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【第48話】タンデムは勇者様と
「様子がおかしいと思いませんか?」
半日ほど森を探索しただろうか、イヴが馬車を止め呟くように尋ねた。
「ボクはずっと街に居残りだったから……ちょっとわかんないや」
「私も、森に来るのは今回が初めてですので……静かですねとしか……」
イヴがゲートを探している間リーナとクレムは、いざという時臨機応変に対処できるよう街で待機していたのだから、森の変化に気付かなくても仕方がない。
イヴは御者席の隣に座る漣に目を向けた。
「言われてみれば……」
漣はゆっくりと辺りを見渡す。
脅威を示すALERTの文字はどの方角にも表示されていない。
それどころか、この世界に来た初日には嫌というほど襲ってきた魔物たちが、今日は一度も現れていない。
魔物の発生する原理は漣にはわからないが、これは確かにおかしな状況だ。
「半径300mに魔物はいないと思う。どうする? もう少し奥まで探ってみる?」
「そうですね、とりあえず二人は馬車でここに待機して、二人は街道を逸れて探索してみましょう」
獣車を降りたイヴは、二頭曳きのウィンドランナのうちの一頭を切り離すため、マオに近づいた。
「ああ、待って。それならこっちを使おう」
レッグバッグのスイッチを押した漣の前に、イオン推進バイクHaTMCが現れる。
「ええっ、今度は何!?」
「大きな虫の魔道具っ……ではありませんっ、よねぇ??」
今日はこれで三度目となる、リーナとクレムの驚きっぷりに、何故かイヴは満足そうな表情を浮かべるのだった。
「これは馬代わりの乗り物だよ」
漣はHaTMCに跨り、ハンドル中央のスタートスイッチを押した。
エンジンが静かに始動して機体が地面から80cmほど浮き上がり、ランディングギアが格納され、テール部のスラスターが開く。
「え、ちょっっ、う、浮いてる!?」
「う、馬、代わり……はうぅぅ」
リーナはこれでもかというくらいに目を見開き、クレムはもはや理解不能と目を回す。
「俺が一人で行ってもいいんだけど、一応これ二人乗りだから。後ろで良ければ、乗せてくけど」
「はいはいっ、ボクが行く! それ乗ってみたい!!」
漣が一旦地上すれすれまでHaTMCを下ろし後部シートを指さすと、好奇心に満ち溢れた表情のリーナがすかさず手を挙げた。
「うん、じゃあリ……」
「だ、ダメですっ」
リーナ、と言いかけたところを、イヴは彼女らしからぬ大きな声をあげ全力でダメ出しする。
「え~、何でダメなの? 別に、誰が行ってもいいよね? さっきの魔族が襲ってくる事はないだろうし、魔物程度なら、ボク一人でも十分だよ」
否定されたリーナも、ここは黙っていない。
「リーナは、その……そう。探知のスキルを持っていないわ。私が行く方が、効率的よ」
尤もらしい理由ではあるものの、イヴは少しだけ言葉を詰まらせた。
「ちぇ~仕方ないな~。残念だけど、今回はイヴに譲るよ。今度乗せてね、キテレツくん」
リーナは頭の後ろに両手を回し、首を傾けてぱちんっとウィンクした。
「いいよ、今度ね。じゃあ行こうかイヴ」
「はい。ええと、これはどうやって乗ればいいのかしら」
HaTMCの傍に立って、イヴは首を傾げた。
「馬に乗る要領でいいと思う。足は両脇のステップに……」
振り向いて下を向いた漣の目に、短めのスカートから覘くイヴの白い太腿が飛び込んでくる。
「これ、ですか?」
「そ、そう、それにのせて」
上手く動揺を隠した漣をよそに、イヴはまったく気にした様子はない。
日頃、同じ格好でウィンドランナに跨っているのだから当然と言えば当然で、漣が少々意識しすぎているのは否めなかった。
「これを掴めばいいのかしら」
イヴは漣が教えるよりも先に、シート横のグリップバーを掴む。
「一応、何かあった時すぐ分かるように、ドローンビートルを飛ばしておくよ」
「了解。これでボクたちは、キテレツくんに丸見えってことだね。どうしよ、水浴びでもしよっか~、ね、クレム」
「そうですねぇ。でも、ノーバディさん、その乗り物から落ちてしまわないでしょうかぁ」
いたずらっぽい笑みを浮かべるリーナに、意外にもクレムまでがのってくる。
「リーナっ、クレムまでっ。悪ノリはお止めなさい」
