【完結】婚約破棄されたら女友達(だと思ってた男)に拾われた

もなか@まいこ

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8話 異世界転移魔法 ※フィーリオ視点

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  オリヴィアの意識が落ちた。突然起きた目の前の出来事に、頭が真っ白になる。

  幸か不幸か周囲には誰もいない。筋力もこの姿では彼女の身体を抱えることも出来ないため、私はネックレスを外し男の姿へと戻った。

 「オリヴィア!?  オリヴィア!?」

 オリヴィアの身体を抱える。柔らかく、華奢で、今にも折れそうな儚い身体であった。

  ただひたすらに呼びかけるが、返答はない。それどころか、ピクリとも動かない。

  私はひたすらオリヴィアの身体を揺する。とりあえず、脈を確認するが死んではいない。そこにひとまずほっとする。

  刹那、ポケットの中が震えた。私はポケットの中にある鏡を取り出した。この鏡はレナードとアランと連絡が取れる鏡である。

  ちょうどいいタイミングだ。レナードなら何かわかるかもしれない。

  私はパカッとその鏡を開いた。レナードとアラン、2人の顔が鏡に映っている。レナードはどこか慌てた表情で、アランは何が起こったか分からないような表情であった。反応を見る限り、レナードから、私とアランへの連絡か。

  レナードの方も緊急事態なのか。

  私はぎゅっと彼女を強く抱きしめる。

  「おい!  今、王都の公園で大きな異世界転移の反応があったぞ!?」

  珍しく、レナードの慌てた声が聞こえた。

  王都の公園──今私がいるところだ。もしかして、ここか!  

  「レナード、ここだ!  今、私がいるところだ!」

  声を荒らげた私に、レナードが頷く。

  「フィーか!? 」

  「いきなりオリヴィアが襲われたんだ!」

  「オリヴィアが!?  フィー、執務室これるか!? 」

  「ああ!今向かう!」

  私はオリヴィアを抱えたまま、立ち上がる。彼女の銀色の長いまつ毛がふわりと揺れた。

  レナードほどでは無いが、私も魔力量と技術はあるほうだ。瞬間移動魔法程度であれば、私も使える。私は術を発動させた。

  光に包まれ、地面にひとつだけ緑色の魔法陣が浮かび上がる。私がつくりあげたものだ。

  ひゅんと音がして、私の見える景色が変わった。

  早く──早くレナードに……

  見慣れた室内。異世界転移魔法対策部隊のアジト──つまり私の執務室だ。そこにアランとレナードの姿があった。アランが慌てたようにこちらを見る。レナードもいつもは見せない真剣な表情を浮かべていた。

  「オリヴィア嬢は無事なのかい?」

  アランが問う。

  「分からない。意識がないんだ」

  私はオリヴィアを、ソファに寝かせる。そして、オリヴィアの隣に跪いた。

  「オリヴィア……  オリヴィア!」

  名前を呼ぶが、やはり反応はない。

  オリヴィアの兄であるレナードもオリヴィアのそばに控える。そして、オリヴィアの手を握り、額に手を置いた。

  「……フィーとオリヴィアがいた位置で、異世界転移の反応があった」 

  レナードが淡々と話しはじめた。いつもはおちゃらけた男であるが、妹が被害にあった今、表情は真剣そのものである。

  異世界転移魔法の反応──なぜここで。疑問は尽きぬが、レナードの言葉を待つ。

  「オリヴィアは、異世界転移魔法の犠牲になりかけたのかもしれない」

  「犠牲になりかけた……?」

  アランが眉を顰めた。アランもその意味をうっすらと理解しているのだろう。その顔は、いつもの穏やかな表情とは違い、怒りと恐怖と驚きの色が滲んでいる。

  「おそらくこの異世界転移されてきてるのは人間だ」

  「人間……となると……」


  「ああ、異世界の人間を1人こちらに転移させるためには、こちらに住む人間1人を犠牲にしなければならない。しかも消えた人間は──」

  レナードは悔しそうに唇を噛む。

  「この世で生きたという事実そのものが消え、私たちの記憶から失われる──」

  私は、レナードの言葉の続きを紡いだ。

  もしかしたら、オリヴィアを失ったかもしれない。オリヴィアとの楽しい日々を忘れてしまったかもしれない。誰かを愛したという記憶が消えてしまったかもしれない。

  その事実に背筋が凍る。

 「オリヴィアは目覚めるのか!?」

  私が問う。こんなところでオリヴィアを失いたくない。焦る心が、私の語気を強くさせた。冷や汗が滲む。

  レナードはしばらくオリヴィアの顔を見た後、私とアラン、両方の顔を見た。

  「……目覚めるはずだ。おそらく──」

  レナードが一拍おいてから続ける。

  「ただの魔力不足だ」

  「魔力不足……?」

  つまり、膨大な魔力を使ったということか。強い魔法を一気に使うと、稀に魔力不足を起こすという話は聞いていた。

  でもなぜ──

  もしかして、オリヴィアは魔法を使ったのか……?

  その答えを言うかのように、レナードはさらに説明を続けた。

  「オリヴィアは異世界転移魔法の発現を阻止したんだ」

  「阻止!?  そんな高度な技を学生が使ったのか……!?」

   アランがただでさえ丸い目をさらに丸くする。

  「……フィー。ひとつ提案だ」

  「なんだ?」

  「オリヴィアを今回の調査に協力させよう」

  その言葉を聞いて、私の頭は一瞬真っ白になった。その言葉が私の心に重く沈んだ。
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