悪役令嬢と魔王

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王子とマイア

⑬ガストン伯爵の怒り

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 ガストン伯爵は、ここ一ヶ月ご機嫌だった。先月行ったハイバン人の「狩り」は十分満足のいくものだった。ただ逃げ回り、泣き叫ぶだけの狩りではつまらない。獲物として、血の沸き立つような狩りこそ醍醐味だ。

 目の前には、そのときさらったハイバン人のメイがいた。メイは、後ろ手に縛られ、M字開脚のまま固定されている。首には首輪が締められており、乳首には、ダイヤで装飾されたピアスがついた、妖しく魂を奪われるほどの美しい裸体だった。

(こいつの家族には楽しませてもらった。いまだに肉体を突き刺したときの感触、首を切ったときの血しぶきの余韻が残っているわ)

 前回の狩りで、ガストン伯爵とローゼス男爵は、メイの家族を嬲り殺しにした。予想に反して反撃したのは、逆にガストン伯爵を喜ばせる結果となった。

 そして、ご機嫌の理由はもう一つあった。メイが、部下から聞いていた以上に美しい女性だったというのもあるが、ガストン伯爵の嗜虐趣味を堪能できる身体をもっていたからだ。

(まさか重度のドMだったとわね。今回は当たりだったな)

「あ~~、ご主人様~~。メイの、メイのクリトリスを舐めてください」

 メイは、切羽詰まった声で、自分をさらい、この一ヶ月好き放題陵辱してきた男におねだりした。始めは嫌がって無理矢理させられていた行為も、今では自ら進んで奉仕する。卑猥な言葉を口にするのも抵抗がなくなってきた。

 身体が燃え上がるように熱い。何かに憑りつかれたように性的快楽を求めてしまう。メイ自身自分の身体の異変に気付いている。

 明らかに普通ではない。何度絶頂に達しても、麻薬中毒のように、激しい性的刺激を欲しくてならない。欲望の底が抜けているようなのだ。

「ご主人様におねだりとは、わしの牝犬として失格だな」

「ご、ごめんなさい、ごめんなさい。淫乱な牝犬でごめんなさい。でも、我慢できないんです」

「待てもできないとは、どうしようもなダメ犬だなちゃんと躾てやるから、覚悟するんだぞ」

「ありがとうございます、ご主人様」

 メイの目は蕩けきって、快楽を貪ることしか頭にない。物欲しげに涎を垂らしながら、ガストン伯爵の愛撫を待っていた。

 ガストン伯爵は、牝犬として堕ちているメイの姿に満足していた。よほど重要な仕事がない限り、このハイバン人の若い身体を味わってきた。連日のハードな調教がメイの身体を開発し、性の快楽に溺れさせたのは間違いない。

 だが、それよりも、毎日服用させている麻薬がメイの身体を狂わせた。メイの感度を異常に高め、わずかに触れただけでも、イキそうになる。性的快感を与えられている間中、この世の天国のような普通では考えられない幸福感と快楽を味わうことができる優れものだ。そんな強力な薬に、身体はついてこれず、次第にボロボロになっていき、半年ともたずに廃人となってしまう。最高の快楽の代償に、日に日に命が削られていることをメイは知らなかった。ただ、目の前の快楽に浸ることしか、今のメイにとって救いはなかったのである。

 ガストン伯爵は、充血しきった陰核をしゃぶり始めた。

 処女のときのクリトリスは、抜群に感度が良かったが、まだ楚々として小ぶりだった。それが、毎日のように舌に転がされ、舌先に突かれ、舐め擦られる。口に含まれると、いつまでも飴玉のように舐められ、そして吸引された。

 ガストン公爵がいないときは、自ら陰核を擦り、潰し、扱いて、身体がぐったりするまで天国を彷徨った。そのため、今のメイの陰核は、ぷっくらとやや大きく膨らみ、感度も最高で、ガストン伯爵好みの陰核まで成長していた。

