君に逢えてよかった

文字の大きさ
上 下
10 / 31
えっと

子猫は…

しおりを挟む
夕日が沈みだし、仕事もだいぶと落ち着いてきた。
もう少ししたら、少し休もう……

そう思い、ソファーに休んでいるであろう黒猫をみる。

大人しく顔を撫でるように毛繕いしている姿は愛らしく思うし、癒される。
疲れも取れるようだ。
乱れかけた魔力が落ち着いているのも関係しているのだろうか…

そんな事を思っていると、従者がノックして入ってきた。
その隙に、黒猫が外に出てしまった。

「あっ…」

慌てて追いかけようと立ち上がるも、できた書類を渡す必要がある。
すぐさま書類を渡し、側に控えている者に指示を出し追いかけた。

黒猫が城内で迷子になる恐れがあるし、手放す気にはなれなかった。
理由は……
魔力が不思議と安定したからか?それとも他の何かか…
魔女に付けられたであろう首輪は外せず、後で自分のものだと示せる物をそれにつけてやろうと思っていた。
先に付けておけば良かった……

黒猫の魔力がをたどる。
この世界、どんなものでも魔力がある。強さは色々だが……
が、いきなり黒猫の魔力が途絶えた。
どう言う事だ??

廊下などで辿れるところまで来たが、姿は見えなかった。
物陰にでもいるのかと探すもいない。
ここまで執着するものは、動物でも人でもいなかったが…

少し焦りながらも、外に出た。
薔薇の庭園を抜け、ちょっと樹々が茂った場所までで出て探す。

昼間は散歩する者もいるかもしれないが、夜は誰も出歩かない場所。
此処ならきっと誰も来ないだろう……
薔薇園あたりから魔力が消えているように感じるが…


猫の時の魔力を手掛かりに探そうにも、その手がかりがかき消されていた……

「どう言う事だ?」

しばらく探し回り、樹々の間を抜けて、湖に出る。

「ここにもいないのか?」

辺りは日が落ちて、いつしか月明かりがさしていた。

「あれは?」

今いるところから離れた場所、湖の側で何かが光って見えた。
それは徐々に大きくなり、人の姿が見えた。


胸がドキドキする。
黒い髪。黒い瞳。少しあどけなく見えるが、愛らしい顔が見える。そしてなぜか乳白色の裸体?
ここからは上半身しか見えないが、上半身裸の少年の姿が見えた。もしくは青年か?

「周りを確認するようにしているのか?もしかしたら…いや、彼が私の…」

何故かそう確信できる。
異世界からやってくる者は、黒髪、黒い瞳。そして、乳白色の肌の者達だ。
残っている肖像画や、書物にもそう記載されていた。

思わず駆け出し、抱きしめたい衝動に駆られたが……
月明かりも見えた番と思われる者の姿は消えていた。

どう言う事だ?どこに行った?
子猫のことも気になるが、番と思われる者のことも…
だが、現れた事は確信した。
絶対に見つけ出し、捕らえる。

月明かりではあったが、顔は覚えた。
必ず……


「殿下?このような所で?」
「あぁ、お前か」
「どうぞお戻りを。子猫はまた戻ってきますよ。しばらく様子をみましょう。他の者達のも、子猫の特徴とか伝えていますから、もし他で見つかっても戻ってきますよ」

そう促され、部屋に戻ることにした。
子猫の件は、侍従が手配したと言うから、大丈夫だろう。戻ってきたらすぐに私のものだと印をつけよう。
それよりも、あの者だ。
必ず見つけ出す!!
しおりを挟む

処理中です...