愛理の場合 〜レズビアンサークルの掟〜

本庄こだま

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3.堕ちてゆくオンナたち

史織の洗礼

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 「ちょっと別件で遅れちゃってね。あ、マヤちゃん!私ビールお願いね」

 軽い調子で一言述べ、女は寄り添うように愛理の隣に腰を下ろすと、バーカウンターに手を振りスタッフに呼びかける。
 グラスに注がれたビールを喉を鳴らして飲み下すと、一息ついてソファの背もたれに身を委ねた。

 「この娘が、以前お話した愛理です」

 恭子はどこか緊張した面持ちで愛理を紹介する。普段と異なる恭子の態度に、愛理もやや緊張しながら、隣に座った女に自ら名乗る。

 「は、はじめまして……愛理です。恭子の紹介で、今日はこちらに」

 「はじめまして、愛理ちゃん。サークル主催のARISAって言います。よろしくね❤︎」

 愛理の隣に座った女こそが、恭子が所属するレズビアンサークルの主催にして〝絶対女王〟と呼ばれる頂点、ARISAであった。

 明るい茶色の長髪をポンパドールに纏め、眉は力強く太い。目はぱっちりと大きく、垂れ目で常に笑ったような柔和な表情であるが、高く通った鼻筋と大きな口からも、この女の〝意志の強さ〟がありありとうかがえた。

 「恭子から聞いてるわ、スゴい娘がいるって。愛理ちゃん、じゃ有名らしいじゃない」

 「いえ、そんな……」

 謙遜する愛理だったが、レズ専のウリなどという狭い世界でひとたび目立てば、その噂は瞬く間に広がるのは必然であり、レズビアンサークルを主催するような女の耳に、その名前が聞き及ばないはずが無い事も承知していた。
 だが、そこはあえて掘り下げず、黙っている事が利口であると愛理は考えた。

 ステージの上では、奈美女王様が囚われの奴隷、はるかの乳房を辱めていた。
 為す術もなく勃起してしまった両胸のはしたない乳首を、指で摘んで力一杯につねって引き伸ばす。女王の無慈悲な仕置きに、奴隷は声も上げずにただ落涙する事しかできない。

 「愛理ちゃんは、こういうのを観るのは初めてかしら?楽しめてる?」

 ビールのグラスを傾けながら、ARISAが愛理に問い掛ける。
 グラスを持つ手、突き出した唇、含んだビールを飲み下す際の、眉間の皺。何気ない仕草や表情が、どこか妙に艶っぽく、ARISAの行う所作の全てに〝オンナ〟を感じさせる色気があった。

 「はい、なんだか初めての世界で、驚きもあったんだけど……とても非日常的で……美しいです」

 愛理はARISAの問いに無難な言葉で答える。
 すでにARISAの、愛理に対する〝品評〟が始まっているように感じた。

 「楽しんでもらえてるようで良かったわ❤︎そう、この〝非日常の悦楽〟が、皆が本当に求めてる世界観なのかもしれないわね。人の欲望って、尽きる事が無いじゃない?」

 ARISAの言葉に、愛理は無意識に小さく頷く。
 方法は違えど、今までに愛理をも、恋人とは経験できないような、一夜限りの〝倒錯的なセックス〟を求めていた。

 そして愛理自身もまた、そんな世界で愛される自分を誇りとしてきたのだ。

 「恭子からはサークルの事、どこまで聞いてるのかな?」

 「あっ……愛理にはまだ詳しくは……」

 恭子が会話に割って入る。バツが悪そうに、露骨に焦りの色を顔に出す。何やら、ARISAが来てから、恭子の態度が妙にせせこましい。

 「え?恭子~、私に何も教えてくれなかったわよね?」

 そんな恭子を揶揄からかってやろうと、愛理は冗談めかして突っかかる。

 「ふふっ……ちょっと恭子。愛理ちゃんたぶらかして無理矢理連れてきたんじゃないでしょうね?」

 ARISAも愛理に便乗して、笑いながら恭子をたしなめる。恭子は途方に暮れて、苦笑いするしかなかった。

 「愛理がね、サークルに興味があるって言うから……連れてきたんだけど……」

 口を尖らせ、不満げに呟く恭子。大きな身体を猫背にしながら、居心地悪そうに顔をそっぽに向く。ARISAの手前、愛理に責められるのはどうやら体裁が悪いらしい。

 「あはっ、ごめん恭子。そう、私が来たいってお願いしたんです」

 恭子に揶揄からかった事を詫び、ARISAに本心を告げる。

 「もちろんお客とウリの関係だったんだけど、私は恭子とカラダを重ねて〝新しい自分〟に出会えた…というか、恭子が本当の私を見つけ出してくれた…というか。とにかく、そんな恭子が見ている世界、私が経験したことの無い世界の存在を知って、サークルに興味が湧いたんです」

 セックスに生きてきた女の、嘘偽りの無い言葉。

 それを聞いて、ARISAがステージを指差す。

 「愛理ちゃん、今のあなたに……ができる?」

 囚われの愛奴は、哀れにも逆さ吊りにされていた。



 女王様は手に蝋燭を握り、揺蕩たゆたう炎を宙吊りにされた奴隷の顔へと近付けると、奴隷は恐怖に慄き、強く唇を噛み締めて首を振る。
 諦めの悪い奴隷の痴態をせせら笑い、女王様は奴隷の柔肌に熱い蝋を垂らす。

 「ひィッ❤︎あッ……あァァッ❤︎」

 陶器のように透き通った白い肌が、蝋で真っ赤に染まってゆく。薔薇のように鮮烈な赤が、奴隷の肉体をキャンパスにして彩られてゆく。

 「あのM嬢のはるかって娘、入店して2ヶ月なのよ。SMプレイ自体が未経験だって言うから驚いたわ。でも、幼い頃から自分の中のマゾ性に気付いて、ずっと大事にみたい。今ではああやって、この店で欲望を放し飼いにして大暴れよ……」

 内に秘めた本当の自分、そして性欲の解放。

 愛理が今まさに辿り着いた境地に、あの20歳前後の娘は物心ついた時分から立っていたのだろうか?


 「このSMバーは、私が経営している風俗店の一つなの。もっと本格的なプレイが可能なSMクラブもあるし、SMだけじゃない、デートクラブからハプニングバー、ホテヘル、ソープまで、レズビアンの欲求に応じた様々な形態の風俗店を経営しているわ。」

 ARISAは真っ直ぐにステージを向いたまま、愛理に語りかける。
 〝レズビアンの性〟という特殊な世界を、特異のカリスマ性と経営手腕で席巻するARISAからすれば、いくらネットで噂のウリ専美女と云えど、所詮は素人商売に過ぎない。

 「たくさんの娘が私のもとに来るけど、辞めていく娘も同じくらい……いえ、それ以上かもね。残ってる娘は、みんなプロ意識と覚悟をもった〝本物〟だけよ」

 ARISAは、愛理に覚悟を問うた。だが、それと同時にもしていた。

 「今の私に、奈美さんやはるかさんと同じプレイができるとは思いません。だけど逆に、私がやってきた事をはるかさんが今すぐできるとも思わない。どんなジャンルのプレイだとしても、私は私自身に対してプライドや信念があるし、誰にも負けたくない、という気持ちは強いです」

 愛理はARISAの眼を力強く見据え、はっきりと言い切る。絶対女王に対し臆することのない、偽らざる本心を叩きつけた。

 ARISAはその言葉を、真剣な眼差しで聞いていた。ゆっくりと一度頷き、笑顔を見せる。

 「うんっ、愛理ちゃんならそう言うと思ったわ。私も期待してるし、これから楽しくなりそうね❤︎」

 張り詰めた空気から解放され、愛理の顔もやや緩む。
 ARISAはおもむろに手に携えたハンドバッグから、自らの名刺を取り出して愛理に手渡すと、同時に地図と連絡先がプリントされたA4の紙も差し出した。
 そして、愛理の耳元に顔を近づける。

 「愛理ちゃん、まずはココに行ってみて。私の方から連絡しておくから」

 そう呟くと、愛理の膝をポンッと叩いて席を立つ。

 「じゃ、そろそろ私行くわね。愛理ちゃん、これからヨロシク。恭子、奈美ちゃんにもヨロシク言っておいて❤︎」

 ARISAはバーカウンターの向こうのスタッフに手を振りながら、店のドアの向こうに颯爽と姿を消した。

 ソファの隣の甘いオンナの残り香だけが、〝絶対女王〟の記憶として愛理の脳裏に刻まれた。

 「愛理、とりあえず仮入会……って感じかな。主催も愛理のこと気に入ってたみたいだし、あとは愛理次第だね」

 「ええ……私、負けないから。このサークルで、〝本当の私〟を見つけてみせるわ」

 ステージの上の官能世界と自分を重ね合わせ、愛理は今日の光景を胸に刻み込む──。



 「この部屋……よね」

 恭子に紹介されて、SMバーを訪れたのが2日前。
 愛理はそこでレズビアンサークルの主催者であるARISAと出会い、サークルへの参加の決意を伝えると、ARISAは愛理にへと行くように指示をした。

 愛理はあの日、ARISAから手渡された地図と住所が記された紙を頼りに、都内のとあるマンションの一室を訪れた。
 そこは先日のSMバーからも程近く、歩いていけば10分掛からない場所にあった。

 ARISAからは「連絡しておく」とは言われたものの、初めての場所に一人で顔を出すのはやはり勇気がいる。
 愛理は恐る恐る、部屋の呼び鈴を鳴らした。インターホンの向こう側から応答する女の声が聴こえる。

 《はーい?》

 「あっ、あの私……ARISAさんの紹介で……」

 《あー!愛理ちゃん?ちょっと待ってね》

 ARISAの話の通り、既に相手方には愛理の訪問の件は伝わっていたようで、名前を告げるとすぐに応対してくれた。
 暫くすると、部屋のドアのロックが解除される。そのあとにドアの隙間から顔を覗かせたのは、キツネ目と大きな口が特徴的な、トップレス姿の女だった。

 「……!」

 いきなり目に飛び込む豊満な乳房に愛理は面食らい、無意識に一歩後ずさる。
 女はそんな愛理をお構いなしに、ドアを開け放って部屋の中へと愛理を誘う。

 「愛理ちゃん、お待ちしてましたっ♪さぁ、中へ入って❤︎」

 踊る声と笑顔で愛理を迎え入れる女。その巨大な乳房と分厚い臀部、二の腕や太もも、あらゆるパーツが曲線でできたような、女性的肉体の完成度。
 自らの身体に自信を持っていた愛理も、思わず目を奪われる程に見事な〝オンナ〟っぷりである。

 部屋のリビングへと通されると、そこは一種異様な空間が広がっていた。

 家具や電化製品の類はまるで無く、あるのは部屋の中央に鎮座したダブルサイズのベッドと、枕元側にあるゴミ箱、そして部屋の隅に置かれた段ボール箱くらいのものである。
 窓はブラインドで遮光され、外の風景は見えない。また、壁やガラスには防音仕様が成されているのだろうか、部屋自体が妙に静かで外の音がほとんど聞こえない。
 なにやら、この空間のみ日常風景から切り取られたような、そんな錯覚を起こさせる不思議な部屋であった。

 (なんなの……この部屋)

 愛理はこの部屋に入り、妙な胸騒ぎを感じていた。これから起こるであろう事に対して、身体が警鐘を鳴らしている。

 「愛理ちゃん、ここに座って♪」

 そんな愛理の心情を知ってか知らずか、裸の女は愛理にベッドへ座るように促す。

 「挨拶が遅れたけど、私は史織って言います♪なんて言うか……サークル会員のって感じかな?」

 愛理と同じくらいの身長の史織は、愛理の肩を後ろから抱いてベッドへと誘導する。

 腰を下ろした愛理は、不思議そうに部屋中をキョロキョロと見渡しながら史織に尋ねる。

 「あのっ、史織…さん。この部屋って一体……」

 恐る恐る尋ねた愛理に、史織は笑顔であっけらかんと答える。

 「ここ?ここが愛理ちゃんの仕事場よ♪とりあえずは1ヶ月、この部屋でもらうわ……」

 「なっ……!?」

 史織の言葉に愛理は驚愕し、二の句が出てこない。

 この部屋で客を取る?個室で客相手の性処理だなんて、まるで場末の箱ヘル嬢である。
 私は、新しい世界を切り拓くためにサークルへの参加を決意したのだ。それなのに個室で客相手の性奉仕とは、今までやってきたウリ専以下の扱いである。

