52 / 171
6章 六日目 ろくしょう
6-7 いつもどおりと言えなくもない下校
しおりを挟む「モナカチョコジャンボが食べたい」
「え?」
帰りの電車の中、先頭車両から窓の外を楽しそうに眺めている麗美の隣で、俺はポツリと呟いた。
「わかる」
反対側にいた緑青も、俺のつぶやきに同意してくれた。
「時々無性に食べたくなるよな。なんなんだあれ」
「わからない。魔力的な何かかもしれない」
「えっと……私それ知らないです」
電車好きでコンビニ好きの麗美が、首をかしげている。
俺と緑青は、まさかという顔でそんな麗美を左右から見つめていたた。
「モナカチョコジャンボを知らない……だって?」
「コンビニマニアの麗美が知らないとは……」
「え? え? それってコンビニに何か関係あるものなんですか?」
「関係あるっていうか、どこのコンビニでも大抵は置いてあるよな」
「うん。モナカチョコジャンボはアイスの定番」
「アイスの名前なんですね! モナカチョコジャンボということは、大きいんですか?」
言われてふと気づいた。
そういえば別に、大きくはない。
なのになんであれは、モナカチョコジャンボなんて名前なんだろうか。
緑青も同じように思ったらしく、首をかしげながらこちらを見ていた。
「そういえば……大きくはないな。緑青、あれのミニサイズ版とか見たことあるか?」
「ない。箱に入ったお徳用とかも見たことない」
「うーむ……なぜジャンボなのか」
「???」
そんなことを話しているうちに、電車が最寄り駅に着く。
「よし麗美。コンビニに行こう」
「はいっ」
当然のように、俺と麗美はコンビニへと向かう。
俺は念願のモナカチョコジャンボを食べるために。
麗美はいまだ見知らぬモナカチョコジャンボと出会うために。
ちなみに緑青は反対側の駅の出口からろくしょうミートへと帰っていった。
「そうだ。咲さんにお土産を買っていきましょう。確か……熱があるんでしたよね」
「うむ。ということはつまり、やっぱりアイスを買うべきだ、ということかもしれないな」
「ふふふ、そうですね」
「ああ」
* * *
「いらっしゃいませ~」
当たり前のように若竹が俺たちを出迎えてくれる。
「今日もお前がシフトの日だったか」
「あー、でもあと1時間で上がる。そのあと本業があるから」
「そうか」
「いつかは見に来いよな悦郎。チケット用意するから」
「なんだ、行っていいのか?」
「んー……前はちょっとヤだったけど、今は吹っ切れた。てか、そんなことも言ってられなくなった」
「なんだ? 困ったことでも起きたのか?」
「それなんだけどよ……」
若竹と話し込んでいる俺を置いて、ウキウキと軽いステップで麗美はアイスのコーナーへと歩み寄っていく。
「えーと……モナカチョコジャンボ……モナカチョコジャンボ……あった! 悦郎さん、これですね!」
パタパタとまるで少女のような足取りで、麗美がアイスのパッケージを持って俺の方へと駆け寄ってきた。
「ん? ああ、惜しい。これはモナカバニラジャンボだ」
「え? 違うのですか?」
「違うけどこれも美味いぞ。どれ、俺がちゃんと本家を見つけてやろう。って、探さなきゃないほどじゃないと思うけどな」
そう言いながら、俺は麗美と一緒にアイスのコーナーへと行く。
「……ん? おかしいな」
「ありませんか?」
「いつもならこの辺に……若竹~。モナカチョコジャンボないのかー」
「あー、ごめん。さっき近所の中学校の野球部が来て、買い占めていった」
「くっ! やられた」
「もしどうしてもモナカチョコジャンボがいいんだったら、7時以降にまた来てくれよ。そんときのトラックで持ってきてくれるはずだから」
「いや……たぶんそのときにはもう食べたさの波は収まってる」
「ああ、そういうやつな」
「そういうこと」
俺はトボトボとレジ前に戻った。
「あの、悦郎さん。じゃあこれは……」
「ん? ああ、モナカバニラジャンボな。咲がバニラ好きだから、これでも買ってくか」
「はいっ。じゃあ、私たちの分も合わせて3つ買いましょう」
「いや、2つで十分だ」
「え?」
「俺と麗美で半分でいいだろ。それ、けっこう食べであるぜ」
「わかりました。じゃあ2つで」
「毎度~」
俺と麗美はモナカバニラジャンボを2つ買い、コンビニを出て俺の家へと向かった。
帰りながら麗美と半分にして食べたモナカバニラジャンボは、いつもどおりの美味さだった。
チョコの風味がやっぱり欲しくなってしまったけれども。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。
高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。
「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」
そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。
彼女の名は、立石麻美。
昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。
この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。
その日の放課後。
明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。
塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。
そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。
すべてに触れたとき、
明希は何を守り、何を選ぶのか。
光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う
もぐのすけ
青春
神童と言われた天才サッカー少年は中学時代、日本クラブユースサッカー選手権、高円宮杯においてクラブを二連覇させる大活躍を見せた。
将来はプロ確実と言われていた彼だったが中学3年のクラブユース選手権の予選において、選手生命が絶たれる程の大怪我を負ってしまう。
サッカーが出来なくなることで激しく落ち込む彼だったが、幼馴染の手助けを得て立ち上がり、高校生活という新しい未来に向かって歩き出す。
そんな中、高校で中学時代の高坂修斗を知る人達がここぞとばかりに部活や生徒会へ勧誘し始める。
サッカーを辞めても一部の人からは依然として評価の高い彼と、人気な彼の姿にヤキモキする幼馴染、それを取り巻く友人達との刺激的な高校生活が始まる。
『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない
七星点灯
青春
雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。
彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。
しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。
彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる