竜の国のご都合主義?

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驚きは急にやってくる

誕生日

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目が覚めたら、そこは父の執務室でも、僕の部屋でもなかった。
そう、来客用の客室だ。
それも、とても大切な特別客をもてなす為に準備された部屋だった。

「うっ……ん…」

うっすらと目を開ける。

「起きたか」

そう言って、愛おしそうに頬を撫でられた。
どう言う事?えっと?

頭の中を『はてなマーク』を担いでいる数人の小人の僕が走り回る。
そう、『?』を担いだミニミニ僕だ。
ようし、よ~く考えよう。思い出すんだ。
僕は父の部屋…そう、執務室に呼ばれて行った。
そこに、この客人がいた。
で、話の流れとか?で、『番』がどうとかで、魔力をお互いに流し合うことになって…

「えっ!?もしかして、僕が?いゃ、そんなはず…」
「どうした?」
「えっと…」

『俺を見ろ』みたいに顔を両手で固定され、見つめられた。
美丈夫は、目の保養…じゃなくてだ。

「いやいやいや…僕みたいな凡人の、そう、『脇役?』そう、『モブ』だ。モブの僕が、こんなかっこいい美形の…そう、メインキャラ達の一人みたいな人の…いゃ、『竜人族』の人の『番』なんて…ないない。うん。あり得ない…」

思わず両手で相手の胸元を押して逃げようと試みる。
ん~~~~びくともしないよ~~
さすが『竜人族』。身体が違う。見た目と違う。
父とか兄とかもそうだけど、しっかりと鍛え上げられた…そう、騎士としてしっかりとした筋肉をお持ちで…
僕には、残念ながらないものです…ぐすん…じゃなくてだ…

「何が有り得ない?」

今度は抱き込んで、さらに覗き込んできた。
ベットの端に腰掛け、僕をいつのまにか膝の上に乗せて抱き込む態勢だ。

「えっと…離して…」
「離したら逃げるだろ?逃さないが…」

僕の着ていた服が、向こうに見える。
そう、椅子に引っ掛けるようにして…
じゃぁ、今の僕は…
誰の服?
白いシルク生地のシャツ。
大っきい…

今更だが、お袖は折られてるし、裾は…お尻までスッポリだ。
『彼シャツ』というものだろうか?
いゃ、男同士だし…
そういえば、この世界。同性同士も大丈夫な世界だったよ~~~~

「あぁ、折角の祝いの服がシワになってはいけないからね。今日の君は主役なんだから。だから、私の服に着替えさせた。華奢な君には、少し大きかったか…だが、それも愛おしさが増すと言った感じか。良いなぁ…」

襟ぐりも大きく開いて、恥ずかしい…
絶対、今の僕は真っ赤になってるはずだ。

「カル。君は私の『番』だ。君が生まれた時から…」
「え?」
「君が生まれて来るまで、この世界中を探しに探した。諦めかけた時に、君はこの世に生まれてくれた。」

そう言って、頬に唇が…

「君が生まれた時、すぐに逢いに行った。まさか友人の…親友の子供として生まれてきてくれるとは思わなかったが…そして、君が成人の歳になるまで待った。」

耳元で、そう呟かないで欲しい。ゾクゾクする。
うん。良い声だ…じゃなくて~~~

「君の気配がこの地から消えた時には慌てた。君を奪い去る者は許せない。私の身が引き裂かれるようなそんな感覚が襲ったんだ。すぐさま気配を追って、魔力を行使してでも助け出そうと…心配したんだ。もう、あんな思いはごめんだ…」

首筋に唇が滑らされる…
抵抗ができない…
僕の身体が…まるで歓喜しているように、さらに火照りだす。
やばい…

自分が『番』だと言っているこの男性。
そう、父の友人でもあると言う王弟殿下。ジャディール•アステード殿下が…

「あの…ジャディール殿下…」
「殿下とは呼ぶな。ジャディールと呼び捨てか、ディと呼べ」

そう言いながら、シャツの下から手が…

「殿下…」
「違う。ディだ」

手は服の中に入り込み、僕の身体を…
『さぁ…』と促され、吐く息が荒くなりながらも、何とか『ディ』と呼んだ。
『良く出来ました』と言いながら、不埒に動いていた手はとまり、そっと頬を撫でられた。
そして、唇に柔らかいものが重なる。

「気持ちよかったかい?もっと良くしてあげたいけれど、私自身が止まらなくなりそうだ。残念ながら時間もないしね…」

そう言うと、彼…ディの魔力のおかげか?僕の火照りも、下半身の…うん、治った。
よかった~~~~
『癒しの魔法』で治るんかい!!超ビックリなんですけど~~

でも、そうだ。誕生日にお客人を招いてる側なのに、主役の僕が乱れて欠席なんてとんでもない!!
言い訳になんないよ…
それとも、ん?なんか思考がおかしなことになっている?
そうだ、僕『番』、どうしたら良いの??

「さぁ、着替えようか。手伝ってあげるよ」

そう言うなり、着替えさせられ、髪も整えられた。
うん。さっきのは何だったんだとうなぁ~~~

思わず遠い目をしたくなった。
考えたくない…

「カル。私は君の『番』だ。だけど、もう少しだけ待ってあげよう。全てを私のモノにするのは、卒業してからだ。アカデミー…楽しみにしているんだろ?でも、何もしないと言うことはないから、覚悟しておいてね」

そう言うと、『さぁ、行こう。私の婚約者殿』と言われ、姫君をエスコートするように、手を引かれた。
確かに、僕は…もうディでいいや…本人希望だから…で、ディに比べたら、背も低い。体格も華奢かもしれないが、それは、ディが『竜人族』だからであって、僕がディの胸元ぐらいな背なのは…『ヒト族』では、普通なんだからな!!

しかも、今後は襲われるのが決定みたいに言われて悔しい。
何でだ?
父は知っているそぶりだったけど、納得がいかない!後で抗議だ!!


でも…何故かディを完全に拒否できない自分がいるのも…
いゃいゃ、気のせい。そう、気のせいだ。

コロコロ変わる僕の表情を楽しむように微笑まれ、またその表情にドキッとしてしまう自分は大丈夫だろうか?
コレも『番』のせいなのだろうか??

思考があらぬ方向に加速していき……どっかに飛んでった。
まぁ、なるようになるだろう…

嬉しそうに、愛おしそうに見つめるディを…拒否できそうにない自分に少し呆然とした。
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