 愛理は激しい憤りを覚えた。

 「そんなっ……話が違うわ!」

 「あら?でもARISAからも言われているわよ?愛理ちゃんは〝イチから鍛えなきゃ〟……って❤︎」

 「だからって……こんなヤリ部屋みたいなトコ……!」

 「ヤリ部屋なんて随分下品な言葉使うわね♪まぁ、間違ってはいないかな?愛理ちゃんにはこの部屋で1ヶ月、とことん奉仕を学んでもらうから❤︎」

 「ふざけないでっ……!」

 愛理は語気を強め、史織に抗議の意思を示す。不本意な奉仕など、プライドが許さない。

 「私が今までウリでどれだけの客を相手取って、幾ら稼いだと思ってるの?今更こんなヘルスの真似事なんてしてられないわ!」

 今にも噛み付きそうな程に顔を近づけて、史織を威嚇するように言い放つ愛理。
 史織はそんな愛理に微塵も臆さず、笑みをたたえたままに愛理に問い掛ける。

 「愛理ちゃんがネットのウリ界隈で有名人なのはもちろん私も知ってるわ。でも、本当の奉仕をした事がある?そんな性格じゃ、独り善がりなセックスばかりしてたんじゃないかしら?」

 「くッ……馬鹿にしないでッ!!」

 初めて会って間もない年増女に自らの経歴やセックスそのものまで否定され、愛理の怒りは沸点に達していた。

 この女に一泡吹かせてやらなければ気が済まない。この女に私の力を見せてやりたい──。

 獣のように鋭く睨み付けてくる愛理を、涼しい顔で睨み返す史織。ひとつ溜め息を吐くと、愛理に提案する。

 「そうね……なら、愛理ちゃんの今の実力を見せてもらおうかな❤︎私をイカせることができるかしら?」

 その言葉に、愛理は得たりとばかりに眼を光らせて口元で笑う。

 「望むところよ。そうこなくちゃ面白くないわ……❤︎」

 それを聞いた史織も、細い目をより細めてくすりと笑った。



 愛理は鼻息荒く、躊躇なくその場で脱衣し、一糸纏わぬ全裸になる。
 肉感豊かで麗しい自慢の身体ボディを見せつけるように、ベッドに座る史織の目の前で胸を張って仁王立ちになる。
 乱れた長い黒髪を両手でさらりと背中に流すと、熟れたオンナの淫らな芳香がふんわりと鼻腔を刺激した。

 「はぁ……❤︎すっごく綺麗ね、愛理ちゃん❤︎」

 勝気な女の性的アピールを、うっとりとした表情で見つめる史織。自然と指は口元へと伸び、目の前に立つ美女との今から起こる出来事に対するにゾクゾクと身を震わせる。

 史織は待ちきれない、とばかりにベッドから立ち上がり、腰に手を当て立ちはだかる愛理の正面に真っ直ぐ歩みを進め、自らも胸を張り、腰に手を当て仁王立ちで迎え討つ構えを見せた。

 愛理と史織は顔を近づけ、どちらも相手を威嚇するように睨みつける。
 身長はほぼ同じくらいだが、押し合う乳房は史織の方が一回りほど大きい。その厚みと弾力で、愛理の身体を正面から威圧する。

 「ふふっ❤︎愛理ちゃん、ナマイキなおっぱいしてるわね。乳首が上向きにツンとして、愛理ちゃんの性格を表してるみたい♪」

 「肌のハリが違うのよ?ただデカいだけの、のとは違ってね❤︎」

 押された分だけ、今度は愛理が胸で押し返す。互いに口撃を応酬しながら、乳房という〝武器〟でしのぎを削る。

 前に押し付け、左右に擦り合わせ、女のシンボルを懸命にぶつけ合うと、次第に息が荒くなってゆく。
 だが、それでも目線だけは互いに逸らさず、相手の反応を見定めるように睨み合う。

 最初に仕掛けたのは愛理だった。史織が乳房を押し付けてきたタイミングを見計らい、そのまま史織の腰を両腕で捉えて身体を引き寄せると、密着するようにギュッと強く抱擁した。

 「捕まえたっ❤︎さぁ、これからどうしてあげよっかな?史織さん…❤︎」

 「あンッ❤︎愛理ちゃん…肌スベスベで気持ちイイ……どうされちゃうのかな?❤︎」

 互いの豊満な乳房が潰れるほどに抱き合い、鼻の頭を突き合わせて、愛理と史織は口元だけで微笑む。

 笑った2人の唇が微かに触れると、それを合図に一気に互いの唇を貪るようにしゃぶり合う。

 「んふゥ❤︎むちゅッ❤︎チュパ……❤︎」
 
 「チュッ❤︎くちゅッ❤︎んッ……はァ❤︎」

 舌を絡め、息を弾ませ、相手の口腔内を〝私の味〟で満たしてやろうと唾液を流し込む。
 互いの口を行き交う唾液と、もつれるように暴れ狂う舌のせいで、両者の口元はびしょ濡れになっている。

 本来ならば〝愛情の表現〟であるキスという行為で、プレイの優位性を奪い合う愛理と史織。艶かしく漏れる吐息はますます荒くなり、2人の額にも汗が滲む。

 不意に、史織が愛理の乳房を鷲掴みにする。重力に逆らうようにぱっつりと張りのある愛理の美乳は、史織のひんやりとした手のひらで包まれると、手荒に揉みしだかれ激しく歪む。

 「んッ!?うぁ……❤︎」

 「ぷりっぷりのおっぱい……羨ましいわ❤︎」

 その言葉とは裏腹に、乳房を掴むその力には〝敵意〟すら感じ取れる。
 乳房の先端の、ひときわ主張をする桜色の突起を指で爪弾かれ、愛理は思わず嬌声を漏らす。

 「ふゥッ❤︎あッ❤︎あッ❤︎はンッ…❤︎」

 「乱暴なくらいが気持ちイイみたいね♪愛理ちゃんのが見えてきたわ……❤︎」

 「やっ……ちがッ……ふゥンッ❤︎」

 「何が違うのかしらね?ほら、乳首がビンッビンよ?気持ちイイこと隠そうともしなくなっちゃって❤︎愛理ちゃん、んでしょ?」

 両乳首を激しくつねり上げられ、愛理の表情が苦痛に歪む。
 だがそれと同時に、全身に鳥肌が立つような、まともに立っていられない程の快感の波が、肉体へと押し寄せてくる気配を愛理自身は確かに感じていた。

 真白く美しい両胸のたわわな果実。愛理の大事な〝女の武器〟──。
 その神聖な柔肌を、知らない女に勝手に蹂躙され、辱められ、性的な加虐をひたすらに甘受することしかできない屈辱。そして悦び。

 「ひィッ❤︎ぃぃ……はァンッ❤︎」

 千切れてしまいそうなほど強く引っ張られる両乳首の鋭い痛みに、歯を食い縛りながら耐える愛理。
 深く刻まれた眉間の皺に汗が滲んで、鼻先へと滑り落ちる。気をやってしまいそうな激痛と快感に、いよいよ肉体が逃げ道を探し始めた。

 負けん気で持ち堪えていた愛理だったが、遂に腰が抜けてベッドへとへたり込む。
 その機を逃す史織ではなかった。弱みを見せた〝極上の雌〟に、百戦錬磨の性技が襲い掛かる。

 史織は愛理の身体を押し倒すと、指先で散々いたぶり続け感度の極まった乳首に、大きな口で吸い付いた。

 「むちゅッ❤︎んむッ❤︎ジュル……ッ❤︎」

 「ふァァァァッ!?❤︎ほォォォッ❤︎❤︎」

 痛めつけられて神経が過敏になった乳首は、まるで包皮を剥かれた陰核クリトリスのように性感に対して脆弱であり、史織の舌のぬめりや感触、温度までをもダイレクトに感じ取る。
 充分に唾液で濡れた乳首を、目一杯の吸引力で引っ張られると、愛理は悲鳴にも似た切ない喘ぎを部屋に響かせた。

 「あァァッッ❤︎はァァッ❤︎ちくびィィッ❤︎きもちいィィィッ❤︎」

 「素直な反応で可愛いわ❤︎さっきまでのツンツンな愛理ちゃんはどこへ行ったのかなっ?」

 舌先で弧を描くように乳輪をなぞると、今度は舌全体を押し付けるようにして乳首をコリコリと磨り潰す。
 史織の巧みな舌技に、愛理は耐えることも忘れてひたすらに喘ぎ続けることしかできない。
 ウリの客相手では絶対に体験できないセックス・テクニックに翻弄され、反撃に転じるいとまさえ与えてもらえない。

