黒柳悦郎は走ったり走らなかったりする

織姫ゆん

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17章 十七日目 期末テスト

17-6 いつもは寄らないゲームセンター

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「もうちょっとです。あと2センチ……はい、ストップ!」

ななまるうどんでお昼を食べたあと、結局俺たちはまっすぐ帰ることをせずに、そのまま街に繰り出してた。
まあ、多少は息抜きも必要だからな(言い訳)。

麗美のガイドにしたがって、UFOキャッチャーを操作する。
いかにもバネの弱そうなアームがゆっくりと下がっていき、そしてターゲットをその金属の腕で挟み込む。

「やりました!」
「いや、まだだ」

喜びかけた麗美を片手で軽く制止する。
UFOキャッチャーはここからが勝負。
獲物を挟むだけなら誰でもできる。
だが、そのあとは……。

「ああっ!」

ボトリとアームからぬいぐるみがこぼれ落ちる。

「やっぱりな」

予想していた通りの結末に、俺は追加のコインをポケットから取り出した。

「悦郎さんは、こうなるってわかってたんですか?」
「絶対ではないけどな。麗美が思ってる以上に、あいつの掴む力は弱いんだよ」
「そんな……」

俺は再びコインを投入する。
そして先程途中まで運んだぬいぐるみを、再びターゲットとしてロックオンした。

「よしっ」

再びアームが獲物を掴み上げる。
上下から左右への動きの変化。
そのときの小さな衝撃で、わずかにぬいぐるみがずれる。

「あぶないっ」
「いや、まだ大丈夫だ。今回は出口付近までは運べるはず」

麗美とともに、固唾を飲んでアームの行方を見守る。
調子外れなポップな音楽とともに、ゆらゆらと小さく揺れながら動いていくUFOキャッチャーのアーム。
今回は俺の予想は外れ、ぬいぐるみを掴んだままアームは出口まで移動し、その両腕を左右に大きく開いた。

「やりましたね、悦郎さん」
「ああ」

俺と麗美の視線がUFOキャッチャーの出口に集まる。
そして、そこに落ちてくるぬいぐるみを……。

「あれ?」
「え?」

ぬいぐるみが落ちてこない。
不思議に思いながら俺は視線を上げた。
そしてそれにつられるように麗美もまたそこを見る。

「ええ? そんなのあるんですか」
「はははははっ」

俺は思わず笑ってしまった。
そこには、宙吊りになったぬいぐるみがいた。
UFOキャッチャーのアームはしっかりと左右に開かれている。
だがその金属の腕に、ぬいぐるみのタグが引っかかっていた。
あれでは、UFOキャッチャーの出口にヤツが落下することは永遠にない。

「ちょっと店員さん呼んでくるな」
「はい」

その場を立ち去る俺の背中を、ピンク色の謎生物のぬいぐるみが動かない瞳でじっと見つめていた。

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