151 / 171
17章 十七日目 期末テスト
17-7 いつもよりも寄り道する放課後
しおりを挟む「ほう、これはなかなか……」
「ん? どうした緑青」
麗美とUFOキャッチャーをやったあと、トイレに向かった俺は何かをじっと見ている緑青と遭遇した。
「悦郎、あれ見て」
「なんだなんだ」
緑青が指差す先を見る。
するとそこには、一人の少女がいた。
「あれは……うちの制服か?」
制服の上に大きめのパーカーをまとっていて、その上にヘッドフォンを装着している。
フードをかぶっているために顔はあまり良く見えないが、パーカーの下にわずかに見える制服のデザインは確実にうちの学校のものだった。
「そこじゃない。注目すべきなのは、彼女の腕」
「腕?」
言われて俺は、パーカー女子の腕を見た。
緑青の言っている言葉の意味を、そのままとってしまったのだ。
だが、そうではなかった。
緑青の言いたかったことは、彼女のゲームの腕のことだった。
「おおっ」
パーカー女子が両腕を振り上げる。
その手には、2本の短めの棒が握られていた。
太鼓のバチだ。
彼女が立っているその場所は、音楽に合わせて太鼓を叩く、リズムゲーのプレイポジションだった。
「すげ……」
思わずその姿に見とれてしまう。
ここからでは譜面ををしっかりと確認することはできなかったが、俺の耳に届いてくるそのリズムは完璧無比に思えた。
流れている音楽とも、そのバチから繰り出される太鼓の音は完全に合っていた。
リズムの取りづらいシンコペーション。
腕がブレて見えるほどの高速連打。
右手と左手で別々に刻まれる左右非対称なリズム。
そして時折余裕を見せつけるかのように、リズムを刻まない方のバチがくるくると彼女の手の中で回転させられていた。
「なんだあれ。プロか?」
「わからない。わかるのは、彼女が凄腕だっていうこと」
「だな」
時間も忘れて、俺たちは彼女のプレイを眺めていた。
彼女は俺たちが見ていることも気づかず、淡々とプレイを続ける。
そしてそんな俺たちのところに、咲が合流した。
「なに見てるの?」
「あれだ。プロの太鼓の超人プレイヤー」
「プロかどうかは知らないけどすごい子」
「ふーん」
背後に立つ咲が、俺たちの間から覗き見るように彼女の姿を見る。
すると……。
「あれ? 誰かと思ったら斎藤さんだ」
「やっぱりうちの学校の子だったか」
「うん。四組の子」
なにげに咲の顔は広い。
俺なんて隣のクラスのヤツのことすらほとんど知らないが、咲は同じ学年の女子のことなら大体知っていたりする。
まあ、名前くらいしか知らない子もいるらしいが。
「あ」
「え?」
事態は意外な方向に進んだ。
見事なプレイを見せていたパーカー女子あらため斎藤さんの背後に、どこかで見覚えのある制服を来た女性が近づいてきたのだ。
制服と言っても、学生の制服ではない。
国に属する組織の制服。
端的に言ってしまえば、警察の制服だ。
今朝駅前で軽自動車の取り締まりをしていた女性警察官さんが、パーカー女子の背後に立っていた。
そして、なにやら声をかける。
パーカー女子はそれを無視して太鼓を叩き続けた。
そんな彼女の肩に、女性警察官さんが手を置く。
それを振り払うパーカー女子。
俺たちは、一体何が起きているのかとハラハラしながらそれを見守っていた。
「あ……」
幕切れは唐突に訪れる。
パーカー女子は曲の途中でゲームのプレイをやめ、その場から走り去ってしまった。
そして女性警察官さんは、そのあとを追っていく。
「なんだったんだろう」
「補導か?」
「そういう雰囲気じゃなかったけど……」
「咲の知り合いなんだろ? 何か知らないのか?」
「知り合いって言っても、名前を知ってるくらいだから……」
「ああ、そのくらいの知り合いだったか」
「うん」
「どうかしましたか?」
俺が取ってやった何体かのぬいぐるみを大きめの袋に入れた麗美が俺たちのところに合流する。
説明してやりたかったが、俺たち自身も何が起きたのかがよくわかっていなかった。
テスト初日の放課後は、そんな感じで過ぎていった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。
高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。
「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」
そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。
彼女の名は、立石麻美。
昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。
この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。
その日の放課後。
明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。
塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。
そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。
すべてに触れたとき、
明希は何を守り、何を選ぶのか。
光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。
現実とサキュバスのあいだで ――夢で告白した相手が、同居を始めた話
そう
青春
ある日家に突然現れた謎のサキュバスのホルさん!
好感度はMAXなようで流されるがまま主人公はホルさんと日常を過ごします。
ほのぼのラブコメというか日常系小説
オチなどはなく、ただひたすらにまったりします
挿絵や文章にもAIを使用しております。
苦手な方はご注意ください。
怪我でサッカーを辞めた天才は、高校で熱狂的なファンから勧誘責めに遭う
もぐのすけ
青春
神童と言われた天才サッカー少年は中学時代、日本クラブユースサッカー選手権、高円宮杯においてクラブを二連覇させる大活躍を見せた。
将来はプロ確実と言われていた彼だったが中学3年のクラブユース選手権の予選において、選手生命が絶たれる程の大怪我を負ってしまう。
サッカーが出来なくなることで激しく落ち込む彼だったが、幼馴染の手助けを得て立ち上がり、高校生活という新しい未来に向かって歩き出す。
そんな中、高校で中学時代の高坂修斗を知る人達がここぞとばかりに部活や生徒会へ勧誘し始める。
サッカーを辞めても一部の人からは依然として評価の高い彼と、人気な彼の姿にヤキモキする幼馴染、それを取り巻く友人達との刺激的な高校生活が始まる。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる