僕のクラスには神がいる。

丸井三角

文字の大きさ
1 / 2

第1話 神社の息子

しおりを挟む
 「カーーーーーーン」

 頭の奥の方に響くその音が、俺に朝だということを知らせてくる。
 時刻は午前5:00。神社の朝は早い。

 「もう朝よ、ご飯はもうできているから」
 「すぐ行くよ」

 母親の声に適当に返事をしながら、身を起こす。
 手首につけているヘアゴムで、肩くらいに伸びた髪の毛を後ろで結んだ。
 これが神社の息子かって?ええそうとも、私こそが寺田家の一休です。

 俺は全国でも有数の神社「寺田神社」5代目僧侶寺田一蔵(てらだいちぞう)の一人息子、寺田一休である。
 一休という名前のくせして、その正体が長髪とは誰が想像できただろう。

 今にも閉じそうな目をこすりながら、食卓へと足を進める。
 4月も終わりそうだというのに、吹き抜ける風はまだツンと冷えている。まるで俺と父さんの関係みたいだ。
 そんなことを思っていると冷たい風に乗ってヤツが来た。

 「...おはようございます」

 とりあえず挨拶だ。冷え切った関係にも礼儀あり。
 
 「朝のお参りはどうした」

 挨拶はしてくださいよお父様。挨拶をしろって口すっぱく教育して来たのはあなたですよね!?

 「それにその髪はいつ剃るんだ。この家に似つかわしくないってのはわかってるんだろうな。」
 「へいへい、気が向いたらそうするよ」
 「...」

 気の抜けた声であしらうと父親は食卓と逆方向に足を進めた。

 「ちょっと、一蔵さん!ご飯できてますよ!」
 「その腑抜けたやつと食う飯なんてまずくてたまらねえから、後で食べることにする、悪いな」

 そう言って父は廊下の奥へと行ってしまった。冷え切った関係に終わりは来るのだろうか。
 俺もわかってはいた。これは一種の現実逃避であり、両親を悲しませていることは。
 でもしょうがないんだ。俺は、神社の息子でありながら神に見放されているんだ。

 神社の息子として生まれた俺には、他の人よりも神という存在が身近に感じられた。
 事あるごとに賽銭の前に立っては、祈った。

 「明日天気になりますように」
 「明日のテスト、勉強したところが出ますように」
 「サッカーの試合で点が決められますように」
 「怪我をせずに帰って来れますように」
 
 しかし、そのお願い事を全て神様は裏切った。
 天気をお祈りした日は土砂降りの雨だったし、テストの山なんて当たったことはない。
 サッカーの試合では最後のPKを外してチームは敗退し、怪我をしないことを祈った日にはひどい捻挫をした。

 こうして、神様に裏切られ続け、俺はいつしか神様を信じなくなった。
 そして、神社の息子であることを嫌って髪を伸ばし、ピアスを開けたのだ。

 これが世界一似合わない神社の息子をしている理由だ。


 母親との会話のない朝食を終えた俺は、身だしなみを整え制服を来て、家をでた。
 今日は月曜日、あと5日学校に行ったらゴールデンウィークが待ってる。頑張ろう。

 「行って来ます」

 小さい声でそういうと母親が会釈を返してくれる。母親は俺がどうなっても変わらず接してくれる。
 口では絶対言えないんだけれど、いつもありがとう。

 そうして俺は学校へと向かった。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

お兄様「ねえ、イケナイ事をしよっか♡」

小野
恋愛
父が再婚して新しく出来たお兄様と『イケナイ事』をする義妹の話。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

処理中です...