があの地に訪れる前に出産祝いとしてフィンレイ侯爵家の者達は家族で訪れていた。
その時に長男と次男が…。
フィンレイ侯爵家もアルガスト伯爵家も正式な婚約はさせていないらしいが、アルガスト伯爵は二人の我が子がフィンレイ侯爵家と婚約及び婚姻をするであろう…もしくはさせたいと考えているようだと報告書が届いたんだ。
あり得ない。
自分の時には、『まだ早い』と言い、『二人の子供達に選ばせる』と言っていたんだ。
報告書では、フィンレイ侯爵家もまんざらではない様子とまで書かれていた。
許せない…。
そこから一気に憎悪となり、どうにかしてあの二人を奪い取ろうと画策した。
そう、画策していた時、父親の代行として訪れたパーティーであの男に出会ったんだ。
アルガスト伯爵家の遠縁の男。
伯爵の妻に恋慕して、婚約の打診をしていたが、ことごとく断られた男だ。
あの子達を手に入れる為に、別の調査機関で調べ上げていた。
そうだ…。ちょうど良いものが手に入っている…。
当時、とある商人から手に入れた特殊な違法薬物。
相手を意のままにできる可能性があるとされたものだ。
取り扱いさえ気をつければ、特にバレる事もないだろう…。
そう思って近づき、「これを使って上手く行ってください。応援しますね。」とそそのかして渡したんだ。
男はそれを伯爵家の屋敷の者に使って、伯爵を馬車で外に連れ出したんだ。
ただなぜか伯爵夫人も馬車に同乗しており、事故と見せかけた暗殺場所に遭遇してしまった。
そして、愚かな男は激情したのか欲しかった夫人まで殺害した。
動揺して落ち込み酒に溺れた所を、自分の駒として再生させる為にもう一度近づき、今度はあの屋敷を乗っ取らせたんだ。そう、アルガスト伯爵家をだ。闇ギルドを通して刻印魔法を得意とする男を雇い、二人の子供をその屋敷の離れとも言える場所に閉じ込める事にした。
そこから出れないように…。
今はまだ自分が動けば怪しまれる。そこからでらなくして男に監視させ、フィンレイ侯爵家の者にバレないように画策する知恵も授けておいたんだ。
後に自分が二人を迎えに行き、囲い込めば…
そい、外堀から埋めてやろうと思ったんだ。
だが、そこでも歯車が狂ってしまっていた。
アルガスト伯爵領で淀みから澱みが発生して、凶暴な魔物や魔獣が闊歩し出したんだ。
領民もだが、あろう事かあの男は率先して逃げ出していた。
あの男も姿が消えてしまっているから、生きているか死んでいるかはわからない…。
急ぎあの子達を救出しようと思った矢先に、父親側の親族が悪事とも言える行いをしており、摘発され出したんだ。それに伴い、アルガスト伯爵夫妻暗殺も…。
父親の判断で、母親側の祖国に移住する事になってしまい、直ぐには救出に向かえなかった。
が、あそこは特殊な結界を張ってあるから、魔獣や魔物に襲われることはないとも思っていたんだ。
それに、報告では、一人だけ…そう、闇属性の魔力を持つ侍女が世話をしている事も知っていたから、自分が向かうまではなんとか持つだろうとも思っていた。
父親の親族は、北の国と関わりを持っていたのもあるが、とある女性を奪おうと画策していたとか…。
当時はまだ神官職ではなく、貴族の一員であったカルロス・ジスパダールの妻を奪おうとしたらしい。
実際に奪えたかどうかまではわからないが、その当時から妻の消息は消え、屋敷で子供を育てながらも神官職として頭角を表し、教皇まで上り詰めたんだ。
その男にも狙われてしまえばと、伯爵位を譲って逃げ出すように…。
母親の両親も幾つか爵位を持っていたから、その中の一つを叙爵して…。
その辺りのゴタゴタで迎えに行くのが遅れたんだ。
やっとと訪れれば、あの地は魔獣被害で閉鎖されていた。
そこは予想通りだ。
だが…。
目的地に行けば、既に子供達はいない。
密かに調べ上げれば、フィンレイ侯爵家に引き取られてしまっていたんだ。
自分の妻となるはずの二人を奪われた…。
だが、まだあの子達は幼いから、時間はある。
そう思い、フィンレイ侯爵家に影を送ったが、なぜか消息は途絶える者が多かった。
それならばと、侯爵家の長男に好意を持つ女生徒に『願いが叶う。意中の者を手に入れれるにおい袋』として購入させる事に成功した。
これで一人は排除できる。もう一人の方はと、密かにあの国に潜り込ませていた者から良い人材が居ると聞いた。
自分のモノに対して危害を与えそうであったが、その前に確保すれば良いと考えて、協力するように指示を出したのだが…。
女子生徒は失敗して捕らえられ、もう一人、学園内の男性だったらしいが、その男は焼死体となった。
そうこうすれば、自分の妻になるはずの二人はフィンレイ侯爵家の長男と次男の婚約者となったとの知らせ…。
誘拐もうまくいかず、邪魔もできず…。
モヤモヤしながらいると、好機が訪れた。
あの国の第二皇子、シャルル•カル•ガルディエーヌ殿下の側近候補が自分の妻と求めている者の一人を北の国に売りつけるという情報だ。
あの国の魔塔主となる男に情報を流し、資金を渡せばうまく行けばこちら側に連れてくるだろう。
そこを確保すれば良い。
急ぎ箱庭を建設して…。
一人が北の国に到着したと連絡で、手ぐすね引けば…。
内乱で正当な者に王位継承されたとか…。
それはどうでも良いが、うまく行くように呪詛的魔道具の多くを準備して納めてやったのに、それらは破壊され尽くして、しかもまた手に入れる事は出来なかったんだ。
逃げ延びた魔塔主だった男は不思議な力で魔力をを奪われたのか押さえ込まれたかで役に立ちそうがない。
自分との繋がりがバレれば面倒であるから消した。
闇ギルドから魔物の虫使いである ドロクスという男を紹介されて、箱庭に一人迎え入れれとホクホクした。
かなり有名な男であるし、それなりにお金も動かしたんだ。
なのにまた…。
しかも、箱庭を破壊され、中に納めていたとっておきの宝も焼失…。
これが怒らずにおれようか!!
商業ルートも一部壊滅的な被害…。
これでは自分の足元だけでは済まない。
唯一は、あの国とこの国は他国同士という事だ。
屋敷が破壊されてもまだ残された物もある。
国から売られる事もないはずだ。
それなりの金は納めているし貢献もしておいたから…。
だが…。
侍女や侍従達は怒りで破壊したものをささっと片付けているのを横目で見ながらも…
「そうお怒りにならず…」
そう言いながら影からスーッと姿を現す者をチラッとみる。
老婆のようであり、妖艶の美女。老人のなるかと思えば青年の姿で姿を現せるもの…。
「望みはあの二人だ。それだけだ…」
「理解していますよ。我が君。」
そう言ってニヤリと見せる口元…。
「なら、次こそ手に入れてこい。」
それだけ言うと、スーッと姿を消した。
相変わらず君が悪いが、もう彼奴だけが…
新たに準備されらグラスに酒を注ぐ…。
あの光のような二人を…
今は預けているが、アレは私のものだ。必ず返してもらうぞ…。
心の中に再度誓い、もう一度酒を仰ぐように飲む。
そうして、大きく飾られた愛しい光の姿絵を眺めながら、もう一度側に控えている男達に指示を出す事にしたんだ…。
36
あなたにおすすめの小説
私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。
それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。
14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。
皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。
この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。
※Hシーンは終盤しかありません。
※この話は4部作で予定しています。
【私が欲しいのはこの皇子】
【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】
【放浪の花嫁】
本編は99話迄です。
番外編1話アリ。
※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました
春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。
名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。
誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。
ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、
あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。
「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」
「……もう限界だ」
私は知らなかった。
宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて――
ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
【R18】深層のご令嬢は、婚約破棄して愛しのお兄様に花弁を散らされる
奏音 美都
恋愛
バトワール財閥の令嬢であるクリスティーナは血の繋がらない兄、ウィンストンを密かに慕っていた。だが、貴族院議員であり、ノルウェールズ侯爵家の三男であるコンラッドとの婚姻話が持ち上がり、バトワール財閥、ひいては会社の経営に携わる兄のために、お見合いを受ける覚悟をする。
だが、今目の前では兄のウィンストンに迫られていた。
「ノルウェールズ侯爵の御曹司とのお見合いが決まったって聞いたんだが、本当なのか?」」
どう尋ねる兄の真意は……
魔性の大公の甘く淫らな執愛の檻に囚われて
アマイ
恋愛
優れた癒しの力を持つ家系に生まれながら、伯爵家当主であるクロエにはその力が発現しなかった。しかし血筋を絶やしたくない皇帝の意向により、クロエは早急に後継を作らねばならなくなった。相手を求め渋々参加した夜会で、クロエは謎めいた美貌の男・ルアと出会う。
二人は契約を交わし、割り切った体の関係を結ぶのだが――
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
初夜った後で「申し訳ないが愛せない」だなんてそんな話があるかいな。
ぱっつんぱつお
恋愛
辺境の漁師町で育った伯爵令嬢。
大海原と同じく性格荒めのエマは誰もが羨む(らしい)次期侯爵であるジョセフと結婚した。
だが彼には婚約する前から恋人が居て……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる