24 / 42
本編
魔物(18禁シーンなし)
しおりを挟む
外を見ると、そこにいたのは、大きな黒い獣であった。以前、訓練所で見たものよりも、遥かに大きく、遥かにおぞましい。エディートルトさんと、マーティンさんが、スっと立ち上がる。エディートルトさんが、先に馬車を出た。
「姉様、聖女様。安全な場所に非難してください」
「……分かった。気をつけて」
「うん。必ず戻る」
レティーシアさんに、そう投げかけるマーティンさん。マーティンさんのいつもは無表情な顔が、ほんの少しだけ微笑んだ。マーティンさん、そんな顔もできるんだ……。
「聖女様。行きましょう」
レティーシアさんが、私の手を引いた。私は、レティーシアさんに連れられ、馬車を出る。
そとは混沌だった。何台もの馬車が、道に止まってて。その周りを、魔物が囲っている。魔物は1匹だけではなかった。私が見える範囲でも、4匹はいる。魔術師達は、懸命にそれと戦っていた。
「くそっ! こいつら、1匹1匹が手強いぞ……!」
「おい、アース隊長は!?」
「アース隊長は、あっちで戦闘中だ! ここに来るのに時間がかかる!」
魔術師達が、苦戦している。しかし、私にできることは無い。冷静に戦場を把握する暇もない。私は、レティーシアさんにつづき、戦場から離れる。私とレティーシアさんは、森に入り込んだ。
「ここまで来れば、大丈夫なはず……」
息を切らす、レティーシアさん。遠くから戦う音は聞こえてくるが、戦場からは、大分離れたはずだ。足を止めた彼女は、木の脇に座り込む。私も、その傍らに座った。アースさんに鍛えられているせいか、私の体力はまだ有り余っている。
しばらくして、レティーシアさんも落ち着いてきた。遠くから聞こえる戦闘の音も、小さくなってきた。
「他の皆さんは大丈夫なのでしょうか……」
「分かりません。でも、今回の任務に参加する魔術師は、国の先鋭たちです。教会の人間たちも、自分の身は自分で守れます。信じましょう」
そうだよね。今の私には、祈ることしかできないよね。聖女って呼ばれてるくせに、戦えず、待つことしかできないのが、もどかしい。
カサカサと。どこからともなく、音がした。それは、草と草が擦れ合う音で。背筋を貫く、冷たい視線。私は、その視線の方を見る。
嫌な……予感がする……。
ゆっくりと、そこを見て。私の身体が氷のように動かなくなる。
そこにいたのは、例の魔物であった。さっき、馬車の周りを囲んでいたそれである。
なんで……ここに……?
ごくんと息をのむ。
「聖女様。逃げましょう」
腕を引かれ、立ち上がる。私の足は、動こうとした。あとは、我武者羅に逃げるだけだ。私は、引っ張られるままに、動く。
しかし、魔物の視線は私たちに向けられている。はっきりいって、逃げられる気がしない。
「ぐわぁぁぁぁあっ!」
魔物が雄叫びをあげた。その雄叫びは、私の鼓膜が破れそうなほど大きい。思わず、耳を塞ぐ。
魔物が手を振りかざした。そして、その腕が、私たちに降りようとする。
……危ない!
私は、レティーシアさんを力いっぱい押した。レティーシアさんの体は、遠くへと押し飛ばされる。彼女の体が木の幹にあたり、口から、「うっ」という声が漏れる。
正直、痛そうだ。申し訳ない。でも、彼女は体を起こすことが出来てるので、生きてるっぽい。良かった。これで、レティーシアさんは魔物の手に潰されないだろう。レティーシアさんだけでも、逃げて欲しい。
私は、目を閉じる。ああ、私はもうダメかもしれない。迫り来る死に、私は恐れる。
アースさん、最後にあなたの顔が見たかったな。もっと一緒にいたかったな。
ふと、そんなことを、思ってしまった。走馬灯のように駆け巡る、アースさんとの日々。出会って数日なのに、元の世界よりもこっちの世界での思い出が駆け巡るなんて。今になって、私の中のアースさんの存在の大きさに気づくなんて。死を前にしてるのに、ふっと鼻で笑ってしまう。
──カキンという音がした。それと同時に、私の目の前に光がともる。閉じている私の瞳でも感じ取れるほど眩しい光。私は、天国に来たのだろうか。
「……ミラ!」
聞こえた声。それは、アースさんの声だった。なんで……なんで……聞こえたの? これは、幻聴?
私は、ゆっくりと目を開ける。やっぱり、目の前にはアースさんの顔があった。彼は、焦ったような、寂しそうな顔をしていた。
「アース……さん?」
「ミラッ!」
彼が、私を抱きしめた。トクントクンと伝わる、彼の鼓動。
「ああ。よかった。君が無事で」
耳元に伝わる切なげな声。私の目の前には、魔物の死体が転がっていた。どうやら、アースさんが助けてくれたらしい。
生きてるんだ、私。死んだかと思ったのに。そう思うと、身体の力が抜ける。思わず、アースさんの身体にもたれかかってしまった。 アースさんが、優しく、私の体を絡めとる。そして、彼は優しく私の背中をさすった。
アースさんの胸の中は、安心できる。とても、心地よい。
ずっと……ずっと、このままでいたいな。彼にすっぽりと身体を包まれながら、そんなことを願う。
「聖女様、申し訳ありません」
そう頭を下げるのは、レティーシアさんだった。レティーシアさんが佇む奥には、マーティンさんもいる。
「本来であれば、私が聖女様を守る立場なのに……」
悔しそうに唇を噛むレティーシアさん。そんなわけない。彼女は悪くない。
「気にしないでください。私がレティーシアさんを守りたいって思っただけなので……お互い、無事でよかった」
「聖女様……」
レティーシアさんが、ニコリと微笑む。その顔は、愛らしい少女のようだった。
あっ……やばい。レティーシアさんのこの微笑み、マジで可愛い。普段はクールビューティなのに、こんな可愛い笑み見せられると、同性である私もキュンっとしてしまう。
「ちょっと、レティーシア。俺たちの邪魔しないでよ。マーティン、マーティン! レティーシアを回収して」
「はぁ……」
マーティンさんが呆れたようにため息をつく。
マーティンさんと、レティーシアさんは、私たちの前から去っていった。ここには、私とアースさんのみとなる。
「しばらくここで休憩して、夕方になったら出立だって。次の街に着くの、深夜になるかも」
アースさんが、私を抱きしめながら報告する。そして、彼は私の制服のスリットから手を入れ、生乳を揉み始めた。
「ごめん、休憩の間に魔力供給していい? 沢山、魔法を使ったから、魔力が枯渇してるんだ」
そう言って、彼は私の唇に食らいついた。
「姉様、聖女様。安全な場所に非難してください」
「……分かった。気をつけて」
「うん。必ず戻る」
レティーシアさんに、そう投げかけるマーティンさん。マーティンさんのいつもは無表情な顔が、ほんの少しだけ微笑んだ。マーティンさん、そんな顔もできるんだ……。
「聖女様。行きましょう」
レティーシアさんが、私の手を引いた。私は、レティーシアさんに連れられ、馬車を出る。
そとは混沌だった。何台もの馬車が、道に止まってて。その周りを、魔物が囲っている。魔物は1匹だけではなかった。私が見える範囲でも、4匹はいる。魔術師達は、懸命にそれと戦っていた。
「くそっ! こいつら、1匹1匹が手強いぞ……!」
「おい、アース隊長は!?」
「アース隊長は、あっちで戦闘中だ! ここに来るのに時間がかかる!」
魔術師達が、苦戦している。しかし、私にできることは無い。冷静に戦場を把握する暇もない。私は、レティーシアさんにつづき、戦場から離れる。私とレティーシアさんは、森に入り込んだ。
「ここまで来れば、大丈夫なはず……」
息を切らす、レティーシアさん。遠くから戦う音は聞こえてくるが、戦場からは、大分離れたはずだ。足を止めた彼女は、木の脇に座り込む。私も、その傍らに座った。アースさんに鍛えられているせいか、私の体力はまだ有り余っている。
しばらくして、レティーシアさんも落ち着いてきた。遠くから聞こえる戦闘の音も、小さくなってきた。
「他の皆さんは大丈夫なのでしょうか……」
「分かりません。でも、今回の任務に参加する魔術師は、国の先鋭たちです。教会の人間たちも、自分の身は自分で守れます。信じましょう」
そうだよね。今の私には、祈ることしかできないよね。聖女って呼ばれてるくせに、戦えず、待つことしかできないのが、もどかしい。
カサカサと。どこからともなく、音がした。それは、草と草が擦れ合う音で。背筋を貫く、冷たい視線。私は、その視線の方を見る。
嫌な……予感がする……。
ゆっくりと、そこを見て。私の身体が氷のように動かなくなる。
そこにいたのは、例の魔物であった。さっき、馬車の周りを囲んでいたそれである。
なんで……ここに……?
ごくんと息をのむ。
「聖女様。逃げましょう」
腕を引かれ、立ち上がる。私の足は、動こうとした。あとは、我武者羅に逃げるだけだ。私は、引っ張られるままに、動く。
しかし、魔物の視線は私たちに向けられている。はっきりいって、逃げられる気がしない。
「ぐわぁぁぁぁあっ!」
魔物が雄叫びをあげた。その雄叫びは、私の鼓膜が破れそうなほど大きい。思わず、耳を塞ぐ。
魔物が手を振りかざした。そして、その腕が、私たちに降りようとする。
……危ない!