 (気持ちいいッ❤︎堪らないッ❤︎)

 愛理はこの〝史織〟という女の素性すら知らされていないが、プレイを開始してたった数分でを突きつけられた。
 先程までの自分の虚勢が恥ずかしくなる程の実力の違い……セックスに対する姿勢、女体へのアプローチ、そして何より経験値……。
 あらゆる観点から見ても、今の愛理には史織に勝てる要素が見当たらなかった。

 「ほォッ❤︎おォッ❤︎ん"ォォォ…❤︎」

 「下品な喘ぎ声……愛理ちゃんはセックスのためならプライドなんて簡単に捨てられてちゃうのね…❤︎」

 激しくねぶられた愛理の乳首は唾液でテカテカと光沢を纏い、史織の漏らす吐息の熱すら過敏に感じ取り、ますます勃起の硬度を高めてゆく。

 「ちくびッ❤︎もっ❤︎ダメぇぇ……❤︎」

 両胸の切ない刺激に耐えかね、遂に弱音を吐く愛理。
 それを聞いた史織は顔を上げ、唾液に濡れた口元を指で拭うと、愛理を抱きしめて耳元で囁いた。

 「愛理ちゃん、イキそうなんでしょ?イッちゃダメよ❤︎まだまだ楽しまなきゃ……❤︎」

 史織は愛理を抱きしめたままベッドの上で横に寝返りを打つ。そのまま身体を反転させ、今度は愛理が上になる。

 「へっ❤︎……?なん…?……うぅ……❤︎」

 乳首への責めだけで昇り詰めそうになっていた愛理は、ジンジンと余韻だけ残る両胸の疼きに戸惑っていた。

 巧みな舌技に弄ばれて呆気なく限界に達してしまいそうだった両乳首が、寸前のところでを食らう。

 やり場のない性欲の膨張、それを発散できない肉体の強烈なもどかしさに、愛理は唇を噛んで耐え忍ぶ。

 「ふッ…❤︎うぅッ…❤︎んん……!❤︎」

 胸元を指で引っ掻き、腰をもじもじと揺れ動かす愛理の姿を見ながら、史織は鼻で笑う。

「ご不満そうね、愛理ちゃん。イキたいのにイケなくて辛いんでしょ?ガマンなんて知らないんでしょうね♪イクことしか考えてないオナニーみたいなセックスばっかりしてきたのよね❤︎」

 史織はベッドの中央に寝直すと、両手を広げて愛理を招き入れる仕草を取る。

 「ほら、今度は愛理ちゃんが責めてみて♪気持ちよくできたら、ご褒美あげる❤︎」



 無防備に横たわる史織の肉体は、立ち姿とはまた別の迫力を魅せる。
 白く柔らかな肌は薄らと汗ばみ、湯気立つような熱気を全身に纏う。

 乳房や尻だけでなく四肢や胴回り、乳輪や乳頭すらも、愛理より一回り半は大きく、分厚い。
 開脚された股間の付け根、肉厚な陰裂からは茶褐色の陰唇が剥き出しており、女の肉体の〝歴戦〟を物語っているようであった。

 そんな女の牙城を打ち崩すべく、愛理は決意と共に睨みつける。

 「このッ……!」

 「あンっ❤︎」

 両手でも持て余す史織の巨大で柔らかな乳房に顔から飛び込んでゆく愛理。
 熟れた女の柔肌はひんやりと冷たく、吸い付くようなキメの細やかさで愛理の顔をぴったりと包み込む。
 両手で感じる水風船のようなふわふわとした感触と確かな重量。ほのかに薫る汗の匂いに愛理の情欲が刺激される。
 
 「んむッ❤︎はふッ、むちゅッ…❤︎」

 「おォッ❤︎激しいわ愛理ちゃんッ❤︎」

 愛理は欲求に任せて目の前の突起に吸い付く。ぷっくりと膨らんだ乳輪と乳首は、それだけで愛理の口内を満たすほどに大きく、舌先で転がすとますます硬く膨れ上がっていった。

 「はァッ❤︎あんッ❤︎あぁ…上手よ愛理ちゃんッ❤︎気持ちイイわァ……❤︎」

 史織は恍惚の表情を浮かべながら、責める愛理を褒め称える。両手を頭上へ上げ、まったく無防備に愛理の乳首責めを受けている。
 その余裕綽々な態度が愛理のプライドを刺激し、愛理はさらに激しく史織を責め立てる。