イヴに釘を刺された二人は笑いながら肩を竦めたが、漣がほんの少し、本当にほんの少しだけ期待したのはいうまでもなかった。
半日ほど森を探索しただろうか、イヴが馬車を止め呟くように尋ねた。
「ボクはずっと街に居残りだったから……ちょっとわかんないや」
「私も、森に来るのは今回が初めてですので……静かですねとしか……」
イヴがゲートを探している間リーナとクレムは、いざという時臨機応変に対処できるよう街で待機していたのだから、森の変化に気付かなくても仕方がない。
イヴは御者席の隣に座る漣に目を向けた。
「言われてみれば……」
漣はゆっくりと辺りを見渡す。
脅威を示すALERTの文字はどの方角にも表示されていない。
それどころか、この世界に来た初日には嫌というほど襲ってきた魔物たちが、今日は一度も現れていない。
魔物の発生する原理は漣にはわからないが、これは確かにおかしな状況だ。
「半径300mに魔物はいないと思う。どうする? もう少し奥まで探ってみる?」
「そうですね、とりあえず二人は馬車でここに待機して、二人は街道を逸れて探索してみましょう」
獣車を降りたイヴは、二頭曳きのウィンドランナのうちの一頭を切り離すため、マオに近づいた。
「ああ、待って。それならこっちを使おう」
レッグバッグのスイッチを押した漣の前に、イオン推進バイクHaTMCが現れる。
「ええっ、今度は何!?」
「大きな虫の魔道具っ……ではありませんっ、よねぇ??」
今日はこれで三度目となる、リーナとクレムの驚きっぷりに、何故かイヴは満足そうな表情を浮かべるのだった。
「これは馬代わりの乗り物だよ」
漣はHaTMCに跨り、ハンドル中央のスタートスイッチを押した。
エンジンが静かに始動して機体が地面から80cmほど浮き上がり、ランディングギアが格納され、テール部のスラスターが開く。
「え、ちょっっ、う、浮いてる!?」
「う、馬、代わり……はうぅぅ」
リーナはこれでもかというくらいに目を見開き、クレムはもはや理解不能と目を回す。
「俺が一人で行ってもいいんだけど、一応これ二人乗りだから。後ろで良ければ、乗せてくけど」
「はいはいっ、ボクが行く! それ乗ってみたい!!」
漣が一旦地上すれすれまでHaTMCを下ろし後部シートを指さすと、好奇心に満ち溢れた表情のリーナがすかさず手を挙げた。
「うん、じゃあリ……」
「だ、ダメですっ」
リーナ、と言いかけたところを、イヴは彼女らしからぬ大きな声をあげ全力でダメ出しする。
「え~、何でダメなの? 別に、誰が行ってもいいよね? さっきの魔族が襲ってくる事はないだろうし、魔物程度なら、ボク一人でも十分だよ」
否定されたリーナも、ここは黙っていない。
「リーナは、その……そう。探知のスキルを持っていないわ。私が行く方が、効率的よ」
尤もらしい理由ではあるものの、イヴは少しだけ言葉を詰まらせた。
「ちぇ~仕方ないな~。残念だけど、今回はイヴに譲るよ。今度乗せてね、キテレツくん」
リーナは頭の後ろに両手を回し、首を傾けてぱちんっとウィンクした。
「いいよ、今度ね。じゃあ行こうかイヴ」
「はい。ええと、これはどうやって乗ればいいのかしら」
HaTMCの傍に立って、イヴは首を傾げた。
「馬に乗る要領でいいと思う。足は両脇のステップに……」
振り向いて下を向いた漣の目に、短めのスカートから覘くイヴの白い太腿が飛び込んでくる。
「これ、ですか?」
「そ、そう、それにのせて」
上手く動揺を隠した漣をよそに、イヴはまったく気にした様子はない。
日頃、同じ格好でウィンドランナに跨っているのだから当然と言えば当然で、漣が少々意識しすぎているのは否めなかった。
「これを掴めばいいのかしら」
イヴは漣が教えるよりも先に、シート横のグリップバーを掴む。
「一応、何かあった時すぐ分かるように、ドローンビートルを飛ばしておくよ」
「了解。これでボクたちは、キテレツくんに丸見えってことだね。どうしよ、水浴びでもしよっか~、ね、クレム」
「そうですねぇ。でも、ノーバディさん、その乗り物から落ちてしまわないでしょうかぁ」
いたずらっぽい笑みを浮かべるリーナに、意外にもクレムまでがのってくる。
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