「あぅぅっ、ぁああっ、いいっ……は、伯爵~~、気持ちいいです」

 ガストン伯爵の分厚く、熱い舌が、ズリズリと陰核を擦り上げる。経験豊富な彼は、料理と同じで仕込みが大事だということを知っている。手間暇をかけ、じっくり煮込んでこそ、美味しいものが味わえるのだ。

 陰核を舐めるのも、それと同じだ。メイの陰核は、熱を孕み、刺激に飢えている。まるで別の生き物のようにヒクヒクと蠢き、今か、今かとガストン公爵の愛撫を待ち望んでいるのだ。それにも関わらず、彼の愛撫は繊細そのもの。舌先がチロチロと陰核を裏筋を這い、焦れったさを募らせていく。身体が欲しくて欲しくてたまらなくなり、舌一つの動きで屈服するようになる。

「どうだ?クリトリスを嘗められてたまらないだろう?」

「あぅぅっ、じれったいです……もっとお願いします」

 ニヤッとサディステイックな笑みを浮かべる。舌の先が、薄氷をなぞるようにわずかな刺激を与え続ける。薄皮を滑る舌の感触を逃すまいと、腰で追っていく。はしたないという思いはすでに意識すらない。ただあるのは恍惚とした快楽のみ。

「何をお願いしてるのかね。ちゃんとしゃぶってあげているだろうが」

「あぁぁぁ、このままでは狂ってしまいます……お慈悲を……もっと強く舐めてください」

 メイの女の花園は、大きく花が咲いたようにパックリと開いていた。奥まではっきり見え、ヒクヒクと物欲しそうに動き、ダラダラと愛液を溢れさせていた。糸を引いて垂れ、やがて自らの重さに耐えきれず、糸が切れて落ちていった。ベッドのシーツは、すでに大量の愛液で水たまりを作っていた。

「我が儘な牝犬だな。奴隷の分際で」

 ガストン伯爵は、発情しきった恥唇から恥骨、そして太腿の内側に視線を動かした。ややムチッとした太腿が色気を醸し出す。

 パチーン

「あ゛ぁ゛~~~ぁぁ」

 伯爵の大きな手のひらが真っ白い肌を晒す太腿を叩いた。ゴムで弾いたような音が部屋中に響く。処女の時から調教のたびにしてきた行為だ。始め頃は痛みしか感じなかったこの行為も、薬に支配された身体には、極上の刺激にしかならない。叩かれたほんのり赤くなった太腿の内側を優しく無骨な手で撫でられると、愛情のものようにすら感じた。

 パチーン パチーン

「あぁぁああっ、いっ、いくっ」

 伯爵の五指を開いた手が、メイの左右の太腿を交互に叩いた瞬間、腰を前後に振りながら、ガクガクと痙攣し始めた。秘部からピュッ、ピュッっと潮を噴き出る。メイの瞳がトロンとなり、余韻に浸るよう惚けている。

(このドM具合。最高のマゾ奴隷だよ)

 伯爵は相好を崩した。メイは被虐度が強く、苛められれば苛められるほど感度が上がる。長年の経験からこれは生まれ持っての資質で、いくら調教しても感度が上がらない女性は、上がらない。いくら美人で高貴であっても、そんな女は願い下げだった。

(惜しむらくは、あと半年ぐらいしか楽しめないことだな)

 伯爵は、羽毛でなぞるように陰核の上皮を舌で這う。トロトロと溶けきった膣口にも指先をくちゅっ、くちゅっと軽く刺激する。メイの眉根が次第に寄り、切ない吐息が聞こえるくらいに変わる。発情したメスが発するおねだりの合図だ。

「はぅうっっ、ぁ、ぁあっ……もっと、もっと……」

 だが、そんなのにはお構いなく、羽毛と化した舌がやんわりと鋭敏になった陰核の裏筋をソォーーっと滑り、頂をチロチロと撫でる。ピィーンと勃起した陰核の周りを天使の羽が焦らしていく。

「この焦らされるのがいいんだよ。欲しくてたまらないだろう?」

「お願い……ぁああっ、もう我慢できない……なんとかして」

 ビンビンに勃起させ、苦悶の表情を浮かべながら、腰を振って、陰核を伯爵の口に擦りつけようとする。それを無情にも顔を後ろに反らしてかわした。

「あぁ~、そんな……」

 心から望んでいたものが得られなかった不満が、声に含まれた。

「安心しろ。ちゃんとイカせてやるから」

 すると、再びパチーン、パチーンと赤さが残る太腿の内側を容赦なく叩いた。先ほどより痛みの強さを上げている。

「あぁひぃいいっ、あああっ、あ~~~っ、だめ、だめぇぇえ」

「何がだめなのものか。うれしそうに腰を振りやがって」

 はしたなく腰を振るメイの太腿を、右に、左にと交互に叩く。白雪のように真っ白だった太腿が真っ赤に染まり、小刻みに痙攣し出した。

「う゛ぅ゛ぅぅぅっ、ぁああああっ、ま、また……また、いくっ~~~、いくっ、いくっ」

 バネ仕掛けのようにぐっと背を反らすと、ピクンピクンっと身体を震わせ、今際の声を上げた。噴いた潮で、すでにベッドは大きなシミになっている。

(ああああっ、欲しい、欲しい……)

 陰核は、すでに弾けんばかりに興奮している。クリトリスから与えられる最高の快楽を渇望しているのだ。それなのに、相変わらず陰核は、焦らされ続け、痛みによって絶頂に達する。身体が限界だと悲鳴を上げていた。

 口端から涎を垂らし、絶頂の余韻を味わいながら、淫欲にさらに憑りつかれていく。性に飢えた獣のような牝犬を楽しそうに見つめていた。

(そろそろかな)

 口を唾液でいっぱいにしたした中で根元から陰核を咥え、これまでの優しい動きとは打って変わって、唇に力を入れてぎゅっと締めつけた。陰核を潰さんばかりに、唇をすぼめ、圧力をかえる。

「すごい、すごい……ぁぅぅぅっ、ぁ、ひぃっ、うぅ~~んんっ、いいっ……ぁああああっ、いくっ~~~」

 焦らしの反動で、これまでの鬱憤を晴らすかのように、メイの身体は歓喜に震えた。ガストン伯爵は、チュッパチャプスを咥え扱くように、ちゃぷっ、ちゅっぷっと唾液の水音をたてながら、陰核を咥えたまま扱き始めた。

 ヌルヌルとした感覚の中で、肉厚の唇に扱き立てられ、目の前に火花が散った。チカチカと頭の奧で快楽信号が点滅し、ブレーキが完全に効かなくなった。全身を信じられないような快感が駆け巡り、天国を彷徨い出す。顔は歓びに満ち溢れさせたまま、没我の世界にいた。

「また派手なイキっぷりだな。メイは、こうやって扱かれるのが好きだもんな?」

「あ゛ぁ゛ああ゛ぁぁ、好き、好き……扱かれるの好き」

 窄めた分厚い唇が、カチカチに硬くなった陰核を根元から擦り上げ、頂までいくと再び陰核を絞りながら下ろしていく。脚の指先に力が入り、内側に折れていった。さらに大きな快感の波が、メイを呑み込もうとしていた。

「こうやって毎日扱かれて幸せだろう?クリトリスもこんなに大きく育ったしな」

「あ゛、ぅ゛、ぅう゛ぅ、幸せ……すごく幸せ……ぁああっ、もっと苛めて」

 陰核をざらざらした舌でレロレロと下から上へ舐め上げる。まるでソフトクリームを舐めるように、舌が敏感な陰核を何度も何度もすくい上げていった。、麻薬で異様に鋭敏になった陰核は、炎のように熱い肉の感触に、この世のものとは思えないほどの快感を生み出した。

「ぁんんっ、ぁああっ、舐められると弱いの……ぁああっ、気持ちいい……舌が、舌がいいの」

 舌が皮膚をなぞり、舌のごく小さなざらざらが、擦りつける。次第に舌の動きが、大きく、激しくなる。まるで、舌に擦りとられるような感覚。

「あぁぁぁ~~~っ、あひぃい、ぁああんっ、いっ、いくっ、いくっ……ぁああああっ」

「そのまま、吸ってやる。天国を味わいな」

 チュッ、チュッ   チュチュッ、チュッーーー

 しゃぶり尽くさんばかりに、唇に咥えたまま、思い切り吸い込んだ。陰核は、根元から千切らんばかりに引っ張られる。すると、目も眩まんばかりに甘美な快感が、全身の中心を貫いた。

 「おぉぉぉぉおおっ、ぁぁぁあああっ、また、いくっ……あわわっ、あぁああっ、いくっ、いくっ、ひぃぎぃいいっ」

 白目を剥いて背中を反らすと、絶叫を上げながらピクンピクンと痙攣した。



  



 シーツを両手で握りしめ、突き上げた臀部を自ら振って、伯爵の太くエラの発達した肉棒を貪っていた。

「ぃ、やぁあああっ、ぁぁぁあっ、また、またいくっ……いっちゃうぅうう……お尻を叩かれていちゃいますぅううーー」

 すでに二ケタは気を遣っているはずである。今は、四つん這いの格好で、後ろから臀部を打たれながら、ガストン伯爵の肉棒に貫かれていた。禍々しいまでの肉棒は、血管が浮き出ていて、大きくエラが張り、メイの狭い膣内を抉っている。絶頂で痙攣しているのも無視して、いや、むしろ喜々としてピクピクと痙攣する身体を嬲り続けた。

「あぁ~~~ぁ、イッ、イキました……ぁああっ、イキましたから……ゆ、許して……」

「それを決めるのはわしだ。膣がきゅっきゅっっと締めつけて気持ちがいいぞ。ほらっ、また尻を叩いてやる」

 腰をぐいっと突き出すと、肉棒が深々と蜜壺を突き刺し、ぐちゅっと愛液が溢れ出す音が響いた。伯爵が、細腰をがっちり掴むお尻は痛々しいまでに、腫れあがっている。手を後ろに振りかぶり、そのまま手のひらを臀部に打ちつけた。

「ひぃ、ひぃいいいい……あぅぅっ、ぁああっ、感じちゃう……お尻だめぇぇえ」

 目から涙を流し、鼻から鼻水が糸を引て垂れさがり、美貌をくちゃくちゃにしながら、恍惚とした表情を浮かべる。打たれれば打たれるほど、ゾクゾクとした被虐の悦びが、快楽麻薬を大量に分泌し、得も言えぬ快感となってメイを歓喜させた。

「嘘つけ。こうやって後ろから突かれながら、お尻を叩かれるのが大好きなくせに。正直にならないと、兄弟も親も殺すからな」

「あああっ、好き、お尻叩かれるの、メイ大好きです……ぁああっ、もっと、もっと叩いてください」

 処女のときから、「言うことをきかないと親や兄弟を殺す」というのが常套句だった。優しい母、頑張り屋の弟、そして家族をいつも一番に考えてくれる父。メイにとって、心から愛し、最も大切な存在だ。それを、ガストン伯爵の気分次第で殺されてしまう。それだけは避けなければならない。その一心で、苦痛と屈辱に耐えてきたのだった。

 自分さえ我慢すれば、いつかどこかで家族と一緒にまたお店を出すことができる。また、一緒に笑いあって、楽しい生活を送ることができる。それだけが、今のメイにとっての唯一の心のよりどころだった。そのために、メイは何でもするつもりだった。どんなことでも耐えられる自信があった。

 ガストン伯爵は、ニヤリと笑う。

(すでにもう殺しているがな。こいつらはどこまでもわしを楽しませてくれる)

「そうだろう、そうだろう。もっとオレを楽しませてくれ」

 ガストン伯爵は、さらに力を込めて、メイのお尻を叩く。叩くたびに、メイの膣壁が肉棒をゆっきゅっっと締めつけ、伯爵を歓ばせた。

「ぁ、ひぃいいい……ぁ゛あ゛あ゛ああ゛っ、もっと……もっとぶって」

「くくく、お尻を叩かれて歓ぶ変態が……ハイバン人っていうのは変態しかいないな。おまえの親や兄弟が見たら驚くぞ。大切に育ててくれた親に謝れ」

 パチーンという皮膚を叩く音が一際大きく響いた。

「あ゛ぅ゛~~~ぅぅぅう、あ゛~~~っ、ご、ごめんなさい……お父さん、お母さん、ロイト、ごめんなさい……メイは変態でごめんなさい」

「わしは、心が広い。変態な女でもちゃんと愛してやるからな。ほらっ、おまえの大好きな首締めだ」

 伯爵は、手を伸ばし、両手でメイの細い首をがしっと掴んだ。首締めといっても、喉を締めつけることはしない。声が出なくなるし、下手をすると本当に死んでしまいかねず、それでは面白くない。頸動脈をじわりと圧迫することで軽い酸欠になり、さらに深い絶頂を味わうことができるのだ。経験豊富な伯爵は、首を締めつける力配分や締めつけ方をどうすれば、脳がトリップし、最高の快楽を味わえるのかを知り尽くしていた。下手な男の締め付けは危険だが、ベテランの手にかかれば、普通のSEXでは経験できない快感を得ることができる。まして、麻薬の効き目と合わされば、身体が何度も求めてしまうほどの中毒性をもっていた。

「う゛ぅ゛ぅ゛っ~~、あ゛あ゙ぁ゛ぁああっ、じゅごぃいっ……ぎもぢい゛い゛ぃいい~、ああっ、こわれちゃう」

 ガストン伯爵のピストン運動が、速く、大きくなる。肉棒を抜ける直前まで腰を引き、ドスンと一気に腰を突き出す。カリ首がヒダヒダをこじ開け、擦りつけると、メイの口から涎が垂れる。そのまま、子宮口まで一直線で膣壁を擦り、膣奥へと突進する。子宮まで響くような衝撃に髪を振り乱して喘いだ。

「気持ちいいだろう?この世の天国だぜ。このまま死なせてやろうか?最高の快楽が味わえる」

「あ゛ぁ゛あ゛あ゛っ、じぬ゛、じぬ゛っ、ぁ、ひぃいいっ、あ゛~~~~、くるっちゃうぅううう」

 ガストン伯爵の手が、頸動脈を包むように圧迫する。手の中で脈がドクンドクンと悶えるように脈打ち、興奮が伝わってくる。

(時がきたら、親や兄弟を殺したときのことを詳しく教えてやろう。母親や父親を滅多刺しにしたことを聞いたらどんな反応するかな。それとも、弟の首をはねたことを先に話すかな)

 ガストン伯爵は、口元を卑しく歪めた。もし、メイが本当の話を聞けば、本当に狂うだろう。SEX中に耳元で囁き、狂ったところで首を絞め、最高の絶頂の中で死なす。そう考えると、伯爵の怒張は、ますます肥大化し、いきり立って、メイの媚肉を責め立てた。

(うへへへ、最高だ、最高だ。西部をわしのものにしたら、ハイバン帝國を跪かせてやる。わしにとって最高の玩具が手に入るぞ)

 メイのような女がいくらでも手に入り、好き放題している映像を想像しながら、欲望に任せて突き続けた。
 
「おぉぅううっ、お゛っ、ああ゛あ゛ぁぁ、ひぐっっ、あ、ぅ、ぅうっ」

 メイは、あまりの快感に声にすらならない。極限までいきついた快感に涙が、鼻水が、涎が溢れだす。目は完全に飛んでいて、性的快楽を貪るためだけに存在しているようなものだった。

 やがて、メイの身体が、ビクンビクンと痙攣し始めた。

「ぁあ゛ああっ、ぎもぢい゛い゛~~、あ゛ぁ゛~~、じぬ、じぬぅぅう……いっ、いぐっ……いぐっ、いぐぅうううう」

 まるで獣の咆哮のような声をあげ、悦楽の底なし沼に沈み込んでいった。メイは、ベッドの上で精も根も尽きたように、静かになった。

(ふぅ~、少し休憩を入れるか)

 伯爵は、ベッドの脇に置いてあった水差しを手に取り、水をごくごくと飲んだ。

 そこへ、、ドアをノックする音が聞こえた。執事が中に入ってくると、アルバーン公爵家の使いが、直接ガストン伯爵に手紙を渡したいと、伝えてきた。






 ナーシャは、マイアに頼まれた手紙を届けるため、馬車の中で揺られていた。まさか、侍女としての挨拶早々、知らない土地で手紙を届けさせられるとは思はなかった。正直嫌がらせとしか思えない。

 ナーシャは、考えれば、考えるほど腹が立って仕方がなかった。三大公爵の一つとはいえ、所詮王都から離れた田舎という思いがある。街はあきらかに王都より大きく発展し、住民や商人たちの活気も段違いだ。華やかさという点でも西部が、ずっと似合っている。それでも、正統で由緒正しい場所は、王都である。

 そのため、王都の侍女長として働いてきた自負から、軽んじた扱いには我慢ならなかった。

(なんて女でしょう。王家にいたときに、我が儘な女だと聞いていました。確かに聞いていましたが、まさかここまでとは。ですが、それも今のうちです。近いうちに、生きているのもつらいほどの身に堕とされます。それが楽しみです。)

 ナーシャは、馬車の中で、マイアに受けた仕打ちを思い返しては、ふつふつと湧いてくる怒りに、身を費やしていた。手にある手紙をまじまじと見つめる。

 たかが手紙を直接渡せと言う。

「どうせたいしたことのない手紙でしょう。何が大切な手紙よ。全く」

 夜の暗闇に紛れて、怒りを声に出してぶちまけた。








 ガストン公爵家に着くと、マイアから預かった手紙を持って、門番に訪問の理由を告げた。すると、すぐに、ガストン公爵の前に通された。夜分遅かったが、まだ起きていたようだ。

 ガストン公爵は、大柄の中年で、マイアが言っていた通り、立派な髭を生やした気難しそうな顔をしていた。今も不機嫌そうに座っている。

「遅くに申し訳ありません。わたしは、今日よりマイア様の侍女をすることになりましたナーシャと申します。今日は、マイア様からお手紙を直接お渡しするように言われまして、こうして持ってきた次第です。どうぞご容赦下さい」

 そう言って、ナーシャは、華麗な動作で、ガストン伯爵に渡した。ガストン伯爵は、手紙を受け取ると、すぐに読み始め、そしてみるみるうちに頭に血を上らせていった。真っ赤な顔に変わっていくのにつれ、ナーシャは顔を青ざめさせていった。

(えっ?ど、どうしたのかしら………?)

 なんだか嫌な予感に、寒気がする。

「この手紙はなんだ?よくもこのわしにこんな手紙をもってきたな」

 顔が真っ赤になり、今すぐにも殺さんばかりに睨みつけてきた。戦争は経験がないとはいえ、それなりに訓練を受けている。元々の強面で、全身で怒りを表に出されれば、ナーシャとしては、恐怖でしかなかった。冷や汗が流れ、身体が震える。

 怒り心頭のガストン公爵は、手紙を投げつけた。ナーシャは、わなわなと震えながら、手紙を拾い、読んだ。読み進めるうちに、身体の芯まで凍っていくのが分かる。

『ガストン公爵様

 伯爵が,我がアルバーン公爵家に反旗を翻すため、西部貴族を説得していることは知っています。

 それは、二年前姉のローラとの婚約が破棄になったことをまだ根にもっているのでしょうか。それなら、大きいお身体なのに、ずいぶん狭い心だと思わざるえません。

 あの婚約破棄は、わたしが、アルバーン公爵家を自分のものするため、姉を追放したことが原因と思っているのでしょうが、ガストン伯爵との結婚を、姉が拒否したというのが、事実です。姉の心を得ることができず、可哀そうなことです。ですが、事実は事実ですので、お伝えしておきます。

 今では、大好きなソート国のロディー王子と幸せに過ごせています。本当に、ガストン伯爵と夫婦にならなくて良かったと、妹として心の底から思っているところです。

 さて、ガストン伯爵は、エイジス国にいるハイバン出身者を誘拐し、狩りと称して、残虐な行為を繰り返しているようですね。同じ人間として、いや、同じエイジス国西部の貴族として、見過ごすことができません。激しい怒りを感じるとともに、何らかの処分が必要ではないかと考えているところです。

 ハイバンの方々への謝罪及び亡くなった方々への償い。爵位の返上と領地の没収。これでも足りないでしょうが、まずは速やかに行うよう命令します。考えを変えるつもりは一切ありません。

 アルバーン公爵家 マイア』

「こ、これは………」

(こんな大事な手紙をなぜ、わたしに………)

 貴族の名誉や身分、財産にも関わる最も大切な手紙だ。相手によっては、死刑宣告、または下剋上を狙った内乱にも発展しかねない。それほど重要な手紙を、来たばかりの侍女に託す。その神経が理解できなかった。軽い感じで頼んできたマイアの顔が浮かび、激しい怒りが湧いてくる。だが、それも一瞬だった。

「ハイバン人への謝罪だと?なぜわたしが。喧嘩でも売っているのか?たかが小娘風情が、わたしに命令するなど百年早いわ」

 だが、そんな事情などガストン伯爵が知る由がなかった。ガストン伯爵は、怒りを目の前で今にも卒倒しそうな哀れな侍女にぶつけた。

「おっ、お許しを……。わたしは、こんなことが書かれた手紙なんて知らなかったんです」

 今すぐにも土下座しそうな勢いで頭を下げた。あまりの恐怖で心臓は縮み上がり、ガクガクと震えが止まらない。

「なぁ、おまえ。正直に言え。ハイバン人を殺すのは罪なのか?」

「い、いえ、罪ではないかと」

 隣国にある西部ならまだしも、王都ではハイバン人との交流は一切ない。ハイバン人について考えたこともなかったが、伯爵の勢いに押されて、返事した。

「我々生まれながらにして優秀な人間が、みすぼらしい下等な者たちを生かすも殺すも我々の権利ではないのか。そうだろう?」

「おっしゃるとおりでございます」

「それなのに、まるでハイバン人を殺したことが罪だと言わんばかりだ。ゴミむし達に謝罪など、あり得るはずがない。そうじゃないか?」

「まさにその通りです」

 王家では、知的でどんな事態も冷静に対処し、みんなから尊敬の眼差しを向けられてきた。そんなナーシャが、顔をくしゃくしゃにして、ガストン伯爵の言葉にただひたすらに同調する。

 烈火の如く怒った伯爵が、さらにナーシャに近寄ってくると、生きた心地がしなかった。

「そっちがその気なら、こっちにも考えがある。公爵家はもう終わりだ。長年仕えてきたというのに、この仕打ち。何がなんでも償わせてやる。そう小娘に伝えろ」

 ナーシャは、壊れた人形のように頭を縦に振り、急いで屋敷を出た。屋敷を出ても、心臓のドキドキが止まらず、息をするのさえ苦しかった。

 馬車に乗ってしばらくして、やっと身の安全に確信が持てると、マイアへの怒りが再び沸き上がった。

「なんてことをしてくれたの、あのくされ女め。絶対に許さないわ。きっとこうなることが分かっていて、わたしに行かせたのね」

 ナーシャは、怖さからの脱走とマイアへの怒りで、馬車を超特急で急がせた。
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