 先程自らがされたように、史織の大ぶりな乳首を摘んで引っ張り、コリコリと強く指先で弄んだ。

 「ひァぅッ!?❤︎それッ❤︎イイッ❤︎」

 「ほら、余裕な顔してるのも今のうちよ?だらしない下品な勃起チクビ、いぢめてあげるからッ❤︎」

 史織が抵抗するように両脇を閉じ、両乳首の刺激に耐える。
 その反応を見るや、愛理はまたも史織の乳首に食らい付き、力一杯の吸引力で責め立てた。
 
 「じゅるッ❤︎ちゅるッじゅるるる……❤︎」

 「ほォォッ❤︎取れちゃうッ❤︎乳首とれちゃうッ❤︎」

 史織は頭を激しく横に振りながら快楽の波に抗おうとするが、愛理もまたこの機を逃すまいと一心不乱に史織の乳首にむしゃぶりつく。
 巨峰のような吸いごたえある乳首を、頬をすぼませて強烈にバキュームしながら、肉厚な舌を巧みに絡めて唾液をたっぷりと塗りたくる。
 愛理が得意とする舌技のすべてを尽くして、史織の巨大な乳房という〝肉の鎧〟を剥がしにかかる。

 「んむッ❤︎ずるるるッ❤︎んッ…ぷはッ❤︎…ふふ、ただでさえおっきな乳首が更にビンビンね❤︎デカいだけじゃなくて感度もあるなんて、随分の行き届いたおっぱいじゃない❤︎」

 「はぁ…❤︎だって愛理ちゃん、責めるの上手なんだもの…おっぱいの気持ちいいトコ、よく知ってるのね❤︎」

 「言ったでしょ?この商売で幾ら稼いでると思ってるのよ。まだまだこんなモンじゃないわよ?史織お姉サマ❤︎」

 愛理は史織の乳房を横から両手で寄せると、同時に脇を締めて自らの乳房もギュッと寄せる。
 ちょうど互いの乳首同士が正面で向き合うような形になると、愛理は自らの乳首に唾液を数滴垂らした。

 「……ッ!❤︎」

 白く泡立つ唾液が、胸の曲線をなぞりながらゆっくりピンク色の突起部を目指して垂れ落ちて、肌にはキラキラとぬめりの光沢が尾を引く。

 無言で唾液の行方を見つめる2人。数秒後に待ち受ける〝期待どおりの快感〟に、今か今かと昂ぶりを隠せない。

 「んふ……❤︎」

 愛理の乳首に唾液が到達する。
 同時に、愛理は胸を突き出し、史織の乳房に真正面から強く押し当てると、両手で支える史織の乳房を左右へ素早く揺さぶった。

 「んんッ❤︎あンッ❤︎」

 「おッ❤︎ほッ❤︎こッ…こすれるッ❤︎」

 ピチャ❤︎クチュ❤︎ズリュ❤︎

 ピシャッ❤︎パチュンッ❤︎ピタンッ❤︎

 硬く勃起した互いの乳首が、唾液の滑りでズルズルともつれ合う。粘着質で水っぽい音と、豊満な肉同士が激しくぶつかり合う音とが卑猥に鳴り響く。

 愛理は続けざまに唾液を垂らしてゆく。2人の胸元はすっかり唾液にまみれ、蜜を塗りたくったように妖しい照りで輝いていた。

 胸を離すと唾液が糸を引き、橋を渡したように互いの乳首を繋げている。
 まるで、逃れられぬ蜘蛛の糸に絡め取られ、淫靡な魔界へと引き摺り込むような愛理の責めに、史織も驚きを隠せない。

 「愛理ちゃん…こんなこともできるのねッ…❤︎すご……ビックリしちゃったわ❤︎」

 「私ね、唾液量が普通よりも多いらしいの❤︎それを生かさない手はないでしょ?❤︎」

 愛理の口元から止め処なく湧き溢れる唾液。その〝卑猥な蜜〟を馴染ませるように肌を擦り付ける愛理。
 ヌルヌルとした感触、温もり、せ返るような生臭い匂いを、史織の身体にマーキングしてゆく。

 「おォ……❤︎カラダ中……愛理ちゃんのニオイにされちゃう……❤︎」

 「史織さん、私のモノになっちゃうわね?それもいいんじゃないかしら?❤︎」

 胸を滑る愛理の乳房は、張り詰めた弾力で史織の柔らかな乳房を弾き返す。

 技で勝てないならば、若さで、力で、タフネスで──。

 この性に熟達した女をやり込めるには、相手の責めを躱しつつ、自らの利点を生かしたやり方で進めてゆくしかない。そしてそれは、決して急いではならない。

 愛理の中で、僅かながら勝利への道筋が見えてきた。

 だが、史織が呟いた一言で、全てが無駄な算段に過ぎなかった事を愛理は知る。

 「はァン❤︎でも愛理ちゃん……残念だけどみたい♪」

 「えっ?」

 突然、史織は愛理の胴回りに脚を回すと、太ももで挟んでベッドに横倒し、馬乗りになった。

 「うッ!?ぐゥ……ッ!!」

 「ゴメンね♪もっと責めさせてあげたかったんだけど、もうが来ちゃうみたい♪シャワー浴びて、準備しなきゃね❤︎」

 あまりにも急な話で、思考が追い付かない。客?今から来る?私が客……!?

 「客って……!私との勝負はどうなるのよッ!!」

 史織の股ぐらの下で必死にもがく愛理だが、史織は悪びれもせずに言い放つ。

 「愛理ちゃんの実力はもう分かったわ♪テクニックはまだまだだけど、素質は充分あるから自信持って♪あとは可愛いんだから、お客さんにはいっぱい愛してもらいなさいね❤︎」

 到底納得できない幕切れに、愛理は怒り震える。
 散々に弄ばれ、プライドを傷付けられ、ようやく勝算を見出したとこれで、一方的に時間切れだなんて……。

 「ふざけないでよッ!誰がこんなッ……んんッ!?」

 怒りに任せて叫び続ける愛理の口を、史織の手が塞いだ。

 「うるさいのよ小娘。もっとセックスを学びなさい?」

 史織は塞いだ手に力を込めて愛理を制すると、もう片方の手を愛理の股間に伸ばす。

 「んぐッ……んゔッ!?❤︎」

 先程までのプレイで充分過ぎるほどに濡れた愛理の肉壺は、史織の二本指を難無く呑み込むと、突然の性的刺激に反射的に膣圧で締め付けた。

 「あッ❤︎スゴイわ❤︎指が折れちゃいそう❤︎」

 「ん"ッ❤︎ん"ぅ"~……!❤︎」

 史織の指先がザラついた膣壁を擦るたびに、電流のような快感が腰から背中へ流れて脳天を貫く。
 史織はまるで適当に触っているようで、その実的確に愛理の膣内の〝弱点〟を探り当てていたのだ。

 「ホラここ❤︎お腹側の上のトコ❤︎気持ちいいでしょ?❤︎」

 「んッ❤︎くぉッ❤︎ほォォォッ❤︎❤︎❤︎」

 容赦なく一方的に膣壁をえぐられる愛理は、先程までの勝算がなんら無意味なもので、すべて史織のであったことを今更ながらに悟った。

 「んぐッ❤︎んぐゥッ❤︎ほッ❤︎ほォッ❤︎ンッ❤︎……グぅぅぅぅぅぅぅッ❤︎❤︎❤︎」

 愛理の腰がピクピクと跳ね上がり、挿入された史織の指を喰い千切る程に強くキュウキュウと締め付ける。

 「おマンコいじられて1分もたなかったか……感度が良過ぎるのも考えものね❤︎」
 
 呆気なく無様な愛理の性的絶頂オルガズムを一部始終見届けると、史織は未だ痙攣が止まぬ愛理をベッドの下へと蹴落とした。

 ドサァッ

 「おゥッ❤︎……ハァ…❤︎…ハァ…❤︎…あぅン……❤︎」

 床に這いつくばりながら尚も絶頂の余韻が冷めない愛理を、どこか呆れたように見つめる史織。
 だが、愛理が持つ底知れない〝淫乱〟の可能性を、史織ははっきりと感じ取っていた。

 (スイッチが入った時……そのは……計り知れないわね❤︎)

 「愛理ちゃん、いつまで浸ってるの?お客さん来ちゃうわよ❤︎」

 その秘めた〝淫乱性〟に、愛理自身はまだ気付いていない──。
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