雨のち晴れ。時々曇り。異世界でスマホ片手に頑張ってみます。

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トリップしたみたいです。

傷心旅行が

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「あ~、せっかくの旅行が、ついてない…」

旅行バックをホテルに預け、小ぶりのリュックを背負って神社仏閣巡りをしていた私。
本当は彼氏との旅行予定だったのよね。
それが………

なんだか今日の天気みたい。どんより雲で空は覆われてる。
時折にわか雨が降り注ぎ、おかげでお気に入りの服が濡れてしまった。
お気に入りと言っても、可愛らしいワンピースとかではないんだけどね…

旅行当日になって、急にスマホが鳴った。


お互い仕事の関係で、遠距離恋愛になってしまったのもまずかったのかもしれない。
同じ系列の私は短大。彼は大学を卒業し、私は地元、彼は東京に行ってしまった。
社内恋愛禁止……という訳では無かったんだけどね…

久々にお互いの休みが数日合うからと、現地の駅で集合みたいな感じで約束した。
それが、半月前の話。
スマホを使ってお互いを話してたんだけど、仕事に追われて…言い訳だ…

約束の駅に着いて、着いたよコールをしたら、振られた。
好きな子が出来たとか…妊娠してて、結婚するのだとか…
文句の一つも言ってやりたかったけど、携帯番号を変えるから、連絡できないとだけ言われ、そのまま切られた。
旅行代金は彼が事前に払ってくれているから、お詫びとして楽しんでと言われて…

悔しいけど…ほんと悔しいけど、彼が本社に移動するときに、ついて行っていたら…
今更だけどね…

参道を歩きながら、景色や、建物を堪能する。
今度は良縁に巡り合いますように…
そんな事を祈り、子供には罪がないから、無事に産まれるようにとも祈ってみた。

ポツポツと雨が降り出し、慌てて何処か雨宿りできる場所は無いかと探してしまう。
参道沿いの小さな少し古ぼけた祠が見えた。
人1人ぐらいは雨宿りできそうだ。

空にかかる雲の流れを見る限り、大振りにはならないだろうから…

「神様、ほんの少し雨宿りさせてくださいね」

それだけ言って、駆け込んだ。
頬に雨がかかったためか、それとも考え事のためなのか、頬に伝うものがある。

はぁ…………
大きなため息を吐き、ついつい祠に独り言をぼやいてしまった。

「家族が出来ると思ったのになぁ…ついてない。お互い仕事に対してやりがいを感じ始めて、そして、彼の邪魔したらいけないって…連絡を我慢したのがいけなかったのかなぁ…」

誰も聞いていないであろうから、思う事がポロポロと、支離滅裂と漏れ出てくる。

幼少時期に両親を、家族を事故で亡くした。
修学旅行から戻り、解散という時に、先生に慌てて呼ばれて、病院に駆け込んだ。
迎えに来てくれるはずだったのに……
渡すはずのお土産も、土産話も出来ずの、急な別れだった…

1人残されて、色んなものを失って、唯一残された遺産と、両親の希望だった大学(短大にしたけど)を卒業した。
在学中から付き合いだし、たまたま同じ会社に就職…だったんだ。

過去を思い出しながら、雨宿り。
いつまでも、悩んでも、悔やんでも仕方ないよね。
次は、もっといい出会いがあるはずさ…

「雨、やんだ。神様しばしの雨宿り、有難うございます。」

そうお礼を言って、リュックの中からお菓子の袋を一つ出す。

「こんな物で御免なさい」

そう言って、お供えし、そこを後にした…
というか、しようとした…

近くに虹がかかって綺麗………と思って一歩踏み出した所で………


「ここ何処??」

あたり一面緑の草原と、少し離れた所に湖のようなものが見え、その側に樹々が生い茂って見えた…
後ろを振り向けば、街道も無ければ、さっき雨宿りした小さな祠も…無い。
有るのは、少し古ぼけた石碑のような物だった。

「どうなってるの?これ……」

鞄の中からスマホを取り出すも、圏外。
見れるのは、保存している写真などのみだった。

「彼がいわゆる異世界トリップ???」

小説や漫画、ゲームや映画の世界だけかと思っていたのに、いざ自分の身に降りかかるとは思ってもみなかった。
一瞬思考が真っ白になるも……

とりあえず、小説やゲーム、アニメとかの異世界ものの知識を確認してみよう。
もしかしたら、実際に使えるものもあるかも知れないし…

まず、服装は……この世界がわからないけど、ズボンと綿シャツ。トレーナーにコートだから、そうそう、胸だけどうにかしておこう。女性は危険なのが多かったよね。
リュックの中に、薄手のマフラーを入れていたのを思い出して、急いでサラシのように巻いて胸を隠してみた。
後は…あとは…後は??

混乱しながらも考えていたら、急にスマホがひかり、画面に文字が出て来た。
思わず目で追って読んでみた。

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