私は、レティーシアさんを力いっぱい押した。レティーシアさんの体は、遠くへと押し飛ばされる。彼女の体が木の幹にあたり、口から、「うっ」という声が漏れる。
正直、痛そうだ。申し訳ない。でも、彼女は体を起こすことが出来てるので、生きてるっぽい。良かった。これで、レティーシアさんは魔物の手に潰されないだろう。レティーシアさんだけでも、逃げて欲しい。
私は、目を閉じる。ああ、私はもうダメかもしれない。迫り来る死に、私は恐れる。
アースさん、最後にあなたの顔が見たかったな。もっと一緒にいたかったな。
ふと、そんなことを、思ってしまった。走馬灯のように駆け巡る、アースさんとの日々。出会って数日なのに、元の世界よりもこっちの世界での思い出が駆け巡るなんて。今になって、私の中のアースさんの存在の大きさに気づくなんて。死を前にしてるのに、ふっと鼻で笑ってしまう。
──カキンという音がした。それと同時に、私の目の前に光がともる。閉じている私の瞳でも感じ取れるほど眩しい光。私は、天国に来たのだろうか。
「……ミラ!」
聞こえた声。それは、アースさんの声だった。なんで……なんで……聞こえたの? これは、幻聴?
私は、ゆっくりと目を開ける。やっぱり、目の前にはアースさんの顔があった。彼は、焦ったような、寂しそうな顔をしていた。
「アース……さん?」
「ミラッ!」
彼が、私を抱きしめた。トクントクンと伝わる、彼の鼓動。
「ああ。よかった。君が無事で」
耳元に伝わる切なげな声。私の目の前には、魔物の死体が転がっていた。どうやら、アースさんが助けてくれたらしい。
生きてるんだ、私。死んだかと思ったのに。そう思うと、身体の力が抜ける。思わず、アースさんの身体にもたれかかってしまった。 アースさんが、優しく、私の体を絡めとる。そして、彼は優しく私の背中をさすった。
アースさんの胸の中は、安心できる。とても、心地よい。
ずっと……ずっと、このままでいたいな。彼にすっぽりと身体を包まれながら、そんなことを願う。
「聖女様、申し訳ありません」
そう頭を下げるのは、レティーシアさんだった。レティーシアさんが佇む奥には、マーティンさんもいる。
「本来であれば、私が聖女様を守る立場なのに……」
悔しそうに唇を噛むレティーシアさん。そんなわけない。彼女は悪くない。
「気にしないでください。私がレティーシアさんを守りたいって思っただけなので……お互い、無事でよかった」
「聖女様……」
レティーシアさんが、ニコリと微笑む。その顔は、愛らしい少女のようだった。
あっ……やばい。レティーシアさんのこの微笑み、マジで可愛い。普段はクールビューティなのに、こんな可愛い笑み見せられると、同性である私もキュンっとしてしまう。
「ちょっと、レティーシア。俺たちの邪魔しないでよ。マーティン、マーティン! レティーシアを回収して」
「はぁ……」
マーティンさんが呆れたようにため息をつく。
マーティンさんと、レティーシアさんは、私たちの前から去っていった。ここには、私とアースさんのみとなる。
「しばらくここで休憩して、夕方になったら出立だって。次の街に着くの、深夜になるかも」
アースさんが、私を抱きしめながら報告する。そして、彼は私の制服のスリットから手を入れ、生乳を揉み始めた。
「ごめん、休憩の間に魔力供給していい? 沢山、魔法を使ったから、魔力が枯渇してるんだ」
そう言って、彼は私の唇に食らいついた。
0
あなたにおすすめの小説
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
女の子がほとんど産まれない国に転生しました。
さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。
100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳
そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。
当面は2日に1話更新予定!
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた
狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている
いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった
そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた
しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた
当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった
この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。
魚人族のバーに行ってワンナイトラブしたら番いにされて種付けされました
ノルジャン
恋愛
人族のスーシャは人魚のルシュールカを助けたことで仲良くなり、魚人の集うバーへ連れて行ってもらう。そこでルシュールカの幼馴染で鮫魚人のアグーラと出会い、一夜を共にすることになって…。ちょっとオラついたサメ魚人に激しく求められちゃうお話。ムーンライトノベルズにも投稿中。
若社長な旦那様は欲望に正直~新妻が可愛すぎて仕事が手につかない~
雪宮凛
恋愛
「来週からしばらく、在宅ワークをすることになった」
夕食時、突如告げられた夫の言葉に驚く静香。だけど、大好きな旦那様のために、少しでも良い仕事環境を整えようと奮闘する。
そんな健気な妻の姿を目の当たりにした夫の至は、仕事中にも関わらずムラムラしてしまい――。
全3話 ※タグにご注意ください/ムーンライトノベルズより転載
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる