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緊急事態

兄を

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砦の向こうで、大きな暴発が起こっている。
炎や砂けむり、氷の柱。
色んなものがここから見える。
一体どんな戦いをしてるのだろう。

でも、ジリジリと相手が後退しているようにも見える。
そのまま、自国に戻ってくれたら良いのだけど……

「ラフィ!」

皇女殿下がお呼びだ。どうしたのだろうか……
そばに駆け寄ると、小さな子供の手を引いていた。

「この子達は?」
「砦の食料庫近くにいたみたいなの。」

2人の子供の目線に合うようにしゃがみ、声をかける。

「私はラフィ。この方を御守りする騎士です。君達の名前、教えてくれる?」
「エイダ」
「エリス」
「エイダとエリスちゃんね。どうして食糧庫のそばにいたの?お父さん達は?」
「あのね、お父さんがここにお勤めしていて、忘れ物したから、2人で届けに来たの。そしたら、みんな怖い顔して走り回ってて、建物が揺れたりもしたんだ。」
「怖かったから、2人で隠れる所探してて、そしたら、黒い鎧をつけた人に切りつけられそうになって、金色の髪に、紫水晶みたいな綺麗な瞳の……そう、お姉ちゃんみたいな瞳の男の人が助けてくれたんだ。で、僕達にここで隠れているようにって……男の人は、後で迎えに来てくれるって言ってたけど、来ないから、お腹も空いたし……」
「「2人で父さんを探しに行こうって、出て来たんだ。」」


13歳年上の兄、カルディアことカル兄様。
金色の髪に紫の瞳の兄。

父の家系は、金色の髪に紫の瞳の人が多い。
一族の特徴かもしれないけど……
特に男性はその傾向が強かった。
女性は瞳は紫なんだけど、髪色は色々だった。

騎士の中で、紫の瞳の者は幾人かいるが、金色の髪に紫の瞳は、確か父と兄ぐらいだ。
なら、この子達を助けたのは兄だろう。

兄の行方が少しだけ見えたような気がした。
無事なら良いんだけど……

「その男の人はどこに行ってたとか、わかるかな?」
「黒い鎧の真っ赤な髪の人を追いかけて行ってた。」
「そうそう、右頬に傷があったよ。」

敵国の騎士か間者か。黒い鎧なら、多分騎士だろう。
何処か抜け道から入ってきた可能性が高い。そして、兄はその敵を追いかけて………行方知れずになっらのだろう……
無事にいてくれたら良いのだが……無事にいて……


2人に兄と出会った場所を案内してもらう。
もしかしたら、追跡魔法で追えるかもしれない
そう思い、魔法陣を展開した。探すのは兄。


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