社畜OL(22)、魔女(9)になる~どうやら世界を滅ぼす魔女のようです~

ありすぶるー

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王都炎上篇

第14話 《幼女さんはどうにか王都へ入りたい》

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 竜人族との戦闘が、つい昨日のこと――。

「うーん……」

 草原にぽつんと立つ、古びた木造の家。時刻は昼時。
 《災禍の魔女》イブキは、自宅横の地面を睨みつけながら、唸っていた。

「もうちょっと、こっち……ここかな」

 独り言をぼやきながら、イブキが地面に手の平を触れる。すると、地面が小さくうねり上がり、独りでに土地が耕され始めた。これも魔術の力である。イブキは、この異世界生活に順応するべく、自給自足の生活を試みようとしていたのだ。

(だって、《災禍の魔女》さんは王都に入れねーし……)

 ちっ、と舌打ちをしつつ、耕された畑を眺めてなにを植えるか思案する。この間もらった野菜から、種を取り出して植えてみるか? うまくいくかはわからないが、時間はたっぷりあるし、試してみてもいいかもしれない。

 延々とうなり続けていると、イブキの耳元で吐息混じりの声が聞こえた。

「なにやってるんですか、イブキさん」

「ぬわあっ!」

 集中しすぎていて、誰かがこんな近くまで接近していたことに気づかなかった。イブキは情けない声を上げて、紫髪を揺らしながら振り返る。

 綺麗な金髪に、細身の体。胸はそこそこあり、凛々しい目をしている。青と白の、見慣れた制服に身を包んでいた。
 氷花騎士団第2部隊隊長、シャル=リーゼロットだった。

 イブキは空いた口をそのままに、シャルへとまくし立てる。幼女らしい、舌足らずの口調で、

「び、びっくりさせるな、シャル! もっとふつーに話しかけろ!」

「イブキさんが呼んだんじゃないですか。頼まれていたことについて、調べてきたんですよ」

「たしかにわたしが呼んだけど……ってまあいいや。助かるよ、シャル」

「私、頑張って調べましたよ」

「ああ……わかってるよ、ありがとう」

 シャルの整った顔が、どんどん近づいてくる。美人に見つめられると、同性のイブキだって恥ずかしい。シャルは、美人が台無しになるくらい「でれー」っと笑って、

「だから……えへへ……、ぎゅーさせてください。私たち二人きりですよ。ほっぺたもぷにぷにさせてください。ほら、イブキさん……」

 また、シャルの可愛いものに目がないビョーキが発動している。たしかに、そんなことを条件に調べ物をしてもらっていたっけ、と思い返しつつも、イブキはシャルの顔を押しやる。

「あ、後でね! 先に、調べた内容を教えてよ」

「……」

 シャルが半目になり、じとっとした視線を向けてくる。「約束、破るんですか?」とでも言いたげな目だ。こうなっては仕方ない。イブキはほっぺたを差し出し、好きなだけぷにぷにさせた。すごく、恥ずかしかった。
 どれくらいかして、満足したシャルが凛々しい表情を取り戻す。二重人格なのか? この人。

「こほん。まず一つ目ですが……ブレインさんは、たしかにエネガルム墓地の墓守でした。直接話してはいませんが、老人の方みたいですね」

「ふむ。早とちりはいけないけど、ハーレッドの言うことは、嘘じゃなさそうね。そいつが、竜人族となにか関わりを持っていることは間違いない……。予言の件は?」

「予言を統括している大司教は、塔の中にいて面会できなさそうです。少なくとも、私たち氷花騎士団では、権力すら及びませんでした」

「やっぱり、そうだよなぁ……」


 イブキは、雲ひとつない青空を見上げ、ため息をついた。
 イブキの計画を達成するためには、どうしても王都エネガルムへ入る必要がある。ブレインと会い、大司教とも会う必要がある。だが、イブキは嫌われ者の《災禍の魔女》だ。検問で止められるに決まっている。

 たとえそれが氷花騎士団の隊長であるシャルが付いていても、だ。

(シャルにこれ以上迷惑は掛けられないし……)

 シャルには、なにをするつもりなのかは全て伝えているが、こればっかりは巻き込むわけにはいかない。
 悩みこくっていると、イブキは「あっ」と声を漏らした。大事なことを忘れていた。

「ドナーは大丈夫なの?」

 シャルも思い出したように「ああ」と呟いた。ドナー、可哀相すぎないか?

「ドナルド副団長は無事ですよ。すでに治療を受け、今ではリハビリを続けています」

「不死身かよ。昨日今日でリハビリ必要ねーじゃん」

 おっと、また口が悪くなってしまった。シャルは苦笑した。

「また、ドナルド副団長と遊びに来ます。……では、私は氷花騎士団本部へ戻ります。立場上、エネガルムへの侵入については、協力できませんが……」

 イブキは身振り手振りで「そんなことない!」を体現した。

「その気持ちだけで嬉しいわよ。私を信じてくれて、ありがとうね」

「いえ。リリスも、あなたのことが気に入ったようですし。――ところで、これは私の独り言なのですが、今は使われていない地下水路が、エネガルムには存在しているようですよ? 街の中から外へと繋がっているみたいですけど、古い水路なんか、誰もチェックしてないでしょうね」

 そしてシャルはにやりとした。まったく、この度胸と対応力が、シャルを今の立場まで押し上げたのだろう。
 イブキも、わざとらしくため息をついた。

「あーあ。エネガルムに、どうにか侵入できないかなぁ?」
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