異世界に転生した俺が、姫勇者様の料理番から最強の英雄になるまで

水辺野かわせみ

文字の大きさ
48 / 64

【第48話】タンデムは勇者様と

「様子がおかしいと思いませんか?」

 半日ほど森を探索しただろうか、イヴが馬車を止め呟くように尋ねた。

「ボクはずっと街に居残りだったから……ちょっとわかんないや」

「私も、森に来るのは今回が初めてですので……静かですねとしか……」

 イヴがゲートを探している間リーナとクレムは、いざという時臨機応変に対処できるよう街で待機していたのだから、森の変化に気付かなくても仕方がない。

 イヴは御者席の隣に座る漣に目を向けた。

「言われてみれば……」

 漣はゆっくりと辺りを見渡す。

 脅威を示すALERTの文字はどの方角にも表示されていない。

 それどころか、この世界に来た初日には嫌というほど襲ってきた魔物たちが、今日は一度も現れていない。

 魔物の発生する原理は漣にはわからないが、これは確かにおかしな状況だ。

「半径300mに魔物はいないと思う。どうする? もう少し奥まで探ってみる?」

「そうですね、とりあえず二人は馬車でここに待機して、二人は街道を逸れて探索してみましょう」

 獣車を降りたイヴは、二頭曳きのウィンドランナのうちの一頭を切り離すため、マオに近づいた。

「ああ、待って。それならこっちを使おう」

 レッグバッグのスイッチを押した漣の前に、イオン推進バイクHaTMCハートマックが現れる。

「ええっ、今度は何!?」

「大きな虫の魔道具っ……ではありませんっ、よねぇ??」

 今日はこれで三度目となる、リーナとクレムの驚きっぷりに、何故かイヴは満足そうな表情を浮かべるのだった。

「これは馬代わりの乗り物だよ」

 漣はHaTMCに跨り、ハンドル中央のスタートスイッチを押した。

 エンジンが静かに始動して機体が地面から80cmほど浮き上がり、ランディングギアが格納され、テール部のスラスターが開く。

「え、ちょっっ、う、浮いてる!?」

「う、馬、代わり……はうぅぅ」

 リーナはこれでもかというくらいに目を見開き、クレムはもはや理解不能と目を回す。

「俺が一人で行ってもいいんだけど、一応これ二人乗りだから。後ろで良ければ、乗せてくけど」

「はいはいっ、ボクが行く! それ乗ってみたい!!」

 漣が一旦地上すれすれまでHaTMCを下ろし後部シートを指さすと、好奇心に満ち溢れた表情のリーナがすかさず手を挙げた。

「うん、じゃあリ……」

「だ、ダメですっ」

 リーナ、と言いかけたところを、イヴは彼女らしからぬ大きな声をあげ全力でダメ出しする。

「え~、何でダメなの? 別に、誰が行ってもいいよね? さっきの魔族が襲ってくる事はないだろうし、魔物程度なら、ボク一人でも十分だよ」

 否定されたリーナも、ここは黙っていない。

「リーナは、その……そう。探知のスキルを持っていないわ。私が行く方が、効率的よ」

 尤もらしい理由ではあるものの、イヴは少しだけ言葉を詰まらせた。

「ちぇ~仕方ないな~。残念だけど、今回はイヴに譲るよ。今度乗せてね、キテレツくん」

 リーナは頭の後ろに両手を回し、首を傾けてぱちんっとウィンクした。

「いいよ、今度ね。じゃあ行こうかイヴ」

「はい。ええと、これはどうやって乗ればいいのかしら」

 HaTMCの傍に立って、イヴは首を傾げた。

「馬に乗る要領でいいと思う。足は両脇のステップに……」

 振り向いて下を向いた漣の目に、短めのスカートから覘くイヴの白い太腿が飛び込んでくる。

「これ、ですか?」

「そ、そう、それにのせて」

 上手く動揺を隠した漣をよそに、イヴはまったく気にした様子はない。

 日頃、同じ格好でウィンドランナに跨っているのだから当然と言えば当然で、漣が少々意識しすぎているのは否めなかった。

「これを掴めばいいのかしら」

 イヴは漣が教えるよりも先に、シート横のグリップバーを掴む。

「一応、何かあった時すぐ分かるように、ドローンビートルを飛ばしておくよ」

「了解。これでボクたちは、キテレツくんに丸見えってことだね。どうしよ、水浴びでもしよっか~、ね、クレム」

「そうですねぇ。でも、ノーバディさん、その乗り物から落ちてしまわないでしょうかぁ」

 いたずらっぽい笑みを浮かべるリーナに、意外にもクレムまでがのってくる。

「リーナっ、クレムまでっ。悪ノリはお止めなさい」

 イヴに釘を刺された二人は笑いながら肩を竦めたが、漣がほんの少し、本当にほんの少しだけ期待したのはいうまでもなかった。

感想 5

あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています