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落ちてきた君

彼女の元へ

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ドアのノック音が聞こえる。
あぁ、セシルか…

「殿下、セシルです。よろしいでしょうか?」
ライトに合図を送り入室の許可をだす。

「お忙しい中、申し訳ありません。姫様がお目覚めになられましたので、ご連絡にまいりました。」
メイドとしての挨拶後、入室して番が目覚めた事に対して報告してきた。

気配ではわかっていたが、やっと目覚めた後、少し落ち着いて身支度もできたようだ。

本当は、執務などせず、 眠る番の側で目覚めるのを待ちたかったが、セシルや他の者達に促され、しぶしぶ執務をこなして気を紛らわしていた。

一度は目覚めた感触が伺え、直ぐにでも番である彼女に贈る装飾品(魔力を込めて創った唯一の物)を手にして行こうかとしたが、何故か意識が途絶えた。

セシルに念話を送ると、一度は目覚めたが、気が動転し、再度眠りに落ちたとの事だった。

心配だったが

「見も知らない男性が女性の部屋、しかも寝ている側にいる事は不謹慎です。嫌われますよ……」

そう皆から忠告されていたため、我慢していたのだ。

いつもは冷静な私だが、番に対してはあてはまらないようだ。
嫌われるのは嫌だからね…このくらいなら、我慢できる。

そう考えながら、机の上に乗せられた書類の山を片付けた。

皇太子である私の執務内容は多岐にわたり多い様だが、彼女との時間を少しでも多く取りたいため片付けたよ。
時間はもう昼食時間か…

「天候もよろしので、外での食事で準備させて頂いております。」

「わかった。直ぐに行こう。ライト…」
「「かしこまりました。」」

セシルは返事後、彼女の元へ戻って行った。
ライトから上着を掛けてもらい、彼女の元に行く準備をする。
彼女に渡す装飾品と過去の番達が残した書籍。

確か次の番が現れた時に渡して欲しい。
決して番達以外には中を見せないで欲しい。
そう過去の者達に頼み、預けられてきた物。

番からの願いは、余程のことが無い限り叶えられる。
叶えたくてしかたがないらしい。

何が書かれているかは見当が付いている。
過去に番を手に入れた者達からの書籍が密かに受け継がれているからね。

信じられない様な内容やバカバカしい内容もある。
だけど、それも今になっては理解できる。

あくまで、参考にしながら
彼女に好かれ、逃げない様にしないとね…

クスッと笑みが浮かぶ

楽しみだ。待っててね愛しい番…愛しの君。
早く声が聴きたいよ。名前を教えて欲しい。
名前を呼ばれたい。
微笑んで欲しい。
側にいて、君の温もりを感じたい
逃がさないよ…
決して離しもしない…

ん??
「殿下?ほどほどでお願いしますね…」
「何の事かな??」
「………」
「後でゆっくり話し合おうね。」

ライトの顔が引きつり固まる…

相変わらずだなぁ…まぁ、今の私は機嫌が良いから、このぐらいにしておくか…

「行こう」
「かしこまりました。」
執務室を後にする…


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