黒柳悦郎は走ったり走らなかったりする

織姫ゆん

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2章  二日目 カレーは別腹

2-3 ほぼいつもどおりの午前

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「おはよー」
「咲おはよー。緑青さんもおはよー」
「おはよう」

俺と咲と緑青は、いつもどおりの時間に教室に到着した。
え? 麗美か?
麗美は……。

「麗美さん、大丈夫かな? 朝から保健室だなんて」
「まあ、だいぶ堪えたみたいだからな。朝のラッシュの混雑具合が」
「あれは慣れてもだいぶツラい」
「まあな。はじめてじゃ仕方ない」
「それに、昨日も酔ってたしね」
「そういえばそうだったな。そっちの方は大丈夫だったのか?」
「わかんない。あとで聞いてみる」
「まあ、そこまで抜けたやつだとは思わないけど……」

自分たちの席に荷物を起き、空いたままの麗美の席を見る。
まだ転校してきて二日目だけれども、もうすっかりアイツは俺たちの中の一員になっていた。
とはいえあの濃いキャラには、これからも驚かされることにはなるだろうけど。

「よう悦郎」
「おう砂川。おはよう」

ソーセージマフィンをモグモグしながら、砂川が教室に入ってきた。

「あれ? 一人足りなくないか?」

口端についたソースを指先で拭い、その指でそのまま俺たちの人数を数える砂川。

「お前もそういう認識か」
「ん?」
「いやなに、もうすっかり麗美はいて当たり前になってきてるなって思ってて。昨日の今日なのに」
「ぐふふ、悦郎なんか遠い目してる」
「はあ?」

これもすっかり定番になりつつある、緑青の俺いじり。
麗美が転入してくる前の俺たちがどんなやり取りをしていたのかを思い出せないくらい、当たり前になってきていた。
そんな俺たちを放っておいたまま、咲が麗美のことを砂川に説明していた。

「麗美ちゃんなら、ちょっと保健室行ってる。朝の電車で気持ち悪くなっちゃって」
「そうなんだ。まあ、あのラッシュはちょっとキツいもんね。麗美ちゃんってまだ日本に慣れてなさそうだもんねって……ん?」

不意に首をかしげる砂川。
カバンの中から取り出しかけたドーナツを再びしまった。

「っていうか、麗美ちゃん電車通学なの?」
「そうだよ」
「あれ? 昨日とか黒いでかい車で送り迎えしてなかった?」
「あー。なんかな、電車好きなんだって」
「え? 乗り鉄ってやつ?」
「んー、そこまでではないかな」
「なんか、日本の鉄道が珍しいとか」
「あー、確かにね。僕もこっち帰ってきてすぐのころはちょっと楽しかったわ」

こう見えて砂川は、アメリカからの帰国子女だ。
まあ、それっぽいところとかまったくないけど。

「ふぅ、お騒がせしました」
「お、噂をすれば」
「はい?」

そんな話をしていた俺たちのところへ、麗美が戻ってきた。
電車を降りた直後に比べて、顔色はかなり良くなっている。
もともと肌が白いからよくはわからないが、授業を受けられるくらいにまでは回復したのだろう。

「もう大丈夫なのか?」
「はい、なんとか」
「無理するなよ」
「ありがとうございます」

「はーい、みんな席ついてー。チャイム鳴るよー」

麗美が戻ってきてほぼすぐあと、キーンコーンカーンコーンというチャイムの音と共に、みどり先生が教室にやってきた。

「先生、今日はちゃんと降りられたんですね」

席に座りながら、みどり先生に軽口を叩く。

「ふふん。もちろんよ。同じ失敗は繰り返さないわ」

自慢げに胸を張るみどり先生。
その服装は、普段はめったに見ないパンツルックだった。
クラスのみんなはその理由にうすうす気づいていたが、それ以上の追求はしなかった。

そして、いつものように朝のホームルームが始まった。





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